プログラム
format_list_bulletedエレクトロニクスソサイエティ
一般セッション
- この目次は,インターネット講演申込登録のデータを元に作成されています。
- また,講演者を○,◎印で示し, ◎印は本会「学術奨励賞受賞候補者」の資格対象であることを示します。
- ○,◎の後ろに△がある場合はキャリアエクスプローラーの掲載を希望しています。
C-1. 電磁界理論
9月10日 9:30〜11:30 B棟 1F B108講義室 座長 平山浩一(北見工大)
C-1-1 |
軸対称多層誘電体の散乱特性を用いた円筒プラズマの電子密度分布推定に関する一検討
○末延 博・田中 泰・瀧川道生・米田尚史(三菱電機) |
C-1-2 |
導電性平板導波路における表面電磁波・プラズモンモードの固有電磁界特性
○宮崎保光(愛知数理工科研) |
C-1-3 |
Fundamental Study of Plasmonic Waveguide Array for Realizing Quantum Walk
○Di Wu・Shuichiro Inoue・Shinichiro Ohnuki(Nihon Univ.) |
C-1-4 |
Analysis of Electromagnetic Field Combined with Magnetization Dynamics -Acceleration Using Multiscale Modeling-
◎Takumi Yasuda・Kazuyuki Tanaka・Seiya Kishimoto・Shinichiro Ohnuki(Nihon Univ.) |
軸対称に分布するプラズマ(円筒プラズマ)の電子密度分布を推定する方法について検討する.プラズマはアンテナ等への応用が検討されているが,その電気特性を詳細に解析するためにはプラズマの電子密度分布を知る必要がある.本稿では,軸対称多層誘電体によって円筒プラズマをモデル化し,その電磁波散乱特性を用いて電子密度分布を推定する.FDTD法による計算結果を模擬測定値とした推定シミュレーションを行ったところ,模擬測定値を計算した際の分布が再現された.この結果より,本推定方法の有効性を確認した.
導電性線路の伝送波は、電磁表面波であり、直流からミリ波、さらに光波の広い領域の電磁界伝送の基本である。金属による導電性線路特性は、電流、電磁界伝送の基本課題である。ここでは、導電性導波路における自由電子流によって構成される直流からミリ波での表面電磁波、および自由電子流と束縛電子によって構成されるプラズモンのモードについての固有電磁界特性を示す。さらに、導電性導波路のGreen関数の基本を論じる。Green関数は複雑な形状の導電性導波路の電磁界問題の解明に重要である。
ここでは、導電性導波路の基本問題を、2次元構造の導電性平板導波路、導体平板線路について固有電磁界特性およびGreen関数について検討する。
Quantum walk simulates quantum mechanical behaviors of particles which shows the completely difference properties to classical random walk. The theory testing of quantum walk has been developing since 2010 for applying quantum information processing. In this paper, electromagnetic field on the plasmonic waveguide array (PWA) using metallic nano slabs for realizing quantum walk are classically simulated by the finite-difference complex-frequency-domain (FDCFD) method [2]. The availability of PWA for quantum walk will be investigated and discussed.
Multiphysics simulation of electromagnetic field and magnetization dynamics is indispensable in the analysis of electromagnetic field with magnetic materials. The FDTD (FiniteDifference Time-Domain) scheme discretizes Maxwell’s equation and LLG (Landau-Lifshitz-Gilbert) equation. In the conventional FDTD scheme, the computational time increases using finer discretization for more accurate simulation. In this report, we study high-speed coupled analysis of magnetization dynamics and electromagnetic field using multiscale modeling.
休 憩(10:45 再開) 座長 出口博之(同志社大)
C-1-5 |
マイクロストリップ線路の端部における反射・放射の過渡電磁界特性
○ラカパン バラスブラマニアン(シンクレイヤ)・宮崎保光(愛知数理工科研) |
C-1-6 |
FDFD法を用いた金属円柱列の電磁界特性解析~非局所効果を考慮した解析モデルの場合~
◎安藤雄喜・呉 迪(日大)・山口隆志(都産技研)・大貫進一郎(日大) |
C-1-7 |
2次元スラブ導波路解析のためのモードの直交性を用いた境界積分方程式
○田中雅宏(岐阜大) |
有限長マイクロストリップ線路の電磁界問題については、これまでLaplace方程式とMaxwell方程式のFDTD数値解析法を用いて線路の伝搬特性を明らかにしてきた。また、有限長のマイクロストリップの端部における反射・放射の過渡電磁界特性を検討してきた。本論文では、FDTD解析を用いてアンテナ素子に関係するマイクロストリップ線路の端面の形状を変更した時の電界成分について反射・放射特性の比較検討を行いその詳細を論じる。
近年,微小金属の解析モデルにおいて非局所効果を考慮したHydrodynamic Drudeモデル[1-3]が注目されている.
本報告では微小金属円柱の電磁界伝搬を,Hydrodynamic Drudeモデルと従来の微小金属解析モデルであるDrudeモデルを用いて解析し,比較検討を行う.
我々はこれまでに,2次元スラブ導波路を解析するための境界積分方程式を提案した.
そこでは,導波モードの反射係数および透過係数を求めるために,境界積分方程式の漸近近似を用いた.
本報告では,新手法として,導波モードの反射係数および透過係数を求めるために,モードの直交性を用いた境界積分方程式を提案する.
モードの直交性は,導波モードと非導波モードとの内積に適用する.
C-2. マイクロ波A(マイクロ波・ミリ波能動デバイス)
9月10日 9:00〜11:45 C棟 3F C302講義室 座長 高野恭弥(東京理科大)
C-2-1 |
スプリアス抑制回路を用いた高効率ドハティ増幅器
◎髙木裕貴・長谷川直輝・太田喜元(ソフトバンク)・石川 亮・本城和彦(電通大) |
C-2-2 |
高PAPR信号用2入力Doherty-Outphasing増幅器
◎ホーン トーマス・山岡敦志・山口恵一(東芝) |
C-2-3 |
3.5GHz帯逆E級増幅器に向けた多機能CRLH線路スタブの検討
◎浅見紘考・田中愼一(芝浦工大) |
C-2-4 |
周波数周期性を有する負荷変調回路を備えた1.4-4.8GHz帯デジタル制御超広帯域増幅器
○小松崎優治(三菱電機)・馬 瑞・Mouhacine Benosman・永井幸政(Mitsubishi Electric Research Labs.)・坂田修一・中谷圭吾・新庄真太郎(三菱電機) |
C-2-5 |
バンドパスフィルタ構造を有する分布型増幅器を用いたS-X 帯分布型-リアクティブ整合型2 段GaN MMIC HPA
◎神岡 純・半谷政毅・三輪真一・加茂宣卓・新庄真太郎(三菱電機) |
近年の無線機の多様化に対応するため,ハイパワーアンプ(HPA)ではより小型で高効率なものが求められている.HPAを高効率動作させるためにはトランジスタを非線形領域で動作させる必要があるため高調波が生じる.一方,このような不要放射は電波法により制限されており,スプリアス規定を順守するため,HPAと送信アンテナの間にスプリアス抑圧フィルタを接続し,部品点数が増加して回路サイズが大きくなるという問題がある.またバックオフ領域での高効率化が期待できるドハティアンプでは負荷変調回路や負荷変調でのインピーダンス値を調節する回路(以下,インピーダンス変換回路と呼ぶ)にλ/4インバータを用いるため同様に回路サイズが大きくなるという問題がある.本研究では,インピーダンス変換回路に2次3次高調波を同時に短絡する回路を用いてスプリアス抑制をし,更にλ/4よりも短縮することを実現した.
通信速度の向上に伴い変調多値数が増加し、EVM(Error Vector Magnitude)の制約から高PAPR信号の利用が進むと想定される。しかし、2段Doherty増幅器やOutphasing増幅器を単独で用いた場合、変調信号下の動作効率を決定する12dB以上のバックオフ域で高効率動作を実現するのは困難である。これまでの報告から、CW信号で60%以上の高効率動作が維持できる現実的なバックオフ範囲は約11dBである。
そこで、携帯基地局向けに高PAPR信号でも高い電力効率を実現する増幅器として、Doherty増幅器とOutphasing増幅器を組み合わせた2入力型のDoherty-Outphasing増幅器の動作解析と試作評価を行ったので報告する。
次世代無線通信システムのDoherty増幅器に搭載するユニット増幅器において高周波化、小型化、高効率化を同時に進めることが急務となっている。これまで超小型のCRLH線路スタブを用いるF級/E級増幅器を報告してきたが、今回、3.5GHzにて高調波処理回路全体の小型化に適した逆E級増幅器の構成を検討したので報告する。
通信量の増大を受け、増幅器にはピーク対平均電力比の大きい信号を高効率に増幅できること、複数バンドに対応し広帯域に動作することが求められている。高効率化を実現する増幅器としてはドハティ増幅器が有用であるが、一般的にその動作は狭帯域となる。今回、並列する2つのトランジスタにそれぞれ適切な振幅・位相を持つ信号を入力することで、周波数に対して周期的に負荷変調のモードが変化する出力回路を備えた、超広帯域なデジタル制御負荷変調増幅器を提案する。測定の結果、トランジスタへの入力信号の制御のみで、増幅器が1.4-4.8GHzの比帯域110%という広帯域にわたり、効率45%以上で動作することが確認できた。
広帯域と高出力を両立する,バンドパスフィルタ構造を有する分布型増幅器を用いたS-X 帯分布型-リアクティブ整合型2 段GaN MMIC HPAを提案し試作および評価を行った..従来の分布型増幅器の等価回路はトランジスタの寄生容量と線路のインダクタンスからなるLC 型ローパスフィルタで
あるが,入力側にハイパスフィルタを装荷しバンドパスフィルタとすることでカットオフ周波数を高くし広帯域化を図った.試作および評価を行った結果,2.5-10.5 GHzにおいて飽和出力電力45.7-47.2 dBm(37.1-52.7 W),電力付加効率 26-39%と,X帯を含む比帯域100%の増幅器として世界最高出力電力・効率を実現した.
休 憩(10:30 再開) 座長 新庄真太郎(三菱電機)
C-2-6 |
広帯域4W級Ka帯 GaNドハティ増幅器
○山口裕太郎・中谷圭吾・半谷政毅・新庄真太郎(三菱電機) |
C-2-7 |
仮想ショートスタブを用いてバックオフ量を拡大した高効率GaNドハティ増幅器
◎本田 慧・坂田修一・小松崎優治・新庄真太郎(三菱電機) |
C-2-8 |
K 帯GaN 電力増幅器の高効率設計手法に関する検討
◎鳥居拓真・半谷政毅・稲垣隆二・新庄真太郎(三菱電機) |
C-2-9 |
広帯域段間整合回路を用いた比帯域15.6% / 出力15W級Ka帯GaN増幅器MMIC
◎中谷圭吾・山口裕太郎・半谷政毅・新庄真太郎(三菱電機) |
C-2-10 |
80-nm InP-HEMTテクノロジによる高出力・高逆方向アイソレーションG帯パワーアンプ
○濱田裕史・堤 卓也・杉山弘樹・野坂秀之(NTT) |
近年,第 5 世代移動通信システム(5G)ではミリ波帯の活用が注目されており,ミリ波帯でのGaN増幅器の適用が検討されている.通信システムにおいて増幅器はバックオフ動作時での高効率動作が要求される.バックオフ動作時での高効率動作可能な増幅器の候補としてドハティ増幅器があり,これまで多数の報告がある[1][2].しかし,ミリ波帯ではトランジスタの出力容量(Cout)の影響が大きくなるため,広帯域で高効率な特性を得ることが難しいという課題がある.本稿では広帯域で高効率な特性を実現するためにCoutをλ/4インピーダンス変成器の一部として設計した4W級Ka帯GaNドハティ増幅器を報告する.
近年の大容量通信に対応するため、移動体通信用基地局に搭載されるドハティ増幅器にはバックオフ量拡大の検討が進められている。ドハティ増幅器のバックオフ量を拡大する手法として、主増幅器と補助増幅器に異なるサイズのトランジスタを用いる非対称ドハティ増幅器が一般的に知られているが、本稿では回路設計にてバックオフ量を制御する手法として、仮想的なショートスタブ(Virtual Short Stub : VSS)を装荷するドハティ増幅器を検討する。試作の結果、同じサイズのトランジスタを用いた場合でも、回路設計にてバックオフ量を制御できる結果が得られたので報告する。
近年、衛星搭載向け電力増幅器においては、出力電力、
耐久性、コストの観点において、GaN(Gallium nitride)電
力増幅器が注目を集めている[1]。GaN 電力増幅器の設計
では衛星搭載としての要求を満たすため、17.7~21GHz 動
作可能な広帯域特性、高効率特性が求められる。そこで、
K 帯向けGaN 電力増幅器の高効率化設計手法に関して検
討をした。本報告では、出力整合回路の設計と、試作した
電力増幅器の評価結果について述べる。
近年,Ka帯はミリ波帯衛星通信システム(SATCOM)や高SHF 帯5Gの周波数帯としても注目されており,Ka帯GaN増幅器の開発が進められている.これまでに高出力電力を実現したKa帯GaN増幅器が報告されているが,CW動作条件にて広帯域特性を実現した報告は少なく,Ka帯における広帯域動作が求められている.本稿では,トランジスタの寄生成分を含めた増幅器の段間回路素子をバンドパスフィルタの回路素子とみなした広帯域段間整合回路を検討し,GaN 増幅器MMICを試作した.試作の結果,CW信号の周波数26.5-31GHz (比帯域15.6%) において飽和出力電力41.9-42.2dBm (15.5-16.6W),電力付加効率16.1-20.3%の良好な結果を得られた.
300 GHz帯高精度なスペクトラム解析系のための150 GHz帯PAを検討し,高線形化のための回路構成と高アイソレーション化のためのモジュール実装構成を提案した.提案技術によって逆方向アイソレーション45 dB以上,OP1dB 8 dBmのPAモジュールを実現した.
9月10日 13:00〜16:00 C棟 3F C302講義室 座長 三谷友彦(京大)
C-2-11 |
準ミリ波帯無線情報電力伝送システム用送電部の特性検討
◎衣川幸汰・西田海都・石崎俊雄(龍谷大) |
C-2-12 |
複数共振モードを用いる広帯域・高感度ダイオード整流器
◎大野 桂・田中愼一(芝浦工大) |
C-2-13 |
時間反転双対原理に基づくFET整流器の2つの動作タイプの比較
◎飯坂尚章・田中愼一(芝浦工大) |
C-2-14 |
GaN HEMTを用いた5.8GHz帯 HySIC整流回路の検討
○薮田直人(上智大)・岸川諒子(総研大)・内海 淳(三菱重工作機械)・中岡俊裕(上智大)・伊藤龍男(カリフォルニア大ロサンゼルス校)・正光義則・川崎繁男(JAXA) |
C-2-15 |
直接整合による2.4GHz 帯高感度レクテナ
○伊東健治・坂井尚貴・土本隼也・野口啓介・井田次郎(金沢工大) |
近年、準ミリ波帯無線で情報と電力を同時に伝送するWiCoPT(Wireless Communication and Power Transmission)システムの研究が進められている。準ミリ波帯は直進性が強いため、ビームフォーミングで送電エリアを絞り込み,スポット的に高効率送電が可能である。本研究では、バッテリーレスセンサ端末への電力伝送を想定し、デモシステムで使用する電力伝送用の送電部の特性検討を行った。
我々はRF エネルギーハーベスティングへの応用に向けて、ダイオード寄生容量と外部コイルとの共振を利用して高感度を実現する整流器を提案してきた。今回、異なる周波数で共振する直列コイル装荷ダイオードを複数用いる手法を検討した結果、地上デジタルTVの周波数帯をほぼカバーする微弱電波の整流動作を確認したので報告する。
無線技術の進展に伴い年々高度化する増幅器の素子/回路技術を活用できるFET整流器に注目が集まっている。FET整流器は増幅器と時間反転双対の関係にあるが、その設計手法の確立は継続的な課題として検討されている。今回、時間反転双対原理に基づくFET整流器の2つの動作タイプについて考察したので報告する。
マイクロ波を用いた宇宙機内のオールワイヤレス化に向け、小型・軽量かつ高性能なデバイスが必要となる。この実現に向け、我々はHySICという技術を用いている。HySICとは混成半導体集積回路(Hybrid Semiconductor Integrated Circuit)を意味する。集積化が容易なSiと高性能な化合物半導体を1つの基板に集約し新しい形のICを作り出す技術である。本研究はダイオードに比べ汎用性のあるGaN HEMTを用いたHySIC整流回路の検討と、更なるデバイスの小型・高性能化に向け、ALD装置の薄膜形成を用いたM-I-Mキャパシタの応用について報告する。
エネルギーハーベスティングでは,微弱な放送電波や通信波から直流電力を取り出す検討が行われている.ここでは直接整合による2.4GHz 帯高感度レクテナを報告する.
休 憩(14:30 再開) 座長 佐藤 優(富士通研)
C-2-16 |
微小ループアンテナを用いる920MHz帯高感度レクテナ
◎辻田真一郎・坂井尚貴・伊東健治・土本隼也(金沢工大) |
C-2-17 |
nW級 1MHz帯レクテナ
○安丸暢彦・伊東健治・土本隼也・坂井尚貴・井田次郎(金沢工大) |
C-2-18 |
直接整合による2.4GHz帯高効率レクテナの検討
◎廣野敦哉・伊東健治・坂井尚貴(金沢工大) |
C-2-19 |
双ループアンテナを用いる920MHz帯微弱電力レクテナ
◎坂下尚伍・伊東健治・坂井尚貴(金沢工大) |
C-2-20 |
FETを持つ直列帰還形発振器を用いたマイクロ波-直流相互変換
◎西川侑希・佐薙 稔(岡山大) |
C-2-21 |
アクティブ型PPFを搭載したベクトル合成型移相器
○平井暁人・藤原孝信・津留正臣・下沢充弘(三菱電機) |
本報告では-30dBm程度の微弱な電波から高効率に環境発電を行う920MHz帯高感度レクテナについて述べる.微弱な電波によるアンテナ出力での高周波電圧を高めるために,微小ループアンテナと整流器ICの入力端子間の容量を共振させる構成としている.その共振時の抵抗値は整流器ICを駆動する高周波電源の内部インピーダンスであり,最も整流効率が高まるように微小ループアンテナを協調設計している.その結果,標準ダイポールアンテナで受信時に-30dBmとなる電波環境において,920MHz帯においてトップ性能である整流効率25.2%,出力電圧0.35Vが得られている.またレクテナの出力電圧から逆算される微小ループアンテナの利得は0.74dBiであり,理論値1.76dBiには至らないが,実用的な性能を確認している
放送や携帯電話などの電波より直流電圧を取り出すエネルギーハーべスティングの検討が行われている.広範なサービスエリアをカバーする放送波として1MHz帯のAM放送波がある.筆者らの研究グループではAM放送波によるレクテナの検討を行っており,共振インピーダンス39kΩのスパイラルループアンテナにより9.4%@-41dBmの性能を得ている.ここでは更に低電力での動作をねらい,より高い共振インピーダンスループアンテナを設計・試作・評価をしたので報告する.
本報告では直接整合による高効率レクテナについて述べる.まず従来のレクテナの損失分析を行い,整合回路での損失が効率低下の主要因であることを示す.さらに整合回路の損失を抑制するために誘導性折り返しダイポールアンテナとブリッジダイオードを直接整合する構成を提案する.その結果,2.4GHz帯において80.9%@27dBmの性能を得ている.Si-SBDを用いる2.4GHzレクテナとしてトップ性能である.
本報告では双ループアンテナを用いる920MHz帯微弱電力レクテナについて述べる.双ループアンテナは整流回路への給電点に2つのループアンテナを並列接続し,微小ループアンテナと同じインダクタンスを実現する構成である.微小ループアンテナと比較し約4倍のループ長を有する.この双ループアンテナを用いるレクテナでは,微小ループアンテナを用いるレクテナ同様,高い共振インピーダンスによる高整流効率が得られる.さらに,アンテナの大形化により,高い指向性利得が得られ,さらなる高効率化が期待できる.双ループアンテナを用いるレクテナの設計,試作結果を示す.
FETを持つ直列帰還形発振器を用いて9GHzのマイクロ波と直流との相互変換の実験を行った.マイクロ波-直流変換においてマイクロ波入力への反射が最小となるように発振器を設計した.試作した発振器を用いた実験により直流-マイクロ波変換では35%の効率を,マイクロ波-直流変換では45%の効率を得た.
APAA(Active phased array antenna)では,ビーム方向の制御に移相器が用いられており,回路面積の観点からベクトル加算型移相器が用いられることが多い.従来のベクトル加算型移相器では,直交信号生成に受動素子が用いられるため,通過損失や製造後のばらつきに対し調整が難しい.ここでは,IQ生成にアクティブ型のPPF(Poly phase filter)を適用し,PPFに用いたトランジスタのトランスコンダクタンスの調整することで移相器の移相誤差を低減した結果を報告する.
C-2. マイクロ波B(マイクロ波・ミリ波受動デバイス)
9月10日 13:00〜17:00 C棟 3F C301講義室 座長 河合 正(兵庫県立大)
C-2-22 |
マイクロストリップ線路と平行二線路接続用バランの評価方法に関する検討
◎大島一斗・須賀良介(青学大)・上野伴希(オフィスウワノ)・橋本 修(青学大) |
C-2-23 |
栓抜形スタブ装荷スルーホールレス導波管-マイクロストリップ線路変換器の不要放射低減に関する検討
◎上田 凌・牛嶋 優・石橋秀則・高橋 徹・丸山貴史・宇田川重雄(三菱電機) |
C-2-24 |
帯域阻止フィルタ機能を有するミリ波帯垂直給電部の検討
○安部素実・高橋智宏・大塚昌孝・高橋 徹・米田尚史(三菱電機) |
C-2-25 |
積層造形技術を適用したK帯無反射終端器に関する検討
○牛嶋 優・湯川秀憲・高橋 徹・米田尚史(三菱電機) |
C-2-26 |
2本の分岐端子を短絡端に対し45度傾けて接続したT分岐形OMTの検討
○湯川秀憲・牛嶋 優・高橋 徹・米田尚史・宮崎守泰(三菱電機) |
近年,無線通信機器の急速な発展に伴い,小型かつ単純な構造のバランが要求されている.
本研究では,マイクロストリップ線路と平行二線路を接続するためのバランを正しく評価する構造について検討した.
導波管(WG)-マイクロストリップ線路(MSL)変換器において,低コスト化のためにスルーホールレスが要求されている.スルーホールレス化した際に,導波管開口部からの不要放射が問題となる.これまでに,多段のインピーダンス変成器を用いた構成をとり,変成器の放射位相を制御して不要放射を低減した構造が報告されているが,MSL 側が2 出力となる制約がある.そのためこれまでに,MSL 側が1出力で抜形スタブを装荷したスルーホールレスのWG-MSL 変換器を提案し,不要放射が低減できることを示した.本稿ではこの変換器を改良し,更に不要放射を低減した変換器について報告する.
これまでに、薄型アンテナによく適用される、アンテナ
素子と高周波IC の表裏を接続する多層基板垂直給電部に
おいて、電気長90 度の垂直給電部にフィルタ機能を持た
せる検討を行い良好な特性を得られたので報告している。
ここでは、ミリ波帯において電気長90 度以上となる
当該垂直給電部にフィルタ機能を持たせる検討を行い、
良好な特性を得られたので報告する。
近年,衛星メーカは低コスト化や軽量化に向けて,積層造形技術(AMT:Additive Manufacturing Technology)を積極的に活用し,アンテナや導波管の給電回路を金属3Dプリンタで製造したものを衛星へ搭載しようと試みている.しかし,金属3Dプリンタで複数のコンポーネントを一体成形する場合,異種材料(例えば,電波吸収体)を製造途中で挿入することができないという問題がある.そのため,吸収体を必要とする無反射終端器までも一体成形することが困難であった.本稿では,複数の導波管コンポーネントの一体成形に有効な新たな無反射終端器を考案したので報告する
同一の周波数帯の直交するふたつの偏波を分離する偏波分離回路のひとつとしてT分岐形OMT(Ortho-Mode-Transducer)が知られている。2本の分岐端子を短絡端近傍に「T分岐」状に配置することで軸長を短くできる利点があるが、偏波を分離するためには各分岐端子の広壁面の向きは直交させる必要がある。このため、各分岐端子の周波数特性は異なるものとなり、広帯域化が難しいという問題があった。ここでは、本問題を解決するため、2本の分岐端子を短絡端に対し45度傾けて接続したT分岐形OMTについて検討したので報告する。
休 憩(14:30 再開) 座長 石橋秀則(三菱電機)
C-2-27 |
結合線路を用いた高耐電力な電力合成回路の設計結果
○青山裕之・大島 毅・湯川秀憲・高橋 徹・米田尚史(三菱電機) |
C-2-28 |
放射光直接エッチングによるPTFE基板集積導波管カプラの試作
○岸原充佳(岡山県立大)・竹内雅耶・山口明啓・内海裕一・太田 勲(兵庫県立大) |
C-2-29 |
任意分配3周波整合ウィルキンソン電力分配器の設計
◎長野健介・河合 正・榎原 晃(兵庫県立大) |
C-2-30 |
終端開放結合線路を用いた任意電力分配比のX帯広帯域ブランチラインカプラ
◎羽岡侑哉・河合 正・榎原 晃(兵庫県立大) |
C-2-31 |
並列容量と位相反転構造を用いたユニプレーナ型小型ラットレース回路
○中井良輔・長野健介・羽岡悠哉・河合 正・榎原 晃(兵庫県立大) |
高周波帯の電力を合成する回路として,しばしばGysel電力合成回路及びブランチラインカプラ,ラットレースカプラなどの終端抵抗を用いた回路が用いられている.しかし,これらの回路は所望の振幅・位相で励振した場合であっても中心周波数以外では終端抵抗で損失が生じるため,帯域内での電力合成効率が劣化し,また,終端抵抗での発熱により回路の耐電力が低下する.
このような課題に対し,筆者らは結合線路を用いた高耐電力な電力合成回路を提案している.本稿では,前記電力合成回路について電磁界解析により設計し,また,先行研究との比較検討を行ったので報告する.
放射光直接エッチングによりPTFE(テフロン)の直接加工を行い,表面に金属を蒸着させることで導波管構造を形成するプロセスが報告されている.本研究では,本プロセスをPTFE基板集積導波管の製作へ適用し,Q帯にて十字交差形3dBカプラを試作したので報告している.試作カプラのSパラメータの周波数特性をVNAで測定し,良好な特性が得られることを確認している.
近年,IoTや無線LAN(Wi-Fi,Wi-SUN)などの通信機器の急速な開発に伴い,無線機器数が飛躍的に増大している.それに伴い各種マイクロ波デバイスでは,コストの低減や高性能化が求められる.筆者らは各種デバイスの中で信号の分配/合成等に用いられるウィルキンソン電力分配器に注目している.これまでにその小型設計法の提案[1]を行っているが,本報告では更なるマルチバンド/広帯域化を目指し複数のLCはしご形回路を用いることで任意分配が可能な3周波整合の集中定数型の分配器について検討している.
次世代移動体通信システム(5G)など通信の高速,大容量化が進むなか,通信システムを構成する各種デバイスにも高性能化が求められている.本報告ではマイクロ波信号の分配/合成のみならず,バランス型増幅器,移相器などに用いられるブランチラインカプラ(以後,BLCとする.)を取り上げている.筆者らは既にSバンドで終端開放結合線路を外部整合回路に用いた任意電力分配比の BLCを報告しているが,ここでは,X帯で電力分配比R=1〜5程度のBLCを設計し電磁界解析でその有効性を確認している.
ラットレース回路は信号を同相/逆相に分配する素子としてよく用いられるが,全リング長が3/2波長の原型回路ではその回路サイズが問題となる.また,その動作帯域を制限する要因の1つとして3/4波長線路部の半波長線路を位相反転器としていることが上げられる.これらの問題を解決する小型,広帯域な回路構成法として,伝送線路の両端にキャパシタを装荷,また,クロスオーバー構造で位相反転器を実現するユニプレーナ型ラットレース回路を取り扱い,設計周波数2.45GHzにおいて回路面積を従来回路の約1/5程度に小型化できることを示した.本報告では,リング線路長を短くして更なる小型化を目指し,電磁界解析によりその有効性を明らかにしている.
休 憩(16:00 再開) 座長 池内裕章(東芝)
C-2-32 |
電磁界シールド表面実装型サーキュレータの検討
○石橋秀則・安藤晃洋・上田哲也・高橋 徹・米田尚史・宮崎守泰(三菱電機) |
C-2-33 |
相補型多層シールドパターンの基板遮蔽効果によるプレーナー型インダクタのQ値改善
○杣田一郎・堤 恒次・森 一富・津留正臣(三菱電機) |
C-2-34 |
プラズマ可変キャパシタの静電容量可変性と低損失化に関する検討
○西岡 宗・山浦真悟・西本研悟・西岡泰弘・米田尚史(三菱電機) |
C-2-35 |
MOSFETリレーによるSP-PS構成無線電力伝送の効率最適化
◎居城貴良・保谷駿介・柴田随道(東京都市大) |
サーキュレータは,入力信号と出力信号を分離することが可能なデバイスであり,アンテナ送受信機において,送受信アンテナの一体化を可能にする.近年,アンテナ送受信機に用いられるサーキュレータは,表面実装するものが提案されている.しかし,このサーキュレータは,基板からの不要放射や,永久磁石が周囲の金属に引き寄せられるため,組み立て時の取り扱いに課題がある.そこで,静磁界と高周波電磁界のシールドを両立する表面実装サーキュレータについて,直流磁界高周波電磁界連成解析を用いて検討したところ通過損失が0.5dB以下となる良好な特性を確認した.
半導体集積回路上に形成されるプレーナー型インダクタのQ値改善を目的とした渦電流を解消するためのシールドパターンはこれまでに多数報告されている.一般的にシールドパターンは最も基板に近い配線層のみを用いて形成されている.しかし,単層のシールドパターンでは基板が覗いており,磁力線が基板へ漏れこみ基板内での損失が発生する.そこで本稿では複数層の配線層を用い,相補的な形状となるシールドパターンを重ねた基板遮蔽構造を提案する.
近年,プラズマの誘電率可変性を利用したプラズマ可変キャパシタが提案されている.本キャパシタは高い耐電力性が期待されているが,従来の可変キャパシタと比較してオーム損が大きい,という問題がある.本研究では,プラズマ可変キャパシタの等価回路モデルを用いて,静電容量可変性と低損失性を両立する指針を検討した.プラズマ可変キャパシタの可変パラメータとしてプラズマ角周波数および電子-中性粒子間の衝突周波数に着目したところ.両者の値を小さくとることで低損失かつ良好な静電容量可変性を有するプラズマ可変キャパシタを実現できる可能性を示した.
磁界共鳴無線電力伝送は,室内空間程度の距離を隔てた端末や装置への電力供給手段として有望である.筆者らは昨年のソサイェティ大会でSP-PS構成磁界共鳴回路を用い,容量比を変えることで電力伝送の効率を最適化できることを示した.今回は,SP-PS回路の自動制御に向けてスイッチとしてMOSFETリレーを用いた回路の効率評価を行った結果を示す.
9月11日 9:00〜11:30 C棟 3F C302講義室 座長 上田哲也(京都工繊大)
C-2-36 |
軸対称メタ表面によるエバネセント波の生成と2次元サブ波長解像
◎奥村悠希・真田篤志(阪大) |
C-2-37 |
変換電磁気学のための擬等角座標変換について
○河野竹伸・真田篤志(阪大) |
C-2-38 |
ミリ波帯フォトニック結晶ディラックコーンと異常透過特性について
◎上林大悟・真田篤志(阪大) |
C-2-39 |
巨大な2 軸異方性を持つ人工結晶のミリ波帯内部円錐屈折
◎飯田倖平・真田篤志(阪大)・澤田 桂(理研)・冨澤宏光(高輝度光科学研究センター) |
C-2-40 |
誘電体共振器と金属細線からなる3次元カイラルメタマテリアル
◎山口拓也・上田哲也(京都工繊大)・伊藤龍男(カリフォルニア大ロサンゼルス校) |
本稿では2次元サブ波長解像を実現する軸対称メタ表面を設計し, フレネル回折シミュレーションによってその妥当性を確認した. 周波数2.45 GHz, 半値幅λ0/10, 結像距離λ0/10の1スポット像を解像するためのメタ表面上の電磁界分布を算出した. フレネル・キルヒホッフの回折積分により, 得られたメタ表面上の電界分布から結像面上の電界分布をシミュレーションし, 理論値とほぼ一致するサブ波長解像となることを確認した. またこの像の半値幅は, エバネセント増強されていないスリットによる回折像と比較すると, 45%狭いことを確認した.
本稿では変換電磁気学に基づく座標変換の媒質的解釈における非対角項を低減する方法を提案した.座標変換のための媒質パラメータの非対角項は座標軸が直交する場合に0となることから,ラプラス方程式にディリクレ及びノイマン境界条件を与え,数値的に解析することによって得られる擬等角写像に基づいた座標変換を提案し,提案した方法により非対角項の低減を確認するとともに, 散乱シミュレーションにより非対角項を無視してもクローキング性能の劣化が小さいことを確認した.
本研究では, 高周波での実現が可能であるフォトニック結晶を用いてブライトモードによるディラックコーンを設計し, 60 GHzにディラックポイントを持つ非エルミートフォトニックディラックコーンの実験的観測に成功した. また, ディラックコーンフォトニック結晶による再放射波の劇的な狭ビーム化を実現した.
2軸性結晶中で光学軸と平行な波数をもつ光は円錐状に伝搬することが知られている. この現象は内部円錐屈折と呼ばれている. 1832年に太陽光で観測されてから, 数学ではクンマー曲面と呼ばれる4次曲面の研究の発端となるなど, 基礎科学として重要な現象の1つである. 天然の結晶の異方性は非常に小さく, 今までの観測例は可視光のみで, 電波領域では観測されたことは無かった. 本研究では, 実効誘電率テンソルが60 GHzにおいて巨大な2軸異方性を持つ人工結晶を作製した. その結晶に直線偏波の電磁波を, 偏波方向を変化させて入射し, 上面の近傍電界分布を測定した. 偏波ごとに異なる電界分布を得, 60 GHz帯での円錐屈折の実験的観測に初めて成功した.
負の屈折率を利用した高分解能レンズやクローキング技術,光学活性を利用した偏波選択・偏波操作性のあるレドーム,レンズ等の応用を目指して,3次元カイラルメタマテリアルの研究が行なわれている.
本研究では,誘電体共振器と金属細線から構成され,自由空間とインピーダンス整合の取れた3次元カイラルメタマテリアル構造を提案する.電磁界シミュレーションにより提案構造の偏波回転特性および反射・透過特性を調べた結果,小さい反射損失で入射直線偏波が回転することを確認した.
休 憩(10:30 再開) 座長 堀井康史(関西大)
C-2-41 |
2層分布イミッタンス型円筒マントルクローク
◎西澤崇哉・真田篤志(阪大) |
C-2-42 |
デュアルバンド非相反CRLH 線路における非相反性の分散制御
○金田拓海・上田哲也(京都工繊大)・伊藤龍男(カリフォルニア大ロサンゼルス校) |
C-2-43 |
擬似表面プラズモンの負透磁率特性を用いた非相反右手/左手系複合伝送線路
○岡本浩司・上田哲也(京都工繊大)・伊藤龍男(カリフォルニア大ロサンゼルス校) |
C-2-44 |
非相反メタマテリアルの分散制御による方向性結合器広帯域化の実証
◎山上航平・上田哲也(京都工繊大)・伊藤龍男(カリフォルニア大ロサンゼルス校) |
本研究では,周方向に分布を持たせた分布イミッタンス型の2層マントルクロークを提案する.本マントルクロークに対して原理的に完全な散乱抑制が可能となるように周方向に分布を持たせたイミッタンスを解析的に求めた.さらに従来の1層のマントルクロークよりも散乱抑制性能が向上することを電磁界シミュレーションにより確認した.
非相反CRLHメタマテリアルからなる擬似進行波共振器を用いた,小型で高効率な漏れ波ビーム走査アンテナが検討されている.このアンテナは,非相反性の周波数分散設計によりビームスクイント低減化が可能である.しかしながら,これまでの研究では,単一周波動作しか考慮されていなかった.一方,無線通信システムにおいては,アンテナの多周波化が望まれている.本研究では,二周波動作可能なビーム走査アンテナのビームスクイント低減化を目的として,二周波に亘り非相反性の周波数分散がほぼゼロの非相反CRLH線路を提案する.
非相反右手/左手系複合伝送線路は高効率漏れ波アンテナへの応用が期待されているが,非相反性が十分に得られなかったため,垂直磁化フェライト基板マイクロストリップ線路の片側にのみコルゲーション構造を取り入れることで擬似表面プラズモンに似たモードを伝搬させ非相反性の増大を図った.本稿ではこのコルゲーション構造は特定の周波数で負の実効透磁率を示すことを用いて,新たな非相反右手/左手系複合伝送線路の構造を提案した.数値計算より得られた分散曲線及び電磁界分布から右手/左手系複合伝送線路としての動作を確認した.
電磁波の群速度と位相速度が同方向に伝搬する右手系(RH)モードと,反平行に伝搬する左手系(LH)モードを利用した方向性結合器として,マイクロストリップ線路と右手/左手系複合(CRLH)線路からなる非対称方向性結合器があり,広帯域かつ蜜結合の双方を達成している.最近,垂直磁化フェライトを用いた非相反CRLHメタマテリアルの分散制御を用いて,同結合器の広帯域化が提案されている.本稿では,外部印加直流磁界により,非相反CRLHメタマテリアルの周波数分散を適切に制御することで,結合器の動作帯域幅が増大することを実験的に確認した.
9月11日 13:00〜17:00 C棟 3F C302講義室 座長 清水隆志(宇都宮大)
C-2-45 |
2帯域阻止形周波数選択面(FSS)の設計
○九鬼孝夫(国士舘大)・西川尚男・時任静士(山形大) |
C-2-46 |
FSSの帯域幅設計に向けた外部Q値の制御に関する基礎検討
◎橘田康平・須賀良介・橋本 修(青学大) |
C-2-47 |
低導電率半波長共振器を配列した電波吸収体-等価回路と構造の関係式の導出について-
◎松本壮太・須賀良介(青学大)・宮脇 崇・村上千景・丸山太一・安部雅勝・吉村健佑(SUBARU)・橋本 修(青学大) |
C-2-48 |
混成共振モードを利用した120GHz帯近接無線の検討
◎板倉弘一郎・枚田明彦(千葉工大)・広川二郎・戸村 崇(東工大)・渡邊一世・関根徳彦・笠松章史(NICT) |
周波数選択面(FSS)は,誘電体基板の上に導体パターン(エレメント)を規則的に配置した構造で,所望の周波数の電波を透過/減衰/反射する高周波帯空間フィルタである.無線LANなどで利用される2.45GHz帯と5.6GHz帯を阻止帯域とするFSSの設計方法を検討した.FSSのエレメント形状をFour-legged Loadedエレメント,エレメント配置を単純正方格子に選び,つぎに電磁界シミュレーションによりエレメント寸法を決定することにより,2つの阻止帯域(2.45GHz帯と5.6GHz帯)をもつFSSを設計できた.
車載用ミリ波帯レーダに用いられるレドームには,高い電波透過性が求められており,周波数選択板(FSS)を用いた透過特性の改善手法が報告されている.しかし,金属のみを用いたFSSの無負荷Q値は高いため,FSSの構造のみによる帯域幅設計は困難である.そこで,本研究ではFSSの帯域幅の設計のための外部Q値の制御を目的とする.
導体板の前面に低導電率素子を配列した電波吸収体が提案されている.同報告ではその薄型化と減衰帯域の広帯域化が示されているが,その具体的な等価回路と構造の関係は明らかにされていない.そこで本研究では,低導電率半波長共振器を配列した電波吸収体の等価回路と構造の関係式について検討した.
テラヘルツ近接無線では一つのシステムが広い帯域を使用するため、システム間の干渉を抑制するためには、不要電波の放射を抑制する必要がある。本研究では、分割リング共振器 (SRR: slot-ring resonator) を使用した電波吸収体を一体集積した導波管スロットアレーアンテナを利用することで、アンテナ単体時はSRR 電波吸収体が不要電波の放射を抑制し、送受信のアンテナ同士を接触させた場合は、接触した部分だけは電波が透過可能となる近接無線通信の実現を目指してる。本稿では、石英基板上にSRR 電波吸収体を試作し、その透過特性をベクトルネットワークアナライザにより評価した。
休 憩(14:15 再開) 座長 真田篤志(阪大)
C-2-49 |
メタサーフェス電波吸収体に基づいた効率的なデジタルノイズの吸収手法の検討
○相原亮哉・若土弘樹(名工大) |
C-2-50 |
低電力波形選択メタサーフェスの数値解析評価
◎谷川瑞紀(名工大)・三治健一郎・池田正和(SOKEN)・安在大祐・若土弘樹(名工大) |
C-2-51 |
線形メタサーフェスによる疑似的な波形選択性
◎中舎朋之(名工大)・Phang Sendy(The Univ. of Nottingham)・若土弘樹(名工大) |
C-2-52 |
マルチバンド波形選択メタサーフェス
◎仁多大輔・若土弘樹(名工大) |
C-2-53 |
波形選択メタサーフェスによる同一周波数電波の伝搬操作
○東浦 陸・牛越大樹・Suhair M. Mahmood(名工大)・Chris Smatt・Christos Christopoulous(The Univ. of Nottingham)・若土弘樹(名工大) |
C-2-54 |
無反射メタ表面によるリニアアレイアンテナのサイドローブ抑制
◎加藤悠人・佘 元峰・黒川 悟(産総研)・真田篤志(阪大) |
多様な電子機器に支えられる現代生活において電磁干渉は重要な問題であり,とりわけ近年は機器の小型・軽量化に伴ってその内部で発生するデジタルノイズの抑制に注目が集まっている.従来,電磁干渉の対策としては広く電波吸収体が利用され,特に周期構造メタサーフェスを用いることで薄型かつ軽量で設計できるようになった.しかしながら,その吸収特性は狭帯域であるため,無視できない高調波成分を含むデジタルノイズを十分に吸収することはできない.そこで,本稿ではメタサーフェス電波吸収体を用いた効率的なデジタルノイズの吸収手法について検討する.
金属の周期構造によって構成される人工材料のメタサーフェスの中でも,波形選択メタサーフェスは同一周波数の異なる電波を波長すなわちパルス幅によって認識し,電磁特性を変えることができる.しかし,従来の波形選択メタサーフェスは無線通信で想定されるような低電力の電波に対して動作することができない.そこで本稿では,一般的なダイオードよりも小さな信号強度で動作できる理想ダイオード回路を導入することで,より低電力下で波形選択性を実現できるメタサーフェスを設計し,解析・評価を行った.
ダイオードなどの非線形回路素子から構成される非線形メタサーフェスは,従来の線形材料の組み合わせからは得られない特性を実現することができる.例えば,近年報告された波形選択メタサーフェスは同一周波数電波を波形(パルス幅)に応じて識別して吸収できる非線形人工材料である.これに対し,非線形素子を使用しない線形メタサーフェスでは同一周波数の異なる電波を識別できないものの,ある条件下において類似の特性を得ることができる.本研究では,この疑似的な波形選択性を示す線形メタサーフェスを数値解析結果とともに紹介する.
メタサーフェスに非線形回路素子ダイオードを含む複数の回路素子を導入した波形選択メタサーフェスは,従来見分けることのできなかった異なる同一周波数電波を波形に基づいて識別することができる.しかしながら,過去報告された波形選択メタサーフェスの動作は一つの周波数帯に限定されていたものの,マルチバンド化を図ることで通信環境の改善に貢献できると考えられる.そこで本研究では,周期構造の一部に回路定数の異なるキャパシタを接続することで,複数の周波数帯において動作するメタサーフェスを開発し,その効果を評価した.
一般に,自然界に存在する材料の入射電波に対する振る舞いは電波の周波数が固定された場合,一定となる.一方,近年開発された波形選択メタサーフェスは同一周波数の異なる電波であっても波形によって吸収・散乱特性を制御できるという特徴を持つ.本研究ではこの波形選択メタサーフェスをアンテナ設計の一部に応用することで電波の伝搬の仕方が異なる3つの領域を持ったサンプルを作成し,その特性を評価した.
船舶レーダー用アンテナでは,サイドローブの抑制は重要な課題である.バッフル板を用いたアレイアンテナでは,開口面の端と中心の位相のずれがサイドローブの生成につながるが,一般にアレイアンテナの設計で開口面全体にわたる位相の制御を行うことは困難である.
本研究では,船舶レーダー用のリニアスロットアレイアンテナに対する,無反射メタ表面を用いたサイドローブ抑制技術を提案する.アンテナの開口面を覆うメタ表面によって,開口面全体にわたる等位相分布が生成され,サイドローブ抑制が達成される.
休 憩(16:00 再開) 座長 古神義則(宇都宮大)
C-2-55 |
導波管2面結合器結合領域断面形状の位相定数条件最適化
◎陳 詩皓・戸村 崇・広川二郎(東工大) |
C-2-56 |
フロケモードに基づくギャップ導波路のモード解析
◎江尻敬祐・戸村 崇・広川二郎(東工大) |
C-2-57 |
T分岐されたコプレーナ線路の伝送特性に関する研究
○ナンチン ナンディントウグス・河野 徹・亀井利久(防衛大) |
C-2-58 |
スミスチャートと多次元の図式解釈
○武田重喜(アンテナ技研)・穴田哲夫・陳 春平(神奈川大) |
従来の導波管2面結合器の結合領域の断面形状では帯域は6.9%である。帯域をさらに広げるため、結合領域内の伝搬モードの位相定数条件により合う形状を遺伝的アルゴリズムにより最適化する。導波管2面結合器において、結合領域内で考慮すべき主なモードはTE10-like、TE20-like、TE/TM11-like、TE/TM21-likeの6つである。これらのモードに対応する位相定数では特定な条件を満足する場合、1/4波長とすればハイブリッド、1/2波長とすれば交差結合器となる。本報告では導波管2面結合器における位相定数条件に近い形状を最適化し、その形状と各モードの伝搬定数を示す。
ギャップ導波路の金属ピンを含む断面形状から得られる断面固有モードは5つ (ピンの数+1) 存在し,モード解析を行う場合に5つの伝搬モードに電力が分配されて伝送特性が把握しにくい.そこで本稿では,断面固有モードではなく進行方向の構造周期性を考慮したフロケモードを使用する.フロケモードは周期的な金属ピン (EBG構造) が発生させる遮断周波数帯域においてTE10-likeモードのみが伝搬モードであるため,ポートを通過する電力を一つの伝搬モードから評価できる.導波路の特性は電力を運ぶ伝搬モードの他に不連続部で発生する高次モードの評価が必要になる.本稿ではフロケモードに基づくモード解析をモード変換器に適応して,高次モードを含めた回路網の特性解析を行う.
筆者らは,液晶装荷移相器[1]によるビーム走査が可能なアダプティブアレーアンテナ実現のため,コプレーナ線路(CPW)給電パッチアレーアンテナを検討している[2].平面アレー化のために,給電の入力ポートを共有する場合,コプレーナ線路を屈曲および分岐させる必要がある.これまで,屈曲について検討しており,屈曲角を適切に選び,ビアホールを装荷することにより,伝送特性が改善することを明らかにしている[3].本稿では,CPWの分岐点で損失を抑制するための構造に関して,電磁界シミュレータ(CST MW STUDIO 2019)を用いて検討した結果を報告する.
回路、システムの特性を解析する手法の一つとしてチャートによる図式解法がある。 代表的な例としてスミスチャートがあり、広くマイクロ波回路の設計解析に活用されている。 しかし、一般にこの種の図式解法は視覚的に把握しやすいが、平面のチャート上での処理となるため、扱う座標あるいは変数が2次元的となる。 より高い次元を扱う場合視覚的、直観的な把握が困難となりやすい。 すでに高度な3次元のスミスチャートによる解析の例も報告されているが、図式解法の特長である直観的な把握の容易さを利用したものとは言えない。 本稿では、解析、解釈を容易にするために、スミスチャートにもう一軸加える図式解解法の例を示す。
9月12日 9:00〜11:30 C棟 3F C302講義室 座長 大平昌敬(埼玉大)
C-2-59 |
インターリーブ型円形アレイアンテナによる28GHz帯4多重OAMモードの直交性
◎北川敬太・真田篤志(阪大)・福田敦史・岡崎浩司・河合邦浩(NTTドコモ) |
C-2-60 |
インターリーブ型マルチOAMモード円形アレイアンテナのビームチルトについて
◎繁田雄大・北川敬太・真田篤志(阪大)・福田敦史・岡崎浩司・河合邦浩(NTTドコモ) |
C-2-61 |
フィルタ技術によるアンテナ素子間相互結合の低減に関する検討
○吉川博道(京セラ) |
C-2-62 |
擬似進行波共振ビーム走査アンテナの主偏波回転制御
◎神野雅喜・上田哲也(京都工繊大) |
C-2-63 |
空間不連続境界を用いた平板レンチキュラーレンズについて
◎高野佑磨・真田篤志(阪大) |
本稿では放射利得差が原理的に無い, 4多重等利得OAMモードを生成するアンテナを設計しその動作を実験的に確認した. シミュレーションにより, 4モードのメインビームのピークゲイン差は2.9 dBであることを確認した. 次に試作したアンテナの電磁界分布を測定し, OAM波の生成を実験的に確認した. さらに, 2個の4多重等利得OAMモードアンテナを用いて伝送実験を行った. 伝送実験では6 dB アイソレーションで3.5 GHzの広帯域なOAM直交性を確認した.
本稿では, アンテナ設置の自由度向上のため, ビームチルトOAM波の生成法を検討した. 8素子円形アレイアンテナのi番目とi + 1番目のアンテナ素子間の位相調整を行い, ±1モードのOAM波を10度方向へのビームチルトを実現するインターリーブ型円形アレイアンテナを単一誘電体基板上に設計・試作した. 電界分布測定及び放射特性測定を行い, OAM波の生成と10度方向へのOAMビームチルト動作を実証した.
マイクロ波・ミリ波帯における通信システムにおいて、省スペース化によりアンテナを近接配置させる状況にあり、アンテナ素子間相互結合の低減が課題となっている。本報告では、HFSSによりアンテナの素子間相互結合があるモデルを作成し、Sパラメータの計算結果に対してフィルタ理論を適用させる。フィルタ調整の技術に基づき、アンテナ間の結合を抑え、さらに減衰極を制御することで素子間相互結合を小さくすることが可能であることを示す。
非相反メタマテリアルからなる擬似進行波共振器を用いることにより,ビーム走査機能と直線偏波の主偏波方向の回転機能を併せ持つアンテナの報告例はあるが、直列共振からの放射と並列共振からの放射の利得差が顕著で,十分な特性が得られていない。本稿では、外部印加磁界によるビーム走査だけでなく,両端反射器のインピーダンスを変えることにより,放射利得をほぼ一定に保ったまま,主偏波方向を任意に設定可能なアンテナを提案する.数値計算結果より、放射ビーム角最大約30°を達成し、かつ直列共振から並列共振へと利得をほぼ一定に保ちながら90°の偏波回転を実現した。
本研究では,変換電磁気学において座標変換の前後で座標が不連続となる空間不連続境界における電磁波の特異な屈折現象を利用した平板レンチキュラーレンズを提案する.基底の傾きが±pの座標系への等積座標変換を交互に並べた系に対して,θ = ±45度で入射した際に2種類の別の底面が観測される平板レンチキュラーレンズの動作を光線追跡法に基づき確認した.
休 憩(10:30 再開) 座長 田村昌也(豊橋技科大)
C-2-64 |
SIR装荷コプレーナ給電平面パッチアレーアンテナの利得の最適化
◎舘林慎一郎・ナンチン ナンディントウグス・河野 徹・亀井利久(防衛大) |
C-2-65 |
2面結合器とコルゲート導波管形移相器を用いた非遠方界2次元直交16多重伝送用ビーム切換回路の設計
◎和田健太郎・戸村 崇・広川二郎(東工大) |
C-2-66 |
66GHz帯16ビーム2次元ビーム切替一体化中空導波管バトラーマトリックスの設計
◎砂口裕希・戸村 崇・広川二郎(東工大) |
C-2-67 |
バトラーマトリクスを適用した局発周波数制御アナログビームフォーミング
○福田敦史・岡崎浩司(NTTドコモ) |
筆者らは,液晶装荷移相器を用いたアダプティブアレーアンテナの開発を目標として,コプレーナ線路(CPW)給電パッチアンテナのアレー化について研究している.本稿では,利得向上のため,4素子リニアパッチアレーアンテナを4列配列した4×4素子平面パッチアレーアンテナに着目する.各列間の間隔を利得について最適化するため,電磁界シミュレータを用いて検討した結果を報告する.列間の間隔を約0.9波長にすることで最大2.3 dB改善し,4素子リニアパッチアレーアンテナと比較して7.1 dBの改善が見られる等,4×4素子平面パッチアレーアンテナの配列間隔を最適化することにより,利得が改善することを確認した.
ミリ波帯用の空間分割多重伝送方式OAMと等価な方式として直角座標系直交多重(ROM)方式が検討されている.著者らは2面結合ハイブリッド、コルゲート形移相器、交差結合器を用いて16モードROM伝送用ビーム切換回路を設計したので報告する.回路全体を解析し、設計周波数66 GHzにおける反射は -13.9 dB、設計周波数帯域64-68 GHz における入力ポートから出力ポートへの伝送特性は-12.0±3.2 dBの結果を得た.
ビームフォーミング用の給電回路として導波管2次元ビーム切替一体化バトラーマトリックスが提案されている.16ビームの2次元バトラーマトリックスは,4x4の2次元配列の入出力を持つ.理想動作は,どのポートからの入力に対しても電力は等分配されて出力され,隣り合うポートで線形に位相差がつき,2次元的に傾いた等位相面が形成される.入力ポートを切り替えるとこの等位相面の傾き方が変わる.
従来の2次元バトラーマトリックスの動作帯域は構成要素となる導波管2面結合ハイブリッドの動作帯域で制限される.本稿では,広帯域化した各構成要素を用いた16ビーム2次元バトラーマトリックスを設計し,そのシミュレーションによる評価を示す.
高い周波数帯での広帯域無線伝送における伝搬損失
を補うため、多数のアンテナ素子を用いた狭ビーム形成
法が検討されている。広帯域信号のビーム形成に適し
た制御法として局部発振(局発:LO)信号の位相を制御す
る方法(LO 位相制御法)がある。著者らは、同方法にお
いてLO を2 つの発振器から生成し、LO の周波数を制
御し、可変移相器を用いず位相制御を行う方法(周波
数制御法)を提案した。しかし、より低い周波数のLO
ブランチ間位相差を電気長の異なる遅延線で設けてい
たため、位相制御範囲が狭いことが課題であった。本
報告ではさらに、より高い周波数のLO ブランチ間位相
差をバトラーマトリクス(BMX)で設けることで、周波数制
御法による位相制御範囲を拡張する構成を提案する。
9月12日 13:00〜15:30 C棟 3F C302講義室 座長 河口民雄(東芝)
C-2-68 |
任意の飛越結合を与えた共振器縦続接続型フィルタの周波数特性に関する検討
◎坪内啓浩・石崎俊雄(龍谷大) |
C-2-69 |
28GHz帯導波管BPFで2倍波を抑制する一手法
○久保田倫代・中嶋政幸・武田重喜(アンテナ技研)・陳 春平(神奈川大) |
C-2-70 |
結合行列に基づく非対称誘導性ポストMPhC4段BPFの設計
○勝野絵梨香・陳 春平・張 沢君・穴田哲夫・武田重喜(神奈川大) |
C-2-71 |
BPF結合行列抽出のためのベクトルフィッティング法による入出力線路の振幅・位相特性の高精度推定手法
○大平昌敬・馬 哲旺(埼玉大) |
C-2-72 |
SI-LPF の設計と製作に関する検討
○草間裕介・山下綾介・小松直樹・関 洋平・藤田春輝(香川高専) |
近年、スマートフォンの普及で通信量が増大し、対策として小セル化が進められている。その際に基地局フィルタの小型、低コスト化は重要な課題である。この課題解決法の1つにマルチモード化が挙げられるが、マルチモードフィルタでは隣接共振器間の結合以外に飛越結合が自然発生することがよくある。この飛越結合がフィルタ特性を悪化させる原因となる。本報告では、一般的な共振器直結形フィルタの回路トポロジーを元に、任意の飛越結合を与えたフィルタ特性について基礎検討を行う。
導波管型フィルタは、基地局における低損失・耐電力用として通過帯域特性の実現には有力である一方、導波管が高域通過特性を有するため高調波抑制の実現には工夫が必要である。低域通過フィルタ(LPF)や帯域阻止フィルタ(BEF)を組み合わせて高調波を抑制することも可能であるが、サイズが大きくなる。今回、共振器間結合および入出力結合に容量性アイリスを採用し、入出力導波管(E面90度ベンド)の高調波特性を考慮して28GHz帯における導波管型BPFを設計し、3段容量結合BPF単体で所望の通過帯域の第2高調波を抑制する特性が得られたので報告する。
本稿では,金属フォトニック結晶(MPhC)による非対称誘導性金属ポスト形BPFの設計手順は,BPFの共振器ごとの結合行列より,EMシミュレータを用いて所望特性を満足するように各段階に応じて構造パラメタを合理的に決定する手法を展開する.本手法の妥当性を確認するために結合行列による理論特性と電磁界シミュレーションの特性,及び測定結果を比較検討し,良い一致を得た.
帯域通過フィルタ(BPF)の結合行列抽出はBPFの設計・評価で極めて重要である.その方法としてベクトルフィッティング(VF)法が有用であるが,事前にBPFの入出力線路特性をディエンベディングする必要がある.従来,その推定に近似式またはVF法が用いられていた.しかし,前者は広域の阻止域特性が必要であり,後者は入出力線路の損失や入出力直接結合の影響を無視していた.本報告ではその問題を解決するため,VF法のみで入出力線路の振幅・位相特性の両方を高精度に推定し,結合行列を抽出する新しい方法を提案する.
ステップドインピーダンスローパスフィルタ(SI-LPF) の設計では,低インピーダンス線路と高インピーダンス線路の決め方に自由度があり,両者の比が大きいほど設計理論と良く一致することは知られている.しかし,実際には基板の誘電率と厚みで決まる制約が大きく,選択の自由度はそれほど高くない.本検討ではTeflon 基板の市販モデルを参考にして,これを安価なFR-4 基板に置き換えた場合について検討したところ,低インピーダンス線路の値を適切に選ぶことで良好なLPF 特性が得られたので報告する.
休 憩(14:30 再開) 座長 吉川博道(京セラ)
C-2-73 |
AMとめっき技術を用いたミリ波帯導波管の作製
○滝沢耕平・藤原康平・渡部雄太・小林隆一・桑原聡士・竹村昌太(都産技研) |
C-2-74 |
板状ループアンテナを用いた材料定数測定における給電ピンの影響
◎石井佑典・久我宣裕(横浜国大) |
C-2-75 |
自由空間法を用いた複素誘電率推定に関する一検討
○花澤理宏・鈴木仁哉(UL Japan)・河野 徹・亀井利久(防衛大)・荻野 哲(新日本電波吸収体) |
C-2-76 |
50GHz帯TM010モード空洞共振器を用いた3Dプリンタ用フィラメント樹脂の高精度複素誘電率測定
○清水隆志・佐々木隆文・古神義則(宇都宮大) |
近年、ミリ波産業が急速に発展してきている。これは自動車の自動運転や5G をはじめとした超高速通信分野での研究開発が活発化しているからである。今後、ミリ波技術は更なる研究開発が予想されるが,課題もある。一般的なミリ波部品には銅などの金属に金めっきしたものが使用される。そのため、ミリ波部品は重く、高額になる場合が多い。今後のミリ波技術の発展と普及のためには軽く、廉価なミリ波部品の開発が不可欠である。本研究では更なる廉価化のためにナイロン粉末の積層造形により成形した部材表面に、金属めっきしたWR-10 の導波管を作製した。また、作製した導波管の透過損失特性を測定したので報告する。
板状ループアンテナを用いた材料定数測定における給電ピンの影響を報告している.給電ピンによりアンテナ中央と磁界最小点は一致しなくなるが,整合周波数と材料定数の関係に与える影響は小さく,材料測定結果に与える影響は小さいことを示している.検討はFDTD法による電磁界シミュレーションを用いて行っている.
ミリ波帯における複素比誘電測定方法の一つとして自由空間法がある.自由空間法の測定結果から複素比誘電率推定する手法として幾つかのアルゴリズムが提案されている.本報告では,これまで提案されているアルゴリズムを用いて石英ガラスの複素比誘電率推定を行ったので報告する.
我々は、小口径試料評価用50GHz帯TM010モード空洞共振器を用いたFEM補正摂動法により、3Dプリンタ用樹脂の複素誘電率を明らかにしてきた。さらなる測定精度向上を目指し、厳密な電磁界解析結果に基づき、試料挿入孔の影響を考慮し、3Dプリンタ用フィラメント樹脂の複素誘電率測定を行った。その結果、3種フィラメント樹脂の複素誘電率を45GHz帯において明らかにした。
C-2. マイクロ波C(マイクロ波・ミリ波応用装置)
9月13日 13:00〜15:30 C棟 3F C302講義室 座長 末松憲治(東北大)
C-2-77 |
内視鏡的粘膜下層剥離術における高周波止血鉗子の比吸収率の計算
◎千田純一・黒木太司(呉高専) |
C-2-78 |
共平面型共振電極を用いた肺癌部位推定に関する検討
◎坂本雅弥・黒木太司・江口正徳(呉高専)・山川 烈(FLSI)・田中文啓(産業医大) |
C-2-79 |
循環腫瘍細胞検出リング共振器型電極の検出感度向上に関する検討
◎空 翔太・黒木太司・江口正徳(呉高専)・山川 烈(FLSI)・田中文啓(産業医大) |
C-2-80 |
導電性高分子含有布の遮蔽特性の広帯域測定
◎枝松航輝・本良瑞樹・末松憲治・三浦 健・鳥光慶一(東北大) |
高周波止血鉗子を用いた内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、従来の切開手術と比べて侵襲が少なく、2cmを超える大きな腫瘍でも切除することができる[1]。高周波止血鉗子にはモノポーラ型とバイポーラ型に大別され、前者は後者に比べ低出力で止血が出来、握持した部分にのみ通電することで穿孔などのリスクが少なく安全性が高い。また、切除しながら止血も行うことができる。そこで、本論ではESD時におけるバイポーラ型止血鉗子の比吸収率(SAR)を角度に対して計算し、刃先の形状を変更して、特性の比較検討を行った。
肺癌手術の主流である胸腔鏡下手術では、マーカーによる目視癌部位推定が行われているため、推定精度向上を目的として、高周波を用いたピンセット型共振電極が検討された。今回は肺表面を把持する代わりに肺表面に接触させる構造の共平面型共振電極を提案し、簡易モデルにより癌部位検出の可能性を検討した。
循環腫瘍細胞(CTC)の複素誘電率は血液のそれと比べて数倍高いと予想され、血液流路からリング共振器型電極中に捕獲されたCTCの共振周波数を計測する場合、CTCが電極に接していないと計測感度が劣化する。そこで本論ではCTCの検出感度向上に向けて、CTCが電極に接触した場合の共振特性を計算し、その優位性を検討したので報告する。
導電性高分子を含有させた布は侵襲の少ない生体内電極としての利用が検討されている.我々は,この導電性高分子含有布を電波遮蔽体として活用することを提案し,1-10GHzにおける遮蔽特性を測定し,その布地の抵抗成分により電波が吸収されていることを示してきた.本稿では,3種類の導電性高分子含有布のより広帯域な1-60 GHzにおける遮蔽特性を測定を行った.和紙編物は絹織物に比べて比較的高い遮蔽特性が得られ,1-10GHzでは周波数が高くなるほど遮蔽特性は増加するが,10GHz以上においてほぼ一定値の遮蔽特性があることを明らかにした
休 憩(14:15 再開) 座長 岡崎浩司(NTTドコモ)
C-2-81 |
近接場散乱を使用したミリ波イメージングのコントラスト向上
○枚田明彦・中静 真・水津光司(千葉工大)・須藤佳一(アイエスエンジニアリング) |
C-2-82 |
ホーンレンズアンテナを用いた77GHzレーダによる車両検知
○北山 晃・永石英幸・栗山 哲(日立)・黒田浩司・佐々木 叡(日立オートモティブシステムズ) |
C-2-83 |
ラジオ放送波を用いた土砂災害検知システムにおける受信電力の計算
◎内田悠斗・黒木太司(呉高専) |
C-2-84 |
市販ADCボードを用いた無線IoTリアルタイムスペクトラムモニタのアンダーサンプリング受信特性
○古市朋之・本良瑞樹・亀田 卓・末松憲治(東北大) |
C-2-85 |
信号伝送路の通過位相変動を抑圧する反射位相比較型基準信号同期回路
◎森田佳恵・和田 平・水谷浩之・中溝英之(三菱電機) |
近年、高度経済成長期に建設された社会インフラの老朽化が社会課題となっている。コンクリート表面に発生したひびは鉄筋の破断やコンクリートの剥離を招くため、早期発見が必要であるが、表面をシートや塗料で被覆されたコンクリート構造物の表面ひびは目視点検が困難である。既に、76GHz 帯のミリ波の近接場散乱を使用し、貼紙防止シートに被覆された幅 0.2 mm のコンクリート表面ひびの非破壊検査が報告されている [1]。但し、近接場散乱による受信電力の変化は小さく、取得したミリ波像のひびによるコントラストが小さいため、ミリ波像からひびを判別するのが困難であった。本稿では、紙に被覆されたコンクリート表面のひびを異なる紙厚で測定することにより、ミリ波像におけるひび部のコントラスト向上に成功したので報告する。
レーダの小型化と検知距離改善に向けて,これまで日立が開発を進めてきたホーンレンズアンテナ技術を適用した77GHzの前方検知レーダを試作した。アンテナは送信1ch,受信4chの構成とし,水平・垂直方向の検知機能を持たせた。更に,アンテナの開口領域とMMICや配線等の領域を共用することで小型化を図り,レーダモジュールのサイズを45×60×30㎣のサイズで実現した。試作レーダを車載して乗用車の検知性能試験を行なった結果,検知距離は最大320m,水平・垂直の検知精度はモノパルス方式を用いることでそれぞれ1.8m,1.2m以下となることを確認した。
AM及びFMラジオ放送波を利用した土砂災害検知システム[1]においてラジオ送信局からの直接波と山岳からの反射波は地形や土質などが大きく関与し,地域ごとに特性が異なると考えられるため,それを考慮した数値的検討が必要である.そこで,AM放送波を用いた本システムの地表波を考慮した計算モデルとレーダー断面積を用いたモデル[2]とを比較,評価したので報告する.
近年,産業界などを中心に無線IoT (Internet of Things)の普及が加速しており, 920 MHz帯,2.4 GHz帯,5 GHz帯を対象とした小型なリアルタイムスペクトラムモニタが求められている.我々はこれまでダイレクトRFアンダーサンプリング受信方式の無線IoTリアルタイムスペクトラムモニタを提案してきた.これまで市販のタイムインタリーブ (TI) 方式のADCボードの評価において,アンダーサンプリング受信ではTI方式特有のタイミングスキューに起因するスプリアスが発生する問題があることを報告してきた.本稿では,TI方式ではない市販ADCボードを用いて我々が提案する無線IoTリアルタイムスペクトラムモニタとしてのアンダーサンプリング受信特性(観測スペクトル,ダイナミックレンジ)を評価したので報告する.
複数の送受信機を同期させる場合,一つの基準信号源から各送受信機にケーブルなどの伝送路を介して基準信号を分配する.しかし,振動等により伝送路の通過位相が変動すると,送受信機の入力する基準信号に位相変動が生じ,各送受信機の位相同期が得られなくなる.本稿では伝送路の通過位相変動を抑圧する反射位相比較型基準信号同期回路を提案し,実測により原理検証を行った結果を報告する.
C-3. 光エレクトロニクス/C-4.レーザ・量子エレクトロニクス
9月10日 9:00〜11:30 C棟 1F C102講義室 座長 永井正也(阪大)
[ナノ・周期構造(1)]
C-3-1 |
波長多重通信に向けたフォトニック結晶における直交格子導波路の作製
◎樋口拓也・熊 一帆・山口拓也・森藤正人・梶井博武・近藤正彦(阪大) |
C-3-2 |
直交格子フォトニック結晶導波路の導波周波数と伝搬損失
◎山口拓也・森藤正人・梶井博武・近藤正彦(阪大) |
C-3-3 |
導波モード共鳴を利用した偏光無依存狭帯域フラットトップフィルタ
○川西啓介・嶋谷 彰(京都工繊大)・Kyu J. Lee(Univ. of Texas at Arlington)・井上純一・裏 升吾(京都工繊大)・Robert Magnusson(Univ. of Texas at Arlington) |
C-3-4 |
(依頼講演30分)フォトニック結晶偏光グレーティングを用いた3次元光回路の提案と実証
○川嶋貴之・居城俊和(フォトニックラティス)・川上彰二郎(フォトニックラティス/オートクローニング・テクノロジー) |
先行研究においてW1導波路とCirDレーザを結合させる最適化がなされた。しかし、一本の導波路ではCirDレーザ共振周波数範囲の内、半分程度しか使用できないという問題が挙げられている。本研究では、従来のW1導波路に変わり、新たに提案された直交格子導波路(orthogonal lattice waveguide (OLW))を持つフォトニック結晶構造の作製を行った。さらに所望の周波数範囲を得るためにはOLWの中心の導波路に対しその両側に位置する空孔列を内側にシフトしなければならないことが予測されているため、そのシフト幅を変更して試作し、作製限界を調べた。
情報通信量の増大に伴い、短距離光通信技術の開発が必要とされている。この要求に応えるため、フォトニック結晶を利用した複数の共振器と1本の導波路からなる波長多重通信デバイスを考案した。このデバイスを実現するためには、共振周波数帯域以上の帯域幅を持つ導波路が必要であり、我々が提案した直交格子導波路 (OLW) はこの要求を満たす。しかしながら、共振器とOLWの帯域は一致していないため、OLWの特性を保ったまま、両帯域を合わせる必要がある。本報告では、帯域を調整可能なOLW構造を提案し、その分散特性について調べる。また、その構造での伝搬損失を計算し、使用可能な帯域幅の評価を行う。
導波モード共鳴フィルタ(GMRF)は,薄膜導波路上にサブ波長グレーティングが集積された構造であり,特定波長の垂直入射光に対し高反射率または高透過率を示す狭帯域フィルタとして利用できる.通常のGMRFはローレンツ型の反射スペクトルを示す.一方,波長多重通信用のフィルタなどの応用では,波長誤差に強いフラットトップフィルタが有用である.フラットトップ特性を持つGMRFの理論的検証はいくつか報告されているが,いずれも作製難度が高く実証例はなかった.また,GMRFは一般に偏光依存であるが,単なるフィルタ応用には偏光無依存が求められることが多い.今回,二つのGMRFを直交配置させ,偏光無依存狭帯域フラットトップフィルタを初めて実証した.
偏光グレーティングは、入射光を左回りと右回りの円偏光に分離するなど特徴的な振る舞いを持つ。複数の偏光グレーティングを組み合わせることで、空間光学系において偏光分離、屈曲、分岐、位相シフト、合成といった機能を実現することができる。我々はこれまで自己クローニング法によって作られたフォトニック結晶を用いて偏光グレーティングを作製し、コヒーレント通信の受信器で用いられる偏光分離と90度ハイブリッドの機能をもつ3次元光回路を提案、実証してきた。今回、1枚のフォトニック結晶と複数のミラーで構成される新しい3次元光回路のコンセプトを提案し、実際に偏光分離と90度ハイブリッドの機能を持つ回路を実現したので報告する。
休 憩(10:30 再開) 座長 藤方潤一(PETRA)
[ナノ・周期構造(2)]
C-3-5 |
貴金属積層Siプラズモン導波路ヒータの設計と作製
○宮内智弘・塩道 渓・山田浩史・清水大雅・並木美太郎(東京農工大) |
C-3-6 |
卑金属のプラズモンドラッグ効果
○△貝原輝則・清水大雅(東京農工大) |
C-3-7 |
TiとAl2O3の交互層からなるブラックシート
◎高橋直希・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-3-8 |
クロススリット型1/4波長金属板の周期長比特性
◎中田涼太・山内潤治・中野久松(法政大) |
プラズモンの伝搬損失は金属のジュール損失により熱エネルギーに変換されるため導波路ヒータに応用可能である。Si細線導波路の一部に金属を製膜し、プラズモン導波路を作製した。プラズモン導波路長に対する出力光強度が変化を測定した。金属の長さ4.0~6.5 µmの範囲では出力光強度はほぼ一定であった。今後は金属部の長さを100 µmまで広げ、伝搬損失を計算結果と比較する。
プラズモンの運動量が電子に受け渡されて光起電力が生じる現象はプラズモンドラッグ効果と呼ばれ、金属中のエネルギー消費(電場強度と誘電率虚部)に比例する。従来プラズモンによる電場増強の大きい貴金属を用いてこの研究は進められてきたが、シミュレーションによって誘電率虚部の大きい卑金属(Co,Al等)を用いる有効性を示した。
チタンとアルミナの交互層で構成されたブラックシートを評価した.鉄を用いたブラックシートと同等の特性が得られることを示した.加えて,CW解析を用いることで広い波長帯域に渡る結果の妥当性も明示した.
クロススリット周期構造を設けた1/4波長金属板が提案されている。筆者らは、2種類の共鳴からなる異常透過を1/4波長板に応用し、90%以上の透過率を維持しながら、円偏波へ変換できることを明示してきた。これらの検討では、位相差を作り出す目的で、直交する2つのスリット長がわずかに異なるものとしてきた。しかしながら、製造工程の煩雑さを生じる問題があった。本稿では、スリット長を等しくした場合で検討する。x、y方向の周期長比を変化させた場合でも90°の位相差を生み出せることを見出し、最適な構造を考案する。考案した構造の波長特性を評価し、広帯域で円偏波に変換し、90%以上の透過率が得られることを明らかにする。
9月11日 9:00〜11:45 C棟 1F C102講義室 座長 八木英樹(住友電工)
[通信用レーザ]
C-3-9 |
(依頼講演30分)SiC基板上1.3 µm帯分布反射型メンブレンレーザの進展
◎山岡 優・中尾 亮・藤井拓郎・武田浩司・開 達郎・西 英隆・硴塚孝明・土澤 泰・松尾慎治(NTT) |
C-3-10 |
GaInAsP半導体薄膜DRレーザへのACPM構造導入の理論検討
○高橋直樹・方 偉成・齋藤孝一・雨宮智宏・西山伸彦(東工大) |
C-3-11 |
Active MMI LDを用いた60GHzおよび20GHzのフォトン・フォトン共鳴の観測
◎村上槙梧・洪 秉宙・姜 海松・浜本貴一(九大) |
C-3-12 |
線幅8 kHz, C+Lバンド波長可変LDの波長可変特性
○葛西恵介・中沢正隆(東北大)・友松泰則・遠藤 尚(光伸光学) |
C-3-13 |
帰還ループ低位相遅延化による光負帰還狭線幅半導体レーザの高性能化
◎佐藤翔太・横田信英・八坂 洋(東北大) |
C-3-14 |
注入電流/温度連携制御によるDFBレーザの高速波長切替
◎河野隼太・新谷友里・久保木 猛・加藤和利(九大) |
データセンタにおけるデータトラフィックと消費電力は年々増加しており、光送信器の大容量・低消費電力化が要求される。そこで近年我々は、低消費電力・アンクール動作可能な高速直接変調レーザ実現に向けて、高放熱SiC基板上メンブレンレーザに関する研究を行っている。本報告では、SiC基板上分布反射型メンブレンレーザの作製プロセスおよび室温からステージ温度130°Cにおけるシングルモード連続発振について報告する。
大規模集積回路の配線発熱や信号遅延といった問題を解決できるオンチップ光配線の光源として、我々は半導体薄膜DRレーザを提案している。今回、半導体薄膜DRレーザへのACPM構造導入の理論検討を行った。結合波理論を用いて発振周波数と発振しきい利得の関係を計算した。そして共振器方向の電界分布を計算した結果、ACPM回折格子を導入することで、安定な単一軸モード動作を維持したまま電界の集中を緩和することでホールバーニングを低減できることを理論的に確認した。
直接変調型LDの共振周波数による変調帯域幅制限(CPR)を克服するために、フォトン・フォトン共鳴(Photon-Photon Resonance, PPR)が研究されている。提案する1×N型のActive MMI LDは、複数のPPR発生の可能性に加え、共振周波数に関して比較的制御が容易である。実際に素子を試作した結果、20 GHzと60 GHzの2つのPPR共振周波数が実験的に確認されたので、報告する。
広帯域でかつ狭線幅な波長可変レーザは、コヒーレント光通信、高精度干渉計測、光センシングと言った分野で重要な役割を果たす。これまで我々は、長さ60 mmの長共振器構成と、中心波長の異なる3つの波長可変光フィルタを1つのステッピングモータで連続的に切り替える波長調整機構を提案し、C+Lバンド全域で8 kHz以下の線幅特性を有する波長可変LDを実現している。今回、そのLDの波長可変特性を詳細に評価したので報告する。
小型光負帰還狭線幅半導体レーザの高性能化に向けて、帰還ループ長を短縮化した反射型Siリングフィルタを設計・試作した。解析により、光負帰還狭線幅半導体レーザ光源に本構造のリングフィルタを用いることで、従来構造のSiリングフィルタを用いたときに比べて低位相遅延化による位相余裕の拡大が可能となり、線幅低減量の増大が見込めることを確認した。また、実験により本構造のリングフィルタを用いた光負帰還狭線幅半導体レーザ光源で発振スペクトル線幅を100 kHzにまで狭窄化することができたことを報告する。
DFB-LDにおける高速高信頼な波長切替のための注入電流及び温度の連携制御を考案した。この制御では注入電流の急峻な増加によりミリ秒オーダーでの高速なスイッチングを行い、その後電流を徐々に減少させながら波長が一定値を保つように徐々に温度増加することにより、最終的に規定以下の電流値での波長安定化を実現する。本制御を適用して切替幅50GHzにおける波長切替実験を行い、100mA未満の電流で31ms以内の波長切替を達成した。この結果は、従来の注入電流を用いた波長切替における信頼性劣化という問題点を、本制御で解決できることを示している。
休 憩(11:00 再開) 座長 名田允洋(NTT)
[信頼性・半導体プロセス]
C-3-15 |
9xx nm帯高出力半導体ブロードエリアレーザダイオードの漸次劣化モードと劣化メカニズム
○山形友二(フジクラ)・佐藤俊太(オプトエナジー)・能川亮三郎・山口昌幸(フジクラ) |
C-3-16 |
フォトニック結晶円形欠陥レーザ構造のICPドライエッチングによる作製
◎溝口 舜・熊 一帆・森藤正人・梶井博武・丸田章博・近藤正彦(阪大) |
C-3-17 |
フォトニック結晶円形欠陥レーザ作製を目指したpnヘテロ構造へのSiO2絶縁層形成の検討
○小暮崇史・佐伯亮太・叢 宵龍・熊 一帆・梶井博武・近藤正彦(阪大) |
9xx nm帯高出力半導体ブロードエリアレーザダイオードを活性層温度>100℃の高温で駆動すると、数千時間をかけて光出力が漸次的に低下する現象が観測される。劣化素子のエレクトロルミネッセンス観察の結果、注入ストライプ領域に暗点欠陥が分布しており、これによる吸収ロスの増大が光出力低下の原因であること、また、分光カソードルミネッセンスの観察結果からInGaAs活性層の暗点欠陥部ではInAsの偏析が生じていることが明らかとなった。
我々はフォトニック結晶を用いた微細な半導体レーザの研究を行っている。高Al組成のGaAs/AlGaAsエピタキシャル多層膜に、空孔直径200 nm、深さ1.5 µmで高垂直性を持つ円柱型の空孔により成るフォトニック結晶構造を作製することで、提案したレーザが実現できる。この空孔の作製に適した方法がICP (Inductive Coupled Plasma)ドライエッチングである。本研究では、エッチングを行う層に応じてガス比を切り替えることで、高い垂直性を持つ空孔の作製が可能となることを見出した。さらに、ICPドライエッチングによってフォトニック結晶円形欠陥レーザ構造を作製し、光励起により単一モードの発光スペクトルを得た。
我々はGaAsを用いた電流注入型フォトニック結晶(PC)円形欠陥(CirD)レーザの実現を目指し,検討を行っている.これは電流注入面積の十分な確保とWhispering gallery modeによる高い光閉じ込めを実現する.CirDレーザは垂直方向への電流注入構造を採用しているが,光学測定を行うためには,上面電極にワイヤーボンディングをする必要がある.しかし,PC上の電極に直接ボンディングしてしまうと,空孔が多数存在するコンタクト層の表面状態から,電極破壊などの問題が発生してしまった.そこで本研究では,上面電極とコンタクト層の間に,SiO2絶縁層構造を導入する素子の作製プロセスを検討する.
9月12日 9:00〜11:45 C棟 1F C102講義室 座長 柳生栄治(三菱電機)
[光制御]
C-3-18 |
(依頼講演30分)ストークスベクトル送受信器を応用した 低コストコヒーレント伝送システム
○石村昇太・西村公佐(KDDI総合研究所)・中野義昭・種村拓夫(東大) |
C-3-19 |
InP 光集積4×4ユニタリ変換器の実証
◎田之村亮汰・唐 睿・種村拓夫・中野義昭(東大) |
C-3-20 |
120°位相差信号による電気光学SSB変調器の隣接不要側波帯の抑圧
◎雪永智大・河合 正・佐藤孝憲・榎原 晃(兵庫県立大)・山本直克(NICT)・川西哲也(早大) |
C-3-21 |
マルチQPM素子を用いた波長変換における帯域拡大
◎杉山慶祐・Punhavan Saroeun・二木遼太・及川史哉・遊部雅生(東海大)・梅木毅伺・圓佛晃次・笠原亮一(NTT) |
C-3-22 |
入射偏波面に依存しない偏波回転子のジョーンズマトリクスを用いた一考察
朝生龍也・◎大石雅人・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-3-23 |
RoF伝送における光位相制御を用いた高周波信号の位相シフト法
○高橋 浩(上智大) |
近年、海底ケーブルやコアネットワークのみならず、データセンターネットワークなどに代表される短・中距離通信においても、大容量光伝送の需要が高まっている。そのため、従来のIntensity-modulation direct-detection (IM-DD)方式の高速化のみならず、コヒーレント光伝送システムの適用も盛んに検討されている。我々はこれまで、従来のIM-DD方式の発展形として、周波数利用効率を高めるべく議論されてきたStoke-vector-modulation direct-detection (SVM-DD)方式に関して、簡素な送受信器構成を提案し、伝送実験を通してその有効性を検証してきた。しかしながら3次元のSVM-DD伝送システムでは、コヒーレント伝送システムに対して、直接検波に由来する非線形性のため、デジタル信号処理による適応等化が行えない、さらには受信感度が低下する、といった問題点がある。そこで我々は最近、ストークスベクトル受信器構成を応用した、新たなコヒーレント受信器の形態も提案している。この構成により、PD数を8つから6つにまで削減可能となる。本稿では、これらストークスベクトル送受信器技術を応用した簡易コヒーレント伝送システムについて紹介する。
空間モード分割多重通信に必須なmulti-input multi-output処理を光デバイスで行う光MIMO技術が注目を集めている.光MIMOの実現には光集積ユニタリ変換器(OUC)が必須だが,従来手法では複数のマッハツェンダー干渉計(MZI)を多段に接続した構成にもとづいており,アクティブ光素子とのモノリシックに集積可能なInP上でのコンパクトな実装が困難であった.本報告では,多波面合成手法に基づき,InPに集積した4×4 OUCの試作実証に初めて成功したので報告する.従来のMZI型OUCに比べて,InP上での作製が容易な4×4 多モード干渉 (MMI) カプラと位相シフタアレイを用いることで,スケーラブルなOUCを実現した.
光SSB変調は光波長帯域を有効利用でき,また,光ファイバ伝送の際に波長分散の影響も受けにくいなど,一般的な光強度変調に比べて有利な点がある.
通常の光SSB変調は,マッハツェンダー型電気光学光変調器(MZM)を用い,90°位相差信号を用いた位相推移法により実現されている.しかし,この方式では,不要な2次側波帯が1次側波帯のすぐ近傍に生じる問題がある.本研究では120°位相差信号を用いて光SSB変調を行うことによって近傍の2次側波帯を抑圧できることを解析で示し,120°位相差分配器を一体化した光SSB変調器を試作して動作確認を行ったので報告する.
現在の光通信波長帯は、中継器であるエルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)の増幅可能帯域によって決定されている。我々はさらなる伝送帯域の拡大を目指して、マルチQPM素子中での第二高調波発生(SHG)と差周波発生(DFG)/光パラメトリック増幅(OPA)過程を利用したC,Lバンド以外での波長変換・光増幅を検討している。今回波長変換動作条件の変更により、1.44µm帯から1.68µm帯への波長変換を実現し、波長変換帯域の拡大を確認した。
金属を用いた構造で入射偏波面に依存しない偏波回転子(PR)が提案されている.我々は,誘電体のみで構成される1/2 波長板を45 度の交差角で積層することで入射偏波面に依存しないPRを提案してきた.本稿では,ジョーンズマトリクスを用いて,任意の1/2 波長板の積層からなる,入射偏波面に依存しないPR の動作原理を明らかにする.
RoF伝送システムにおいて、電波のビームステアリングを実現するためには無線信号の位相シフト技術が必要である。本研究では、光電変換前に光回路を挿入して無線信号の位相を制御する方法を提案し実験検証を行った。光信号は光回路中のマッハ・ツェンダー干渉回路で上下の側帯波が分離され、それぞれ異なる位相を与えられる。その後、同一設計の第2のマッハ・ツェンダー干渉回路で側帯波は合成され、出力される。側帯波間の位相ずれにより、光電変換後の無線信号の位相が変化することが確認された。
休 憩(11:00 再開) 座長 佐藤功紀(古河電工)
[光ファイバ]
C-3-24 |
位相変調した螺旋状ファイバ回折格子による広帯域除去フィルター
◎山川拓哉・趙 華・李 洪譜(静岡大) |
C-3-25 |
数モードファイバへの応力印加による LP11-LP21モード変換
○大西 航・久保山瑛允・橋本圭祐・坂田 肇(静岡大) |
C-3-26 |
内径300 μm銀中空ステンレスファイバ先端素子の製作-可視パイロット光伝送特性の改善-
高久裕之・○岩井克全(仙台高専)・宮城光信(宮城学院) |
長周期ファイバグレーティング(LPG)はコアモードとクラッドモード間に強い結合が発生するファイバ素子の一つであることはよく知られており,この場合LPGは光阻止フィルターとしての機能をもつ.今回,ファイバ通信システムおよびファイバレーザシステムの両方で強く望まれる広く深いノッチをもつフラットトップ状の帯域除去フィルターの製作に関する新しい手法を提案・実証する.この手法はグレーティングの位相のみを変調させた螺旋状LPG (HLPG)であり,これまでの手法に比べて複雑なアポダイゼーションを必要とせず,比較的短い(~5.2cm)グレーティング長のみが要求される.
階段屈折率型4モードファイバにおいて、偏光制御を行った上で応力印可による長周期ファイバグレーティングを形成することで、ファイバ内でLP11モードからLP21へのモード変換を行った実験結果について報告する。
内視鏡治療用無破断中空ファイバとして、ステンレスチューブを母材とした中空ファイバの製作を行ってきた。今回は、細径ステンレスチューブの内面研磨を行い、製作した内径300 μm、外径450 μm、長さ20 cm銀中空ステンレスファイバ先端素子のLD光 (λ = 650 nm)伝送特性について述べる。
9月12日 13:00〜17:00 C棟 1F C102講義室 座長 若山雄貴(日立)
[導波路デバイス(1)]
C-3-27 |
(依頼講演30分)最適化手法を用いたモード分割多重通信向け光導波路デバイスの研究
○藤澤 剛・澤田祐甫・齊藤晋聖(北大) |
C-3-28 |
90°曲がりSi細線導波路の円筒座標系に基づくビーム伝搬法解析
◎佐藤孝憲(兵庫県立大)・藤澤 剛・齊藤晋聖(北大) |
C-3-29 |
広帯域に動作するL字型Si細線導波路からなる偏波変換器の設計指針
◎中川雄斗・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-3-30 |
SOI導波路型方向性結合器を用いたTE/TM偏波スプリッタの動作波長幅拡大に向けた解析
○上島誠司・丸山武男(金沢大) |
光ファイバ1本あたりの通信容量を増やすための一つの方法として注目を集めているモード分割多重(MDM)技術は、ファイバコア一つ当たりの情報量を増加することができ、次世代の通信技術として大きな注目を集めている。MDMシステムを構成するには、数モードファイバ(FMF)入出力において、異なるモードを合分波するモード合分波器はもちろんのこと、ファイバ中継点において、各種の信号処理を行うための、モード変換、モード交換、モードスイッチなどの様々なモード制御デバイスが必要になる。本稿では、新規MDMデバイスの創出、及び、その高性能化を目的とした、最適化設計技術の開発、及び、それらを応用したデバイス研究について述べる。
有限要素ビーム伝搬法に対して、直交座標系から円筒座標系の座標変換を施すことで、クロソイド曲線を含む曲げ損失特性を容易に解析できる理論を新たに提案し、実験測定結果との比較から本提案手法の妥当性を確認した。
また、本提案手法を用いてシリコン細線導波路の曲げ損失を調査した結果、一般的な円弧構造(曲げ半径5μm, 損失0.015dB)よりも、クロソイド曲線構造のほうがより小型かつ低損失(曲げ半径2.5μm, 損失0.005dB)に細線導波路を曲げられることを明らかにした。
筆者らは偏波変換部の長さを最適値からわずかに長くすることで広帯域に動作する偏波変換器の設計が可能であることを示した. 本稿では, 偏波変換部の長さが消光比の比帯域に及ぼす影響を明らかにする.
シリコン導波路は、高い屈折率差を持つため高密度集積が可能であるが、一方高い偏波依存性を持ち、これは偏波が保証されない光ファイバーと結合する受信素子において大きな問題となってしまう。そこで我々は素子の小型化に有利な方向性結合器を用いた偏波スプリッタに注目し、高消光比な偏光の分離を実現するために設計および製作と計測を行ってきた。今回はファウンドリサービスによって作製し、計測した偏波特性に対して解析結果と比較した。その結果から、より広帯域において動作する設計を得た。
休 憩(14:30 再開) 座長 高橋 浩(上智大)
[導波路デバイス(2)]
C-3-31 |
Significant Propagation Loss Reduction on Silicon High-Mesa Waveguides Using Thermal Oxidation
○Yu Han・Wenying Li・Haisong Jiang・Kiichi Hamamoto(Kyushu Univ.) |
C-3-32 |
FLC装荷Nb2O5アレイ導波路回折格子の製作
◎渋谷隆延・内堀槙太・端山喜紀・中津原克己(神奈川工科大) |
C-3-33 |
Design of Compact Polarization Rotator Based on Slot Waveguide
◎Zejun Zhang(Kanagawa Univ.)・Yasuhide Tsuji(Muroran Inst. Tech.)・Masashi Eguchi(Chitose Inst. Sci. Tech.)・Chun-ping Chen(Kanagawa Univ.) |
C-3-34 |
誘電体スロット導波路配列を利用したゼロシフトミラー
◎大川内 巧・山内潤治・中野久松(法政大) |
Breath sensing system based on cavity ring-down spectroscopy (CRDS) technique is attractive due to its real time sensing in addition to the capability of high sensitivity. Utilizing waveguide for CRDS may realize ppm-order components into a compact area. We have designed and fabricated 100 nm-thick Si core high-mesa waveguides for breath sensors. By using dry thermal oxidation, propagation loss is reduced effectively and the final achieved loss satisfies the requests of the low loss of a compact CRDS system.
低消費電力動作が可能な強誘電性液晶 (FLC:Ferro-electric Liquid Crystal) を利用した導波路形光スイッチの研究を行ってきた.今回,波長選択スイッチの実現のため,その構成要素となるFLC装荷Nb2O5アレイ導波路回折格子において,従来のコア層厚400[nm]から200[nm]に変更した素子の製作を行ったので報告する.
In this study, a compact polarization rotator (PR) based on slot waveguide is designed and analyzed. A high polarization conversion efficiency (PCE) is achieved due to its symmetrical distribution along the y=x axis. Numerical results using 3D-FDTD method illustrate that for a TE-to-TM mode conversion, the PCE is better than 99.9% with a short device length of 8.6 μm, and the extinction ratio and insertion loss are -19.7dB and 1.1dB, respectively.
赤外光レーザーの操作性向上のために,様々な光学ミラーが開発されている.従来のミラーの多くは,位相制御と電磁界の反射を誘電体多層膜の応用で実現しており,所望の偏光を得る入射角に厳しい制限があった.本稿では,誘電体スロット導波路配列を利用したゼロシフトミラーを提案する.入射角を変化させても高い反射率で偏光状態を維持できることを明示する.
休 憩(15:45 再開) 座長 前神有里子(産総研)
[導波路デバイス(3)]
C-3-35 |
埋め込みSi細線導波路に垂直結合するスポットサイズ変換器
山内潤治・◎小島功義・中野久松(法政大) |
C-3-36 |
長方形コアを用いたスポットサイズ変換器の再設計
◎嶋田圭吾・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-3-37 |
非対称テーパ構造を有するスポットサイズ変換器の設計
◎平谷拓生・河野直哉・勝山智和・山日竜二・伊藤友樹・渡邉昌崇・江川 満・小路 元(住友電工) |
C-3-38 |
自己形成テーパー導波路によるシングルモードファイバ間光接続
◎齊藤洋平・鹿間光太・荒武 淳(NTT) |
C-3-39 |
混合波面入射空間光結合用集合グレーティングカップラの設計
◎嶋谷 彰・井上純一・裏 升吾(京都工繊大)・井上大介・山下達弥(豊田中研)・大山浩市(デンソー) |
筆者らは,Si細線導波路のコアを空気界面からわずかに埋め込むと,屈曲損が低減できることを明らかにしてきた.残された課題の一つに,わずかに埋め込まれたSiコアに,どのように光を結合させるかがある.本稿では、基板上に構成されたスポットサイズ変換器を利用し,TE波を垂直結合によりSiコアに導く構造を検討する.
直線テーパ化されたSi 細線導波路を用いたスポットサイズ変換器が提案されている.我々は,この構造に曲線テーパを導入し,入射端におけるコア形状を長方形とすることにより,モード依存性を低減し,広帯域で高効率な変換が達成できることを明らかにしてきた.本稿では,より実際的なモデルとして入射端におけるコアの幅を大きくし,水平方向のテーパのみで,TE,TM両モードともに広帯域で高効率な変換特性が得られることを明示する.
大容量・長距離通信向けにInP系モノリシック集積素子が開発されている。これらの素子では、小型化、低消費電力化を目的として、ハイメサ導波路構造が用いられる。この場合、外部光学系との結合損失が大きいため、スポットサイズ変換器により結合損失を抑制している。本研究では、テーパ先端幅0μmを可能とする非対称テーパスポットサイズ変換器を提案し、特性解析を行った。
本素子の構造はハイメサ導波路部、モード変換部、拡大コア部からなり、ハイメサ導波路コアからテーパを介して埋め込み層へと光を移す構成となっている。BPMによる計算の結果、モード変換長590μmの構造で、モード変換損失は0.1dB/facet、先球ファイバとの結合まで含めると0.25dB/facetが見積もられた。
近年、シリコンフォトニクスなどへの光結合方法として、その入出力部に、HNF(High-numerical-aperture fiber)を用いる方法が提案されている。従来、CSMF(Conventional single-mode fiber)とHNFを低損失に接続するために、コア拡散を利用して前記ファイバ間のモードフィールド径の差を整合させるTEC(Thermally-diffused expanded core)融着技術が用いられている。今回、我々はTEC融着に代わる技術として、光硬化性樹脂を用いた自己形成テーパー導波路に着目し、CSMFとHNF間における自己形成テーパー導波路の形成条件について検討した。その結果、同ファイバ間でのTEC融着と同等の低損失な光接続が実現できたので報告する。
光センシングにおいて反射光は反射位置に依存した伝搬角度幅を持つ。そのような入射光を単一結合器で高効率に入力することは難しい。今回は異なる角度で伝搬する入力空間光を高効率でシングルモード導波光に結合させる集積光学デバイス、集合グレーティングカップラの基本コンセプトを提案し、設計例を示した。結合係数を結合開口面で変化させ、-6dBの入力結合効率が期待できるデバイスを設計した。
9月12日 13:00〜16:00 C棟 2F C202講義室 座長 丸山武男(金沢大)
[センシング(1)]
C-3-40 |
(依頼講演30分)自己形成量子ドットを利用した広帯域スーパールミネッセンスダイオードの作製と光コヒーレンストモグラフィーへの応用
○尾崎信彦(和歌山大) |
C-3-41 |
市販されているシリカファイバーソリトンレーザの出力コムスペクトルのコヒーレント度(線幅)を画期的に向上する方法の提案・実証
◎鈴木悠司・岡野謙悟・長坂恭輔・竹下 諒・Chaoyi Wang・上野芳康(電通大) |
C-3-42 |
100ギガヘルツを超える光変調器の小信号周波数成分伝達特性を疑似連続計測する光コム応用計測方式の開発
◎長坂恭輔・石井幸弘・岡野謙悟・竹下 諒(電通大)・Bingzhou Hong・森 智隆・浜本貴一(九大)・鈴木悠司・上野芳康(電通大) |
C-3-43 |
(依頼講演30分)AlInSb材料を用いた中赤外光部品開発及びそのガスセンシング応用
○藤田浩己・諸原 理・外賀寛崇・鈴木 勝・柴田佳彦・久世直洋(旭化成エレクトロニクス) |
自己組織化InAs量子ドット(QD)を用いた広帯域スーパールミネッセントダイオード(SLD)の開発と、光コヒーレンストモグラフィー(OCT)光源応用を行った。波長制御されたQDを用いたSLD(QD-SLD)光源により、一般的なSLD光源を上回る広帯域化と単峰性形状スペクトルが得られた。また、作製したQD-SLD光源をOCT光源として導入し、空気中で4 μm以下の光軸分解能を持つOCT画像取得に成功した。これらの結果から、QD-SLDは軽量コンパクトな半導体デバイスの特性を活かした高分解能OCT光源としての利用が期待される。
光周波数コムは様々な応用目的に期待されているが、現在普及しているソリトンモードロックレーザは線幅が広く、狭い線幅が要求される分子分光や光変調信号周波数伝達特性の計測などの応用目的には不十分である。
そこで、DISC-gateを用いて入力パルスをコヒーレント変換する事で、現在普及している光コム光源を上記目的に応用可能だと考えた。
本研究ではコヒーレント変換後の線幅を測定し、DISC-gate出力光コムは応用目的に十分な線幅を持つか考察した。
結果、DISC-gateによって、線幅2 GHz程度の入力パルスが、線幅1 MHz程度にコヒーレント変換された。この線幅は上記応用目的での要求を満たす。
高速な光変調器や直接変調レーザは,データ通信トラフィック量の増大により,データセンターでのサーバー間や電子基板上での高速な通信用デバイスとして期待されている.また,これらは100GHzを超える変調周波数が期待されている.そこで,モード同期レーザを用いることで,20dB帯域幅で1.3THzという広帯域な光コムの生成が可能であり,電気的な手法と比較し,高周波かつ広帯域の特性を評価できる.本研究では光変調信号周波数伝達特性の測定対象に入力する信号を広帯域な光コムを用いることにより,原理的に100GHzを超える周波数領域の特性が計測可能な方式を開発した.また,本方式と他方式の比較により,本方式の妥当性を実証した.
GaAs基板上に形成されたAlInSb系材料により、室温動作の中赤外光部品(LED/センサ)を開発した。開発の鍵は、分子線エピタキシー(MBE)法を用いた格子不整合系の薄膜成長技術であり、薄膜中の歪制御により結晶欠陥(転位)を低減することで、高性能化が可能である。更に中赤外LED/センサの応用例として、ガスセンサへ適用した例を紹介する。
休 憩(14:45 再開) 座長 三浦健太(群馬大)
[センシング(2)]
C-3-44 |
ADCチャネル間skew測定と除去によるTOF LiDAR高精度化
○上野雅浩・赤毛勇一・岡 宗一(NTT) |
C-3-45 |
外部共振器レーザを用いた中距離FMCW光距離センサの開発
○飯山宏一・中村優哉・佐藤 衛(金沢大) |
C-3-46 |
光位相制御によるサブミリ秒繰り返しテラヘルツ波ビームステアリングの実現
◎内藤裕太・山内健太(九大)・伊藤 弘(北里大)・石橋忠夫(NTTエレクトロニクステクノ)・加藤和利(九大) |
C-3-47 |
移動体光無線給電のための光軸同一型ビーム自動追尾システムの構築
◎加藤広隆・Alexzander William Setiawan Ptra・丸山武男(金沢大) |
C-3-48 |
大型低温重力波望遠鏡KAGRAにおける 干渉計制御用変調システムの雑音源の探査
◎冨士川雄太(新潟大)・山本晃平・苔山圭以子・横澤孝章(東大)・上原知幸(防衛大)・中野雅之・開発輝一・森 有紀乃(富山大)・鈴木孝昌・佐藤 孝・大河正志(新潟大) |
TOF方式のLiDARでは測距対象反射光を基にしたサンプル信号と基準となる参照信号をADCの各チャネルで取得してそれらの時間差から測距対象までの距離を測定するが、ADCチャネル間Skewが誤差を生じさせる。そこで、サンプル信号と参照信号の両方に同期信号を重畳し、それら同期信号の時間差をSkewとして測定し、Skewによる時間遅れを除去したところ、測距精度が向上4倍向上したことを確認した。
高コヒーレンスな外部共振器レーザを用いて,中距離FMCW光距離センサシステムを開発した。モードホッピング生じない振幅の三角波による電流変調により光周波数を掃引し,kサンプリング方式を採用することにより,光ファイバを用いて空間換算200mまでの距離計測を,空間測定では30mの距離計測を実現した。
我々は,フォトミキシング技術によるテラヘルツ波生成と手動調整による光位相制御に,アレーアンテナ技術を組み合わせた,テラヘルツ波ビームステアリングについて報告した.さらにこの手法の自動制御化を目指して,波長分散特性を利用した二光波間の位相差調整を検討している.今回,電圧印加により媒質中の波長分散特性を変化させるデバイス(半導体光位相変調器)を用いることで,周波数300, 450, 600 GHzのテラヘルツ波に関して繰り返し時間1 ms以下でのビームステアリングを確認したので報告する.
レーザ光無線給電には、ビーム自動追尾システムの開発が必要になる。以前、我々は、CMOSカメラとガルバノミラーを用いて、システム開発を行い、2次元移動体への光無線給電による駆動に成功した。今回は、この以前に開発したビーム自動追尾システムの精度改善案について、その概要を述べる。
KAGRAはマイケルソン干渉計を主干渉計とする重力波検出器であり, 他の干渉計や光共振器も合わせて多数の鏡や半透過鏡が使用されている。それらの間隔 (長さ) を精密に維持することが不可欠であるため, 長さ制御が必要であり, KAGRAではレーザ光に変調を加えることで制御系を実現している。ところで, 重力波検出では重力波が微弱なことから雑音を可能な限り低減することが不可欠であり, 変調システムにおける雑音も例外ではない。そこで本研究ではマイクロホンや加速度計を用いて変調システムの雑音の探査を行った。その結果, 変調システムを構成する一部の鏡と定盤の振動が雑音の要因となっていることが明らかになった。
9月13日 9:00〜11:45 C棟 1F C102講義室 座長 岩井克全(仙台高専)
[光通信(1)]
C-3-49 |
(依頼講演30分)InPスロット導波路型有機EOポリマー光変調器の帯域と光損失に関する検討
◎△関根尚希・高木信一・竹中 充(東大) |
C-3-50 |
低挿入損失・低経路依存性を有する多ポート平面光スイッチ
◎鴻池遼太郎・鈴木恵治郎・河島 整・池田和浩(産総研) |
C-3-51 |
SDMノード内配線を簡略化した波長クロスコネクト構成
○妹尾和則・磯田 曉・水野隆之・山口慶太・鈴木賢哉・橋本俊和・宮本 裕(NTT) |
スロット導波路型のInPと有機EOポリマーハイブリッド型変調器の帯域と光損失の関係について数値計算を行った。同変調方式でSiを用いた場合と比較して10倍以上低いキャリア濃度で同程度のRC時定数を実現可能であり、高速かつ低損失な変調器の実現が期待できることが分かった。
増大を続けるトラフィックを効率的に処理するため,多ポート光スイッチをキーデバイスとしたネットワークシステムが議論されている.中でも平面光回路技術を用いた光スイッチは小型・高信頼性をもつため注目されている.従来の平面光スイッチアーキテクチャはクロスバー型,PILOSS型,DLN型に大別されるが,挿入損失の小ささと経路依存性の少なさを両立することが難しかった.本発表では,DLN型を改良することで導波路交差の数を減らし,低挿入損失および低経路依存性を両立できる新たな光スイッチアーキテクチャを提案する.
マルチコアファイバを適用したSDMノードは従来のアーキテクチャを活用しつつコア数Kに比例する容量拡大が可能であるため注目されているが,ノード内配線が非常に複雑になることに加え,波長選択スイッチの台数がK倍,接続点数はKの二乗倍必要となることから構成の簡略化が切望されていた.
これまでに著者らは,PLCと空間光学系を組み合わせたSPOC技術により複数WSS機能を一括集積したWSSアレイを提案し,WSS台数の低減を可能としてきた.一方で,ノード内配線の簡略化や接続点数の低減といった課題が残されていた.
本稿では,各々異なる光学系を採用したSPOC型WSSアレイを2台組み合わせることでノード内配線を劇的に簡略化可能なSDMノード 構成について報告する.
休 憩(10:15 再開) 座長 中川剛二(富士通)
[光通信(2)]
C-3-52 |
(依頼講演30分)メンブレンInGaAsP位相シフタとSiN導波路を用いたマッハ・ツェンダ変調器
◎相原卓磨・開 達郎・藤井拓郎・武田浩司・土澤 泰・硴塚孝明・松尾慎治(NTT) |
C-3-53 |
スラブ導波路を用いた位相制御型単一次元空間モード合分波器
○姜 海松・Mahmoud Nasef・藤本勘太郎・浜本貴一(九大) |
C-3-54 |
(依頼講演30分)高速車載光ネットワークの開発および標準化動向
○杉原興浩(宇都宮大) |
C-3-55 |
(依頼講演)半導体光増幅器の相互利得変調による光-無線メディア変換の性能向上
○久保木 猛・山中友輔・加藤和利(九大) |
通信トラフィックの増大に伴い、光送受信器の大容量化および小型・低コスト化が求められている。この要求に対して、Siフォトニクス技術による光回路の大規模集積化が期待されている。光送受信器の主要な素子の一つとして、マッハ・ツェンダ変調器(MZM)が挙げらるが、Siを用いたキャリア空乏型MZMは、高速変調が可能である一方で、位相変調効率が低く、位相シフト領域が長くなるため、光集積回路の高集積化のボトルネックとされる。
我々は、高効率な位相シフタ材料としてIII-V族化合物半導体を用いたSiプラットフォーム上の新たなMZMを提案してきた。本報告では、このMZMにおいて、56 Gbit/sのnon-return-to-zero(NRZ)高速変調動作を実証した結果について報告する。
我々は、データセンター等の近距離での応用を前提に、MIMOに依らず光学的に合分離できるモード基底とした、単一次元空間モード(代表例は、TE0x、およびTM0xモード)の利用を提案し[1]、単一次元空間モードを一括に合分波できるローランド円スラブ導波路を用いた位相制御型合分波器[2-3]について検討している。モード間に集光位置差を確保すれば、ある程度なモード間クロストークが実現できることを理論的に確認したので報告する。
先進運転者支援システムや自動運転の実用化に向けて、自動車はカメラやLidarなど多数のセンサーを搭載するようになり、それらの情報を極力遅滞なく伝送する高速・高信頼の車載通信ネットワークが必要となっている。軽量低消費電力化への要求や、様々な周波数の電磁波が飛び交う自動車内の環境に適した通信システムとして、光ファイバーによるギガビットおよびマルチギガビットイーサネットの研究開発と規格化が進められている。本発表では車載光ファイバー通信の研究開発内容と、車載光ギガビット・マルチギガビットイーサネットの標準化動向について紹介する。
半導体光増幅器(SOA)の相互利得変調を用いた光-無線メディア変換における,信号品質向上の検討を行った.光-無線メディア変換データ伝送実験系を構築し,高い消光比となる条件でエラーレートの大幅な改善を達成した.
9月13日 13:00〜16:45 C棟 1F C102講義室 座長 大道浩児(フジクラ)
[短距離通信デバイス・モジュール(1)]
C-3-56 |
(依頼講演30分)Dime scale optical transceiver “Optical I/O core” based on Si photonics technology
○Hidetaka Fukuda・Kazuhiko Kurata・Tomoyuki Fujita(AIO Core) |
C-3-57 |
(依頼講演30分)シリコンフォトニクスによる高次モードを用いた低損失かつ高トレランス100/400GbE用4波長合波器
◎高野純矢・藤澤 剛・澤田祐甫(北大)・坂本泰志・松井 隆・中島和秀(NTT)・齊藤晋聖(北大) |
シリコンフォトニクス技術を短距離の光インターコネクトに適用する。世界最小、高速(25Gbpsx4ch)、高温動作(~105C)、素子の生産自動化を実現。25Gbps/Line時代にコンピューティング能力を飛躍的に高める素子として、HPC、5G、8K、自動車への適用が期待される。光インターコネクトの普及により、コンピューティングシステムアーキテクチャが変革され、IoTの活用が加速する。
100/400GbEの中でも,伝送媒体にSMFを用いる100GBASE-LR4,-ER4,400GBASE-LR8は波長1.3μm帯における800GHz間隔のWDM方式を採用しており,送信側で4波長合波器(400GbEの場合は2個)が必要不可欠である.100GbE用合波器として,2段型合波器は,原理損がないため有望視されているが,特にFSRが1600GHzの2段目のフィルタでは,製造誤差に起因するピーク波長の制御が困難という問題があった.そこで本報告では,方向性結合器,非対称方向性結合器およびTE1-TM0モード変換器をカスケード接続することで,1600GHzフィルタを取り除いた4波長合波器を提案し,CMOSプロセスを用いて作製,特性評価を行い,提案構造の有用性を実証したので報告する.
休 憩(14:15 再開) 座長 妹尾和則(NTT)
[短距離通信デバイス・モジュール(2)]
C-3-58 |
(依頼講演30分)Si基板上1.3μm帯LDアレイを用いた25-Gbps x 4 chトランスミッタモジュール
◎岸 俊樹・脇田 斉・鹿間光太・長谷宗彦・金澤 慈・藤井拓郎・西 英隆・石川裕士・荒武 淳・野坂秀之・福田 浩・松尾慎治(NTT) |
C-3-59 |
(依頼講演30分)レンズ集積光デバイスとそれを用いた小型・省電力光トランシーバの研究開発
○李 英根・篠田和典(日立)・足立光一朗(日本ルメンタム) |
C-3-60 |
電気クロストークを抑制した高速電気インタフェースの検討
○大畠伸夫・川本洋輔・長谷川清智(三菱電機) |
オンボードオプティクスに対してこれまで、VCSELやSi外部変調器を用いた光トランシーバが報告されている。しかし、伝送距離が数百mに制限されることや外部光源の実装によるモジュール面積増大の課題がある。この問題を解決するため、我々はSi基板上1.3μm帯LDアレイを用いたマルチコアファイバ接続およびLDアレイとドライバとのフリップチップ接続を提案している。これらにより伝送距離を延伸させ、小型モジュールを実現することが可能である。今回、我々はLDアレイがフリップチップ接続されたドライバをLTCCインターポーザ上にフリップチップ接続し、さらに、HNAファイバアレイを接続した4chトランスミッタモジュールを報告する。
筆者らのグループでは,モノリシックレンズ集積型半導体光素子とそれらを搭載した小型で低消費電力の光通信用トランシーバを開発した。半導体レーザとして、1.3μm波長帯のレンズ集積型面出射レーザを開発し、40Gbit/sの動作を実証した。フォトダイオードとして、高速(帯域35GHz)かつ高感度(0.8A/W)のレンズ集積型フォトダイオードを開発した。これらのレンズ集積型光デバイスの4chアレイとアナログフロントエンド回路と速度変換機能を一体化した65nm CMOS回路を用いて,超小型25Gbit/s×4ch光トランシーバ(サイズ:14mm×9mm; 従来比:1/100)を作製し,20mW/Gb/s(従来比1/10)の低消費電力で25Gb/s/chの光伝送動作を実証した。
近年、スマートデバイスの普及により通信トラフィックが増大しており、ゼタバイト時代が到来しつつある。次世代の短距離用光通信デバイスとしてEML(Electroabsorption Modulator integrated Laser)を搭載した400 Gb/s(106 Gb/s×4λ)用の光送信モジュールは有力な候補の一つであるが、高速な信号を取り扱うため電気クロストークの抑制が課題の一つとなる。
本報告では電気クロストーク低減とインピーダンス整合を考慮し、開口付きのストリップ線路を提案し、その効果を計算にて確認した。従来のマイクロストリップ線路に対して、TDECQの劣化量を約0.8dB低減することができる。
休 憩(15:45 再開) 座長 望月敬太(三菱電機)
[ナノ共振器レーザ]
C-3-61 |
(依頼講演30分)アクティブ材料を融合した集積トポロジカルフォトニクス
○太田泰友・山口拓人・吉見拓展・渡邉克之・荒川泰彦・岩本 敏・勝見亮太(東大) |
C-3-62 |
フォトニック結晶円形欠陥レーザダイオード構造への電流注入に関する研究
○佐伯亮太・熊 一帆・小暮崇史・梶井博武・近藤正彦(阪大) |
C-3-63 |
フォトニック結晶円形欠陥レーザの高速動作解析
○葉 漢嶠・西村智也・熊 一帆・山口拓也・森藤正人・梶井博武・近藤正彦(阪大) |
本講演では、アクティブトポロジカルフォトニクス分野について概観するとともに、同分野における我々の最近の取り組みについて紹介する。特に、半導体薄膜バレーフォトニック結晶におけるエッジチャネル導波路の検討とその量子ドットとの融合や、0次元トポロジカルエッジ状態によるナノ共振器レーザに焦点を当てて議論をすすめる。
二次元スラブ型フォトニック結晶は、その三次元的光制御特性から極小レーザ共振器としての応用が期待されている。我々の研究室が開発している電流注入型フォトニック結晶円形欠陥レーザダイオードは、十分な電流注入面積とWhispering Gallery Modeによる高い光閉じ込めを実現する。また、多数ある共振器の大きさを制御することで複数波長の光を導波させることが可能になり波長多重通信用デバイスとしての実用が期待できる。開発するレーザダイオードは垂直方向への電流注入構造を採用しているが、当研究室における先行研究では抵抗値がおよそ2.5kΩと高く、改善が必要であった。今回、電極に使用する金属の変更とアニール条件の最適化、および、オゾンクリーニング処理により電流電圧特性が改善されたので報告する。
我々は、フォトニック結晶円形欠陥(CirD)レーザを有する波長多重通信デバイスを提案した。動作波長の異なる20個のレーザを導波路に結合させることで、1 Tbps程度の通信容量を得られることが期待されている。本研究では、時間領域差分法の計算結果に基づき、二次元レート方程式を用い、CirDレーザの閾値電流、緩和振動周波数、高周波小信号応答への光子寿命の影響を調べた。光子寿命が長いほど、閾値電流が低くなることが分かる。小さい閾値電流と高い緩和振動周波数が同時に得られる、適切な光子寿命は2ps程度と予測される。レーザの最大動作速度は、緩和振動速度の1.5倍程度であるので、50 Gbps 程度の動作が期待できる。
C-5. 機構デバイス
9月12日 13:00〜14:30 C棟 3F C305講義室 座長 萓野良樹(電通大)
C-5-1 |
Au-Snはんだ機能を有したマイクロプリズム
藤田浩輝・○山口義正・三部修司・田中宏和(日本電気硝子) |
C-5-2 |
銀黒鉛質ブラシと貴金属スリップリングにおけるV-I特性
○福田直紀・高田友輔・町田友輝・丸山晃伸・澤 孝一郎・上野貴博(日本工大) |
C-5-3 |
スリップリングの摺動面仕上げ粗さ変化におけるブラシ摩耗特性
◎高田友輔・福田直紀・町田友輝・丸山晃伸・澤 孝一郎・上野貴博(日本工大) |
C-5-4 |
摺動通電試験における二硫化モリブデンショット処理の効果
◎飯塚達郎・川島優樹・緒方 翔・澤 孝一郎・渡辺克忠・上野貴博(日本工大) |
C-5-5 |
500VDC/10A 抵抗性負荷回路内で磁気吹き消しされる開離時アークの引き伸ばし形状の単純化
◎金子裕汰・関川純哉(静岡大) |
C-5-6 |
150V-400VDC/10A 抵抗性負荷回路内で発生する開離時アークのPTFE製の分断板による強制分断
◎木村雄一朗・関川純哉(静岡大) |
量産性の高い台形型のプリズムにAu-Snはんだ膜を多層構造で施した。プリズムにはんだ膜を直接施すことで、従来使われていたはんだプリフォームとパッケージとの位置合わせを不要とした。下地膜はプリズム側からCr/Ni/Auの順にパルスDCによるスパッタプロセスで成膜した。Au-Snはんだ膜は成膜レートが高い蒸着プロセスで成膜しており、多層構造とした。加熱前後のはんだ膜の断面観察から合金化及び充分な密着性を確認した。
電機用ブラシは,静止物体と回転物体間の電流伝達を司り,交流機の励磁機や直流機の整流機構等で活躍している.近年では,接触電圧降下抑制に有効な銀黒鉛質ブラシおよび貴金属スリップリングが注目されているが,その摺動や通電特性は未解明な点を多く残す.
本研究ではこれまで,銀黒鉛質ブラシ(銀含有率50,60,70,80,90 wt%)と銀および金メッキスリップリングを用いて,ブラシ電流9.6Aとして20h連続摺動を行い,図1に示す特性を得た[1].結果から,ブラシ銀含有率60%~80%領域において接触電圧降下およびブラシ摩耗抑制に有効であると結論付けた.しかし,この特性をより論理的に解釈するには,ブラシ-スリップリングのV-I特性(接触電圧降下とブラシ電流の関係)を取得する必要がある.これにより,摺動面温度の概算に寄与する.
今般は,銀黒鉛質ブラシと銀および金メッキスリップリングにおけるV-I特性を取得し,主としてその結果を報告する.
電気摺動接触機構とは,電気鉄道のトロリー線とパンタグラフをはじめとした,静止物体から移動物体(回転物体)へ電力を伝達する機構である.この機構は摩擦を伴うことから,耐摩耗性や電気的信頼性の向上が求められており,機器の寿命を大きく左右する.
電気摺動接触機構の一つであるスリップリングシステムは,大形発電機にも採用されている重要な機構である.本稿では,回転体であるスリップリングの摺動面仕上げ粗さを変化させ,静止体であるブラシと通電摺動させることにより,スリップリングの粗さ変化によるブラシの摩耗特性を明らかにすることを目的とした.
電気機器を運転する際,整流子やスリップリングなどの摺動部が必要になる.摺動部では,摩擦や摩耗の問題が常に発生し,潤滑性が悪いと電気的ノイズが多く発生し,周辺機器の誤動作の原因となるため,システム全体の破壊に繋がる.このため,摺動部分の良好な潤滑性と低い接触電気抵抗を保つことはシステム運用に不可欠な要素である.本研究では,潤滑に優れた特性を示す二硫化モリブデン(MoS2)を摺動部分にショット処理した通電試験を行う.摩擦係数特性と接触電気抵抗特性を中心に,その効果を検討する.
直流高電圧回路において,Ag接点対を等速で開離して開離時アークを発生させ,磁気吹き消しにより消弧させた.接点接触開離時の回路電流I0を10A,電源電圧Eを200-500Vとした.また,開離時アークの水平方向での変形を単純化させるため,縦長の永久磁石を接点対に対して適切な位置に配置し,印加する磁束密度Bを20,60,100,140mTと変化させた.その様子を2台の高速カメラで水平方向と垂直方向の 2 方向から同時に撮影し,画像から開離時アークの形状を解析した.その結果,どの条件下でも陰極・陽極輝点の位置が共に確認でき,B=20mT以外では,開離時アークの水平方向での形状が比較的単純になった.
直流電源電圧150V-400V,回路電流10Aの抵抗性負荷回路において,Ag接点対を等速開離させ,開離時アークを発生させる.開離時アーク発生中に鉛直上方からPTFE製の分断板を開離時アーク発生中の接点間隙に挿入し,放電経路を強制的に分断する.同時にアーク電圧波形の取得と,高速度カメラを用いた開離時アークの撮影を水平方向から行う.その結果,400V以下の電圧領域において,PTFE製の分断板による分断によって,開離時アークの分断が可能であることが確認された.撮影データからは,分断板に押されてアーク輝点が下に移動し,放電経路が湾曲したのちに消弧に至ることが確認された.
C-6. 電子部品・材料
9月13日 10:30〜11:15 C棟 3F C305講義室 座長 武山真弓(北見工大)
C-6-1 |
触媒反応支援CVD法における励起NOガスによるZnO膜への窒素ドーピング
伊庭竜太・安達雄大(長岡技科大)・大石耕一郎・片桐裕則(長岡高専)・○安井寛治(長岡技科大) |
C-6-2 |
RFスパッタ法によるTi膜の低温作製
○佐藤 勝・武山真弓(北見工大) |
C-6-3 |
エゾシカ肉のリアルタイム計測と美味しさ評価
○武山真弓(北見工大)・横川慎二(電通大)・佐藤 勝・安井 崇(北見工大) |
白金(Pt)ナノ粒子表面での水素と酸素の燃焼反応により生成した高エネルギーH2OとDMZnを気相中で反応させ生成したZnOプリカーサを基板に供給するCVD法を考案し,a面サファイア基板上に成長を試みた結果,電気的・光学的特性に優れたn型ZnO結晶膜を得た.その後,p型結晶の作製を目指し様々なガスを用いてZnO膜への窒素ドーピングを試みてきたが,膜中への取り込みが充分ではない. そこで一酸化窒素(NO)ガスの加熱金属触媒体(Ir)表面での分解反応により生成した窒素ラジカルを供給することで窒素ドーピングを試みた.今回,基板温度やNOガス圧力を変え成長させた窒素ドープZnO膜についてXPSにより膜中窒素の取込みと結合状態について調べたので報告する.
本研究では、基板加熱しない状態で窒素フリーなTi膜を作製し、成膜条件の違いによって、どのような結晶構造を有するTi膜が得られるか検討した。
本研究では、生体電気インピーダンス法を用いて評価した結果と実際に多くの人に試食してもらった官能検査の結果を統計的に処理し、それらの関連について検討した。
C-7. 磁気記録・情報ストレージ
9月13日 10:30〜11:45 C棟 1F C101講義室 座長 吉田周平(近畿大)
C-7-1 |
(依頼講演30分)熱アシスト磁気記録におけるヘッドディスクインタフェースのナノトライボロジー
○多川則男(関西大) |
C-7-2 |
シングル磁気記録における2トラック一括復号の一検討
○仲村泰明・西川まどか(愛媛大)・金井 靖(新潟工科大)・大沢 寿・岡本好弘(愛媛大) |
C-7-3 |
(依頼講演30分)磁気双極子結合した磁性ドットアレイによるリザーバーコンピューティング
○野村 光・古田大志・鍬開雄規・辻本知輝・田村英一・後藤 穣・中谷亮一(阪大)・久保田 均(産総研)・鈴木義茂(阪大) |
磁気ディスク装置の超高密度磁気記録を実現するためには現状、熱アシスト磁気記録(HAMR)方式が実用化に最も近い技術の一つであるが、レーザにより媒体を573-773K程度までナノセカンドオーダーの短時間で加熱して記録する方式であるため、一方で磁気ディスク媒体上に存在する超薄膜液体潤滑膜やDLC薄膜の信頼性及びそのナノトライボロジー特性がそのヘッドディスクインタフェース(HDI)の観点から大きな問題となる。そこで、本講演ではそれらのナノトライボロジー的な課題に対する現在の検討状況について、産学連携による研究を中心として紹介する。
シングル磁気記録においてITIの軽減を目的に、1つのMRセンサで2トラック一括再生・復号を行う2トラック一括復号方式を提案している。
近年,デーブラーニングをはじめとするニューラルネットワークを用いた人工知能はめざましい成果を上げ,より正確な出力,より高度な能力を求め,世界的に研究がなされている.ニューラルネットワークを簡素化・低消費電力化する1つの手法として近年,リザーバーコンピューティングが提案されている.本研究では,低消費電力で動作するリザーバーコンピューティングの実現に向け,マクロスピンモデルを用いたシミュレーションにより磁性ドットアレイによるリザーバーコンピューティングの動作検証を行った.非線形演算が必要とされる排他的論理和(XOR)関数ならびに,マルチビット入力の信号判別を実施した.その結果,本素子はリザーバーとして使用可能であることが判明した.当該素子は外部クロックによりその動作周波数を調整可能であり,エッジコンピューティングデバイス等で試用される低消費電力人工知能の素子として利用されることを期待している.
C-8. 超伝導エレクトロニクス
9月13日 13:00〜16:30 C棟 3F C305講義室 座長 山梨裕希(横浜国大)
C-8-1 |
単一磁束量子回路に基づく低電圧駆動ゲートレベルパイプライン算術論理演算器の設計と評価
○長岡一起・田中雅光・佐野京佑・山下太郎(名大)・井上弘士(九大)・藤巻 朗(名大) |
C-8-2 |
SFQ 1-symbol matching回路の高機能化と評価
◎秋月一真・山梨裕希・吉川信行(横浜国大) |
C-8-3 |
SFQパルス発振器に基づくSFQ乱数生成器の試作
○小野美 武(福岡工大)・水柿義直(電通大) |
C-8-4 |
オンチップSFQ FFTプロセッサの設計と動作実証
◎柯 飛・山梨裕希・吉川信行(横浜国大) |
C-8-5 |
Double-stack SQUIDを採用した12段RSFQ分布型出力アンプの試作と動作検証
樋口孔明・島田 宏・○水柿義直(電通大) |
C-8-6 |
クロック周期内での複数パルス出現を考慮したRSFQ回路シミュレーション
◎宇田津祥平・鬼頭信貴(中京大) |
C-8-7 |
広帯域クライオプローブの評価と電極パッドの影響
○鈴木秀雄・竹内尚輝・吉川信行(横浜国大) |
ビット並列演算とゲートレベルパイプラインに加え、低電圧技術(LV-RSFQ)を用いて、高スループットかつ高電力効率の算術論理演算器(ALU)を設計した。ALUには算術演算と論理演算の計6命令を実装した。試作したチップを評価した結果、高周波での正常動作を確認することができ、最高動作周波数は30 GHzとなった。この時の電力効率は算術演算で109 tera-operations per second per watt (TOPS/W)、論理演算で120 TOPS/Wとなった。
本研究では消費電力が半導体回路に比べ2~3桁低く、高速性においても数十GHzでの高速動作が可能であることが特徴である単一磁束量子 (Single Flux Quantum: SFQ)回路でNIDSを実現することを目指している。我々は、CEPシステムの構成回路であるCEDの中で、パターンマッチングを行う回路である8 bit 1-symbol matching回路において、動作実証を達成している。次の段階として、1-symbol matching回路の正規表現ORのアーキテクチャを変更し、高機能化を行った。
我々は、人工神経回路網を実現する一手法として、確率的論理演算方式を用いた超伝導ストカスティック演算による脳型計算を提案している。本方式による値のコーディングには一様乱数が必要であり、値が多ビットのディジタル値である場合、ビット毎に乱数生成器を配置することで効率的なコーディングが可能となる。その構成として、疑似乱数生成器を使用することを提案していたが、多数配置することは回路面積の増大を招くこととなる。本発表では、回路構成要素が少なくバイアス電流の動作マージンが大きい乱数生成器の実現を目的とし、ジョセフソン発振に基づく発振器ベースのSFQ ハードウェア乱数生成器の設計・試作を行った結果について報告を行う。
FFTはフーリエ変換を計算機上で高速に行うための演算アルゴリズムであり、画像解析、ハードウェア加速などの分野で広く応用されている。我々は高速動作と低消費電力性が特徴のSFQ (Single Flux Quantum)回路を用いた超高性能なFFTプロセッサの動作実証を目指している。
以前の報告では、すでに4 bit - 8 point SFQ FFTプロセッサをAIST 10kA/cm² Nb アドバンスドプロセス(ADP 2.2) を用いて実装し一周分の正常動作を確認した。しかし、FFT演算に必要な再帰的な演算の動作実証には至っていない。本研究では、FFTの機能を実証するために新たなアーキテクチャを提案し、データのビット数を7ビットに拡張して設計を行いました。そして、測定において正常動作を確認した。
Rapid single-flux-quantum (RSFQ) 回路のディジタル出力信号をオンチップで
増幅する回路に,RSフリップフロップ(RS-FF)と読み出しSQUIDを組み合わせた
基本セルを複数段接続した分布型アンプ(Distributed Amplifier: DA)がある。
このRSFQ回路用DAの出力電圧振幅(Vswing)を向上させる方法として,我々は
SQUID を double-stack SQUID (DSS) に置き換えた基本セルを提案し,4段DA回路の
試作と測定において 3.97 mV の Vswing を確認した。今回,段数を12段に増やした
DSS-DA回路の試作と測定結果について報告する。
単一磁束量子回路(RSFQ)回路は、論理値0, 1をパルスで表現するパルス論理を用いる。各クロックパルス間のデータパルスの有無によって論理値の0, 1を表現する。このとき、各ゲートでのパルスの到着順により、回路動作が変化する。そのため、パルスの到着順を記述することが、RSFQ回路の動作を正確に表示するために重要である。従来研究では、RSFQ回路のためのタイミング記述が可能な回路の表記法と、その表記法で記述された回路のシミュレーション手法を提案している。しかし、複雑なパルス到着順を持つRSFQ回路について表現できないものがある。本稿では従来研究の表記法を拡張する。
量子磁束パラメトロン(AQFP)回路や単一磁束量子(SFQ)回路の研究開発を進めている。これらの回路を高速で評価するために広帯域のクライオプローブ(YNU Cryo-probe)を開発し使用している。開発したプローブの高周波特性とチップ上の電極パッドの影響をTime domain reflectometry (TDR )とVNA (Vector network analyzer) により20GHzまでのSパラメータの評価を行った。高周波特性の評価過程において、場合によっては5GHz以下においても透過特性 (S21) がかなり悪い場合があった。その原因としては、プローブの問題ではなく、評価用に用いた超伝導チップのSi基板の導電性に起因することが分かった。
休 憩(15:00 再開) 座長 水柿義直(電通大)
C-8-8 |
Nb/Al-AlOx/Nbジョセフソン接合とdc-SQUIDを流れる 超伝導電流の二次元磁界変調特性
○江花昭哉ショーン・中山明芳・阿部 晋・渡邉騎通(神奈川大) |
C-8-9 |
磁束トラップがNb超伝導トンネル接合に流れるジョセフソン電流に与える影響
○彦坂卓哉・中山明芳・阿部 晋・渡邉騎通(神奈川大) |
C-8-10 |
Adiabatic Quantum Flux Parametron 回路のためのMajority-Logic TopDown環境の開発
◎齋藤蕗生・Christopher Ayala・Olivia Chen・田中智之・山田剛久・吉川信行(横浜国大) |
C-8-11 |
断熱量子磁束パラメトロン16-bit 桁上げ先読み加算器の設計と評価
◎△田中智之・Christopher L. Ayala・Olivia Chen・齋藤蕗生・吉川信行(横浜国大) |
C-8-12 |
Josephson-CMOSハイブリッドメモリにおける断熱的量子磁束パラメトロンの入力感度の調査
◎弘中祐樹・竹内尚輝・山梨裕希・吉川信行(横浜国大) |
C-8-13 |
量子磁束パラメトロンを用いたボルツマンマシン型ニューラルネットワークによる論理ゲートの検討
◎三宅航平・山口大貴・山梨裕希・吉川信行(横浜国大) |
接合形状が正方形、正方形が45度傾いた形状、円形、三角形のNb/Al-AlOx/Nbジョセフソン接合と、ジョセフソン接合が並列に並んだdc-SQUID構造の試料を作製し、接合面に平行に二方向から外部磁界を印加してジョセフソン電流の二次元磁界変調特性を測定した。外部磁界を二次元走査することにより、ジョセフソン電流の磁界変調特性の接合形状依存性を明瞭に観測することができた。また、dc-SQUIDを流れる超伝導電流の二次元磁界変調特性も明瞭に観測することができた。
Nb/Al-AlOx/Nbジョセフソン接合の作製及び、ジョセフソン電流の外部磁界による変調特性について研究を行っている。第二種超伝導体であるNb金属は、一定以上の強い磁界を印加すると磁束が離散的に侵入してしまう。超伝導体の形状を薄膜とした場合、薄膜に対して垂直方向の外部磁界には極端に磁束トラップが生じやすくなる。ジョセフソン電流の減少をもたらす磁束トラップはジョセフソン素子の応用にとって課題となる。本研究では、超伝導薄膜を用いたジョセフソン素子の下部電極層のNb金属の膜厚や幅を変化させることで、磁束トラップの影響の違いについて検証している。それぞれの素子で磁束トラップによって電流の減少が発生する垂直磁界の強さを調べた。
我々は、断熱的断熱磁束量子パラメトロン(Adiabatic Quantum Flux Parametron, AQFP)回路と呼ばれる超伝導論理回路についての研究を行っている。AQFP回路はCMOSと比較して10の5乗程度低い電力で動作可能であることが特徴の一つであり、CMOSに代わる論理デバイスとして期待されている。
低消費電力性という利点がある一方で、AQFP回路は設計のためのEDAツールが不足しているため、我々はCMOS回路設計で用いられているTopDown設計手法をAQFP回路においても利用可能にするための研究を行った。
また、AQFP回路ではMajorityベースによるセル設計を行っている。Majorityベースの論理合成ツールを導入することで、AND/ORベースの論理合成と比較して回路のDepthが削減可能であることを示す。
現在の情報化社会は、半導体集積回路が牽引してきたが、さらなる性能向上を満たすことが難しくなってきた。そこで、CMOSに代わる集積回路技術が必要である。
これを踏まえて、我々は断熱量子磁束パラメトロンに注目をして研究を行っている。既存のCMOS回路で構築されているシステムをAQFP回路で置き換えることで、低環境負荷で高速な計算器を構築できる。
本研究では、16-bit 先読み付き加算器の一つであるKogge-Stone Adderの設計と評価を行った。ランダムテストを含む55種類のテストベクトルを用いて測定を行い、部分的な動作を確認した。測定結果や、結果から得られた回路内部の誤動作の原因について報告する。
本研究では断熱的量子磁束パラメトロン (AQFP) 回路の、Josephson-CMOSハイブリッドメモリにおけるセンス回路として適用する場合の電流検出感度を調査した。ハイブリッドメモリを用いたシステムではCMOSメモリの消費電力がシステム全体において支配的となる。この消費電力の更なる低減に向け、メモリの出力抵抗の低減やトランスを用いた電流増幅による消費電力低減の効果を検討するため、熱雑音電流を模擬したシミュレーションを行いAQFP回路のグレーゾーンの評価を行った。
超伝導回路はその非線形な入出力特性から,以前より人工ニューラルネットワーク(ANN)を実現する系として研究が進められてきた.本研究において検討したボルツマンマシン型ANNは,ニューロン間の相互作用により系がエネルギー的に安定な状態に遷移することで入出力が得られる.本研究ではANNにおけるニューロンを,量子磁束パラメトロン(QFP)を用いて実現し,数入力程度の小規模な論理ゲートを構築した.
QFPをニューロンとして用いることで,低消費電力での動作が可能となる.また, QFPを一斉励起させて出力を得るため,階層ごとにQFPを励起する構成と比較して高速動作が可能となる.
C-10. 電子デバイス
9月10日 13:00〜16:30 A棟 2F A214講義室 座長 根来 昇(パナソニック)
C-10-1 |
0.5μmエミッタInP HBTの電流利得劣化について
○武藤美和(NTT)・栗島賢二・井田 実(NEL)・長谷宗彦・松崎秀昭(NTT) |
C-10-2 |
250 nm InP DHBTによる241 GHz帯域分布増幅器
◎徐 照男・長谷宗彦(NTT)・井田 実(NEL)・武藤美和・脇田 斉・寺尾直樹・野坂秀之(NTT) |
C-10-3 |
250nm InP DHBTによる128GBaud PAM-4信号生成IC
○長谷宗彦・脇田 斉・徐 照男・武藤美和・井田 実・野坂秀之(NTT) |
C-10-4 |
多電極人工視覚向け高周波給電システムの検討
◎森 康登・Chang Chia-Chi・遠藤広基・秦 真誉(奈良先端大)・鐘堂健三・寺澤靖雄(ニデック)・野田俊彦(豊橋技科大)・徳田 崇(東工大)・春田牧人・笹川清隆・太田 淳(奈良先端大) |
C-10-5 |
準マクスウェル視を用いたフォーカスフリー拡張現実システム
○服部励治(九大) |
C-10-6 |
振動型感覚フィードバックシステムにおける皮膚振動情報の定量評価
◎田嶋孝一・稲田一稀・葛西誠也(北大) |
0.5μm InP HBTについて加速試験を実施した。その結果、顕著な劣化を引き起こす(βが35%減少する)劣化モードの活性化エネルギーは1.2eV程度、125℃への外挿寿命は108時間以上であることを確認した。これは、回路の故障を引き起こしうる致命的なβ劣化モードにおいても十分な信頼性を有することを意味している。
増幅器は光通信や測定器等の様々な分野で使われる汎用的な部品である。近年、前記分野の高速化に伴い、近い将来200 GHz帯域を超える増幅器が必要になると予想される。本研究では、内製250 nm InP DHBTプロセス( ft / fmax = 460/480 GHz)を用いて帯域241 GHzの分布増幅器を設計・試作し、評価した結果を報告する。
通信トラフィックが急速に伸び続ける中,800 GbE/1.6 TbEの議論も始まり,100 GBaudを超えるような高シンボルレートでのPAM-4(4-level Pulse Amplitude Modulation)信号伝送技術に注目が集まりつつある.今回我々は,250 nm InP DHBT技術により128 GBaudまでの高品質なPAM-4信号生成が可能なICを実現したので報告する.
本研究では、多電極の人工視覚デバイスを実現するための高周波給電システムを検討した。人工視覚システムは、高解像度網膜疾患により視覚に障害を抱える患者に対し、埋植したデバイスにより網膜を電気刺激することで視覚を再建することを目的とし、一部で実用化が始まっている。しかし、刺激電極数の多点化および高密度化が課題の一つとなっている。これに対し、我々は埋植可能な集積回路を用いることにより少配線での多電極構造を提案している。生体に対する安全性を確保すると同時に、多電極構造を高フレームレートで駆動させる効率の良い電力伝送のために、眼球近傍での周波数変換を行うシステムについて検討した結果を報告する。
拡張現実(AR:Augmented Reality)とは,実環境に仮想イメージを重畳する技術である.このAR技術を用いると,人々はディスプレイに視線を移すことなしに、情報を得ることができるようになる.ただ、このとき、注視している対象物と仮想イメージの奥行方向での距離が一致していない場合,人々は情報を確認しようとするたびに眼の焦点調節を行う必要があり,疲労の原因となる.この問題を解決する方法として,レーザー等のコリメート性の高い光を用いて,網膜上に像を直接投影する方法としてマクスウェル視があるが、このでは眼球回転に追随できない問題があった。我々はこの問題を解決するために入射光の焦点を後方にずらした準マクスウェル視を提案し、検証実験の結果を報告する.
筋肉の活動電位(筋電位)を検出し制御する筋電義手は,現状その状態認識手段が視覚のみのため,身体性に欠け操作性に劣る.そこで視覚以外の感覚情報を人工的に生成しフィードバックする試みがなされている[1,2].ヒトは皮膚上の振動振幅や周波数の変化を敏感に知覚するため,我々は小型で軽量,低消費電力な偏心モータ振動子を用いた振動型人工感覚フィードバックに着目し,表現力の向上のために複数振動子の並列化とその時空間制御を検討している.本手法では振動子が皮膚に与える動的変化(振幅,周波数)の計測が必須である.本報告では振動子が皮膚に与える変化をピエゾ式振動センサを用い定量的に評価する方法を検討した結果について述べる.
休 憩(14:45 再開) 座長 山本佳嗣(三菱電機)
C-10-7 |
共鳴トンネルダイオード線路系を用いた自己注入同期発振器に関する研究
◎△澤井進也・楢原浩一(神奈川工科大) |
C-10-8 |
環境電波発電用を目指したGaAsSb/InGaAsバックワードダイオード集積レクテナの評価と理論モデル構築
◎山下晋平・劉 欣宇・須原理彦(首都大東京)・浅川澄人(都立産技高専)・河口研一・高橋 剛・佐藤 優・岡本直哉(富士通) |
C-10-9 |
GaAsSb/InAsナノワイヤーバックワードダイオード集積レクテナのマイクロ波帯ゼロバイアス検波特性の評価
山下晋平・劉 欣宇・○須原理彦(首都大東京)・浅川澄人(都立産技高専)・河口研一・高橋 剛・佐藤 優・岡本直哉(富士通) |
C-10-10 |
地デジ放送電波からの電力回収測定
◎平出佑弥・秋池菜々子・丸山和輝・河嶋佑哉・前多 正(芝浦工大) |
C-10-11 |
CLC共振型Dickson回路の設計と評価
◎秋池菜々子・平出佑弥・丸山和輝・河嶋佑哉・前多 正(芝浦工大) |
C-10-12 |
3Dフラッシュメモリの製造技術を用いた積層型全加算器の研究
◎鈴木章矢・渡辺重佳(湘南工科大) |
C-10-13 |
Si太陽電池と高出力LEDからなるEV制御用超高出力トランジスタ
○岡本研正(香川大)・中野逸夫(岡山大)・松下文夫(香川大)・細川正美(光半導体デバイス応用技研) |
本研究では,共鳴トンネルダイオード (RTD) を周期装荷した伝送線路複数からなる回路ネットワークを元に新しい自己注入同期発振器を提案する。複数の線分 RTD線路 (TL) の一端に DC 電圧を与えると電圧振動エッジが線路上を振動する現象が見られる。 TL の内点をリング状 RTD 線路 (TR) と接続すると, TL 上の振動エッジが TR 上で相互作用し特定の向きに周回する孤立パルスが誘起される。本提案は, TL の遠端を全て同一節点に接続し,位相差を持った短パルスを重ね合わせることによって、周回孤立パルスの自己注入同期を実現し、雑音特性の良好なパルス列を与える
センサネットワークの多様化に伴うセンサのバッテリーレス化に向けた技術開発の一つとして環境電波発電が期待されている。本研究ではこの要求に対しp-GaAsSb/n-InGaAsバックワードダイオード(BWD)と自己補対型広帯域ログスパイラルアンテナ(LSA)をBWDとの整合も考慮して集積設計したレクテナを提案している。ここでは設計・試作したBWDレクテナの実測整流特性の評価及び実測結果に基づき構築した理論モデルの検証と解析を目的とした研究結果を報告する。BWD/LSA集積レクテナのマイクロ波帯ゼロバイアス検波・整流特性について試作デバイスの実測特性により理論モデルを構築した。本理論モデルを用いた解析よりレクテナの更なる高電力変換効率設計が期待できる。
環境電波エネルギーハーベストの実現に向けたレクテナのRF-DC変換効率の向上が求められている。バックワードダイオー(BWD)はゼロバイアス近傍において高い非線形性を有するためµW級の環境電波を高感度に検波が可能である。本研究で採用しているp-GaAsSb/n-InAs BWDはp/nヘテロ接合を有するトンネルダイオードであり、ゼロバイアス領域において従来のショットキーバリアダイオードを超える高い非線形有するため高いRF-DC変換効率が期待できる。更にBWDをメサ面積の縮小、すなわちナノワイヤー化することで検波効率の向上が期待されている。本研究ではナノワイヤーBWDを集積したレクテナを試作し、マイクロ波帯の整流特性の測定を行ったので報告する。
地デジ放送電波のエネルギーは時間的に一定のエネルギーであるため,環境電波エネルギー源として魅力的である.今回,CLC共振型Dickson回路を用いて,地デジ電波からのエネルギー回収を実際に行ったので報告する.CLC共振型Dickson回路を用いて地デジ放送電波の電力回収を行い,最大2Vの電圧を回収できた.
前回、環境電波のエネルギー回収回路として、CLC共振回路を内蔵したDickson回路の設計を報告した[1]。今回、この回路を試作・実証し、設計通りの性能が得られたので、報告する。実装したDickson回路は、Skyworks製のショットキーバリアダイオード(SMS7621)、入力と整流に村田製1.2[pF]と1.1[pF]のキャパシタを用いた。次に、基板の寄生容量を抽出し、これより入力部共振回路のパラメータとして、インダクタンス値13[nH]、容量値1.2[pF]を決定した。
実装したDickson回路基板における周波数特性から、共振周波数は517MHz程度と、目標の520MHzに対して素子のばらつき変動の範囲内に収まっていることが確認できた。また、入力電力-20dBmにおいて、シミュレーション値に近い900mV程度の出力が得られることがわかった。
本論文では、従来使用されてきた平面型の加算器の設計法を積層型で実現するために、3Dフラッシュメモリの製造技術を用いた積層型全加算器の設計法を提案した。展開方式、複合方式1、複合方式2、コンパクト方式、2入力NAND/NOR、3入力NAND/NAND等の様々な積層型全加算器を設計し、トランジスタ数、シリコン柱数、パターン面積を従来の方式と比較した。
筆頭著者の岡本研正は2011年、高光力のLEDを3個直列にしたものとSiフォトダイオードを直列につなぎ、両者を5mm前後の間隔で対向させるとバイポーラトランジスタと同等の増幅能力を持つ新型トランジスタができることを発見し、この新デバイスをダイスター(distar)と命名した。また岡本はLEDとSiフォトダイオードの距離が近過ぎる場合や密着させた場合、ダイスターはサイリスタ同様のスイッチング動作を示すことも発見した(ダイリスタと命名)。2012年にはSiフォトダイオードに替えてSi太陽電池を用いることによりパワートランジスタ同様のパワーダイスターを作ることに成功した。ダイスターのメリットは①誰でも作れること、②大面積のSi太陽電池を用いるとともにLEDの数を増やすだけで超高出力トランジスタが開発できることである。筆者らはこの点に着目し、目下電気自動車や電気推進船などの制御に使える超高出力ダイスターの開発を行っている。本発表ではこれまでの研究成果について報告する。
C-12. 集積回路
9月10日 9:00〜11:45 C棟 2F C201講義室 座長 石川 亮(電通大)
C-12-1 |
ミリ波帯CMOS伝送線路上の物質による伝送線路特性への影響
○佐原健太・萩原豊之・高野恭弥・楳田洋太郎(東京理科大) |
C-12-2 |
0.18μm CMOSプロセスを用いたnMOSFETのミリ波帯コンパクトモデルの改善
○関根光輝・山木 夏・高野恭弥・楳田洋太郎(東京理科大) |
C-12-3 |
ミリ波帯CMOS MIMキャパシタのモデリング
○酒井 元・高野恭弥・楳田洋太郎・萩原豊之・山木 夏(東京理科大) |
C-12-4 |
異なるグランドスロット幅を有するスローウェーブ伝送線路の評価
◎小林知広・李 尚曄・天川修平・吉田 毅・藤島 実(広島大) |
C-12-5 |
二帯域同時受信LNAのゲイン偏差、雑音特性の改善に関する検討
◎澤山唯人・森下賢幸・小椋清孝・伊藤信之(岡山県立大) |
近年,IoTの普及によりCMOSチップの用途が拡大し,それらの用途に応じた様々な素材がパッケージとして考えられている.しかし,ミリ波回路ではチップ上の物質の影響を無視することができず,特に伝送線路は整合回路に使用されるが,チップ表面上の誘電体によって波長短縮効果が生じると電気長が長くなり,インピーダンス整合がずれてしまうという問題が生じる.そのため,予めチップ上の誘電体の影響を考慮した設計が求められる.本研究では,ミリ波帯CMOS伝送線路上に様々な物質を配置した時の位相速度の変化を明らかにした.物質による位相速度の減少分を考慮して回路設計を行うことにより,より正確な回路設計が可能になると期待される.
0.18 µm CMOSプロセスではミリ波帯まで対応したデバイスモデルが提供されていない.そのため,片山らの手法を用いて,山木らは0.18 µm CMOSプロセスを用いたnMOSFETの50GHzまで対応したコンパクトモデルを実現した.このモデルでは,モデルパラメータをゲート電圧とドレイン電圧を変数とした多項式で表現している.そこで,本研究では,多項式の次数の最適化を行い,モデルの精度を改善する.その結果,低次の多項式より高次の多項式を用いたほうが,Y12 (Vgs,Vds=1.6 V)以外では最大誤差率が減少し,Y21 (Vgs,Vds=0.4 V)では136%誤差が減少した.以上より,0.18 µm CMOSプロセスを用いたnMOSFETのコンパクトモデルの精度改善を実現することができた.
0.18 um CMOSプロセスを用いて試作したMIM (Metal–Insulator–Metal)キャパシタの50 GHzまでの測定データからシンプルかつ高精度なモデルを実現する.測定データには測定の際に必要なパッドや引き出し線の特性が含まれるため,それらの影響を取り除く必要がある.本論文では測定データからパッドや引き出し線成分をThru-only法やOpen-short法用いてディエンベッドすることによりシンプルな等価回路モデルが得られることを示す.作成した等価回路モデルの各素子の値はKeysight ADSを用いてフィッティングすることにより求める.測定データとモデルのYパラメータの21成分を比較することによりモデルと測定データの値がよく一致することを示す.
スローウェーブ伝送線路は位相速度を小さくすることにより、位相変化当たりの線路長を短くした伝送線路である。スローウェーブ伝送線路をインダクタやキャパシタの代用、信号の分離結合に用いることによりチップ面積を縮小することができる。スローウェーブ伝送線路はグランデッドコプレーナ伝送線路の底面グランドシールドにスリットを入れたような構造となっている。このスリット幅はこれまでよく研究されてこなかった。そこで本研究ではこのスリットの幅に対するスローウェーブ伝送線路の特性を調べた。
本研究では1.7GHz、3.5GHzにおけるゲイン偏差と雑音特性の改善を目指した二帯域同時受信LNAの提案を行った。提案したLNAは入力側に相互誘導型、出力側にノッチ型の整合回路を備えることでゲイン偏差の改善を行い、入力一次側のインダクタの一部を外付けにすることで雑音特性の改善を行った。1.7GHzにおいてゲインとNFは20.2dBと1.93dBであり、3.5GHzにおいて20.5dBと1.96dBであった。なお、使用したプロセスはROHM-180nmCMOSプロセスである。
休 憩(10:30 再開) 座長 古田善一(デンソー)
C-12-6 |
局所帰還を有する80GHzCMOS電力増幅最終段の検討
◎伊藤 駿・李 尚曄・吉田 毅・天川修平・藤島 実(広島大) |
C-12-7 |
fTダブラーを用いた24GHz帯増幅器の検討
○吉澤悠人・伊藤信之・小椋清孝・森下賢幸(岡山県立大) |
C-12-8 |
A High-Resolution LO Phase Shifter with Reduced Gain Variation at LO Path for 5G NR
○Zixin Chen・Jian Pang・Yun Wang・Atsushi Shirane・Kenichi Okada(Tokyo Tech) |
C-12-9 |
60GHz帯のLOリークとI/Qミスマッチ校正できる双方向ミキサ
○△Zhongliang Huang・Jian Pang・白根篤史・岡田健一(東工大) |
C-12-10 |
ミリ波無線機に向けた局部発振信号生成用高次高調波抑圧6倍周波数逓倍器
◎Joshua Alvin・Jian Pang・白根篤史・岡田健一(東工大) |
CMOS集積回路の電力増幅最終段にはソース接地回路(CS),ゲート接地回路(CG),ドレイン接地回路(CD)が用いられる.一方,ミリ波CMOS集積回路では局所帰還が広く用いられる.局所帰還には,入出力間にリアクタンス素子を挿入する並列帰還と,入出力共通端子とグランド間にリアクタンス素子を挿入する直列帰還がある.本研究では,CS, CG, CDの3種の電力増幅最終段に局所帰還をかけた時の特性をシミュレーションにより検討し,80GHzでの電力増幅回路の最終段に適する回路を考察した.
無線通信のデータレートの向上に伴い、キャリア周波数の高周波化が求められている。高周波領域の増幅器を実現するには、通常高コストなプロセスが必要である。本研究では、高周波領域における増幅器を低コストな集積回路プロセスで実現するための一手法を検討した。用いた基本回路は、fTダブラーといわれる回路であり、ふたつのトランジスタをダーリントン接続したものを含む回路である。fTダブラーを組み込み、2段増幅器とすることでS21=15.2dBのシミュレーション結果が得られた。本研究の結果により、より低いコストで高周波帯増幅器を構成することが可能と考えられ、高周波化する無線通信の発展に寄与するものである。
A high-resolution LO phase shifter with reduced gain variation at LO path is introduced in this work. The proposed phase shifter consisting of a 3-bit coarse phase selector and a fine tuning stage is capable of covering 360°. A fine phase shifting range of 48.5° causes a gain variation of only 1dB at the LO path.
近年,60GHz帯を用いた無線通信の研究が活発に行われている。60GHz帯では世界各国において,幅広い帯域が無免許で解放されており,この広い帯域を利用することでGbps 級の超高速無線機を実現できる。かなりのオンチップ面積を消費するMIMO構成を考慮すると、コンパクトな双方向トランシーバーを採用するのは面積効率の良いソリューションである。本研究は双方向トランシーバーに応用する双方向ミキサを設計した。
In this paper wideband x6 multiplier circuit with low power consumption, high harmonic suppression characteristic for LO signal generation in milimeter wave transceiver is introduced.
9月10日 13:00〜16:30 C棟 2F C201講義室 座長 吉原義昭(東芝メモリ)・川嶋将一郎((富士通セミコンダクター))
C-12-11 |
Link Budget Design for 5G 28GHz Phased-Array Transceiver
○Xiaofan Gu・Jian Pang・Atsushi Shirane・Kenichi Okada(Tokyo Tech) |
C-12-12 |
A High-Accuracy Calibration Circuit for Large-Sized 5G Phased-Array Transceiver
◎Rattanan Saengchan・Jian Pang・Dongwon You・Fadila Ashbir Aviat・Joshua Alvin・Rui Wu・Yun Wang・Atsushi Shirane・Kenichi Okada(Tokyo Tech) |
C-12-13 |
A 39 GHz CMOS Phased-Array Transmitter for 5G NR with LOFT Auto-Cancellation
◎Yun Wang・Dongwon You・Rattanan Saengchan・Atsushi Shirane・Kenichi Okada(Tokyo Tech) |
C-12-14 |
A 60GHz Bi-Directional Transceiver for IEEE 802.11ay
○Jian Pang・Korkut Tokgoz・Atsushi Shirane・Kenichi Okada(Tokyo Tech) |
C-12-15 |
A 21.7% System Power Efficiency Fully-Synthesizable Transmitter for sub-GHz IoT Applications
○Bangan Liu・Yuncheng Zhang・Junjun Qiu・Wei Deng・Zule Xu・Haosheng Zhang・Jian Pang・Yun Wang・Rui Wu・Teruki Someya・Atsushi Shirane・Kenichi Okada(Tokyo Tech) |
C-12-16 |
Digital Baseband Design for Sub-GHz Transceiver
○Junjun Qiu・Bangan Liu・Yuncheng Zhang・Teruki Someya・Atsushi Shirane・Kenichi Okada(Tokyo Tech) |
C-12-17 |
n-pathフィルタを用いたサーキュレータのシミュレーション
◎齊藤 輝・古幡壮太朗・工藤千碩・前多 正(芝浦工大) |
The next generation mobile communication network 5G is expected to provide users with over 10-Gb/s wireless data rate. At 28GHz, beamforming technique makes it possible to increase the wireless communication distance. A 5G mobile communication link over 400-meter distance is presented in this work.
Millimeter-wave spectrum with wide bandwidth will be utilized for the next generation mobile network 5G. However, due to the high frequency in this spectrum, the path loss will become larger. Thus, beamforming technique is introduced to the mm-wave band. By assigning different phase shifting between different element transceivers, we can point the signal to the desired direction. However, phase and amplitude errors will occur between each element due to the fabrication. In this work, we introduce a high-accuracy calibration circuit which phase and power level of the output signals can be reflected by this calibration circuit.
This paper presents a 39GHz phased-array transmitter for 5G new radio. The LO feedthrough (LOFT) automatic cancellation mechanism is proposed. The transmitter array achieves over 33 dB improvement on LOFT suppression.
The incoming IEEE 802.11ay standard in 60-GHz band is targeting at realizing over 20Gb/s wireless data rate. Techniques such as MIMO will be utilized in IEEE 802.11ay. However, an IEEE 802.11ay MIMO system is costly regarding the required additional transceiver elements and antennas. Methods for suppressing the system size along with the manufacturing costs are strongly demanded. A bi-directional transceiver designed for IEEE 802.11ay is introduced in this work. A maximum data rate of 28.16Gb/s is achieved with reduced area and system size.
In this paper, a low power fully synthesizable transmitter is presented.
The transmitter is designed for sub-GHz applications, and achieved excellent
EVM and ACPR performance. The TX occupies 0.12 mm2 area, and achieved 21.7%
system efficiency at 0dBm output power.
This work focuses on the digital baseband circuit design for
GMSK demodulation, which is applied in Sub-GHz receiver.
Compared to the analog circuit, the digital circuit is preferable in
low frequency circuit design for its noise immunity and design
convenience. The designed digital baseband circuit is composed
of demodulation, timing recovery and detection
3λ/4伝送線路とn-pathフィルタを用いたサーキュレータ(n-pathサーキュレータ)は, 小型化が可能であることから, 完全二重通信のモバイル端末の実現に大きく貢献することが期待される. 今回, n-pathサーキュレータのTX-RXアイソレーション及び, 送信損失の送信電力依存性について調査したので報告する.
休 憩(15:00 再開) 座長 木原崇雄(阪工大)
C-12-18 |
A 2.4GHz Low-Power Subsampling/Sampling-Mixed Fractional-N All-Digital PLL
◎Hongye Huang・Hanli Liu・Zheng Sun・Dingxin Xu・Teruki Someya・Atsushi Shirane・Kenichi Okada(Tokyo Tech) |
C-12-19 |
A Time-Amplifier Gain Calibration Technique for ADPLL
◎Dingxin Xu・Zheng Sun・Hongye Huang・Teruki Someya・Atsushi Shirane・Kenichi Okada(Tokyo Tech) |
C-12-20 |
0.2mW 70fs Jitter Injection Locked PLL
◎△Haosheng Zhang・Hans Herdian・Atsushi Shirane・Kenichi Okada(Tokyo Tech) |
C-12-21 |
サイクルスリップ補正用サブΔΣ変調器を備えたfrac-N PLL間位相同期
◎池田 翔・平井暁人・堤 恒次・津留正臣(三菱電機) |
C-12-22 |
A 78 fs RMS Jitter Injection-Locked Clock Multiplier Using Transformer-Based Ultra-Low-Power VCO
◎Zheng Sun・Dingxin Xu・Hongye Huang・Teruki Someya・Atsushi Shirane・Kenichi Okada(Tokyo Tech) |
C-12-23 |
インダクタ結合Class-C発振器の検討
◎田島直樹・小椋清孝・森下賢幸・伊藤信之(岡山県立大) |
Subsampling PLLs can give a better trade-off between power and phase noise. However, it may possibly fail to lock the output in the desired frequency. In this work, a subsampling/sampling-mixed fractional-N all-digital PLL is proposed. To benefit both in power and noise, an automatically controlled switch between subsampling mode and sampling mode is shown. The measurement results show that the power consumption achieves only 265µW, while the FOM achieves −236.8 dB in 65nm CMOS technology.
A new time amplifier gain calibration technique was proposed, achieving 6.25% gain error. The proposed gain calibration technique can be used for TDC resolution-boosting in low power ADPLL application.
In this paper, a de-sensitized SSPD based injection timing alignment with a RC pulse generator is presented to maintain low reference spur and low jitter. A Class-D VCO is utilized with 0.12mW power consumption to get a record PLL FoM.
近年,携帯無線,衛星通信等幅広いアプリケーションでの利用が期待されているAESA (Active Electronically Scanned Array) はビームの指向性制御を電子的に行うことが可能である.AESA において各アンテナ素子へ電力を供給するユニットセル毎に高周波の信号源を付与する方式は,単一の信号源から各ユニットセルへ高周波信号を分配する構成と比べて信号分配回路が削減できる一方,各ユニットセル間の位相同期が課題となる. 本稿では, 信号源としてfractional-N PLL を用いたときにPLL 毎に発生するサイクルスリップによる位相ずれを補正する構成を提案し,複数PLL 間の位相同期に対する有効性を確認したので報告する.
This paper presents a low jitter performance and low power consumption injection-locked clock multiplier (ILCM) for IoT application in 65-nm CMOS. A transformer-based ultralow power (ULP) LC-VCO is proposed to minimize the overall power consumption. The introduced capacitor feedback path boosts the VCO loop gain and thus a robust startup can be obtained. Thanks to the proposed low power VCO, the total ILCM achieves 78 fs RMS jitter while consuming 210μW power. A -269 dB FoM jitter and power is achieved by this proposed ILCM while considering the 520MHz input reference with multiplication factor equals to 5.
本研究ではインダクタ結合Class-C発振器の高周波領域における実現性と位相雑音、消費電力について検討を行った。インダクタ結合Class-C発振器におけるドレイン側とゲート側のインダクタの高い結合係数によって位相雑音が改善されると考えられ、高い結合係数が得られるようにM2~M5を用いた階層構造にしたインダクタを設計した。電磁界解析の結果、結合係数はインダクタ構造の対向メタル数2以上で0.9以上が得られる結果となった。また、高いインダクタンスは位相雑音の改善となることが発振器のシミュレーションから確認された。その結果、M3 vs M2+M4+M5のインダクタ構造では消費電力3.06 mWにおいて1MHz離調における位相雑音は−108.7 dBc/Hz、FoMは191.3 dBであった。
9月11日 9:00〜11:45 C棟 2F C201講義室 座長 萩野浩一(リコー電子デバイス)
C-12-24 |
ラッチアップ耐性を備えた3セル太陽電池用高効率チャージポンプ回路
◎Anqi Song・吉澤浩和(埼玉工大)・宇都宮文靖・須藤 稔(エイブリック) |
C-12-25 |
ワイヤレス電力伝送におけるQ値増大法を適用した最適負荷の研究
◎鈴木統万・杉本泰博(中大) |
C-12-26 |
昇圧型CMOS駆動回路における放射線(TID)の影響
◎安藤 幹・大島佑太・吉田僚一郎・平川顕二・岩瀬正幸・小笠原宗博・依田 孝・石原 昇・伊藤浩之(東工大) |
C-12-27 |
光再構成型ゲートアレイVLSIの放射線による特性劣化の評価
◎伊藤嘉俊・渡邊 実(静岡大) |
C-12-28 |
深層学習による無線端末同定および分類
○柳澤 潔・田村比呂・白根篤史・岡田健一(東工大) |
本研究では、約1.5Vの太陽電池の出力を2倍昇圧して3 V系のリチウムイオン電池に充電するにあたり、ラッチアップ防止策として2倍昇圧回路のPMOSスイッチのボディ端子に4 Vを与える回路構成を提案した。10μA~1 mAの入力電流に対して、92%以上の効率で2倍に昇圧することを確認した。
近年,スマートフォンの普及や電気自動車の開発によって,より簡便な給電方法が求められている.その中で、無線電力伝送が注目されている.その安全性および利便性のために,交通系ICカードやモバイル機器の充電器などに代表される形で実用化が進み,将来的には植め込み可能な医療機器分野への応用も期待されている.ただしこれらの実現には高効率,長距離,位置ずれに対するロバスト性,大電力をバランスよく兼ね備えた伝送が求められる.本研究では受電側の損失を低減するQ値増大手法、およびそれを適用した場合の最適負荷特性について検討を行った.
宇宙,原子力等の放射線照射環境では放射線による半導体の特性劣化や故障が問題となる.我々は多量の放射線が長期間照射される環境でMOSFETの特性を劣化させるTID効果の対策技術を検討している.TID効果の中でも,小サイズのMOSFETが放射線の影響を受ける割合が大きくなる特徴をもつRINCEが報告されている.
本報告では,MOSFETの特性劣化が,アナログ回路動作へ与える影響を明らかにするために,アナログ的動作をするI/O用の昇圧型CMOS駆動回路を対象とした.放射線照射実験を実施し,放射線照射による回路動作への影響(TID)を明らかにした.
宇宙空間や原子力発電所などの高エネルギーの放射線環境下でデバイスが使用される場合,そのデバイスには放射線による劣化が生じ,最終的には恒久故障へとつながる.そこで,我々はその放射線に対して高い耐性を持つ光再構成型ゲートアレイ (ORGA:Optically Reconfigurable Gate Array) の研究開発を行っている.本稿では,まず,光再構成型ゲートアレイ VLSI の放射線による劣化状況を示し,論理ブロック毎に劣化の度合いにばらつきがあることを示す.そして,ゲートアレイ VLSI 上で劣化の度合いが小さいリソースにクリティカルパスを割り振ることによって,実装する回路の性能劣化を最小限に抑えることが可能になることを報告する.
本研究では疑似無線信号学習データ生成と畳み込みニューラルネットワークCNN(Convolutional Neural Network)による無線物理層信号データからの識別特性について述べる。
休 憩(10:30 再開) 座長 兼本大輔(阪大)
C-12-29 |
DGSインダクタを用いた5G向け28GHzCMOS増幅器の設計
◎小原啓希・陳 柏川・バラカット アデル・吉富邦明・ポカレル ラメシュ(九大) |
C-12-30 |
Millimeter-wave CMOS Differential Bi-directional Amplifier for 5G Communication
◎Zheng Li・Jian Pang・Xueting Luo・Atsushi Shirane・Kenichi Okada(Tokyo Tech) |
C-12-31 |
第5世代移動通信システムに向けた28GHz帯双方向増幅器
◎Xueting Luo・Jian Pang・Zheng Li・白根篤史・岡田健一(東工大) |
C-12-32 |
A 22.7dB Three-stage D-band Power Amplifier in 65nm CMOS
○Chun Wang・Ibrahim Abdo・Atsushi Shirane・Kenichi Okada(Tokyo Tech) |
C-12-33 |
CMOS Transistor Layout Optimization for Sub-THz Amplifier Design
◎Ibrahim Abdo・Korkut Kaan Tokgoz・Takuya Fujimura・Jian Pang・Atsushi Shirane・Kenichi Okada(Tokyo Tech) |
近年データトラフィックは急増し、莫大なデータレートのために5Gへの要求が高まっている.増幅回路においてもその要求は高く、安価で性能の高い増幅器が望ましい.今回は5Gでも使用が決まっている28GHz帯のCMOS増幅器の設計において、Q値が高く、小さい値のインダクタンスを実現できる欠陥グラウンド構造(DGS)インダクタを用いて回路設計を行い、高い利得と面積の小型化を実現したことを報告する.
A 28GHz differential bi-directional amplifier in a standard 65nm CMOS process is presented. This work is realized based on the neutralized bi-directional core together with the fully shared inter-stage matching networks. The core chip area is only 0.11mm2. At 28GHz, a 15.4-dBm saturation output power and a 4.6-dB noise figure are realized for PA mode and LNA mode, respectively. The DC power consumptions for PA mode and LNA mode are 149mW and 31mW, respectively, under 1-V DC supply.
スマートフォンの普及や超多数端末接続の増加に伴い、無線通信システムの高速化と大容量化への要求が高まっている。新しい要求に満たせるよう、次世代無線通信技術(5G)への開発が盛んになっている。その中で、28GHzは他の周波数帯と比べて、水蒸気と酸素の影響を受けにくく、注目を集めている。
本論文では、28GHzにおいて送信及び受信の両方の動作ができる双方向増幅器を提案する。従来の双方向増幅器はスイッチを使い、モードの切り替えを実現するため、大きな回路面積を占める。今回提案する双方向増幅器はゲートバイアス電圧を制御することによって、モードの切り替えを実現するため、回路面積を半分に抑えることができる。
A three-stage single-ended D-band PA is presented in this paper. It achieves 22.7dB at 122.8GHz and 3-dB bandwidth is from 117.0 to 126.2GHz.
Sub-THz frequency region is attracting a lot of attention lately due to various promising emerging applications including chip-to-chip ultra-fast communication systems, high resolution imaging and radars, astronomical applications and so on. Compound semiconductor transistors have higher ability to operate and amplify at sub-THz frequencies because of the high fmax compared to the CMOS transistors. However, being able to realize sub-THz CMOS amplifiers will lower the cost of sub-THz systems and improve their integration and compatibility with the digital processing circuits.
9月12日 9:00〜11:00 C棟 2F C201講義室 座長 升井義博(広島工大)・新居浩二(フローディア)
C-12-34 |
異なるタイミングの位相情報を用いたTime to Digital Converterの高分解能化に関する検討
○森野芳昭・津留正臣(三菱電機) |
C-12-35 |
容量型TIAを用いた光プローブ電流センサ向けCMOSアナログフロントエンド回路の高精度化の検討
○赤羽和哉・清水 昂・高木憲太郎・曽根原 誠・佐藤敏郎・宮地幸祐(信州大) |
C-12-36 |
RGC-TIAの利得が帯域と入力換算雑音の関係に与える影響
◎中田吉弥・土谷 亮・谷村信哉・井上敏之・岸根桂路(滋賀県立大) |
C-12-37 |
カスコード構成を用いたIC温度センサの高感度化
○田中一輝・升井義博(広島工大) |
C-12-38 |
Switched Capacitor Multiplier-Accumulator Circuits for Near-Pixel Convolutional Neural Networks
○CHENG-HSUAN WU・Makoto Takamiya(The Univ. of Tokyo) |
C-12-39 |
IoTデバイスに向けたマルチバイブレータの低消費電力化
◎西宮 司・荒川祐貴・時永征弥・升井義博(広島工大) |
C-12-40 |
低電圧チャージポンプ回路における差動リング型発振器の検討
◎上見アレックス・荒川裕貴・時永征弥・升井義博(広島工大) |
C-12-41 |
結晶性酸化物半導体n型FETを用いた2 mHz, 44 aW発振回路の設計
○王 叡智・崔 通(東大)・磯部敦生・山崎舜平(半導体エネルギー研)・高宮 真(東大) |
TDC (Time to Digital Converter)は2つの信号の入力時間差をデジタル値として出力する回路であり,時間差情報を利用する距離計測などに用いられる.一般的には固定遅延量をもつインバータを縦続接続し,遅延時間を利用してスタート信号とストップ信号の時間差を出力する.TDCの分解能はインバータの遅延時間(τ)に基づいて決定され,先端の製造プロセスを用いてトランジスタのゲート長が短いほど高い分解能が得られる.しかしながら先端の製造プロセスは製造費が高価であるため,製造プロセスに依存せずTDCの分解能を高くするための回路構成を提案する.提案するTDCはスタート/ストップ信号が入力されたタイミングと更に3/2τ遅延したタイミングのインバータの位相情報を利用することで分解能を1/2τと高分解能化でき,トランジスタのゲート長を緩和できる効果を確認した.
電気自動車、航空機等のパワーエレクトロニクスに用いる電流センサとして磁気光学効果を利用した光プローブ電流センサの研究が進められており、このセンサには高い電流電圧変換利得をもったアナログフロントエンド (AFE)回路が必要となる。本研究ではバッテリーモニタリングや落雷検知精度の向上を目的としており、AFE回路ではDC~20kHzの帯域でダイナミックレンジ80dBと高精度な測定を目標とした。そのため容量型TIA (Transimpedance Amplifier)により同相除去比(CMRR)の向上を図り、チョッパーアンプ構成によりオフセット補正を行った。測定ではCMRRが36.53dB、歪み特性のSFDRが40.62dBとなった。オフセットはチョッピングの効果により36.5mVから16.1mVへ減少したことを確認した。
トランスインピーダンスアンプ(TIA)には,後段にポストアンプを接続し多段化したものが提案されている.TIAとポストアンプで達成すべき利得は決まっており,利得は帯域と雑音特性に大きく影響する.そのため,TIAとポストアンプの利得をどのように設計するかが問題となる.そこで今回は,レギュレーテッドカスコード型TIAにおいて,電力を考慮した上で,利得が帯域と入力換算雑音の関係に与える影響について検討を行い,明らかにした.これによって,TIAの設計指針を得た.
近年,環境データを計測する複数のセンサが相互に接続され,ネットワークを形成するセンサネットワークが実現されている.センサネットワークにおいて温度センサは施設の屋内環境の可視化,農業において温室やビニールハウス内の環境モニタリングなどで利用されている.特に極小スペースで温度センサを実現できるIC温度センサの高精度化は多くのアプリケーションで期待されている.本研究ではIC温度センサの高感度化、低消費電力化を目指しIC温度センサを設計し実測を行ったので報告する.
Although deep convolutional neural network (CNN) shows powerful image recognition applications, the matrix-based multiply–accumulate operations (MACs) dominate most of the power consumption due to big access data among the interfaces of imager, the memory and GPU. So far, Several approaches including weight-bit-precision-reduction, networks-pruning and near/in-memory computation shows the possibilities of low-energy consumption. In this work, we propose a near-pixel CNN switched capacitor multiplier-accumulator circuit to approach high-energy-efficiency of convolutional operations by doing binary-weight analog-domain matrix computations near pixels instead of long transmission signal lines.
近年,ウェアラブル端末などに代表されるIoTデバイスが普及している.IoTデバイス内にはAD変換器やセンサなどの信号処理回路が組み込まれており,それらに向けた一定周期のクロックも必要とされている.本研究においては数MHz程度のクロック生成を目指して発振器であるマルチバイブレータを設計した.例えば人体に装着するIoTデバイスの場合,スペースの制限からバッテリーの搭載量が限られる.そのため低消費電力化を目標として発振器の設計を行った.
近年,エネルギーハーベスティング技術は光・熱(温度差)・振動など様々な形で環境中に存在するエネルギーを電力として収穫でき,充電・取り替えなしで長期間エネルギー供給が可能な電源として期待されている.しかし収穫できる電圧が低く,安定しないという欠点がある.そのため電源(昇圧)回路が大きな役割を担うことになる[1].また,電源回路はクロック生成回路が必要であり,本稿では低電圧昇圧回路を想定したリング型発振器について提案を行う.
長周期センシングのIoT分野におけるスタンバイモードの消費エネルギー低減策として、酸化物半導体n型FETを用いてシリコンMOSFETでは実現困難なサブ100 aWの発振回路(2 mHz, 44 aW)を設計した。今後、試作チップを測定予定である。
C-13. 有機エレクトロニクス
9月12日 9:45〜11:30 C棟 2F C206講義室 座長 田口 大(東工大)
C-13-1 |
光第2次高調波発生(SHG)測定による摩擦電気の正電荷と負電荷の可視化
○田口 大・間中孝彰・岩本光正(東工大) |
C-13-2 |
導電糸人工筋肉の電気抵抗の長さ依存性における非線形性
○多田和也・郭 誠起(兵庫県立大) |
C-13-3 |
Rasberry Piを用いたWebブラウザ表示型リアルタイムマルチガス分析
◎江村鷹基・鈴木隆起・都倉勇貴・阿部純一郎・堀 豊・白鳥世明(慶大) |
環境にやさしいトライボ発電の研究開発が加速している。しかし、摩擦電気の発生と高分子のミクロ起源(電荷移動と双極子)の関係は十分に明確化されているとはいえない。我々は、電界誘起光第2次高調波発生(SHG)測定の波長選択性により、トライボ発電層のミクロ起源を特定できると考えて研究を進めてきた。これまでに、PMDA-ODAポリイミドの摩擦電気のうち電荷変位をSHG法で可視化することに成功した。しかし、通常のSHG測定系の構成では電荷の正負の判定は難しい。本発表では、SHG測定系に局部発振を加えて位相の基準とすることで電荷の極性(正電荷、負電荷)を分けて可視化できることを報告する。
導電糸を自己コイル化させて作製した電気駆動型の人工筋肉の電気抵抗の長さ依存性において,S字型の非線形性を見出したので報告する。これは長さが変化することで,人工筋肉中の隣接するコイル間の接触状態が変わるためであると考えられる。
現在、ガスのモニタリングは医療・工業分野において、病気の診断や危険ガスの検知などで大きく注目を集めている。水晶振動子ガスセンサは高感度検知が可能となるデバイスで、リアルタイムかつマルチガス分析を行っている報告例はあるものの、実用的なレベルに普及していない。そこで我々はRaspberry PiとWebブラウザを用いて、水晶振動子の周波数データのリアルタイムグラフ表示を行い、ネットワークを介して利用可能なセンサ系を構築した。またメチルメルカプタンガスを用いてガスに対する応答を確認した。環境モニタリング、ヘルスケアに向けて、より精度の高いガス検知を目指す。
休 憩(10:45 再開)
C-13-4 |
液晶デバイスの光位相変調の不均一性が回折効率と解像度特性に与える影響
◎千田一馬・磯前慶友・石鍋隆宏・柴田陽生・藤掛英夫(東北大) |
C-13-5 |
狭帯域検出に向けたバルクヘテロ接合型高分子受光素子のデバイス構造の検討
○梶井博武・奥井陽有人・近藤正彦(阪大) |
C-13-6 |
PbI2を下地とした有機ペロブスカイト活性膜の成長過程
○森 竜雄・近藤良紀・清家善之(愛知工業大) |
電子ホログラフィックディスプレイの位相変調素子として用いられるLiquid Crystal on Silicon (LCOS) において、厚みムラがあることによって全面内の位相変調ムラが生じ、液晶配向ムラがあることによって画素内の位相変調ムラが生じる。しかし、これらの位相変調ムラがホログラム再生像の画質へ与える影響は詳細に議論されていない。そこで、本研究では、これらの位相変調ムラが回折効率と解像度特性に与える影響について、シミュレーションを用いて、検討を行った。その結果、画素内のムラは、画素周辺部の位相により回折効率を低下させる一方、厚みムラは、1次回折光の角度がぶれることにより解像度を低下させることを明らかにした。
近年,多波長検出することが注目されており,マルチスペクトル化することで人間の目では分からない物体の性質を知ることができ,医療分野や食品,農業,マシーンビジョンなどの様々な分野での応用が期待されている.マルチスペクトルを検出するためには受光素子を狭帯域検出することが必要である.本研究では、従来一般的に有機受光素子の研究で用いられている材料を用いて、デバイス構造の面から検討を行い、狭帯域化に向けた指針を得ることを目的に、狭帯域検出に向けた高分子受光素子の作製と受光感度特性の検討に関して検討を行った.狭帯域化には薄膜中の材料に起因するキャリアの取り出し効率が重要な因子であることを見出した。
太陽電池に利用する、酸化鉛を利用した2ステップ法により作製された有機ペロブスカイト膜の成長過程について検証し、太陽電池特性との比較を行う。今回はX線回折により得られた結晶ピーク強度と半値幅をもとにその成長過程を推定した。
C-14. マイクロ波・ミリ波フォトニクス
9月10日 9:00〜11:45 C棟 1F C101講義室 座長 山田崇史(NTT)
C-14-1 |
28GHz帯アンテナ電極電気光学変調器を用いたデータ伝送実験
◎横橋裕斗(三重大)・松川沙弥果(産総研)・佐藤正博・鳥羽良和(精工技研)・黒川 悟(産総研)・村田博司(三重大) |
C-14-2 |
28GHz帯A-RoF用光送信器の簡易回路の小型化検討
○田中 聡・相葉孝充・安田裕紀・鈴木敏訓・若林知敬(矢崎総業) |
C-14-3 |
A-RoF用高利得アンプのモジュール化検討
○鈴木敏訓・田中 聡・安田裕紀・相葉孝充・若林知敬(矢崎総業) |
C-14-4 |
フォトコンダクタ受信器を用いた100 GHz帯リアルタイム無線伝送
◎綾野史也・山本拓実・易 利・永妻忠夫(阪大) |
C-14-5 |
FMBダイオード検出器を用いた300 GHz帯無線伝送
◎東本大樹・易 利・永妻忠夫(阪大)・伊藤 弘(北里大) |
近年,ミリ波を用いた第5世代(5G)無線通信システムが注目されており,ミリ波は自由空間伝搬やケーブル伝搬において伝搬損失が大きいため,無線信号を光信号に変換して伝搬するRadio Over Fiber(RoF)システムが有用とされている.そこで我々は無線信号を直接光に変換するアンテナ電極電気光学変調器のデータ伝送実験を行っている.アンテナ電極光変調器はパッシブ無線-光信号変換素子や低擾乱な光電界センサ・プローブとしても有用であり,5G無線通信向けのアンテナ精密測定への応用も期待できる.5Gの搬送波周波数は28GHz帯を使用することが決定した.今回,高帯域幅の周波数特性の確認や,1.5Gb/sデータ伝送実験にも成功したので報告する.
近年、IoT(Internet of Things)の普及により、無線アクセスシステムの伝送容量の増大が予想される.また伝送容量の増大に伴い搬送波周波数にSHF帯の使用が検討されており、マルチモード光ファイバ及びVCSELを用いたアナログRoMMF(Analog-Radio over Multi Mode Fiber)が有効な手段の一つとして期待されている.我々はVCSEL直接変調による28GHz帯RF光送信器用の駆動回路の簡素化を進めており、今回、簡素化回路の小型化を検討した.
アナログ光ファイバ無線(A-RoF : Analog-Radio over Fiber)に向けた高利得RFアンプのモジュール化について検討を行い,発熱を考慮した小型化と, 高利得と未発振な特性が得られることを確認し, A-RoFへの適応可能性があることを確認した.
テラヘルツ波帯におけるコヒーレント多値変調でのさらなる高速化を制限する要因として, 受信側のミキサ(サブハーモニックミキサ)のLO信号を周波数逓倍により生成しており, それによる位相雑音の影響が無視できないことが報告されている. 今回, 我々は受信側で, LO信号の生成の際に電気信号の周波数逓倍を必要としない光技術に基づくフォトコンダクタ受信器の導入を検討し, OOK変調による100 GHz帯でのリアルタイム伝送を行った. また, リアルタイムでの通信を実証するために, ビデオ映像でアナログ変調を行い, リアルタイム伝送実験によって復調の安定性を確認した.
近年, テラヘルツ波帯(100 GHz – 10 THz)を用いた無線通信が注目される中, 100 GHz~300 GHz帯での研究開発が盛んに行われ, 数10 Gbit/sを超える無線伝送が報告されている.
テラヘルツ帯通信では従来, 直接検波方式にて復調を行う受信器としてショットキーバリアダイオードが使用されてきたが, より高い受信感度を持つFMB (Fermi-level Managed Barrier) ダイオードモジュールが提案されている. また, 本モジュールをコヒーレントホモダイン検波方式に用いることで, 12.5 Gbit/sのエラーフリー通信 (300 GHz帯)が報告されている.
今回, FMBダイオードを直接検波方式の無線通信実験に適応し, 20 Gbit/sまでの伝送実験を行った.
休 憩(10:30 再開) 座長 菅野敦史(NICT)
C-14-6 |
共鳴トンネルダイオードを用いたリング型発振器による300 GHz帯無線通信
◎西上直毅・木村有基(阪大)・金 在瑛(ローム)・冨士田誠之・永妻忠夫(阪大) |
C-14-7 |
THz Wireless Communications using OOK & CDMA Modulation with Resonant Tunneling Diodes
○Julian Webber・Naoki Nishigami(Osaka Univ.)・Jae-Young Kim(Rohm)・Masayuki Fujita・Tadao Nagatsuma(Osaka Univ.) |
C-14-8 |
300 GHz帯QPSKリアルタイムコヒーレント無線通信
◎山本拓実・綾野史也・東本大樹・易 利(阪大)・藤原正満・飯山法子(NTT)・永妻忠夫(阪大) |
C-14-9 |
600 GHz帯低コヒーレンス信号発生の高出力化の検討
○匂坂知貴・久次米祐助(阪大)・菊地真人・久々津直哉(アイレック技建)・易 利・永妻忠夫(阪大) |
C-14-10 |
900 GHz帯を利用したギガビットテラヘルツ無線通信
◎菅田雅樹・西上直毅・大城敦司・冨士田誠之・永妻忠夫(阪大) |
近年,テラヘルツ波を用いた高速無線通信の研究開発が盛んに行われている.我々は,テラヘルツ通信デバイスの小型集積化に向け,共鳴トンネルダイオード(Resonant Tunneling Diode : RTD)に着目している.RTDを用いたテラヘルツ送信デバイスの課題の一つはその出力であり,我々は出力の向上に向け,2つのRTDを有するリング型差動発振器を提案してきた.今回,本発振器をレンズアンテナと集積化したテラヘルツ送信デバイスを作製し,300 GHz帯での無線通信実験を行ったので報告する.
We made an initial study on OOK and CDMA modulations in THz band using RTD technology. CDMA signals were transmitted in real-time at 3.2 Gchips/s in the THz band over 7.5cm distance and data decoded off-line.
近年,国内外で、テラヘルツ波を用いた高速無線通信技術の研究が活発に行われている.我々はこれまでに,QPSK変調による300 GHz帯無線通信システムに50 Gbit/sリアルタイムエラーフリー伝送を報告した.しかし同実験では,送受信間の位相同期ゆらぎを最小にするために, 1台のシンセサイザからの信号を送受信機で共有していた.一方,送受信を完全分離した構成においては,復調にオフライン・ディジタル信号処理を用いており,同様に実用的なものではなかった.
今回, 300 GHz帯コヒーレント無線通信において,送受信機のシンセサイザを分離する無線通信システムを構築するために,リアルタイムのディジタル信号処理を導入し,通信実験を行ったので報告する.
0.1~10 THzのテラヘルツ(THz)波は,紙やプラスチックなどの物質に対して透過性を示し,サブミリメートルの空間分解能をもつことからイメージング応用が期待されている.単一周波数を用いたテラヘルツイメージングの課題として,測定物における干渉効果によりイメージング画像に干渉縞が観測され,画像診断上の妨げとなる問題が挙げられる.干渉縞を除去するためのアプローチとして,300 GHz帯において可干渉性の低い低コヒーレンス信号を用いたイメージング方法が報告されており,本研究では600 GHz帯イメージング応用に向け,低コヒーレンス信号発生系の構築と出力パワーの最大化を行った.
近年、無線通信やセンシングなど様々な応用に向けて、テラヘルツ帯の電磁波が盛んに研究されている。一般に、周波数が高くなると広帯域化が可能になり、通信の高速化およびセンシングの高分解能化が期待される。これまでに最も高いキャリア周波数を用いた、ギガビット級のエラーフリーテラヘルツ無線通信としては、光電変換技術によるテラヘルツ送信器を使用した720 GHz通信の報告がある。一方で、電子デバイスを用いたテラヘルツ発振器の高周波化も進展してきている。今回は周波数逓倍器に基づくキャリア周波数920 GHzの送信系を構築し、1 Gbit/sのエラーフリー無線通信を実現した。
9月11日 9:00〜11:45 C棟 3F C301講義室 座長 相葉孝充(矢崎総業)
C-14-11 |
FRPM管壁を伝搬するマイクロ波導波モードの時間領域解析
◎松川沙弥果(産総研)・吉田光佑(三重大)・奥田忠弘・硲 昌也(栗本鐵工)・黒川 悟(産総研)・村田博司(三重大) |
C-14-12 |
FRPM管非破壊検査のためのマイクロ波反射信号のタイムドメイン解析
◎△吉田光佑(三重大)・松川沙弥果(産総研)・西村禎洸(三重大)・黒川 悟(産総研)・奥田忠弘・硲 昌也(栗本鐵工)・村田博司(三重大) |
C-14-13 |
分散マネージメントファイバによる光パルス圧縮を用いたビート出力の増大 − 圧縮用光ファイバの簡略化 −
○小田圭佑・久富浩平・片桐亮吾・鈴木将之・戸田裕之(同志社大) |
C-14-14 |
分散マネージメントファイバによる光パルス圧縮を用いた 300 GHz ビート出力の増大
◎久富浩平・小田圭佑・片桐亮吾・鈴木将之・戸田裕之(同志社大) |
C-14-15 |
住宅用外壁内部のミリ波イメージングに関する検討
◎為則勇志・久次米祐助・易 利・永妻忠夫(阪大) |
本研究では,FRPM管壁を伝搬するマイクロ波の伝搬特性の詳細を検討するため,測定とシミュレーションにより,マイクロ波透過信号の時間領域解析を行った.シミュレーションで求めたマイクロ波透過信号の時間領域応答は測定結果とよく一致した.これより,マイクロ波導波モードの時間領域解析は,実験的手法と理論的手法を組み合わせて様々な埋設パイプラインの検査に適用できる可能性があることがわかった.
FRPM(Fiberglass Reinforced Plastics Mortar)で構成されている地中埋設パイプラインを非破壊で効率よく検査・診断する技術が求められている. 我々はFRPMがマイクロ波を比較的低損失で導波させる特性を持つことに着目して, マイクロ波による新しい非破壊検査法を提案している. 励振されたマイクロ波導波モードは, 管壁とその近傍に閉じ込められて伝搬するため, 提案手法では, 埋設パイプラインの内側から, 外側にある異物等の情報を容易に得ることができる. 光ファイバーリンクと組み合わせることで地上からの遠隔操作も可能である.
本研究では, 管外部の異物の位置を, FRPM管壁を導波するマイクロ波反射信号のタイムドメイン解析により特定する方法を検討した.
光ビート法による高周波(RF)発生において,光検出器(PD)への平均光パワーが等しい条件のもとで光パルス幅を短くすると,RF出力が増大する.我々は,複数の高非線形ファイバ(HNLF)を組み合わせた分散マネージメントファイバ(DMF)に光2トーンなどの繰り返しパルスを伝搬させてパルス圧縮を行う手法について,これまで検討を行ってきた.今回,正常分散ファイバのHNLFにより周波数チャーピングを起こし,通常の単一モードファイバ(SMF)を用いて補償をするように接続したDMFにおいて,RF出力の増大が得られる条件を数値シミュレーションによって検討したので報告する.
近年我々は,光ビート法による高周波(RF)発生において,光2トーンなどの繰り返し光パルスを,正常分散ファイバと異常分散ファイバを平均分散が 0 となるように接続した分散マネージメント光ファイバ(DMF)に伝搬させてパルス圧縮を行い,RF出力の増大を図る手法ついての検討を行っている.前回までに,100 GHz波発生において,DMFを2組の分散補償構成(4セクション)とし,DMFへのピークパワー(P0)を RF周波数(fRF)に対してスケール則に基づいて変化させることで,RF周波数の広帯域化を実現できることを確認した.今回,4セクションDMFにおいて,300 GHz波発生におけるRF出力の増大,およびP0 を固定した時のfRF の帯域について検討したので報告する.
住宅の壁の内部における, 建築材の腐食, 欠陥などを非破壊で検査したいというニーズが顕在化している. 住宅の壁内検査を行う技術として, 赤外線サーモグラフィが用いられているが, 一般に温度による検査であるため, 日光が当たっていない壁の検査は困難である. また, 表面温度を計測するため, 高い反射率を有する壁材の内部の検査は難しい. そこで我々は, このような非破壊検査への準ミリ波, ミリ波の適用性を検討している. 住宅用外壁に使用されている窯業用サイティングに対する物質透過性と, 住宅の内部構造を識別するためにはcmオーダー以下の奥行分解能が必要という観点から, 23-43GHz の電波を使用し,干渉計を準光学系または同軸線で構築した2つのシステムで評価を行った. その結果, 壁内におけるミラーの強度比として約7dB が得られ, 準ミリ波~ミリ波による住宅の壁内検査の可能性を示した.
休 憩(10:30 再開) 座長 易 利(阪大)
C-14-16 |
コア層構造の最適化による平面アンテナ集積型InPマッハ・ツェンダー光変調器の性能向上
◎宮関勇輔・荒川太郎(横浜国大) |
C-14-17 |
チャープ FBG の高次波長分散を用いた光ビート信号の位相制御
◎吹金原俊平・伊藤翔太・上原知幸・辻 健一郎(防衛大) |
C-14-18 |
負誘電率領域における表面波共鳴型テラヘルツ波放射の解析
○四方潤一(日大)・大野誠吾(東北大)・南出泰亜(理研) |
C-14-19 |
自己オフセットPLLによる基準信号を用いた位相安定化RoFの耐経路温度変動性能評価
◎西岡隼也・秋山智浩・藤江彰裕・鈴木貴敬・安藤俊行(三菱電機) |
C-14-20 |
デジタルコヒーレント光通信部品を適用した風計測ライダ
○安藤俊行・原口英介・藤江彰裕・鈴木貴敬(三菱電機) |
新たに設計した大きな電界誘起屈折率変化特性を有する多重量子井戸構造を,平面アンテナ集積型InPマッハ・ツェンダー光変調器の導波路コア層に採用することで,その変調性能を大きく向上することに成功したので報告する.
ミリ波帯無線通信は伝送損失が大きく高速変調が困難という課題があり、光通信技術を併用した効率的なミリ波帯信号の伝送・制御(光ファイバ無線技術)が期待されている。本報告では、光ファイバ無線において有望な光ビート法を用いたミリ波帯信号の生成と位相制御手法に関し、ビート信号の位相制御手法として、チャープファイバブラッグ回折格子(CFBG)の高次分散特性を利用した位相制御系を検討した。提案手法を用いた実験により、数 nm の波長変化で±π程度の位相シフトが得られる可能性が示された。
光学フォノン周波数付近の負誘電率領域はテラヘルツ波の吸収損失が大きいため,バルク内伝搬においては禁制帯となる.この周波数帯でテラヘルツ波発生を行うには,表面電磁波の共鳴を用いる方法が有効と考えられる.そこで,テラヘルツ波発生に用いてきたニオブ酸リチウム(LN)結晶のA1フォノンモードに関連した表面電磁波モードに着目し,表面回折格子を付した構造についてFDTD解析を行った.その結果,2つの周波数帯(10,19THz付近)においてLN結晶から表面波放射が起こることを初めて見出した.また表面波(近接場)から自由伝搬波への電磁場プロファイルの移行を明らかにした.
電波天文などの分野で位相安定なRF信号を複数のアンテナ端に長距離(数m以上)伝送し合成する需要がある.このような応用分野では,高周波かつ高度な変調信号の伝送が必要である場合が多い.一方で,マイクロ波-ミリ波の長距離・低損失な伝送手段として,RoF (Radio-over-Fiber)技術が有効であるが,ファイバ伝送路周囲の環境変動に伴い伝送信号の位相が変動する問題がある.そこで,自己オフセットPLL(Phase Locked Loop)により,生成した基準信号をRFシンセサイザに同期することで,位相安定なRoF伝送を実現する方式を提案している.当該方式を用いてkm級の伝送路に温度変動を与えた際の位相安定性を評価した結果を報告する.
コヒーレントドップラライダ(CDL:Coherent Doppler LIDAR(LIght Detection and Ranging))は単一周波数のパルスレーザ光を空間照射し,風と同速度で移動するエアロゾル
からの後方散乱光のドップラー周波数シフトから風速を計測する装置であり[1],空港での風監視,航空機前方の乱流検知,風力発電用の風況計測に用いられている.さらなる適用対象の拡大に向け,風計測ライダの小型化,低消費電力化が望まれている.ここでは,小型高信頼なデジタルコヒーレント光通信部品の活用に向けて開発したパルスセロダイン変調に基づく風計測ライダについて報告する.
C-15. エレクトロニクスシミュレーション
9月12日 9:00〜11:45 C棟 3F C307講義室 座長 伊藤孝弘(名工大)
C-15-1 |
深層学習を用いた超高速地中レーダシミュレーション
○園田 潤(仙台高専)・木本智幸(大分高専) |
C-15-2 |
マイクロ波回路の自動設計におけるCNNによる解探索効率の向上
○赤田拓磨・藤森和博(岡山大) |
C-15-3 |
アンテナ後方の建物を考慮したVHF帯における空港面電磁界解析手法の有効性の検討
◎黒田哲史・須賀良介(青学大)・毛塚 敦(電子航法研)・橋本 修(青学大) |
C-15-4 |
誘電体スラブを用いた集束型誘電体レンズホーンアンテナの位相改善効果に関する実験的評価
黒田哲史・◎橋本真輝・須賀良介(青学大)・毛塚 敦(電子航法研)・橋本 修(青学大) |
C-15-5 |
伝送線路理論を用いたアレーアンテナ波源におけるレドームの斜入射に対する伝送特性解析
◎花田英司・橘田康平・須賀良介・橋本 修(青学大) |
地中レーダは入射した数百MHz帯の電波の反射波から非破壊に地中を推定する技術であり,近年問題になっている道路空洞やコンクリート劣化などの社会インフラ点検などに有効である.地中レーダの結果の検証や地中の推定などに,FDTD法によるシミュレーションが広く用いられているが,計算時間がかかる問題があった.この問題に対して,スーパーコンピュータやGPUなど高速ハードウェアによる手法が研究されてきたが,地中レーダでは走査点数だけFDTD計算をする必要がありさらに計算時間を要するため,GPUで高速化しても十分程度を要していた.本研究では,%近年急速に発展している人工知能技術のひとつである深層学習を用いた%シミュレーション手法による超高速な地中レーダシミュレーション手法を提案する.
電磁界解析とメタヒューリスティックな解探索法を用いて高周波回路を設計する場合,圧倒的多数の特性が悪い解と少数の特性の良い解を全数検査する為,計算時間が膨大となってしまう.解探索効率を向上させるためには,少数の良解を精度よく推定するか,多数の悪解を推定し,評価を省くかすればよい.今回はレクテナ用整流回路の設計を対象として,特性解析にはLE-FDTD法,解探索には遺伝的アルゴリズム(GA)を用いた場合について,探索時間の短縮を課題とした.解決方法として,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いた適応度の推定を行い,良解・悪解の判定を行うことで,解探索効率を向上させることを試みた.
次世代着陸誘導システムGBASでは,100MHz帯におけるVHF Data Broadcast (VDB)アンテナが用いられている.VDBアンテナの最適設置位置の決定には電磁界解析が有効であるが,空港面の特徴より従来の解析手法は困難である.そこで我々は空港面に適した解析手法として,解析領域中の建物等構造物の多い領域をFull-wave解析により,その他のエリアをRay-tracing法により解析する手法を提案し,その有効性を評価してきた.これまでにアンテナ前方に建物を配置した場合において提案手法の有効性が実験的に確認されている.そこで本検討では,さらにアンテナ後方に建物を設置した場合における本手法の有効性を実験的に評価した.
集束型誘電体レンズは,特定の範囲に高い電界強度の平面波を生成させることができるため,エネルギーの照射や材料定数測定において,広く使われている.一般的にレンズと共に用いられることが多いTE11 モード円錐ホーンアンテナの開口面電磁界分布は,電界方向と磁界方向で異なるため,放射波の位相が平坦となる位置は両方向で一致しない.これまでの検討では,誘電体スラブをレンズに装荷することで位相改善が電磁界解析により確認されている.本稿では,この誘電体スラブを装荷したレンズを試作し,位相改善効果を実験的に評価した.
ミリ波レーダ等では高利得を実現するために波長に対して大きなアンテナが使われており,電磁界解析を用いたレドームの伝送特性の評価には膨大な時間が必要となる.著者らは,垂直入射において伝送線路理論を用いたレドームの伝送特性の解析精度について検討してきた.本研究では,さらにTE波入射における伝送特性について検討した.
休 憩(10:30 再開) 座長 園田 潤(仙台高専)
C-15-6 |
Lead Field Matrixを用いた心電源の位置推定に関する特性評価
◎中根辰仁・伊藤孝弘・平田晃正(名工大) |
C-15-7 |
TMSによる痛み・知覚に関する刺激閾値のコイル角度依存性
◎酒井隆志・Jose Gomez-Tames(名工大)・谷 恵介・田中悟志(浜松医大)・平田晃正(名工大) |
C-15-8 |
電気自動車内における体内誘導電界の評価法の検討
◎竹中智弘・三輪圭史・平田晃正(名工大) |
C-15-9 |
熱帯生育者の体温調節機能のモデル化と体温上昇解析への応用
◎神谷俊樹・小寺紗千子・平田晃正(名工大) |
C-15-10 |
物理解析に基づく高齢者の熱中症搬送人員数予測に関する検討
◎西村 卓・小寺紗千子・ラシド イサム・竹内一郎(名工大)・江川隆輔(東北大)・平田晃正(名工大) |
12 誘導心電図は,心疾患の早期発見の役割を果たす重要なツールとして,現在も利用され続けている.術前診断や治療箇所の推定において,医師の経験に基づいて, 心電図で記録される波形の異常を検出,治療が施されるため,問題点として治療精度が医師の能力に依存することが挙げられる.近年では,医用画像から生成された詳細な心臓モデルを用いて順問題を解き,12 誘導波形と組み合わせることで心電源を推定する研究が行われている.しかしながら,個人差や再現性の問題に加え,モデル構築に伴う計算コストも膨大となる.そこで本稿では, 既存の数値人体モデルを用いて心電波源推定を行った. また,逆問題の解法としてLead Field Matrix (LFM)を用い,波源位置推定の特性評価を行った.
近年,脳を電気的に非侵襲的な刺激をすることに関心が高まっている.その方法の一つとしてTMS(経頭蓋磁気刺激法)がある.TMSとは,頭部近傍に配置したコイルに中間周波帯のパルス電流を流した際に発生する磁界の変化により脳内に電流を誘導,大脳を刺激する手法である.言語野の脳機能診断をする際,刺激することで発話に支障をきたす.しかし誘導電流が周辺に分布する筋肉にも及び,発話が阻害される例が挙がっている.言語野を刺激できているのか,筋肉が応答しただけであるのかが不明である.本稿では,異方性を有する人体組織である筋肉を対象に刺激閾値を探索し,刺激コイルの角度依存性について電磁界解析により検討する.
近年,電磁界の生体影響に関心が高まっており,測定された磁界強度の空間最大値が許容値を満たさない場合,数値計算により算出された体内誘導電界によって議論される.その際,数値人体モデルの構造や離散化誤差などで,実際の人体では発生しない特異的な値が生じる.しかしながら,これらの特異点の適切な除去方法はまだ確立されておらず,議論が続けれている.本稿では,非一様な電磁界環境が想定される無線電力伝送システムを搭載した電気自動車内の電磁環境を想定し,体内誘導電界における特異点の除去方法について検討を行った.
近年,熱中症による搬送人員数が毎年4~6万人と増加の傾向にある.本研究グループでは温度上昇に伴う血流量や発汗などの生体応答を考慮した混成熱解析手法を開発し,実測値との比較によってその有効性を確認してきた.熱帯生育者は温帯生育者と比較すると,四肢における体温は低い一方,頭部・胴体では高いことが報告されている.本稿では,長期暑熱順化されている熱帯生育者の温熱生理反応の相違を定量化・モデル化することを目的とし,熱帯生育者を対象とした実測値から血液温度に関わるパラメータを決定した.そして,計算結果を実測値と比較することで,長期暑熱順化モデルの有効性を検討した.
近年,熱中症による搬送人員数が増加の傾向にある.熱中症は,体内における熱バランスの崩れや脱水症状が要因となり発症する.また,短期暑熱順化の程度もその要因となる.一方,当日のみならず過去数日間の暑熱気象条件が影響することや,暑い日が数日続くことによる熱中症患者の増加(熱の累積効果)が指摘されている.本研究グループは,暑熱環境下における体温上昇や発汗量を推定可能な混成熱解析手法を開発した.本稿では上記計算で得られた解析結果を用いて,熱中症搬送人員数予測式の提案を行う. 予測式において,短期暑熱順化と熱の累積効果を模擬することにより,高齢者における熱中症の発症メカニズムの理解を助けることを目的とする.
9月12日 13:00〜16:45 C棟 3F C307講義室 座長 毛塚 敦(電子航法研)
C-15-11 |
数値人体モデル両手間通電時の節点配置に伴う電位の変動
◎中村友紀・野村政宗(宮崎大)・太良尾浩生(香川高専)・武居 周(宮崎大) |
C-15-12 |
マーチングキューブ法を用いた低周波領域における接触人体内電流密度解析の高精度化の基礎検討
◎野村政宗・中村友紀・武居 周(宮崎大)・太良尾浩生(香川高専) |
C-15-13 |
関数展開法に基づく多層構造を有する光デバイスの層厚の最適化を含めたトポロジー最適設計
◎富岡 瞬・辻 寧英(室工大) |
C-15-14 |
散乱演算子に基づく双方向BPMを用いた光導波路素子の構造最適設計に関する検討
◎井口亜希人・辻 寧英(室工大) |
C-15-15 |
実数型 μGA を用いた光導波路構造最適化の MPI による並列化
○安井 崇・杉坂純一郎・平山浩一(北見工大) |
ボクセルメッシュ群で構成される,数値人体モデルを用いた数値人体解析が行われている.ボクセルへの節点配置はボクセル中心あるいはボクセル頂点が考えられ,数値人体モデル両手間通電時の数値解析ではボクセル中心に節点配置して解析されている.本研究では,節点をボクセル頂点に設けた数値解析を行い節点中心配置の数値解析値と比較したので,その結果を報告する.
昨今,商用周波数において,接触電流が人体に及ぼす影響への関心の高まりから,解剖学的数値人体モデルを用いた数値解析による,人体内電流密度分布を明らかにする研究が行われている.国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)により公開されている人体モデルは1辺2mmのボクセルで近似されている.このボクセル近似により,皮膚と脂肪などの人体モデルの異材境界は階段状に近似される.この階段近似により,得られる解には誤差が生じることが報告されており,本研究では、その数値誤差の軽減のためマーチングキューブ法を基礎にしたメッシュスムージングを用い、数値解析を行い精度評価を行った.
光通信の高速,大容量化を目指し,様々な光デバイスの自動設計法についての研究が行われている.そういった中,デバイス構造のトポロジーまでを含めた自由度の高い設計法として関数展開法が提案されている.本研究では深さ方向にも構造変化のある本質的な 3 次元構造の最適化を関数展開法によって実現することを目的としている.本論文では多層構造デバイスの層厚を設計パラメータに含めることでより自由度の高い設計を可能にするための検討を行う.深さ方向の構造変化を利用するデバイスの一例として偏波分離回転素子の設計を行い,本手法の有効性を確認する.
ビーム伝搬法(BPM)は計算効率が非常に高い光波伝搬解析手法であるが,後方散乱波を無視する近似解法のため,大きな導波路不連続を持つ素子の構造最適設計には利用できない.後方散乱が考慮可能な解析手法として,双方向BPM(Bi-BPM)の研究が進められており,近年,精度・計算効率ともに改良が進んだ手法が開発されてきた.本検討では,大きな導波路不連続を持つ光導波路素子の構造最適設計のさらなる効率化を目指して,散乱演算子型のBi-BPMを利用した場合の光導波路素子の感度解析に基づく構造最適設計について,感度計算の効率化に関する検討を行っている.
本報告では,遺伝的アルゴリズム(GA)の一種である実数型μGAを用いた光導波路の構造最適化に対して,並列化ライブラリのひとつであるMPIを用いた並列化を行っている.GAにおける適応度を評価するために必要な,光導波路内を伝搬する光波の伝搬解析には有限要素法に基づく2次元ビーム伝搬法を用いている.具体的に,石英光導波路による2×2多モード干渉カプラの構造最適化に提案手法を適用した.その結果,5台の計算機による並列化で3.85倍程度の高速化率が得られた.
休 憩(14:30 再開) 座長 須賀良介(青学大)
C-15-16 |
Drude-Lorentzモデル解析のためのDCP-FDTD法
◎鈴木和人・柴山 純・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-15-17 |
Subgrid法を用いたFDTD法による光伝導アンテナの解析
◎中野 優・柴山 純・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-15-18 |
正方形孔配列を設けた1/4波長金属板の偏波変換特性
山内潤治・○石原裕也・中野久松(法政大) |
C-15-19 |
金属媒質が1/4波長金属板の特性に及ぼす影響
○田中勇輝・山内潤治・中野久松(法政大) |
Drude-LorentzモデルをDispersive Contour-Pathアルゴリズムを導入したTRC-FDTD法に適用し、金属ナノ円柱を解析した。Z変換に基づくFDTD法の結果と比較し、計算精度を保ちながら計算時間及びメモリ使用量を低減できることを示した。
Subgrid法を用いたFDTD法を光伝導アンテナの解析に応用する。通常のFDTD解析と、Subgrid法を適用したFDTD解析の結果がほぼ一致することを示す。メモリは約70%、計算時間は約60%減少し、計算効率の大幅な改善が可能であることを明示する。
金属板に様々な形状の開口を周期的に設けた偏波変換板が検討されている.我々は長方形孔配列を設けた 1/4 波長金属板を提案し,透過波が円偏波に変換されることを明らかにしてきた.本稿では,正方形孔を用いた場合に,格子配列を長方形にすれば,1/4波長板として動作することを見出す.
我々は, 光波帯において, 銀板に長方形孔を周期的に持つ, 1/4波長金属板を検討してきた. この構造では, 周期長に近い波長で, 円偏波への偏波変換と高い透過率が得られる. これらの特性は、伝搬定数の異なる, 直交した2つのモードの励起及び, 異常透過現象(EOT) によって達成される. 本稿では, 文献[1] の構造を用いて, 波長金属板の媒質の違いがもたらす影響を, 透過特性に加えて, 偏波変換特性の観点からも検討する.
休 憩(15:45 再開) 座長 辻 寧英(室工大)
C-15-20 |
誘電体球における時間応答波形の参照解
◎増田宗一郎・岸本誠也・大貫進一郎(日大) |
C-15-21 |
クレッチマン配置を用いた表面プラズモンの解析-組成比と構造による励起強度の関係-
◎田丸幸寛・岸本誠也・芦澤好人・中川活二・大貫進一郎(日大) |
C-15-22 |
FILT法による熱伝導解析の計算精度
◎西野将平・増田宗一郎・岸本誠也・大貫進一郎(日大) |
C-15-23 |
グレーティング構造を用いた長距離伝搬プラズモン解析の基礎検証
◎浜島 功・呉 迪・岸本誠也・井上修一郎・大貫進一郎(日大) |
Time domain analysis of electromagnetic fields is indispensable for designing microwave devices and investigating optical properties of material. However, it is still difficult to evaluate reliability and accuracy of the computational results especially in time domain. In this paper, we introduce the reference solutions of the time domain response of the dielectric sphere.
複数金属媒質を用いたプラズモンシミュレーションでは,使用する金属媒質の組成比に応じた比率に基づき使用する誘電率を求めている.しかし,実験と数値解析では異なる反射率や励起強度の結果が報告されている.
本報告では,複数金属媒質において組成比は同様だが構造の違いによる解析結果を検討するため,光学系のクレッチマン配置におけるプラズモン励起を,RC-FDTD法によりシミュレーションする.
By using the fast inverse Laplace transform (FILT) method, efficient and reliable numerical analysis of transient responses can be performed. In this paper, time response for heat conduction simulation was calculated by using FILT. Making a comparison of our results to analytical solutions, we will clarify computational accuracy.
近年,集積回路の高速化,省電力化を目指して光導波路の新たなデバイス設計が必要とされている.このデバイスとして長距離に光を伝搬するプラズモニック導波路が注目されている.
本報告では,周波数領域有限差分法(FDFD)を用いて,長距離伝搬プラズモン解析を行い,伝搬特性とグレーティング構造の関係について明らかにする.
シンポジウムセッション
- この目次は,インターネット講演申込登録のデータを元に作成されています。
- また,講演者を○,◎印で示し, ◎印は本会「学術奨励賞受賞候補者」の資格対象であることを示します。
- ○,◎の後ろに△がある場合はキャリアエクスプローラーの掲載を希望しています。
CS-1. 周期構造中の電磁界
(電磁界理論研専)
9月10日 13:00〜16:35 B棟 1F B108講義室 座長 杉坂純一郎(北見工大)
CS-1-1 |
ピラー型フォトニック結晶導波路の固有モード解析に関する一考察
○渡辺仰基(福岡工大) |
CS-1-2 |
円偏波散乱因子を用いた誘電体格子の散乱界解析
○若林秀昭(岡山県立大)・浅居正充(近畿大)・山北次郎(岡山県立大) |
CS-1-3 |
グラフェン円板の積層格子によるテラヘルツ波の散乱
○松島 章・田代真大(熊本大) |
CS-1-4 |
改良Fourier級数展開法を用いた不均質媒質層の電磁界分布-誘電率が正負に混合する場合-
○山﨑恆樹(日大) |
本研究では、ピラー型フォトニック結晶導波路中を伝搬する固有モード解析手法につ
いて再考し、周期セルに対する散乱行列を基にして得られる一般化固有値問題を解く形を用いることで、数値計算が不安定になる問題を解決する方法を示している。
本稿では,多層誘電体格子による電磁波散乱について,円偏波成分に対応する固有ベクトル行列と回折波振幅を用いた一様領域の電磁界表現式に影理論を適用し,円偏波散乱因子を用いて散乱界を表現する.数値計算例では,低入射角極限において,透過波が消滅することを示す.
導体片を周期的に並べて構成した格子は,マイクロ波・ミリ波に対して周波数選択の機能をもつ. また光波においてはプラズモニクスの観点から,ナノ貴金属粒子が近傍電界を増強し,センサや光アンテナとしての応用が考えられている.以上により筆者らは,貴金属円板を平面内に二次元配列した無限格子,並びにそれを平行に積層した構造による平面波の散乱問題を,近似境界条件のもとに数値解析した.本稿では円板を有望な材料であるグラフェンに変更して同様の考察を行う.
従来、周期構造媒質の解析には、空間高調波展開法が広く用いたれてきたが、任意形状をもつ不均質媒質の適応には困難であった。また、正負の媒質定数が波の伝搬方向に変化している場合については,TM 波(磁界が入射面に垂直)の斜角入射に対する有力な修正多層分割法は、変曲点をもつ特異点(零点)では、層内の電磁界分布が解析できない難点があった。著者らは、これらの問題にたいしても、周期構造系の界を利用した改良Fourier級数展開法で,誘電率に損失を付加して、固有値と固有ベクトルに外挿法を用いれば、層内の電磁界を精度よく求めることができることを述べる。
休 憩(14:55 再開) 座長 渡辺迎基(福岡工大)
CS-1-5 |
非相反CRLHメタマテリアルに対する解析的取り扱いおよび等価回路モデル
○上田哲也・金田拓海(京都工繊大)・伊藤龍男(カリフォルニア大ロサンゼルス校) |
CS-1-6 |
周期的表面レリーフ格子の非回折波による断面形状推定
○杉坂純一郎・安井 崇・平山浩一(北見工大) |
CS-1-7 |
テラヘルツ帯でのInSbコート誘電体円柱配列の周波数依存型FDTD解析
○柴山 純・高橋澄玲・山内潤治・中野久松(法政大) |
CS-1-8 |
周期的導体ストリップをもつ分散性媒質のパルス応答解析-偏波による差分波形の影響-
◎賀川智弘・尾崎亮介・山﨑恒樹(日大) |
本稿では,垂直磁化フェライトマイクロストリップ線路に沿って伝搬するエッジ導波モードの振舞いに着目し,構造の非対称性との組み合わせによる非相反性の発現の原理を示す.さらに非相反線路を用いたCRLH線路の等価回路モデルを示し,その取り扱いと基本的な振舞いについて示す.
周期的表面レリーフ格子の断面形状を,照射した電磁波の反射波と透過波から推定する手法を提案する.スカラー回折理論によれば,表面形状を取得するためには高次の回折波の計測が必要であるが,本手法では非回折光である反射波と透過波の計測データをもとに境界積分方程式を解き,推定形状を得る.この反復処理により高い精度の形状推定が可能であることを示す.本研究では,周期が波長の1.2倍の表面レリーフ構造に対し形状推定のシミュレーションを行った.その結果,反復回数30ステップで形状の誤差が0.013波長以下の推定精度が得られた.解析を通して,推定形状の収束の速さと推定形状の空間周波数成分の関係も明らかにした.
アンチモン化インジウム(InSb)で覆われた誘電体円柱配列のテラヘルツ帯での透過特性を,周期境界条件を適用した周波数依存型有限差分時間領域(FDTD)法を用いて調査する.導波モード共鳴が生じている場合の界分布を示し,グレーティングカプラとしての利用可能性を議論する.また,円柱配列周辺の屈折率が,透過ディップ周波数に及ぼす影響を調査する.純粋な導波モード共鳴でのディップに対して,表面プラズモン共鳴が励振されるディップでの周波数の変化が3倍以上大きいことを明らかにする.
著者らは先に,地中に埋設された金属散乱体を表現する為,分散性媒質中の媒質定数を水分による損失を考慮した複素誘電率で表現し,周期方向に導体ストリップで近似したモデルにおいて,TE波に対するパルス応答の影響をFILT法に加え,点整合法(PMM)を併用して検討してきた.
本文では,分散性媒質中に周期的導体ストリップを配置した構造に対して,FILT法とPMMを併用して解析し,パルス応答の偏波による差分波形からストリップ導体の影響を検討する.
CS-2. マイクロ波・ミリ波を用いた生体計測の最新動向
(マイクロ波研専)
9月13日 9:45〜11:30 C棟 3F C302講義室 座長 中村宝弘(日立)
CS-2-1 |
複数局協調型MIMOレーダを用いた生体数推定法
◎白木信之・本間尚樹(岩手大)・中山武司・飯塚翔一(パナソニック) |
CS-2-2 |
逆正接復調振幅成分を用いたマイクロ波心拍検出法
◎佐藤 潤・本間尚樹・小林宏一郎・岩井守生(岩手大)・佐藤 敦(エクォス・リサーチ) |
CS-2-3 |
誘電分光を用いた間質液中グルコースセンシングのin vivo 検証-経皮測定時における同軸プローブ開口の影響-
◎中村昌人・田島卓郎・瀬山倫子(NTT)・脇 嘉代(東大) |
CS-2-4 |
マイクロ波マンモグラフィのためのレーダデータ学習に基づく癌細胞識別
○廣瀬海太・木寺正平(電通大) |
CS-2-5 |
マイクロ波マンモグラフィのためのROI制約付きCSI法を用いた複素誘電率再構成法
◎佐藤宏樹・木寺正平(電通大) |
本研究では,複数局協調型MIMOレーダを用いた生体数推定精度の評価を行う.3か所以上の異なる位置に配置された送受信局を用い,送受信局の組み合わせごとにCapon法[3]を用いて生体位置推定を行う.その後,位置推定結果に対応したモードベクトルとMIMOチャネルから算出した生体由来の固有ベクトルを比較することで雑音由来の虚像を除去する.以下では,本手法における生体数推定法の原理について説明し,実験室における実験より生体数推定精度の評価を行う.実験結果より,1人のときは95 % ,2人のときは 78 % ,3人のときは75 % の割合で正しく被験者数を推定可能であることを明らかとした.
近年,高齢者の見守り等を目的とした非侵襲・非接触なバイタルセンシング技術としてマイクロ波を用いたバイタルセンシングが期待されている.マイクロ波を用いた心拍数推定法の検討が行われているが,呼吸による影響で推定精度向上が困難であった.
本報告では,マイクロ波を用いた心拍推定に関して,MIMO信号処理と逆正接復調法を組み合わせ,得られた振幅成分時間変動を利用し心拍を検出する方法を提案した.提案法により抽出された波形と,連続血圧脈波計により得られた血圧脈波と比較した.実験結果より,逆正接復調の位相応答と比べて振幅応答を利用することでより明確に心拍成分を抽出することが可能であることが確認された.
マイクロ波を用いた複素誘電率測定(誘電分光)は生体分子および水和水の配向緩和が測定可能であり,またMMIC 設計によるシステムの小型化が容易になりつつあることから非侵襲なウェアラブル生体センサ応用が期待されている.我々はこれまでに同軸プローブを用いた誘電分光による間質液中グルコースの非侵襲センシングについて検討し,フラッシュグルコースモニタリング(FGM) による測定と相関のある信号変化を確認している.本稿では,同軸プローブが開口により侵入深さが異なるという特徴に着目し,その基本特性とin vivo 測定時の安定性を評価した.また,糖負荷試験下の健常者に対して誘電分光測定を行い,FGMと相関の高い信号変化を得たので報告する.
マイクロ波UWBレーダは,高い距離分解能と誘電体透過性を有し, 非侵襲生体計測に有用である. 特に現在X線による診 断が主流である乳がん検査において,安全性,コスト,検査頻 度の点おいて、マイクロ波によるマンモグラフィが注目されている.従来の癌識別法では,トモグラフィ方式(逆散乱解析) に よる誘電率再構成に基づく方法がある.トモグラフィ方式は, 観測される散乱場に関する領域積分方程式の逆問題を解くことで、誘電率の分布を定量的に推定できるが, 計算に膨大な 時間がかかかかるという問題がある. 本論文では,上記画像解析法に依存しない直接的な癌細胞の有無またはサイズ識別法として,レーダデータを直接的にニューラルネットワークで識別 する方法を導入する.MRI画像ベースで抽出された精緻な乳房 ファントムを用いたFDTD(Finite-Difference Time-Domain)法 に基づく数値解析により本手法の有効性を示す.
乳癌は国内外において罹患率の最も高い癌の一つであり,より頻度の高い簡易スクリーニング技術が待望されている.既存のX線マンモグラフィは被曝や痛みを伴うことから,マイクロ波による乳癌検査が注目を集めている.一方,癌組織と乳腺組織の誘電率のコントラストは1.2 倍程度と高くないため,レーダ的な手法よりも逆散乱解析法による正確な誘電率再構成が望まれている.CSI(Contrast Source Inversion)は,順問題解析が不要であり,かつ高精度な再構成を実現する.本稿では,CSI法の精度改善のため,関心領域(ROI:Region of interest)を再帰的に更新し,ROIを乳腺や癌組織に絞り込むことで,未知数を飛躍的に低減させる方法を提案する.MRI画像から抽出される精緻な乳房モデルを用いたFDTD(Finite-Difference Time-Domain)法による数値計算により,本手法の有効性を示す.