NICTの委託研究「Beyond 5G研究開発促進事業」の研究開発課題である産学の10研究機関が参画する「Beyond 5G超大容量無線通信を支える次世代エッジクラウドコンピューティング基盤の研究開発」[3]の概要について紹介するとともに，特に，CPO超小型光トランシーバの開発について述べる．

本稿では，衛星通信と5G/Beyond 5Gの連携について，海外の動向と国内の検討状況，NICTの研究開発の取組みを紹介する．海外動向として，衛星5G/Beyond 5G連携の背景と欧州を中心とした研究開発の進展，3GPPを中心とした標準化の状況を紹介する．続いて，これを受けて国内で検討会および民間フォーラムを開催して検討している状況を説明する．また，これと平行したNICTの研究開発の取組みとして，第5期中長期計画で推進しているBeyond 5Gにおける海洋，空域から宇宙までを接続する3次元ネットワークの基盤技術の確立を目指した研究開発の取組みを紹介する．

Beyond 5Gに向けた光空間通信を紹介する。

我が国では28GHz帯の電波を利用した5Gシステムのサービスが開始され, 携帯電話端末が販売され, 国外では40 GHz帯の運用開始やより高い周波数の利用についても検討されている. これら新しい電波の利用, 特に公共への普及において, 電波への人体ばく露の防護への関心も高い. 本稿では5Gシステムに代表される携帯電話端末等を対象に, 6GHzよりも高い準ミリ波帯(6〜30 GHz)並びにミリ波帯(30〜300 GHz)における電波ばく露の評価方法, 並びにその標準化動向について紹介する.

平面アンテナと電気光学変調器とを融合させた「アンテナ電極光変調器」と、その Beyond 5G 無線への応用の可能性について議論する。

本稿では、光ファイバとテラヘルツ無線をシームレスにつなぐための有力なツールであるファイバ無線(RoF: radio-over-fiber)の構成とそれを支えるデバイスについて紹介する。また、テラヘルツ帯の広帯域性を生かして、デジタル光伝送システムで用いられる波形をそのまま無線区間に導くという考え方も議論する。

本講演では，最近我々が提案・実証している誘電体キューブアンテナを紹介する．本アンテナは，波長程度（300 GHzの波長は1 mm）の開口寸法でありながら，300 GHzにおいて，およそ15 dBi程度と，比較的大きなアンテナ利得を実現するものである．導波管に差し込むタイプの誘電体キューブアンテナのS11は，WR-3.4導波管のフルバンド(220 -330 GHz)において-10dB以下であり，広帯域動作が可能である．

近年、高速・大容量・同時多接続を特徴とする第5世代(5G)移動通信システムの商用サービスが開始され、さらにはその先のBeyond 5G/6Gで必要となる技術について研究開発が盛んに行われている。このような移動通信システムの基地局には送信信号を増幅する増幅器が不可欠であり、増幅器の消費電力が基地局全体の消費電力の大部分を占めることから増幅器の低消費電力化がこれまで求められてきた。第5世代では多素子アンテナが採用されたことから、増幅器の小型化も求められた。加えて、Beyond 5G/6Gでは広帯域変調信号への対応や基地局の柔軟性を可能とするため増幅器の広帯域化も求められる。これまで当社ではドハティ増幅器のような高効率増幅動作が可能な負荷変調回路技術を用いた窒化ガリウム(GaN)増幅器の広帯域化の技術開発を行ってきた。本稿では、これらの移動通信基地局向け広帯域負荷変調GaN増幅器技術について報告する。

高温超伝導体単結晶に内在する固有ジョセフソン接合間の同期現象であるテラヘルツ発振の最近の進展である円偏光発振と偏光測定による同期現象解析について報告する。
円偏光の電磁波は、移動体通信など発振器と受信機の相対関係が刻々と変わる用途に有用であり、テラヘルツ波に期待される移動体間の超高速無線通信技術に必須である。我々は、ミリ波などで用いられているパッチアンテナ技術から設計したデバイス構造を高温超伝導体単結晶表面に形成し、円偏光のテラヘルツ波を放射することに成功した。得られた円偏光度は、過去に報告された連続テラヘルツ光源の中で最大のものであり、超伝導固有ジョセフソン接合特有の巨視的量子効果の結果と考えている。
さらに、複数メサ構造から同時放射された電磁波の偏光測定を基に、それぞれのメサ構造に励起された非線形プラズマ波間の相互作用を特定する手法を提案した。系統的な研究を進めていくことで、多数のメサ構造間の同期現象を制御し、多様な用途に社会実装可能な高強度テラヘルツ光源の設計に資することが期待される。

我々は，高温超伝導体Bi2Sr2CaCu2O8+δ(Bi2212)単結晶を用いたテラヘルツ波発振器(Bi2212-THz波発振器) の開発を行っている。このBi2212-THz波発振器の発振原理は，高温超伝導体Bi2212単結晶の結晶構造に由来した固有ジョセフソン接合に発生する交流ジョセフソン効果に基づく。原理的には，素子への印加電圧の調整のみで0.1 - 15 THz程度の電磁波の放射が可能である。本発表では，我々が開発を進めるBi2212-THz波発振器の基本動作原理とその開発経緯を踏まえつつ，この発振器の高性能化に向けた最近の取り組みについて紹介する。

高温超伝導体、特にBi2212においては、結晶そのものが天然の積層ジョセフソン接合（固有ジョセフソン接合）であることが90年代初頭に明らかになり、THz発振を中心に、基礎・応用両面から興味を持たれ、精力的に研究が進められてきた。その中で我々は、通常の磁気的測定手段では測定が容易でない微小Bi2212中の磁束量子物性について、固有ジョセフソン効果をプローブとして渦糸状態を探るという観点で研究を行った。本講演では、磁束量子が侵入した状態での固有ジョセフソン接合について概観し、ジョセフソン磁束のフロー抵抗振動や、メゾスコピックサイズの試料に閉じ込められた磁束格子（磁束クラスター）の融解転移、単一磁束量子制御など、幾つかの特徴的な現象について紹介したい。

高温超伝導体Bi₂Sr₂CaCu₂O₈（Bi-2212）結晶の積層構造に由来する天然のSIS接合列いわゆる固有ジョセフソン接合は，ジョセフソン発振器の性能を大幅に改善することが期待されている。本稿では，Bi-2212薄膜を用いた固有ジョセフソン接合が示すフラックスフロー応答や液体窒素温度で実現した接合キャビティ共鳴によるテラヘルツ波発振などの実験結果をもとに，薄膜型固有ジョセフソン接合の特長と高周波発振デバイスとしての可能性について紹介する。

本講演では、銅酸化物高温超伝導体で発見された固有ジョセフソン接合構造を将来の超伝導量子ビット実装に応用するための出発点として注目された、固有ジョセフソン接合における巨視的量子トンネル（MQT）効果に焦点を当てる。現在の超伝導量子ビットにおいて主流である従来超伝導体のジョセフソン接合との対比を通じ、複数のジョセフソン接合が原子スケールで結合する固有ジョセフソン接合系ならではの特異な位相ダイナミクスについて解説し、固有ジョセフソン接合素子による超伝導量子ビット実現に向けた今後の課題と展望を議論する。

我々が美術館博物館で鑑賞しているほとんどの作品には修復の歴史がある。経年劣化，自然災害，人為的破壊などによって失われる美的価値を修復することは，例えるなら外科手術であり，重要な作品については処置に先立って様々な科学調査を実施し状態を診断する。文化財は唯一無二なものであり，科学調査はできるだけ非破壊非接触の方法を用いて作品を動かさずに実施することが望ましい。そのためマイクロ波からX線に至る電磁波が内部構造の調査および材料調査に広く用いられている。本発表ではルネッサンス時代の西洋古典絵画や国宝の屏風等の非破壊調査例を紹介しつつ，科学技術が文化芸術に果たす役割について述べる。

本稿では，ある目的色の強調の度合いを連続的かつインタラクティブに調整するために新たに導入した，彩度強調成分について述べる．実験では，彩度強調成分を用いての色彩強調の効果を，カラーチャートを用いて評価したのでその結果を示す．また浮世絵を用いた実験により，褪色箇所の復元など美術・文化財への応用の可能性を示す．

近年CG技術の発展により本物と見紛う物体の質感再現が可能となり，その過程で物体の質感再現における照明の重要性が広く認識されるようになった．また対象物体の感性的評価ではそれが置かれた空間との関係が重要である．本研究では照明における指向性光と拡散光の組み合わせ度合いを様々に変えた条件下で，光沢を有する代表的な日常品の一つである黒漆器椀を対象物体とし，その見え方について感性評価を行った．その結果，つや感や好ましさは指向性光に，明るさ感などは拡散光に，また深み感や味わい深さはハイライト部と非ハイライト部の輝度コントラストに影響されることが明らかとなり，測光値と感性評価の定量的関係を示すことができた．

身の回りの様々な実物に映像を投影重畳し、その見た目・質感を変調することができるプロジェクションマッピングは、広告・エンターテインメントのみならず、医療や製品設計、遠隔対話等への応用も検討されている。身の回りの実物は、非平面で色や模様がついていることが一般的であり、そういった対象上で所望の見えを再現するためのソフトウェア基盤技術の研究が進められてきた。しかしながら、被写界深度の浅さや遮蔽による影といった、ソフトウェア技術だけでは解決できない制約が存在する。本講演では、光技術を応用することで、このような技術的制約を克服し、プロジェクションマッピングにおける投影画質の向上を図る試みについて紹介する。

ホログラム再生用の平行照明光源として高指向性LED照明装置が開発された．本装置は，光源の発光部の拡大結像光を利用した擬似的な平行光を発生し，高い視認性が得られる矩形状の光強度分布を持つ．複数の擬似平行光を用いた点状の光パターン形成により遠隔を部分的に照明できる．平面に沿って照明することにより直線状の光パターンを形成できる．擬似平行光と大型屈折光学素子を用いた光パターン形成LED照明装置は，遠隔に線状の光パターンを形成できる．光パターンLED照明装置は検査，演出，建築，道路，安全，芸術，実験用など様々な業界分野で実用化され始めている．本講演では，光パターン形成LED照明「ホロライト」とその応用について紹介する．

TSMCによる研究開発拠点形成やNEDOポスト5Gプロジェクトで話題になっているシリコン貫通配線TSV（Through-Si Via）を用いた3D-IC、ここでは特に三次元イメージセンサと積層DRAMを取り上げ、その歴史とともに研究開発動向を解説する。また、東北大学でいち早く立ち上げた3D-ICの試作製造拠点GINTI（Global INTegration Initiative, ジンティと呼ぶ）の300mmウエハラインの活動内容やマルチチップレベル三次元ヘテロ集積の最近の研究も紹介する。最後に半導体パッケージング産業で加速する実装形態の多様化と最新の注目技術についても述べる。

シリコン光導波路、ポリマーマイクロミラー、ポリマー光導波路で構成されたAOP基板を製作した。また、112-Gb/s PAM4光信号のAOP基板への光伝送試験において、85℃環境下でも光信号波形の劣化が見られない事から、AOP基板の有用性を実証した。AOP基板がコパッケージ技術の実用化への第一歩となることを期待したい。

半導体デバイスの効率的な冷却のため、デバイス基板と固体中最大の熱伝導率を有するダイヤモンド放熱基板を、簡便な工程にて直接接合する手法を開発した。-OH官能基を導入した基板同士を接触させ、熱脱水反応させることで、Si・InP・Ga2O3といったデバイス基板とダイヤモンド放熱基板を直接接合できた。微細・高出力化に伴いパワー密度が急増しているデバイスに対して、ダイヤモンド基板が直接接合された放熱構造の実現を推し進めると期待される。

ダイヤモンドは高い熱伝導率を有することからヒートスプレッダー材料として期待されている。我々はこれまでに、放熱性能の向上のためにデバイス裏面へのダイヤモンドの接合技術を開発し、GaN系HEMTの高出力化を実現してきた。本発表では、我々がこれまでに実施したダイヤモンドの接合検討とその放熱効果によるデバイス特性への影響について報告する。

超1Tb/s/λ級の光伝送に向け、超広帯域EO集積モジュールの設計・試作を行った。本モジュールは内製アナログマルチプレクサICと広帯域InP マッハツェンダ変調器を、高周波実装技術を用いて集積化しており、EOレスポンスで80GHzと非常に広帯域な性能を有している。本講演ではモジュールとそこに適用されている実装技術についてレビューする。

本講演では，極低損失性を有する誘電体としてのシリコンを微細加工することでフォトニクスに基づくアイディアによって受動デバイスを形成し，テラヘルツ送信器，受信器等の集積化プラットフォームとすることを目指したテラヘルツシリコンフォトニクスに基づくプラットフォームへとテラヘルツ共鳴トンネルダイオードを集積化し，実装を行ったデバイスに関する最近の進展に関して述べる．

広帯域・低雑音・均一性などに優れるテラヘルツ波検出器、「フェルミレベル制御バリア（FMB）ダイオード」を例として、テラヘルツ波検出器の実装技術について概説する。

近年民間企業による市宇宙開発が活発化している。宇宙空間では多数の放射線が存在するため、放射線が半導体の動作や特性に影響を与える。放射線によるエラーや劣化現象を考慮した集積回路の設計が必須である。本稿では半導体における放射線の影響であるシングルイベント効果とトータルドーズ効果について説明する。その後、放射線照射による加速試験の測定結果について紹介する。

シリコンカーバイド半導体を用いた極限環境エレクトロニクスの研究開発を進めている。500℃までの高温環境や高放射線環境下でも駆動可能なCMOS集積回路・センサシステムである。原子力発電所や電気自動車、宇宙開発などでの応用先を紹介し、新しい半導体プロセスから、デバイス、集積回路・イメージセンサまでの研究開発状況を紹介する。

原子スイッチFPGAの耐環境性能について報告する。FPGAに於いては、配線切替スイッチのON/OFFを決めているコンフィグレーションメモリー（CRAM）のソフトエラーが問題となる。このメモリにエラーが起きた場合、ECCで救済は不可能で、リブートが必要となり、ICTシステムの一時休止につながるからである。衛星軌道上の評価及び、地上試験において、いろいろなエネルギーの中性子線、重粒子を印加したが原子スイッチFPGAにソフトエラー（SEU：シングルイベントアップセット）は起きなかった。又、ガンマ線を長期間印加することで起きるハードエラー（TID）は観測されなかった。

量子ビット制御に特化した集積回路を実現することは、量子コンピュータの大規模集積化に必須であると考えられている。量子ビット制御用集積回路は4K程度の極低温下での実現が望ましいとされている。極低温動作集積回路技術は、現在「クライオCMOS技術」と総称され、量子コンピュータの研究開発が活発化するに従って同技術への注目度も高まっている。本講演では量子コンピュータの研究開発動向を概観した上で、固体素子型である超伝導型およびシリコン型量子ビットにフォーカスし、クライオCMOS技術の役割を整理する。最後に現在の研究開発状況を紹介するとともに、今後の課題について述べる。

　量子ドットは量子力学的効果を利用したトランジスタであり、最大の特徴は1個単位の電子の電荷及び磁気的効果(電子スピン)で電流を制御できることである。しかし、量子力学的効果は熱に弱いため、量子ドットを動作させるためには絶対零度(-273℃)付近まで冷却する必要がある。この量子ドットを複数結合した多重量子ドットにおいては、単一量子ドットでは実現しない新しい量子力学的効果が現れるため、量子ドット集積回路は従来の集積回路では実現できない集積回路を実現できる。本講演においては、2つの量子ドットを結合させた2重量子ドットの電気的な特性を通して、量子ドット集積化に向けた研究について紹介する予定である。

半導体の世界ではムーアの法則に代表されるように最先端の微細化技術を導入することによって年々高密度化を達成してきました。　我々の作るフラッシュメモリも微細化と3次元化と共に多値化によって記録密度を向上させています。多値化を行うにはセルの読出しノイズの低減や電荷の保持特性の向上、高耐久性などが求められます。また近年では量子コンピューターの発展などを背景にコンピューターシステムの極低温動作などが求められ、そして低温による半導体素子の特性改善などが報告されています。そこで今回我々は３次元フラッシュメモリの極低温動作を調査し、ストレージ性能の向上を報告しました。

車は日常生活において身近な存在ではあるが、車載用途のマイコンはエンジンルーム内などで-40℃～170℃にわたる広範囲の接合温度(Tj)での動作が求められるなど非常に厳しい環境下での使用に耐える必要がある。近年、安全面を含む車両の機能がより高度化しているが、その実現は電子制御による部分が大きく、厳しい環境下でもマイコンの制御プログラムを誤りなく保持し、安定した読出し・書き換え可能な信頼性の高いフラッシュメモリが車載用マイコンを開発するうえで重要なキー技術となっている。本講演では我々が開発した車載用マイコンに用いられる混載フラッシュメモリの利点を議論し、今後の車載向けの混載不揮発メモリの展望について述べる。

圧電性高分子L型ポリ乳酸(PLLA)は旬なスマートセンサ材料である．その圧電性が圧電セラミック，チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)と比べ遥かに小さいために，実用材料として使用されることは無かった．しかし，高分子らしい柔軟性，易形状性が，人工知能(AI)を活用したIoT(Internet of things)時代を支えるセンサ材料として注目される．本稿では， PLLAを利用したセンサデバイス研究の一端を紹介する．

世界の死因第一位が心疾患であることから、心電図モニタリングデバイスの需要は高い。我々の研究グループでは起毛ドライ電極を衣類上に一括形成する技術(静電植毛加工)用いた心電測定ウェアの研究開発を行っている。ウェア型心電測定装置開発の最大の課題は、呼吸や体の動きで心電波形の形状がゆらぐ、モーションアーティファクト(MA)である。我々はこれまでの研究で、起毛ドライ電極を用いた心電測定において、1000Pa～2000Paの皮膚-電極間の接触圧力においてMAが少ない心電測定が可能であることを見出した。今回、この指標をもとに電極の形状の最適化を行い、実際にMAの少ない心電図測定に成功したため、報告を行う。

講演者は有機電界効果トランジスタを活用した化学センサの開発に取り組んでいる。本発表では、実サンプルの化学分析を当該デバイスで達成した最新の成果を報告する。

汗，尿，涙，唾液などの体液を用いた非侵襲的なウェアラブルバイオセンシングの研究が注目を集めている．将来的にウェアラブルバイオセンシング技術は，日常時の健康状態の管理や遠隔医療診断において十分な情報を提供できる．また，ウェアラブルバイオセンシングの新たな電源として，バイオ燃料電池技術が大きな関心を集めている．本稿では，酵素を電極触媒として用いたフレキシブルかつウェアラブルな電気化学バイオセンサ，バイオ燃料電池および自己駆動型バイオセンシングシステムについて概説する．

有機エレクトロニクスをはじめとしたフレキシブルエレクトロニクスは、その機械的な柔軟性を生かしたフレキシブルディスプレイをはじめとした次世代のエレクトロニクスとして注目を集めている。近年、この機械的な柔軟性を生かした応用として、生体・医療向けデバイスに関する研究が盛んにおこなわれている。本講演ではその例として、非常に薄い基板上に有機エレクトロニクスを作成する手法と、その機械的特性をはじめとしたデバイス特性、生体情報センシングに関する新しい応用例について紹介する。

　電源自立型インプランタブルセンサの開発を目指して、フレキシブル有機圧電性薄膜を用いた心臓拍動検知/発電デバイスに関する研究を行った。成人男性3D-X線CTデータから復元した心臓モデルに、有機強誘電体P(VDF/TrFE)からなるフレキシブル圧電シートを係留し、心臓拍動に対する圧電信号を検出した。心臓モデルの収縮、拡張に応じて明確な圧電信号が検出され、心電図に対応する圧電信号波形パターンが得られると共に、心臓拍動による圧電型発電特性を確認することができた。

伝送容量の拡大が期待されている．周波数リソースの潤沢な高周波数帯の電波利用が効果的だが，伝搬損失が大きくなるため，無線設備を高密度に展開する必要がある．これを実現するために様々New radio network topologyが検討されている．我々は，この中で低消費電力に着目し，A-RoFシステムの検討を進めてきた．これまでに無線基地局の信号処理機能を集約局CSに集約することで，高密度に設置する張出局RRUを簡易化・低消費電力化するA-RoFシステムを提案している．この中で必須となる遠隔ビームフォーミング手法を中心に検討を進めてきた．本稿では我々が提案した遠隔ビームフォーミング手法について紹介した上で，システム化に向けた実験的検討結果について報告する．

本稿では、THz無線の研究開発において、フォトニクス技術とエレクトロニクス技術を効果的に組み合わせた事例を紹介し、今後の展望について議論する．

近年、5Gの先の無線通信 (Beyond 5G) 技術開発が加速している。国策や標準化動向を鑑みると、Beyond 5Gでの電波利用の高周波化・広帯域化は確実である。数百GHzという高周波に対応する電子デバイス用材料や伝搬制御素子の周波数特性計測では、ベクトルネットワークアナライザー (VNA) による自由空間法が従来用いられてきたが、運用の煩雑さや、高い装置コストのため普及が進んでいなかった。そこで我々は、テラヘルツ光サンプリング技術とパルス時間領域分光法によるBeyond 5G向けの周波数特性計測に適したシステムを製品化した。また、本システムを用いてミリ波からテラヘルツ領域における周波数特性計測の妥当性およびVNA測定との同一性を評価した。

モバイル通信のスモールセル化やIoTデバイスの爆発的な増加に伴い，今後は膨大な数の無線基地局を敷設・運用する必要がある．このため，通信回線だけでなく，電力設備についても基地局を所有する通信事業者が一括管理出来るような運用形態が望ましい．これを実現する一手段として，無線基地局向け光ファイバ電力伝送技術を紹介する．本稿では，光ファイバ電力伝送の特徴から，ダブルクラッド光ファイバを用いた光ファイバ電力伝送や最近の研究成果について紹介し，今後の展望を述べる．

筆者らは空港運用者のニーズに基づき，異物の有無による警報を発出するだけでなく，現場に赴くことなく異物を確認できるミリ波レーダとITVカメラネットワークによる滑走路異物監視システムを開発してい。
レーダは直径1インチの金属円柱を450m以上の距離で検知できる性能だが、異物までの距離が長くなると劣化するアジマス方向の精度向上が望まれていた。そこで、複数の光ファイバで接続されたアンテナ局を用いて、演算からレーダ画像を生成することのできる光ファイバ接続型マルチスタティックレーダシステムを開発し、原理検証を行った。
本稿では， 光ファイバ接続型マルチスタティックレーダシステムの概要を紹介する。また、異物までの距離計測精度向上のため、受信したビート信号の位相特性について紹介する。

従来の光ファイバ通信が古典情報(デジタルデータ)を転送するネットワークであったのに対して、量子情報(量子状態)を転送するネットワークである量子インターネットが提案され，世界的に研究開発が進められている。この背景には近年の量子コンピュータに関する急速な研究開発の進展があり、量子インターネットに接続可能なハードウェアの最も有力な候補であるとともに分散量子コンピューティングなどネットワーク化による性能向上も明らかにされつつある。本講演では、量子インターネットを構築するために必要となるデバイスの一つである量子トランスデューサについてマイクロ波フォトニクスとの関係を含めて紹介する。

Beyond 5G/6Gで本格的な活用が期待されるテラヘルツ帯無線と光ファイバ通信技術との融合について議論する。大容量性と低遅延性を担保するための光ファイバ無線技術や、超大容量テラヘルツ無線向け低雑音発振技術など、高速化・高周波化に必要なデバイス技術からトランシーバ技術について主に議論する。

本稿では成層圏と地上間の100GHz帯高速伝送システムの実現可能性について紹介する。高ゲインアンテナ、高出力窒化ガリウム増幅器を用いることで少雨時においても10Gb/s以上の伝送容量確保の見込みがあることを示した。晴天時であれば空間光通信など他の伝送手段も候補となるが、曇天時、降水時においても雲を貫いて上空のプラットフォームと地上の間で高速伝送を提供できる可能性がある媒体としては100GHz帯テラヘルツ波が我々の知る限りでは唯一ものである。各要素技術に技術課題はあるものの、これまでの研究動向を鑑みると実現可能性は高いと考えている。

筆者らは，これまでにBeyond 5Gに向けたユーザ中心の「ユーザセントリックアーキテクチャ」の実現に向けた研究開発を進めている．要素技術として，大きく従来のセル間での干渉によるスループット低下を解消するCell-free massive MIMO (CF-mMIMO) 技術と仮想化無線アクセスネットワーク(RAN)をベースとしたユーザセントリック無線RAN[4]と，上り回線の伝送速度を向上する端末側のテラヘルツ帯(THz)を活用した新たな仮想化端末から構成される．本稿では，Beyond 5Gに向けたユーザセントリックアーキテクチャを構成するテラヘルツ帯を活用した新たな仮想化端末および研究開発課題について紹介する．

昨今，世界各国にてサービス開始されている5Gでは，ミリ波帯やMassive MIMO等の先端技術が導入され， 特に5Gの高速化されたスループットが着目されている．しかし，サービスとしては未だ3G/4Gにおけるスマートフォンのプラットフォームが中心となっており，5G技術の特徴を十分に活かしきれているとは言い難い．一方で， 2030年代の無線・有線を含めた目指すべき次世代ネットワークとして， Beyond 5G(B5G)に向けた活動が，コンソーシアムの設立やホワイトペーパの公開等を通して世界中で盛んになっている．そのような状況下において，本研究ではB5Gに向けた、多種多様なサービスに対応可能な仮想化エッジクラウド基盤に関する研究開発を行う．これまで筆者らは，仮想化エッジクラウド基盤（以下，エッジクラウド）の設計提案を行ってきた．本稿では，本設計におけるエッジクラウドが複数あった場合でのエッジクラウド間でのリソースの共有化手法に関して提案する．

本稿では，テラヘルツ波をはじめとする新規周波数帯の開拓にあたり初期段階で必要となる電波伝搬特性・アンテナビーム検討・エリア設計等を評価する方法について述べる．はじめに，この周波数帯におけるアンテナ・伝搬評価測定の課題を整理する．次に，これらの課題を解決する評価システムのコンセプトを示す．さらに，このコンセプトを実現する試作システムの概要を示し測定例を示す．最後に，今後の拡張機能についても言及する．

6Gにおけるサブテラヘルツ波の活用に向けたNTTドコモの取り組み

次世代Beyond-5G（B5G）高速・大容量・低遅延無線通信システムの実現において必須となる、ヘテロジニアス光電子融合化集積デバイス技術の研究開発の最前線について紹介する。具体的には、モバイルフロントホールの光ファイバネットワークで使用される近赤外光データと、B5Gで使用されるサブテラヘルツ～テラヘルツ無線データとのシームレスかつ低遅延・超低消費電力に相互変換機能を実現する、光－B5G無線間キャリア変換／データコンバータ技術を紹介する。

本稿では、テラヘルツ無線の黎明期から現在に至る約20年の研究開発と世の中の動向を振り返りながら、今後の展望や課題について議論する．

本講演はトップレベルのスーパーコンピュータにおける光接続の動向を紹介し，今後の期待について述べる．
まず過去10年間の世界1位システム7台について，ノード間相互接続の概要と光接続の利用に関して紹介する．現在の世界1位システムである「富岳」のTofuインターコネクトDについてはシステム構成を含めて説明する．
また，将来のスーパーコンピュータにおける光接続の利用についても議論する．次の世界1位システムになると予想されているFrontierのインターコネクトや，2020年代後半に向けた100～200Gbpsの高速伝送とCPO活用への期待について述べる．

近年の通信装置の小型化により、光配線の活躍する機会が高まっている。すでに光配線の高密度化が進み、従来の光コネクタでは装置のフロントパネルへのアクセスに対応できない状況になりつつある。現在では装置内でも光配線が想定されチップ間接続も光化が進んでいる。チップへの接続を想定した場合、光コネクタでの接続は非現実的なサイズであり、複数チャンネル同時接続を想定した場合には光ファイバテープ心線ですら小型化阻害の要因になりつつある。本稿では1本の光ファイバに複数のコアを持つマルチコアファイバを用いた高密度配線技術を紹介し、高集積デバイスとの直接接続の指針について議論を行う。

我々はシリコンフォトニクスチップを基板に内蔵し、ポリマーミラーとポリマー光導波路を用いたCo-package opticsであるアクティブオプティカルパッケージ（AOP : Active Optical Package）の技術検討をすすめている。本報告ではAOPの特徴と最新成果に関して報告する。

データトラフィックの増加は続いており，送受信素子の高速化・低消費電力化・低コスト化への要求は，ますます厳しくなってきている。低コスト化に向けては異なる機能の光部品を一体集積してアセンブリコストを削減することが重要といわれている。一方で，光デバイスは求められる性能に対して，使用する材料が異なるため一体集積が困難という課題があった。このような背景のもとでシリコンフォトニクス技術は，光集積回路の基盤技術として期待されている。今後は，トラフィックの増大から光インターコネクションの短距離化が期待されていることから多数のレーザ素子の集積や高効率な小型光変調器の集積が必須になってくると考えられる。このような課題認識から筆者のグループではInP系メンブレンデバイスとSiフォトニクスデバイスの異種材料集積について検討を進めている。

シリコンフォトニクスを用いた光トランシーバーの更なる高速化・高密度化・低消費電力化が強く求められている．しかし，自由キャリア効果を用いたシリコン光変調器は変調効率・動作速度・挿入損失に関する性能トレードオフがあり，高性能化の妨げとなっている．このことから，シリコン・プラットフォーム上に 様々な材料を集積してシリコン光変調器の限界を打破する研究が活発に進められている．
我々は，III-V族半導体薄膜をシリコン・プラットフォーム上に集積した光集積回路や光変調器応用の研究を進めている．本講演では我々の光変調器に関する最近の取り組みについて紹介する．

光インターコネクトにおいて、その通信速度を決定づけるデバイスが光変調器であり、Beyond 5Gにおける高速化•大容量化•低消費電力化の要求を満たすには光変調器の高速化、低消費電力化、小型化が重要である．有機EOポリマの高速性、低消費電力性とSiの小型、集積性を融合した、Silicon Organic Hybrid（SOH）光変調器が注目されている．講演では、SOH光変調器の実用化に向けて、Oバンドでの動作や耐熱性、耐光性などに対する最新の研究について紹介する．

誘電体メタサーフェスは損失がなく波長より薄い構造で光を制御できる新しい光学素子として期待されている。本講演では単結晶シリコンを高屈折率誘電体として用いたシリコンメタサーフェスによる光と熱の制御についての最近の研究成果を紹介する。