本講演では，誤り行動を行うユーザが存在する場合の受付制御方式を紹介する．誤りをともなうユーザの行動は確率的進化ゲーム理論によってモデル化される．本研究では，得られた長期安定戦略の分布を定常状態におけるトラヒックパラメータと関係性を持たせることで，受付制御における制御パラメータである最適な閾値を導出する．さらに，その特性を数値計算により解析する．

参加者が一般的な有向／無向グラフにより連結されている場合において，ブロードキャスト型を含む一般的な確率的合意形成アルゴリズムで合意形成を行った際の，合意結果の確率的な性質について考察する．特に，完全グラフ上でのブロードキャスト型アルゴリズムによる合意結果の性質（例えば，各参加者の初期意見がコーシー分布に従って分布する場合，合意結果も初期意見と同じコーシー分布に従う）の多くが，一般的なグラフ上での確率的合意形成アルゴリズムによる合意結果に引き継がれていることなどを理論的，ないしは数値的に示す．

本発表では、ソーシャルネットワーク上での情報流通に関する基礎的かつ重要な研究課題である、情報拡散規模を最大化するための影響最大化、および情報拡散規模を最小化するためのリンク削除の研究を紹介する。まずどちらの研究にも共通して用いられる、情報拡散の基本的なモデルを紹介する。さらに、影響最大化問題とリンク削除問題それぞれに対する典型的な解法を紹介する。最後に、これらの2つの問題に対する解法の有効性を、ソーシャルメディア上の情報拡散の実データを用いて評価した結果についても報告する。

複雑ネットワーク科学において行き戻りはバックトラックと呼ばれる．近年，バックトラックを未然に防ぐことで効果的なネットワーク解析が可能となることが様々な事例を通じて明らかとなりつつある．このようなネットワーク解析について，本講演では酔歩，伝播，中心性を例にとって説明する．また，バックトラックを排除したネットワーク解析を行う際に便利な道具である非バックトラック行列を紹介する．

量子ウォークは、通常のランダムウォークの量子力学版と見なすことのできるグラフ（ネットワーク）上のプロセスである。あるいは、物理量の２乗でエネルギーが定まるグラフ（ネットワーク）上のプロセス（保存系）の、エネルギーの分布を記述するモデルの一つと考えても良いかもしれない。本講演では、量子ウォークの基本的な性質を紹介し、量子探索への応用やその他の諸過程との関係を議論したい。

ネットワーク上の各種ダイナミクス（拡散方程式，連続時間マルコフ連鎖，波動方程式など）を考える際に，ネットワークの構造を反映した行列と各ノードの状態を表すベクトルからなる微分方程式を扱うことが多い．本稿ではこのタイプの微分方程式に対して，ネットワーク構造が僅かに変化した場合の状態ベクトルの変化を取り扱うための摂動論を解説する．特にラプラス変換とレゾルベントを用いて，多重の畳込み積分を実行することなしに，摂動展開を計算する方法を解説する．