プログラム
format_list_bulletedエレクトロニクスソサイエティ
一般セッション
- この目次は,インターネット講演申込登録のデータを元に作成されています。
- また,講演者を○,◎印で示し, ◎印は本会「学術奨励賞受賞候補者」の資格対象であることを示します。
- ○,◎の後ろに△がある場合はキャリアエクスプローラーの掲載を希望しています。
C-1. 電磁界理論
3月9日 10:30〜11:45 Meeting 22 座長 平山浩一(北見工大)
C-1-1 |
周期構造超音波導波路の有限要素法を用いた複素伝搬定数算出
○野嶽秀介・長谷川弘治(室工大) |
C-1-2 |
AT-cut水晶板周期空孔によるエネルギー閉じ込め共振子
○角田有弥・長谷川弘治(室工大) |
C-1-3 |
Multipole methodによる楕円空孔を有するホーリーファイバの伝搬定数算出
○三浦大輝・長谷川弘治(室工大) |
C-1-4 |
貴金属平板の二次元周期格子による光波の散乱
○松島 章・高比良 漢(熊本大) |
C-1-5 |
自由空間透過法におけるタイムゲート処理の効果検討
○鶴田壮広・三浦一幸・西野高明(竹中工務店)・前山利幸(拓殖大) |
圧電基板期構造導波路中を伝搬する弾性波の伝搬定数は,モード結合定数あるいは等価回路パラメータの決定に有用である.汎用有限要素シミュレータComsol Multiphisics を用いて無限長周期構造の伝搬特性を解析することを考える.基本構造を解析対象として, 周期境界にフロケ条件を課すと,複素伝搬定数γ と角周波数ω に関する固有値問題に帰着する.漏洩弾性表面波では,フロケ条件の指定に必須のγ が,先見的に未知であるため,求める周波数が実となるγ を探索する必要があり,解析は困難である.本稿では,非線形固有値問題の解法であるSakurai-Sugiura 法(SSM) を用いて,角周波数ω を与えて,γ を求解出来ることを確認したので報告する.
圧電基板上の弾性波共振器構造として,AT-cut水晶平板共振子の励振電極と保持端面間に円柱空孔を設けた構造の検討が行われている.
すだれ電極を設置したAT-cut水晶平板共振子で特定の伝搬方向のエネルギー閉じ込めを実験的に確認されている.
完全バンドギャップを有するPhononic結晶を形成した構造を用いているが,伝搬方向に依らないエネルギー閉じ込めが実現できていない.
本稿では,共振器構造における円柱空孔のPhononic結晶の反射特性を汎用有限要素シミュレータのComsol Multiphysics(Comsol)を用いて解析したので報告する.
円柱空孔を有するHoley Fiber(HF) の高精度な伝搬定数計算法としてMultipole Method(MM) がある.本
稿では,楕円空孔を有するHF を対象として,楕円を囲む仮想的な円柱空孔間の相互作用をMM で考慮し,仮
想円柱内の楕円柱関数で展開した電磁界と仮想円柱外でのMM の電磁界を仮想円柱上の境界条件で接続するこ
とで,非線形固有値問題に帰着させ,Sakurai-Surigura法(SSM) を用いて解析する方法を検討したので報告する.
プラズモニクスの観点から,有限枚の貴金属平板を一方向に並べた格子による光波散乱が,積分方程式を用いて解析されてきた.一般化された表面インピーダンス境界条件を適用して,LRSP/SRSPの両方の伝搬モードが表現できた.上記報告の配列法は,同一平面内及び平板面に対して垂直方向であったが,本稿では両者を統合した二次元周期構造を扱う.これにより平板単体の定在波,周期性による格子共鳴,平行平板間の導波路共鳴の3 種類が混在する.なお同様の構造は,グラフェン格子によるテラヘルツ波の散乱問題としても考察された.
第5世代移動通信システム(5G)では従来よりも高い周波数帯を用いるため,建物内で運用する場合,建物の構造の影響を強く受け,屋内での電波伝搬が重要な課題となる.屋内の電波伝搬予測にはレイトレース法やFDTD法が用いられるが,建物を構成する建築部材の比誘電率,比透磁率等の電気定数を把握する必要がある.筆者らは,自由空間透過法を用いた建材の電気定数推定を行っている.本手法では直接波,送受信アンテナ間のカップリングや試料以外の周囲の反射物の影響を低減するためのタイムドメインにおけるゲーティング処理の必要性について言及されている報告例は少ない.そこで本論では本手法おけるゲーティング処理の効果を実験的に検証した.
3月9日 13:00〜15:45 Meeting 22 座長 中 良弘(宮崎大)
C-1-6 |
傾斜型空洞を有する分散性媒質によるパルス応答解析-TE波入射における磁界成分の影響-
○尾崎亮介・山﨑恒樹(日大) |
C-1-7 |
斜め誘電体格子の散乱問題における多層分割法に関する検討
○若林秀昭・山北次郎(岡山県立大) |
C-1-8 |
任意形状導体パッチによる平面積層レンズを装荷したホーンアンテナ
◎久保田新菜・出口博之・辻 幹男(同志社大) |
C-1-9 |
リング共振素子と半波長共振素子を単位セルとする2帯域トランスミットアレー
○奥野史郎・辻 幹男・出口博之(同志社大) |
C-1-10 |
斜入射時の簡易水稲モデルに対する偏波散乱特性について
池内達也・○佐藤亮一・山口芳雄・山田寛喜(新潟大) |
著者らは,先に傾斜型空洞を有する過渡散乱問題を解析可能なフーリエ級数展開法と高速逆ラプラス変換法に多層分割法を併用して解析し傾斜角や媒質幅などを変化した時の影響を検討してきた.
本文では,傾斜型空洞を有する分散性媒質のパルス応答を解析し,TE波入射における磁界成分の影響を電界成分と比較検討する.
斜め誘電体格子の散乱問題では,多層分割法や座標変換法を取り入れた様々な解析手法が提案されている.
筆者らは斜め誘電体格子について傾斜した格子ベクトルを持つ格子として扱う行列固有値法を提案してきた.
多層分割法は斜め誘電体格子に限定されず,複雑な表面レリーフ形状の誘電体格子を解析できる.
しかしながら,分割数を増やせば形状に対する精度は向上するものの,計算量は増大する.
本稿では,斜め誘電体格子の 3~次元散乱問題に行列固有値法を適用し,
多層分割法を用いた数値計算結果と傾斜した格子ベクトルを
用いた数値計算結果を比較し,多層分割法の有効性を検討している.
本研究では,任意形状素子からなる人工媒質を遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm : GA)を用いて設計し,周波数選択膜 (Frequency Selective Surface : FSS)を構成する.FSSを平面積層したレンズを角錐ホーン内部に装荷することによって,ホーンアンテナの開口面分布の制御を行う.
トランスミットアレーとは一次放射器からの球面波を平面波にすることで高利得な特性を得ようとするものである.近年,薄型化と広帯域化のため,4共振特性を持つスロット結合パッチFSS(Frequency Selective Surface)をトランスミットアレーに使用することが検討されているが[1],形状の自由度が低いため,位相量の制御範囲を広くする素子形状の開発が望まれていた.
そこで本研究では,単位セル内にリング共振素子と半波長共振素子を配置した13/30GHz帯デュアルバンドトランスミットアレーを提案する.対称構造を有しているため,任意の偏波で2帯域共用の動作をすることができる.
多偏波SARデータを用いた高精度かつ広域での水稲生育状態観測および田んぼダムとして利用する水田の貯水可能量推定を実現するための基礎研究として,3列の実水稲を用いた簡易水稲モデルに対する散乱測定を実行し,取得されたデータに対して偏波散乱解析を行う.ここでは,スクゥイント角が比較的大きな場合の生育観測精度向上を目的に,散乱電力分解法で得られる各散乱電力の評価方法について検討する.
休 憩(14:30 再開) 座長 出口博之(同志社大)
C-1-11 |
DCP-TRC-FDTD法を用いた金属円柱配列の解析(II)
柴山 純・◎岩本哲弥・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-1-12 |
薄膜上に配置された金ナノ粒子に対する分散モデルの検討
○安藤雄喜・岸本誠也・胡桃 聡・大貫進一郎(日大) |
C-1-13 |
反復クランク・ニコルソン法を用いたFDTD法
柴山 純・◎西尾知将・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-1-14 |
Drude-Lorentzモデルが実装された複数の1次元周波数分散性FDTDスキーム間の反射係数の精度比較
◎杉本 陸・鈴木敬久(東京都立大)・柴山 純(法政大)・Jerdvisanop Chakarothai(NICT) |
C-1-15 |
散乱体が疎に分布した散乱問題におけるCIP-BS法の計算効率の検討
◎星野真伸・安藤芳晃(電通大) |
筆者らは分散性媒質と誘電体の任意境界を精度よく取り扱うDispersive Contour Path (DCP) アルゴリズムをTrapezoidal Recursive Convolution (TRC) 法に基づくFDTD法に導入した.本稿では,DCP-TRC-FDTD法を用いて小さな金属円柱の配列を解析し,透過特性と界分布の評価を行う.小さな円柱構造を解析した場合でも,大きな刻みで精度のよい解析が可能であることを明示する.
これまで我々は半径 5nm 程度の金粒子の電磁界解析において,Hydrodynamic Drude モデルが表面プラズモン共鳴の解析に有効であることを示してきた.しかし金粒子の2次元配列に対しては,分散モデルについて十分な議論が行われていない.本報告では,物理気相成長法により基板上に生成された金ナノ構造体を対象に表面プラズモンの解析を行う.また,Hydrodynamic Drude モデルと Drude モデルの結果を比較し,有効な分散モデルを検討する.
クランク・ニコルソン(CN)法に基づくFDTD法では大きな疎行列を解く必要がある.本稿では疎行列を解く必要のない,数値相対論の分野で広く使われている反復クランク・ニコルソン(ICN)法をFDTD法に導入する.完全導体を含んだモデルの解析により,ICN-FDTD法の妥当性を検討する.
これまで周波数分散性を持つ媒質に対する FDTD 法として,帰納的畳み込み(RC)法・台形則を用いたRC(TRC)法・区間線形近似を用いたRC(PLRC) 法が提案されている.これらの手法は,金属の分散性を表す Drude-Lorentzモデルを考慮した,プラズモニックデバイスなどの解析に広く使用されている.それらの精度評価には透過係数が用いられることが多く, 反射係数についてその精度を定量的に評価し,比較したものがない.
本稿では3つの手法を1次元のFDTD法に適用し,反射係数についてその精度を定量的に評価し,比較した.
本研究ではConstrained Interpolation Profile - Basis Set (CIP-BS)法の低数値分散性を利用し、散乱体が疎に分布する領域で計算効率を評価する。Finite Difference Time Domain (FDTD) 法との比較より、共役勾配法を用いてCIP-BS法の更新式を解いたとき高精度な領域でFDTD法より省メモリであり、また高精度化に伴う計算時間の増加量はCIP-BS法の方が少ないことが明らかとなった。
C-2. マイクロ波A(マイクロ波・ミリ波能動デバイス)
3月9日 9:15〜11:45 Meeting 39 座長 長谷川直輝(ソフトバンク)
C-2-1 |
AMC基板上の折り返しダイポールアンテナを用いる2.4GHz帯高感度レクテナ
安丸暢彦・◎入口翔太・伊東健治・田村俊樹・坂井尚貴・牧野 滋(金沢工大) |
C-2-2 |
短絡スタブ装荷ダイポール装荷5.8GHz帯1Wレクテナ
○坂井尚貴・野口啓介・伊東健治(金沢工大) |
C-2-3 |
PN-Body Tied(PNBT) SOI-FET Diode整流器の周波数特性
◎安丸暢彦・伊東健治・坂井尚貴・栁 遼太・森 貴之・井田次郎(金沢工大) |
C-2-4 |
Cross coupled CMOS pairによる整流用ダイオードの特性
◎廣野敦哉・伊東健治・坂井尚貴(金沢工大) |
C-2-5 |
E-pHEMTによるGADを用いる20GHz帯倍電圧整流器MMIC
◎小松郁弥・坂井尚貴・伊東健治(金沢工大) |
WLANや放送などの微弱な電波より直流電力を取り出す環境発電の検討が行われている.我々は人口磁壁(AMC)基板上の折り返しダイポールアンテナ(FDA)により20kΩを超えるアンテナインピーダンスを実現し,これを用いる920MHz帯レクテナについて既に報告している.本報告では2.4GHz帯での適用結果を報告する.
本論文は回路レスかと広範なインピーダンス整合を実現する短絡スタブ装荷ダイポールアンテナによる高効率な5.8GHz帯1Wレクテナの設計,試作結果について述べる.測定結果より,提案レクテナに搭載されたブリッジ整流器は入力電力30dBmのとき整流効率92.8%が得られた.
放送や携帯電話などの電波より直流電圧を取り出すエネルギーハーべスティングの検討が行われている.筆者らは極低電力での高効率での整流を目指す中で,floating-body効果により低電圧で急峻なターンオン特性が得られるPNBT diodeを提案している.このPNBT diode整流器の高周波での動作確認が課題となっている.本報告ではPNBT diodeを用いる整流器の周波数特性の評価結果を示す.
無線電力伝送システムにおいて高周波整流器の高効率化,集積化が課題となっている.本報告では,高周波整流器に用いる Cross coupled CMOS pair(CCP)による整流ダイオードの特性を報告する.
電波を用いる無線電力伝送の効率改善のため,ミリ波の適用が検討されている.小形アンテナでの低伝搬損が期待できる一方,整流器の高効率化,大電力化が課題である.筆者らはE-pHEMTによるGated anode diode (GAD)を用いる 5.8GHz帯整流器MMICにより,高効率,大電力動作を確認している.ここでは,このGADによる20GHz帯倍電圧整流器MMICの試作結果を報告する.
(10:30 開始) 座長 坂井尚貴(金沢工大)
C-2-6 |
A Study on the Fundamental Limit of Integrated Rectifiers for Low Cost Microwave Wireless Power Transfer
◎Takuma Hashimoto・Toru Tanzawa(Shizuoka Univ.) |
C-2-7 |
RF環境発電への応用に向けたマルチ共振モード広帯域高感度整流器
◎大野 桂・田中愼一(芝浦工大) |
C-2-8 |
40nm CMOSプロセスによるW帯振幅・位相共用検波回路
○堤 恒次・津留正臣(三菱電機) |
C-2-9 |
出力に逓倍器を設けたベクトル合成型移相器の移相精度最適化手法の検討
○山本 航・堤 恒次・津留正臣(三菱電機) |
C-2-10 |
スタックFETを用いた2-12GHz帯高耐電力GaN MMICスイッチ
○半谷政毅・神岡 純・幸丸竜太・三輪真一・加茂宣卓(三菱電機) |
マイクロ波無線電力伝送用整流器を集積化する際の設計限界について調べた。コストを抑えるためにインピーダンスマッチングはサイズの小さいオンチップキャパシタCmのみを用いるという条件を設けた。レクテナを線形化したモデルにおいて出力電圧が最大となる最適なCmを求める解析式を得て、線形化前後の回路で出力電圧VoとCmの関係が同等であることをSPICEシミュレーションで確認した。また出力電力Poがアンテナインピーダンスの実部と虚部の組み合わせに対してどのような等高線を描くか3つの周波数fで調べた。ボンディングパッドの寄生容量330fFがある状況では5GHzではCmのみを使った整合が取れず、Poの最大値は920MHzに比べて80%程度になることが分かった。
我々はRF環境発電への応用に向けて、整流器を共振コイルによって高感度化し、さらに複数の共振モードを用いることでその動作を広帯域化してきた。今回、回路構成の最適化とダイオード容量の周波数依存性を考慮したモデル抽出により、国内地上デジタルTVのバンドをカバーする高感度整流器の特性を改善できたので報告する。
フェーズドアレーシステムにおいて送信ビームを高精度に制御するためには,各チャネルの信号の振幅と位相を検出し,フィードバックをかけることが好ましい.一般的には,送信増幅器とアンテナの間に設けたカプラ等で一部の電力を取り出して検波を行うが,振幅検波回路と位相検波回路の両方を用いると,回路面積が大きくなるなどの影響が生じる.ここでは,一つ回路で振幅と位相の両方を検波できる方式を提案し,40nm CMOSプロセスで試作した結果を報告する.
近年ミリ波帯での位相制御の必要性が高まっており,移相精度の向上が課題となっている.ミリ波帯での位相制御
を実現する回路の一つとして,低周波数帯での移相器と周波数逓倍器を組み合わせた構成が考えられる.この構成で
は,移相器として360 度の可変幅を有するベクトル合成型移相器を使用すると,周波数の2 逓倍後に720 度の可変幅が得られる.本稿では,この冗長性を利用して移相精度を最適化する手法を提案する.
広帯域にわたって高耐電力と低損失を両立するSPDTスイッチを開発した.本回路はスタックFET[1]を活用しており,本構成にて所要帯域における必要な耐電力性能を満たしつつ挿入損失を最小化する設計法を開発した.
今回,GaN MMICスイッチを製作し,本構成と開発した設計法の有効性を実験的に検証したので報告する.
3月9日 13:00〜15:45 Meeting 39 座長 高野恭弥(東京理科大)
C-2-11 |
コレクタ接地されたバイポーラトランジスタを持つ負性抵抗発振器の不要発振の抑制
◎山本裕生・佐薙 稔(岡山大) |
C-2-12 |
ゲート負荷容量部の高調波処理によるCMOSスタック増幅器の高効率化検討
○竹添慎司・森野芳昭・津留正臣(三菱電機) |
C-2-13 |
ラジアルスタブをACグランドとして用いた130GHz帯CMOS増幅器の高利得化
◎△町井大輝・本良瑞樹・亀田 卓・末松憲治(東北大) |
C-2-14 |
1ポートCRLH線路から成る高調波処理回路を用いる79%電力付加効率2GHz帯GaN HEMT高出力増幅器
◎飯坂尚章・田中愼一(芝浦工大) |
C-2-15 |
クロスカップルキャパシタを用いたAMPM補償に関する検討
○鳥居拓真・山中宏治(三菱電機) |
パッケージ化されたマイクロ波帯用のバイポーラトランジスタをコレクタ接地で用いた負性抵抗発振器について検討した.負性抵抗を示す周波数範囲を制御することで不要発振を抑制した発振器を実現した.
半導体プロセスの微細化技術の進展は,CMOSデバイスの高周波性能を向上させる一方,トランジスタの耐圧低下を引き起こし,出力電圧振幅を制限する.そのため高周波帯におけるCMOS電力増幅器では,高出力化が課題となる.この課題を解決する手法として,トランジスタをスタック(積み重ね)することで耐圧を確保しつつ高出力化を可能としたスタック増幅器が提案されている.本稿ではスタック増幅器において,電力効率向上を目的に,スタック増幅器を構成するゲート負荷容量の終端に高調波処理を施す高調波処理型スタック増幅器を提案する.45nm SOI CMOSを用いて本提案構成の高調波処理型差動3スタック増幅器を設計した結果,従来と比較して電力付加効率が6.3ポイント向上し56.8%となることをシミュレーションにより確認した.これにより,本提案構成を用いることでスタック増幅器の電力効率向上が期待できる.
超100 GHzのCMOS増幅器では十分な利得が得にくいため,整合回路の低損失化は重要な課題である.整合回路にショートスタブを用いる場合,スタブにDCバイアス電圧が印加されているため,そのスタブの先端をACグランドに終端する必要がある.100 GHz以上ではACグランドの損失を減らすため1/4 λg 低インピーダンスMSLを用いたオープンスタブ や,1/4 λgラジアルスタブが用いられている.本稿では,AC GNDを2種類のスタブで形成する場合について,その回路損失を検討するとともに,実際に130 GHz 帯CMOS増幅器の試作し,その効果を検証した.その結果.オープンスタブに比べて,ラジアルスタブの方が低損失化であることを示し,130 GHz帯増幅器において,実測で2.1 dBの利得向上効果を確認した.
我々は高出力増幅器(PA)の回路面積を増やすことなく高効率化を実現するため,マイクロストリップ線路を用いずCRLH線路のみで構成した小型高調波処理回路を報告してきた.今回はこの手法を出力側回路だけでなく入力側にも適用し, 2GHz帯10W増幅器にて79%の電力付加効率を得たので報告する.
近年、衛星搭載向け電力増幅器においては、出力電力、耐久性、コストの観点において、GaN(Gallium nitride)電力増幅器が注目を集めている。一方で、低歪特性の要求を満たすため、GaN電力増幅器の線形化が求められている。線形化においてはリニアライザを用いた構成が挙げられるが、リニアライザにより電力増幅器の利得が低下する課題がある。そこで、高利得な特徴を有するクロスカップルキャパシタ型増幅器[1]の AMPMについて検討した。
休 憩(14:30 再開) 座長 小林一彦(日大)
C-2-16 |
最終段をドハティ増幅器とする2段増幅器におけるドライバ段増幅器の負荷変調
○坂田修一・小松崎優治・山中宏治(三菱電機) |
C-2-17 |
2入力非対称ドハティ増幅器の効率・線形性の実測検討
◎髙木裕貴・太田喜元・長谷川直輝(ソフトバンク) |
C-2-18 |
2電力レベル設計準ミリ波帯GaN HEMT MMICドハティー増幅器
○石川 亮・瀬下拓也・高山洋一郎・本城和彦(電通大) |
C-2-19 |
ミリ波帯ドハティ増幅器実現に向けたオフセット解析
○清水駿斗(鹿児島大)・濱野皓志(住友電工)・西川健二郎(鹿児島大) |
C-2-20 |
出力電圧範囲を最適化した高速高効率GaNスイッチング型エンベロープ増幅器
○齋木研人・坂田修一・小松崎優治・山中宏治(三菱電機) |
近年の大容量通信に対応するため、移動通信基地局用増幅器として、ドハティ増幅器の研究が盛んに進められている。ドハティ増幅器では、主増幅器をAB 級に、補助増幅器をC 級にバイアスして動作させる。AB 級にバイアスした主増幅器の入力インピーダンスは非線形性が弱いが, C級にバイアスした補助増幅器の入力インピーダンスは非線形性が強く入力インピーダンスが低出力電力時から飽和時にかけて大きく変化する。この入力インピーダンスの非線形性を利用して, 入力信号分配器としてするウィルキンソン分配器の入力電力分配比の動的制御について既に報告した。本報告では、この入力信号の非線形性を利用してドライバ段の負荷変調が可能であることを理論と実測で確認したので、報告を行う。
商用化が開始されている第5 世代移動通信システムでは, 周波数帯域幅の拡大等により通信信号の更なる高PAPR(Peak-to-Average Power Ratio) 化が進んでいる. 非対称ドハティ増幅器は高PAPR の変調信号を高効率増幅することが可能である. 最近では, ウィルキンソン分配器のアイソレーション抵抗を制御することにより,ドハティ増幅器内のキャリアアンプ(CA) とピークアンプ(PA) への入力分配比を変化させる方式が考案されている. 本研究では, 試作した非対称ドハティ増幅器内のCA 及びPA それぞれに直接入力する2 入力方式で電力レベルを制御し,5G NR のテストモデル変調信号での効率及び線形性について実測評価を行ったので報告する.
5G通信システムでは28 GHz 帯などの準ミリ波帯も利用されるが,広ダイナミックレンジ増幅器として良く用いられるドハティー増幅器の設計において,トランジスタ性能低下および回路損失増加により性能がサブ6 GHzでのものに比べて大きく低下し,理論設計通りの実現が難しくなっている.一方で,準ミリ波帯では通常MMIC で設計され,専用シミュレータを用いた設計精度向上により,インピーダンス最適化設計が可能である.そこで,提案しているλ/4インピーダンス変換器を用いないドハティー増幅器構成を元に,シミュレータでのフィードバック最適化により28 GHz帯GaN HEMT MMICドハティー増幅器の設計し,試作・評価を行った.
Beyond5G等将来無線通信システムではミリ波帯の利用が検討されている.また,それらの通信システムは6dB 以上のピーク対平均電力比(PAPR) が要求されている.これに対して送信用電力増幅器は広いダイナミックレンジでの高効率動作が求められ,ドハティ増幅器(DPA)は上記課題を解決する有効な技術の1つである.本研究では,ミリ波帯ドハティ増幅器実現に向けて,ミリ波帯DPAMMICで生じる最大効率及び,飽和出力特性に及ぼす影響について,シミュレーションで明らかにした,
近年,高周波増幅器のバックオフ動作での効率を改善する手法として,電源電圧を入力信号の振幅に応じて変調するエンベロープ増幅器を使用したエンベロープトラッキング増幅器(ETPA:Envelope Tracking Power Amplifier)の研究が進められている.高性能な次世代基地局用増幅器に向けて,エンベロープ増幅器には高速・高効率・高電圧動作が求められることから,GaNを用いた構成とすることが検討されている.高周波増幅器のドレイン電圧を0V付近で駆動した場合,利得が0または極端に低くなるため,ETPAでは一般的にドレイン電圧変調範囲をある電圧以上に制限する波形処理(ディトラフィング処理)が行われる.したがって,エンベロープ増幅器からは0Vより高い電圧を出力すればよい.それに伴い,エンベロープ増幅器をスイッチング増幅器で構成した場合,デトラフィング処理後の入力波形に対応するようにスイッチング増幅器の出力電圧の最小値を0Vより高い電圧にする構成が可能である.今回,出力電圧範囲を最適化したGaNエンベロープ増幅器の試作・評価を行い,その結果出力電圧範囲を最適化しない構成より高速・高効率な特性が得られたので報告する.
C-2. マイクロ波B(マイクロ波・ミリ波受動デバイス)
3月10日 9:30〜11:30 Meeting 39 座長 河合 正(兵庫県立大)
C-2-21 |
折返し構造を用いた非相反右手/左手系複合導波管の検討
○大久保賢祐・鈴木琴音・岸原充佳(岡山県立大) |
C-2-22 |
±λ/6のCRLH線路で構成された7λ/6ラットレース回路の小型化
◎小倉 拓・出口博之・辻 幹男(同志社大) |
C-2-23 |
非相反CRLH結合線路によるデュアルバンド4 ポートサーキュレータ
◎山田健太・上田哲也・山上航平・黒澤裕之(京都工繊大)・伊藤龍男(カリフォルニア大) |
導波管に周期的に装荷したフェライトを中央で分割し,反平行に磁化することで順方向の伝搬に波長無限大の波が伝搬する点P_0を有する非相反右手/左手系複合導波管(AP-CRLH-WG)が構成できることが報告されている.AP-CRLH-WGにはバランス条件のような条件は存在せず印加磁界によって容易に点P_0を変化できるが反平行磁界の印加が難しい.本稿では折返し(folded)構造を用いた新たな非相反CRLH導波管(F-CRLH-WG)を提案し,3.7GHz付近に点P_0を有する回路を設計し,数値解析によってその非相反伝送特性を明らかにしている.
左手系人工媒質は位相速度と群速度の方向が異なり,マイクロ波回路への応用が期待されている.本研究では,従来よりも小さな回路サイズで設計可能な7λ/6ラットレース回路に右手/左手系複合線路(CRLH-TL)の位相進みの特性を利用してラットレース回路をλ/6の分岐線路3つと-λ/6の分岐線路2つで構成することにより小型化が実現できることを示している.
マイクロ波領域のメタマテリアルとして右手/左手系複合(CRLH)線路に関する研究が行われている. 最近では,この結合線路を構成する線路として非相反CRLH線路を適用した4ポートサーキュレータが提案されている.しかしながら従来の非相反CRLH結合線路においては,良好なサーキュレーション動作の伝送特性が得られておらず,単一バンド動作であった.本稿では, 伝送特性を改善し,デュアルバンドサーキュレータとして動作することを数値計算により示す.
休 憩(10:30 再開) 座長 大久保賢祐(岡山県立大)
C-2-24 |
永久磁石を両面に配置する電磁シールド表面実装サーキュレータの試作評価
○石橋秀則・杉山勇太・遠藤邦浩・安藤晃洋・柴田博信・長峯巧弥・高橋 徹・稲沢良夫(三菱電機) |
C-2-25 |
電磁界シミュレーションを用いた90度ハイブリッドの広帯域化に関する一検討
○花澤理宏(UL Japan)・吉田 信(CDEX)・矢加部利幸(マルチポート研究所) |
C-2-26 |
G帯PTFE SIW十字交差形3dBカプラの試作・評価
○岸原充佳(岡山県立大)・藤谷海斗・山口明啓・内海裕一・太田 勲(兵庫県立大) |
C-2-27 |
ツイストからなる位相反転回路を装荷した導波管ラットレースカプラの試作評価
○湯川秀憲・大島 毅・高橋 徹(三菱電機) |
近年,アンテナ送受信機に用いられる送受信モジュールは,小型・低コスト化の要求から,全ての搭載部品を表面実装することが提案されている.そのため,筆者らは,サーキュレータについて表面実装化を検討している.現在検討しているKu帯のサーキュレータは,強い磁力が必要であり,永久磁石の低背化が課題となる.そこで,低背化を目的に,地導体を上面,中心導体を下面に配置し,その両面を永久磁石でバイアスする構造の電磁シールド表面実装サーキュレータを提案し,試作評価結果したので報告する.
複数の電力測定結果から高精度に複素反射特性を測定可能なシステムとして
6ポートコリレータが検討されている.
6ポートコリレータに用いられる90度ハイブリッドや180度ハイブリッドの広帯域
化が課題の一つとなっている.本検討では,電磁界シミュレーショを用いて
90度ハイブリッドの広帯域化について検討を行った.
放射光直接エッチングによるPTFEの加工とAu膜の形成プロセスにより,PTFE基板集積導波管(PTFE SIW)の180 GHz帯バトラーマトリクスを形成できることが報告されている.今回,その構成要素となるPTFE SIW十字交差形3dBカプラの試作・評価を試みた結果について報告している.まず,G帯にて方形スルーホールを用いたPTFE SIWの寸法を決定し,十字交差形3dBカプラを設計している.PTFEの放射光直接エッチング,Auスパッタと電解めっきを組み合わせた製作プロセスで試作を行い,周波数特性を測定している.分配特性に相当する結果は変動が大きいが同程度のレベルが得られていることを確認している.
ラットレースカプラは180度の位相差で分配するカプラとして有用であるが、原理的に180度の位相差が得られるのは中心周波数のみであり、分配振幅特性(結合特性と通過特性)は異なる周波数特性となる。そこで、筆者らは、結合特性と通過特性が同じ周波数特性となり、分配振幅位相偏差が低減される導波管ラットレースカプラを提案している。ここでは、本カプラの試作評価結果について報告する。
3月10日 13:00〜16:00 Meeting 39 座長 池内裕章(東芝)
C-2-28 |
Double Strip Resonator構造を用いたKa帯超伝導フィルタの検討
◎横山智基・關谷尚人(山梨大)・作間啓太(成蹊大) |
C-2-29 |
深層Qネットワークを用いたマイクロストリップBPF自動設計
◎高野晃平・大平昌敬・馬 哲旺(埼玉大) |
C-2-30 |
複数放射素子・複数共振器からなる60GHz帯平面アンテナの設計及び実験
○大平昌敬・馬 哲旺(埼玉大) |
C-2-31 |
二層基板を用いた導波管マイクロストリップ線路変換器の広帯域化
◎森岡隆文・榊原久二男・杉本義喜・菊間信良(名工大) |
C-2-32 |
屈曲誘電体導波路による通信エリアでの信号伝送品質評価
○福田敦史・山本大斗・岡崎浩司・鈴木恭宜(NTTドコモ) |
C-2-33 |
円形アンテナアレーによるOAM伝送におけるモード間アイソレーションの周波数無依存化について
◎△安東壱成・北川敬太・真田篤志(阪大)・福田敦史・岡崎浩司(NTTドコモ) |
第5世代移動体通信システムや電波天文分野では30 GHz付近の高い周波数が使用されおり,低損失かつ急峻な遮断特性を有する超伝導フィルタが求められている.30 GHz付近の超伝導フィルタの報告例にはMicro Strip Line(MSL)や共平面型Hスロット共振器などの構造が用いられている.我々は以前にDouble Strip Resonator(DSR)構造を用いたC帯の送信用超伝導フィルタを提案した.この構造はミリ波の受信用フィルタでも電波の放射がなく,MSL構造に比べ帯域外の遮断特性とQ値が共に優れている可能性がある.そこで本研究では,30 GHz付近の帯域におけるDSR構造の有用性について検討を行った.シミュレーションの結果,DSR構造はMSL構造に比べ帯域外共振が抑えられており,基板サイズによる大きな制限を受けないことを明らかにしたので報告する.
近年,深層Qネットワーク(DQN)を用いた帯域通過フィルタ(BPF)の自動設計が検討されている.この方法は最適化とは違い設計過程を学習することから,初期値依存性が低い.しかし,その適用例は空洞共振器BPFに限られていた.平面BPFの場合,不要結合によって特性調整がより複雑化し,DQNの構築に非常に時間を要する.そこで本報告では劇的に計算時間を短縮するため電磁界解析に順モデルを導入し,平面BPF自動設計のためのDQNを構築する.そして設計例を通してその有効性を示す.
小型ロボットアームの60 GHz帯ワイヤレスハーネスシステム向けのアンテナには,(1) 3 GHzの帯域幅を有し,(2) アームの向きに依らず送受信可能であり,(3) 無線モジュールとの一体化ならびに低コスト化のため平面構造で実現することが要求される.これらの仕様を達成するため,本報告では複数放射素子と複数共振器(MRMR:Multiple Radiators Multiple Resonators)で構成されるアンテナ(MRMRアンテナと呼ぶ)を提案し,電磁界シミュレーション及び実験によってその有効性を検証する.
整合パッチを用いたパッチ型導波管マイクロストリップ線路変換器について,様々なアプリケーションへの導入を目的とし,基板の接地板側ではなく,信号線側に導波管を接続する導波管マイクロストリップ線路変換器を設計した.単層基板変換器では帯域が狭くなるところを,2 層基板を用いることで体積を増加させ,Q 値が低下し,変換器の広帯域を可能とした.本研究では,パッチの寸法と線路挿入長を変化させることで共振周波数や反射量を変化させることが可能な変換器を設計した.本報告では,ミリ波帯で設計した導波管マイクロストリップ線路変換器を有限要素法で解析し,寸法パラメータの変化による特性への依存性を評価した結果を示す.
今後の移動帯通信において予測される急激なトラヒックの増大に対応するためミリ波帯の利用が注目されている。著者らはこれまで誘電体導波路(以下、DWG)が屈曲時に導波路内で伝送されている電磁波が漏洩する特性を用い、ミリ波帯通信エリアを形成する手法を提案し、さらに屈曲部を複数設けた際の動作をCW信号にて確認したが、屈曲部からの放射における信号伝送品質劣化要因の有無については確認できていなかった。本稿では、各エリアにおいて一般的なアンテナを用いた場合と同様な伝送品質が得られることを確認するため行った5G NR信号による伝送品質の評価結果を報告する。
近年, アナログOAM多重無線通信が検討されているがモード間アイソレーションの広帯域化が課題である.
本稿では周波数に無依存となるOAMモード間アイソレーションのための円形アンテナアレーの構成法を提案する.
休 憩(14:45 再開) 座長 岡崎浩司(NTTドコモ)
C-2-34 |
伝送線路の不均一化による偏波共用アンテナ給電用6ポート差動電力分配器の特性改善
○佐野 誠・橋本 紘(東芝) |
C-2-35 |
PCB基板上12.5GHz帯3分配電力分配器の設計
○原 紳介・董 鋭冰・田野井 聡・萩野達雄・渡邊一世・笠松章史(NICT) |
C-2-36 |
920MHz/3.7GHzデュアルバンド準集中定数素子型電力分配器の実験的検討
◎土屋 歩・奥田泰士・河合 正・榎原 晃(兵庫県立大) |
C-2-37 |
広帯域なエンドランチャ型4電力分配/合成器の設計
◎川上連太郎・佐薙 稔(岡山大) |
C-2-38 |
ギセル構成により高アイソレーションなポートを持つ導波管型マイクロ波電力分配/合成器
◎栗政春秀・佐薙 稔(岡山大) |
著者らは差動給電方式の直交直線偏波共用アンテナの小型な給電回路として,2入力・4出力の6ポート差動電力分配器を提案した.本稿では,ループ状線路の特性インピーダンスを不均一にすることで6ポート差動電力分配器のポート間アイソレーションを調整でき,アンテナの交差偏波識別度(XPD)を改善できることを示す.
Bagley polygon型電力分配器をもとにしたPCB基板上低位相差出力の3電力分配器の設計・検証を行った.電力分配器は1.8 mm間隔で実装した3回路へ12.5 GHzの信号を供給するマルチチップモジュール用のPCB基板で作製することを想定した.特性インピーダンス50・57.7・100 Ωの伝送線路のモデルを導出し、回路シミュレーションによる構造最適化と共に、電磁界解析による比較解析を行った.結果、回路シミュレーションと電磁界解析で良い一致が見られ、12.5 GHzにおいて伝搬損失0.11 dB、出力端子間の損失・位相差それぞれ0.01 dB、0.27 ºの特性が予測された.
マイクロ波信号を同相に分配する3ポート回路としては,回路構成と設計が容易なウィルキンソン電力分配器がよく用いられる.ICT技術の根幹をなすIoTデバイスの爆発的な普及や5Gの実用化が進む中,デバイスの小型化,マルチバンド化など高性能化が要求されている.著者らは,LC はしご形回路を用いた集中定数素子型の電力分配器について広帯域化,非等分配化,多出力化などの手法についてこれまでに報告している.本報告では,構成要素数9個の簡潔な集中定数素子型電力分配器を取り扱い,IoT,5G(sub6帯)で使用される920MHzと3.7GHzの2周波数帯で動作する回路の設計・解析を行い,その有効性を実験的に確認している.
エンドランチャ型の導波管型電力4分配/合成器について, より広帯域な特性を持つ構造の設計を行った. 分配/合成器は矩形導波管を短絡し, 短絡面に対して垂直に4本の同軸線路を接続した構成である. 設計周波数を2.45GHzとし, 電磁界シミュレーションにより反射損失が20dB以上となる帯域幅が0.74GHzとなる分配/合成器を設計した.
ギセル構成を採用した導波管型電力分配/合成器を検討した.電磁界シミュレーション設計周波数において低い反射と高いポート間のアイソレーションを持つ構造を設計した.
3月11日 13:00〜15:15 Meeting 39 座長 大平昌敬(埼玉大)
C-2-39 |
円形パッチ配列電波吸収体の周期境界条件に基づく斜入射における入力インピーダンスの導出
松本壮太・◎押野隼也・須賀良介(青学大)・荒木純道(東工大)・橋本 修(青学大) |
C-2-40 |
重ね合わせの原理に基づいた円形パッチ配列電波吸収体の反射係数の導出
松本壮太・◎高橋友朗・須賀良介(青学大)・荒木純道(東工大)・橋本 修(青学大) |
C-2-41 |
パッチと導体板間の電磁界結合を考慮したスクエアパッチアレー薄型電波吸収体の構造設計に関する検討
◎松本壮太・須賀良介(青学大)・荒木純道(東工大)・橋本 修(青学大) |
C-2-42 |
2帯域阻止形周波数選択面(FSS)の試作評価
○九鬼孝夫(国士舘大) |
薄型,軽量という付加価値をもった電波吸収体として,円形パッチ配列電波吸収体が報告されている.
本電波吸収体の斜入射における入力インピーダンスはパッチの自己インピーダンスとパッチ間の相互インピーダンスの総和で表すことができる.
本研究では,周期構造体に成り立つ境界条件に基づいて入力インピーダンスを導出した.
近年提案されている電波吸収体の一つに電磁界解析を用いて検討された円形パッチ配列電波吸収体がある.本研究ではこのような電波吸収体の設計の効率化のために,新たに重ね合わせの原理に基づいた反射係数の導出法を提案する.
本研究では、スクエアパッチアレーと導体板で構成された薄型電波吸収体のパッチアレーを設計した。薄型化に伴いパッチアレーの後方の入力サセプタンスは負に大きくなるため、パッチアレーにはこれを打ち消す大きな正のサセプタンスが必要であり、そのためには面抵抗値とパッチの幅を大きくする必要があることがわかった。さらに、パッチと導体板間の近接配置による電磁界結合を考慮してパッチの幅を小さくすることで、薄型電波吸収体を設計できることを示した。
周波数選択面(FSS)は,誘電体基板の上に導体パターン(エレメント)を規則的に配置した構造で,所望の周波数の電波を透過/減衰/反射する高周波帯空間フィルタである.無線LANなどで利用される2つの周波数帯域(2.45GHz帯と5.6GHz帯)を阻止帯域とするFSSを試作評価した.エレメントの形状をFour-legged Loaded形,配置を単純正方格子とし,厚さ50µm のポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムに銀ペーストをスクリーン印刷してエレメントを作成した.エレメントを縦横に8×8 個配置し,大きさ320×320mmのFSSを試作した.測定の結果,測定値と計算値は良く一致し,設計どおりの伝送特性が得られたことがわかった.また,伝送特性には入射電波の入射角依存性があることもわかった.
休 憩(14:15 再開) 座長 須賀良介(青学大)
C-2-43 |
6ポートコリレータを用いた反射係数計測
○矢加部利幸(マルチポート研)・時田幸一・藤原康平(都産技研) |
C-2-44 |
機械学習による高周波プローブの位置制御
○坂巻 亮・堀部雅弘(産総研) |
C-2-45 |
薄型フィルムの36GHz帯温度依存性の高能率評価
◎木村泰希・古神義則・清水隆志(宇都宮大) |
C-2-46 |
330-500GHz帯反射型中空直方体共振器の給電構造による無負荷Q値への影響
◎原 慶城・広川二郎・戸村 崇(東工大) |
筆者らは、6ポート型リフレクトメータを提案した。線形時間不変回路の6ポートリフレクトメータを中核に構成した6ポート型リフレクトメータの提案で、計測理論とV帯定在波測定器を用いた実証実験を行い、良好な結果を示した。
一方、既に6ポートコリレータの提案と、その応用計測技術を公表している。
本報告では、まず6ポートリフレクトメーと6ポートコリレータを概観した後、6ポートコリレータが有する優れた特徴を示し、6ポートコリレータを用いた6ポート型リフレクトメータを提案する。
通信機器等の電子機器では平面回路が多く利用されており、その特性の評価には高周波プローブを用いた平面回路評価システムが利用されている。産総研では、プローブ位置の再現性を高めることで高精度な平面回路評価システムを構築した。しかしながら、これまでの動作アルゴリズムは、動作の安定性を確保するために予めベクトルネットワークアナライザー(VNA)を含む測定システムの校正を行なう必要があった。こうした中、筆者は機械学習を利用した新しいプローブ位置決め技術を提案した。本稿では、機械学習を用いた新しいアルゴリズムにより、事前の測定システムの校正を必要としない、新しいプローブ位置決め方法を実証する。
我々は、円筒空洞共振器を用いた誘電体材料の温度依存性評価法の開発を行っている。試料厚さ100m以上では、高精度かつ短時間に評価可能であり、試料厚さ100m以下では、測定温度の安定に充分な時間をかけることで高精度評価が可能であることを実証してきた。しかし、その評価は2日間程度が必要であった。本研究では、数時間で温度依存性評価が可能な測定条件を見出すことを目的に検討を行った。その結果、乾燥機および高温側を測定開始とすることで、50m厚PTFEフィルムの36GHz帯における温度依存性の高能率評価が行えることを実証した。また、本評価条件を用いることでより、従来の12倍の効率化が可能である。
中空導波管は100GHz超える周波数帯でも低損失であり,高利得アレーアンテナの給電構造に用いられる[1].中空導波管の損失要因は導電率であり,これを測定することでアンテナ利得の最大値を予測できる.導電率測定には通過型共振器が用いられる[2].しかし,100GHzを超える導波管のフランジ寸法は周波数帯によらず一定であるため,フランジ同士が干渉するため通過型共振器の測定が困難である.反射型共振器であれば導波管1つのみ接続するので干渉の問題が生じない.本稿では330-500GHz帯において,給電構造が無負荷Q値測定に与える影響を検討する.また計算では導電率は一例とした与えた値を使用している.結果は、モード次数が高ければ給電構造が無負荷Q値測定に与える影響は少ないが、モード次数が低いとスロットが共振してしまうため与える影響が大きくなる.
C-2. マイクロ波C(マイクロ波・ミリ波応用装置)
3月12日 10:30〜11:45 Meeting 39 座長 片山光亮(早大)
C-2-47 |
異なる符号化による1ビットダイレクトデジタルRF送信機の出力電力スペクトル密度の定式化
○張 俊皓・本良瑞樹・亀田 卓・末松憲治(東北大) |
C-2-48 |
All-Digital Outphasing 変調器を用いたRoF システムの提案と実験評価
◎加瀬裕真・堀 真一・大島直樹・國弘和明(NEC) |
C-2-49 |
非線形チャープ信号によるFMCWレーダの干渉波抑圧
○水谷浩之・森 一富・中溝英之(三菱電機) |
C-2-50 |
車載型前方監視マイクロ波レーダの研究
○中島弘朋・木全哲也・重松康祐・大間茂樹・森田淳子(防衛装備庁) |
C-2-51 |
土中筍探知を目的とした簡易インパルスレーダについての検討
◎岩本孝太・岩城昴琉・坂本雅弥・黒木太司(呉高専) |
ディジタル信号からナイキスト周波数を超える RF 信号を直接生成できるダイレクトデジタル RF 送信機として,1 ビットバンドパス(BP) ΔΣ 変調器の高次イメージ成分を取り出す構成を提案されてきた[1]-[3].NRZ 符号化[1]で1 ビット信号を生成するとき,イメージ信号をSINC 関数で大きく減衰する.それを改善する為,RZ[2]とマンチェスター(MAN)符号化[3]を用いた 1 ビット BPΔΣ 送信機が提案された.本研究では,NRZ,RZ(50% duty),MAN 符号化を用いた時の 1 ビット BPΔΣ 送信機の出力電力スペクトル密度を定式化し,シミュレーションで検証したので報告する.
屋内無線システムにおいて,光ファイバ無線(RoF)は,電波不感地帯への柔軟な無線子局(RU)の設置を可能にし,大容量かつ長距離伝送の利点を持つ.RoFを遮蔽物による通信品質の劣化が著しいミリ波帯に適用するには,多数のRUを設置する必要があり,RUの低消費電力化や光デバイスの低コスト化が課題となる.本稿では,これら課題解決のためAll-digital outphasing変調器(ADOM)を用いたRoFシステムを提案し,伝送評価について報告する.
周波数が時間に対して非線形に変化するチャープ信号を送信することで、レーダ送受信機を構成するADC(Analog to Digital Converter)のナイキスト周波数によらず、遠方と近傍の目標物の距離を同時に検出する方式を提案した。ここでは、自レーダに非線形チャープ信号を用いることで、線形なチャープ信号を送信するFMCW (Frequency Modulated Continuous Wave)レーダから受信する干渉波を抑圧できることを、シミュレーションにより明らかにする。
紛争地域では,あり合わせの爆発物と起爆装置等を組み合わせたIED(Improvised Explosive Device:即製爆発装置)に起因した事件が多発している.IEDは通常の地雷と異なり,テロリストが任意のタイミングで起爆できることから,極力離隔位置から探知を行うことが重要となる.そこで防衛装備庁陸上装備研究所では,前方監視マイクロ波レーダ,ミリ波レーダ及び赤外線撮像装置を組み合わせたIED探知装置を試作し,埋設されたIEDに対する探知性能の評価を行った.本発表では,車載型前方監視マイクロ波レーダの評価結果について紹介する.
筍は成長し土から空気中に突出すると酸化し、えぐみが増すことで市場価格が低下する。また、筍の大半は土中で成長が止まり、腐敗することから生産量低下が著しい。これらのことから土中にある筍を効率的、計画的に採取できる技術が必要とされている。以前、共振型の探知機について検討を行ったが[1]、今回は簡易的なインパルスレーダ方式を採用し、レーダ用アンテナと地表との間隔によるアンテナ利得への影響およびアンテナ特性を考慮したインパルスレーダ[2]特性について検討を行った。
3月12日 13:00〜16:30 Meeting 39 座長 本良瑞樹(東北大)
C-2-52 |
AMラジオ波を用いた土砂災害予知システムの検討―(1) 土中アンテナセンサによる土壌含水率推定―
◎岩城昴琉・岩本孝太・内田悠斗・坂本雅弥・黒木太司(呉高専) |
C-2-53 |
AMラジオ波を用いた土砂災害予知システムの検討 ―(2) IoT端末-ゲートウェイ間電波伝搬特性―
◎木下拓真・宮本大哉・岩城昴琉・岩本孝太・坂本雅弥(呉高専)・坂田 蒼・宮本和哉(宮本機器開発)・黒木太司(呉高専) |
C-2-54 |
AMラジオ波を用いた土砂災害予知システムの検討―(3) IoT端末-ゲートウェイ間ネットワーク構成―
◎宮本大哉・新浜優貴・木下拓真・岩城昴琉・岩本孝太・坂本雅弥(呉高専)・坂田 蒼・宮本和哉(宮本機器開発)・黒木太司(呉高専) |
C-2-55 |
AMラジオ波を用いた土砂災害予知システムの検討―(4) 土中アンテナセンサの深さ方向検知感度―
◎高松 陸・岩城昴琉・岩本孝太・坂本雅弥・黒木太司(呉高専) |
土砂災害の主たる原因である土壌含水率が山肌から反射するAMラジオ放送波から推定できることを見出し、このラジオ波の直接波と山からの反射波の受信電力差を計測することで土砂崩れを予知するシステムを提案した。今回は土壌含水率をより局所的に推定するため、埋め込み型の土中アンテナをセンサとして利用するための基礎検討を行ったので報告する。
AMラジオ波を用いた土砂災害予知システムにおいて、センサ出力をクラウドにアップするためのIoT端末―ゲートウェイ間920MHz帯搬送波電波伝搬特性に関して校外及び校内で実験を行った
本論では,土中アンテナセンサ[1]で受信したAMラジオ波の受信電力データを920 MHz帯特定小電力無線の機能を有すIoT端末を介してクラウド上に蓄積するシステムを検討したので報告する.
AMラジオ波を用いた土壌含水量推定方法として埋め込み型の土中アンテナセンサが提案され、その有用性が確認された。本論ではこのようなセンサにおける土中深さ方向の検出感度について数値的に検討したので報告する。
休 憩(14:15 再開) 座長 斎藤一幸(千葉大)
C-2-56 |
発振素子装荷リング共振器型電極による循環腫瘍細胞同定の有効性 に関する検討
◎坂本雅弥(呉高専)・空 翔太(東北大)・黒木太司(呉高専) |
C-2-57 |
Creek-gap型絶縁体を有する絶縁体ベース誘電泳動デバイスの開発
◎中林 龍・松村浩太朗・氷室貴大・江口正徳(呉高専) |
C-2-58 |
電界結合方式を用いた非接触給電型誘電泳動デバイス
◎堀越悠斗・藤井蒼太・氷室貴大・江口正徳(呉高専)・山川 烈(FLSI) |
C-2-59 |
DNAが架橋した先端鋭利型電極の電気的特性解析
◎奥 清明・西林寛大・氷室貴大・江口正徳(呉高専) |
悪性新生物(癌)の大半は転移性癌であるが、この癌組織は血液中の循環腫瘍細胞(CTC)を精査することで原発巣の特定や転移ステージの評価が期待されている。本研究ではCTCによる原発巣推定を念頭に、異なる複素誘電率を持つ臓器をリング型共振器電極に実装してその共振周波数から肺癌部位同定する手法[1]とリング共振器に発振素子を装荷し、その発振周波数から部位同定する手法[1]の検出感度について検討し、後者の有効性について示す。
誘電泳動(DEP; Dielectrophoresis)とは,不均一電界下の溶液中に配置されたマイクロ粒子が電界の強い方向(正の誘電泳動)もしくは電界の弱い方向(負の誘電泳動)に移動する現象で,その力の大きさと方向は粒子の電気的特性に依存するので,粒子の電気的特性測定手法の一つとして注目されている.従来の薄膜電極を使用したDEPデバイスでは,電界が電極エッジに集中するので,粒子が正の誘電泳動を示す周波数帯域では,電極エッジに付着し,その挙動から粒子の電気的特性を測定することが困難である.これまでに我々のグループでは,絶縁体ベース誘電泳動(iDEP; Insulator-based DEP)を応用することで,正・負いずれの誘電泳動を示す周波数帯でも粒子の挙動を測定可能なデバイスを提案した.本報では,Creek-gap型絶縁体を有するiDEPデバイス作製し,その絶縁体間中心線上を移動する粒子の速度分布を測定したので報告する.
誘電泳動現象は,粒子の誘電特性に基づいた粒子分離・同定が可能であり,臨床現場への応用が期待されている.一方,医療現場において,コンタミネーション防止の観点から,使い捨ての誘電泳動電極チップが望まれており,大量の検体を検査するためには,交流電源への接続作業の手間の低減化や,複数の検体を同時処理可能なデバイスの開発が必要不可欠である.そこで本研究では,電界結合方式による非接触給電型誘電泳動デバイスを提案することを目的とする.本報では,提案した誘電泳動デバイスを作製し,ガラスビーズを用いた実験によりその有用性を明らかにする.また,受電用電極パッド面積による粒子移動速度特性を評価したので報告する.
DNA 分解酵素(Deoxyribonuclease: DNase)は,DNA やRNAを分解する機能を有する酵素であり,胃がんや大腸がんなどの新たな診断マーカーとして注目されている.近年,DNAを用いたバイオセンサに関する研究が盛んに行われており,DNAの電気的特性評価に関する報告がなされた.これまでに我々のグループでは,DNAを架橋した先端鋭利型電極を用いて溶液中のDNaseの検出を行った.本研究では,先端鋭利型対向電極のさらなる検出感度向上を目的とし,電極およびDNA 架橋後の電気的特性を解析し,実測値と比較した.
休 憩(15:30 再開) 座長 平野拓一(東京都市大)
C-2-60 |
マイクロ波乳癌診断のための表面反射波抑圧法の臨床データによる検証
◎馬 海洋(電通大)・笹田伸介(広島大病院)・岡田守人・吉川公麿(広島大)・木寺正平(電通大) |
C-2-61 |
マイクロ波マンモグラフィのための3次元CSI法における交差偏波の影響
◎朱 沛賢・森本隼丈丸・木寺正平(電通大) |
C-2-62 |
Machine Learning Temperature Prediction for Microwave Heating
○Rakhmadi Aditya・Kazuyuki Saito(Chiba Univ.) |
C-2-63 |
RFスイッチによる簡易校正機能を具備した4-9GHz帯反射測定モジュール
◎中村昌人・田島卓郎・瀬山倫子(NTT) |
マイクロ波による乳がん検診技術は,被曝や痛みを伴わないため,潜在的な乳がん患者の簡易検出方法として有望である.同技術の画像化法は大別してレーダ方式とトモグラフィ方式に分かれる.特にレーダ方式の画像化においては,皮膚からの表面反射を抑圧することが重要となる.一般的に,乳房と送受信素子の距離は波長よりも短いため,相互結合によって反射波が歪むことがわかっており,波形平均化等による抑圧法では抑圧性能が不十分であることが確認されている.同問題を解決するため,部分微分モデルに基づく波形推定法が提案され,その有効性が数値計算により示されている.本稿では,同手法を超広帯域レーダモジュールを用いた臨床試験データ適用し,その有効性を確認する.
マイクロ波による乳がん検診は,安全かつ痛みを伴わないため,高頻度なスクリーニングを可能とし,既存のX線検査における受診率低迷を解決する技術として有望である.正常組織と癌組織の複素誘電率の差異を利用した識別において,逆散乱解析法が有用である.同手法としてCSI(Contrast Source Inversion)法は,順問題解析の反復計算を必要とせず,3次元問題においても実用的な計算時間で誘電率分布を再構成する.
一方,既存の3次元CSI法では,単一偏波成分のみを仮定したスカラー近似を用いているが,不均質性の強い高濃度ブレストなどでは,交差偏波散乱が無視できないため精度が劣化する.本稿では,CSI法におけるコスト関数に全偏波成分を導入することで精度改善を図る.MRI画像による精緻な3次元乳房ファントムを用いたFDTD法による数値計算により,その有効性を示す.
Microwave energy-based medical devices have been developed and used in the medical field, leading to patients' improved quality of life. Predicting the heating of a microwave device requires a long numerical calculation time using a computer. Machine learning technology can reduce the calculation time for this situation without needing a supercomputer. This study presents a microwave heating prediction using a machine learning algorithm. The algorithm shows a heating temperature prediction close to numerical calculations.
マイクロ波帯誘電分光のセンシング応用として同軸プローブやアンテナ等を用いた非破壊,非侵襲な生体成分の定量分析が検討されている.分析用途のRFモジュールの要件の1 つとして対象の状態変化を精度よく測定するために安定した連続測定が可能であることが挙げられる.本稿では,小型なRF モジュールを用いた生体成分分析技術の実現をめざし,RF スイッチを用いた簡易校正機能を有する反射測定モジュールを作製し,振幅変動0.02 dB 以下の安定動作を確認したので報告する.
C-3/4. 光エレクトロニクス/レーザ・量子エレクトロニクス
3月9日 9:00〜11:45 Meeting 21 座長 藤澤 剛(北大)
[半導体レーザ(1)]
C-3/4-1 |
(依頼講演30分)集中定数型EA-DFBレーザの広温度範囲100-Gbaud動作
○足立光一朗・山内俊也・中村 厚・浅倉秀明・直江和彦・田中滋久(日本ルメンタム) |
C-3/4-2 |
DBRレーザを用いたSOA集積型EMLの戻り光耐性に関する検討
○陳 明晨・進藤隆彦・金澤 慈・中村浩崇・佐野公一(NTT) |
C-3/4-3 |
(依頼講演30分)Membrane DMLs on Silicon for 100-Gbps/λ Transmission
○Nikolaos Panteleimon Diamantopoulos・Suguru Yamaoka・Takuro Fujii・Hidetaka Nishi・Koji Takeda・Tai Tsuchizawa(NTT)・Takaaki Kakitsuka(Waseda Univ.)・Shinji Matsuo(NTT) |
本研究では、広く実用化されている集中定数型EA-DFBレーザの広温度範囲100 Gbaud動作を検討した。変調器長の短尺化と超短ワイヤ実装により素子応答帯域の抜本的な拡大を図った。この結果、20ºC から80ºCまでの100-Gbaud NRZ動作及び、50ºC における100-Gbaud PAM4動作を実現したので報告する。
SOAを集積することで高出力化したEADFBレーザでは、SOAの光増幅効果により反射戻り光に対して影響を受けやすくなる。この課題に対し、本報告ではレーザ部を従来のDFB構造からDBR構造に置き換えたSOA集積型EMLを作製し、DBRの戻り光に対する反射効果を利用して反射耐性の改善を行った。光ファイバ系で構築した測定系により、任意の戻り光パワーをレーザにフィードバックしたときの相対強度雑音を測定し、従来型のDFB構造と比較して3.2 dBの戻り光耐性があることを確認した。
Membrane III-V-on-Si directly-modulated lasers (DMLs) are key components for realizing future energy-efficient optical interconnects. However, in DMLs there exists an inherent power-bandwidth tradeoff. In this work we alleviate this tradeoff by introducing a novel longitudinal design that introduces the detuned-loading and photon-photon resonance effects. Based on it we have achieved up to 47.5 GHz 3-dB bandwidths and net-113-Gbps PAM-4 with 0.34 pJ/bit at 50C and 0.17 pJ/bit at 25C. Such DMLs can ensure a smooth evolution towards Terabit Ethernet and on-board optics.
休 憩(10:30 再開) 座長 川北泰雅(古河電工)
[半導体レーザ(2)]
C-3/4-4 |
Proposal of photon-photon resonance control scheme on active-MMI laser diode
○△He Xiao・Keiichiro Shoda・Takaya Nagano・Jiang Haisong・Kiichi Hamamoto(Kyushu Univ.) |
C-3/4-5 |
非線形モデルを用いた波長可変レーザ発振直後の高速波長安定化
◎清木直哉・新谷友里・久保木 猛・加藤和利(九大) |
C-3/4-6 |
単一利得領域の電界制御型波長可変レーザの35nm波長可変動作
◎齋藤侑祐・上田悠太・進藤隆彦・金澤 慈・石川光映(NTT) |
C-3/4-7 |
(依頼講演30分)AlInN/GaN多層膜反射鏡GaN面発光レーザーの室温動特性
○井手利英(産総研)・飯田涼介・竹内哲也(名城大)・王 学論・高田徳幸・清水三聡(産総研) |
Photon-photon resonance (PRR) has been observed in Active-MMI laser diode which may enhance the modulation bandwidith[1]. Nevertheless, the damping in high frequency is a problem not solved since there is no qualitative analysis for PPR phenomenon. In this report, we proposed a rate equation model which not only explians experimental observation of PPR, but also provides a new way to control PPR in active-MMI laser diode.
我々は波長可変範囲が広く高速波長切替が可能な光源を用いた光パケットスイッチを目指し、その光源の候補としてTDA-DFBレーザに着目している。TDA-DFBレーザは光を発する活性層と波長を制御する制御層が共振器上に交互に配置されており、制御層への電流注入によって起こる屈折率の変化を利用し、最大約800 GHz幅の波長切替を可能にしている。また発振波長帯域がそれぞれ異なるTDA-DFBレーザ6素子をアレー化したフルCバンドTDA-DFBレーザアレーが開発されている。
我々は活性層への注入電流を一定としたまま、発振波長の非線形特性を考慮した電流波形を制御層に注入することで、波長切替時間の高速化に取り組み、レーザ1素子内の最大切替幅である800 GHzの波長切替を50 ns 以下で実現した。一方、Cバンド全域で高速波長切替を実現するためには、アレー内の異なるレーザ素子間での高速切替が必要となる。
今回、異なるレーザ素子間の波長切替を想定して、活性層にステップ波形を制御層に制御波形を同時に注入した直後(レーザ発振直後)の高速波長安定化を試みた。
反射型トランスバーサルフィルタ (RTF) の反射スペクトルを,量子閉じ込めシュタルク効果により制御する波長可変レーザ (RTF-LD) は,次世代のデジタルコヒーレント波長多重伝送に向けた,狭線幅・低消費電力かつ高速波長切替可能な光源として有望である.我々はこれまでに,複数利得領域をスイッチングすることによる 35 nm波長可変動作を報告してきたが,利得領域切替時の注入電流変化による波長ドリフトが問題となっており,単一利得領域化が必要であった.今回我々は,RTF設計の最適化及びチューニング電圧の増加により波長可変幅を拡大することで,単一利得領域RTF-LDによる 35 nm波長可変動作を確認したので報告する.
青色面発光レーザー(VCSEL)は微小光源としてヘッドマウントディスプレイ応用などが期待されている.近年、AlInN/GaN半導体で多層膜反射鏡を形成したGaN-VCSELで室温CW発振が報告され、しきい値電流10mA以下のシングルモード発振が得られている.本研究では片側を半導体多層膜反射鏡としたAlInN/GaN-VCSELの室温動特性を評価した.素子の電極構造としてはシンプルな対向pn用電極を用いたが、1GHzでのレーザー発振が得られた。またパルス特性評価および等価回路モデル化による動特性の制限要因の検討を実施したので報告する.
3月10日 9:00〜11:45 Meeting 21 座長 種村拓夫(東大)
[光計測・センシング(1)]
C-3/4-8 |
(依頼講演30分)小型FMCW-LiDARに向けたモジュール化・点群処理技術
○西山伸彦・齋藤直仁・Napat Jitcharoenchai・雨宮智宏(東工大)・大矢正人・諫本圭史(Santec) |
C-3/4-9 |
掃引毎の基準光路長取得によるFMCW LiDARの高精度化
○上野雅浩・田中優理奈・赤毛勇一・坂本 尊・川村宗範・岡 宗一(NTT) |
C-3/4-10 |
AWGを用いた光フェーズドアレイによる波長掃引2次元ビームステアリング
◎鈴木彩斗(早大)・岡山秀彰(OKI)・北 智洋(早大) |
C-3/4-11 |
位相同期レーザを用いた波面計測方式
◎佐久間大樹・新井 薫・杉山隆太・今井弘光・赤塚友哉・小栗克弥・宮村 崇(NTT) |
LiDAR(Light detection and ranging)技術は、自動車の完全自動運転に向けた必須技術である。現在の自動車向け製品の主流は、モータ等で光をスキャンする「機械式」がほとんどである。一方で信頼性や製品コストの観点から「非機械式」の実現が強く望まれている。我々は「非機械式」として、シリコンフォトニクス上スローライト技術およびシリコン/化合物半導体異種材料接合を利用した光源集積技術を利用したワンチップLiDAR実現を目指す。今報告では、そのチップの利用を前提としたモジュール化および点群処理技術について、ご報告させていただく。
我々は鉄塔等のインフラのメンテナンス用に周波数掃引光源を使って光干渉によるビート周波数により測距するFMCW LiDARの研究を行っている。我々は、これまで、光源の掃引毎に測定した掃引周波数幅を用いた測距高精度化を試みてきたが、光路長が既知の干渉計から得られるビート信号と、測距対象を含む干渉計のビート信号の比から距離を算出することにより、少ない計算時間で同等の精度を保持できることを確認したので、報告する。
現在、自動運転技術の完全自動化の実現が目指されているが,LiDAR(Light Detection and Ranging)の要素技術であるビームステアリング技術はその実現に必要不可欠なものとなっている.近年では,サイズやコスト,耐久性に課題のある機械的なビームステアリングに対し,光フェーズドアレイ(OPA)を用いた電気的ビームステアリングが課題を解決する有望な手法となりつつある.本研究では,OPAにおいて一般的に用いられる位相変化方法である熱光学効果を用いず,AWG(Arrayed Waveguide Grating)を取り入れることにより,波長制御のみで位相変化が可能な構造を提案した.本構造を用いたOPAにより,波長掃引による2次元ビームステアリングを確認したので報告する.
大気等の長距離物体を介する場合の波面計測方式として、空間フィルタを用いて信号光から参照光を抽出する参照光不要型のディジタルホログラフィ方式が提案されているが、計測品質が信号光の波面状態に依存するという課題がある。本稿では、信号光に対して位相同期させた別光源の出力光を参照光として利用することで安定的な波面計測を実現する方式を提案し、実証実験を行った結果について報告する。
休 憩(10:30 再開) 座長 藤田和上(浜松ホトニクス)
[光計測・センシング(2)]
C-3/4-12 |
SS-OCT方式ディジタル光センサにおける波長掃引光源の波長補正に関する検討
◎山内隆典・西岡隼也・後藤広樹・鈴木巨生(三菱電機) |
C-3/4-13 |
毎秒100ギガビットを超える光信号変調器の周波数特性計測を目指す広帯域光コム応用準連続計測方式の研究
◎△王 超一・高橋直生・長坂恭輔・鈴木悠司(電通大)・姜 海松・浜本貴一(九大)・上野芳康(電通大) |
C-3/4-14 |
光負帰還狭線幅半導体レーザの周波数掃引線形化
○木内啓生・相澤元太・横田信英・八坂 洋(東北大) |
C-3/4-15 |
(依頼講演30分)フォトニック結晶を利用した4μm帯面発光型量子カスケードレーザ
○橋本 玲・角野 努・金子 桂・斎藤真司(東芝)・姚 遠昭・池田直樹・杉本喜正・間野高明・黒田 隆・迫田和彰(NIMS)・谷村景貴・高木茂行(東京工科大) |
我々は距離測定の一手法として波長掃引型光干渉断層計(SS-OCT)をベースとしたディジタル光センサを提案している.本方式の光センサで使用する波長掃引光源では掃引周期ごとに波長範囲が変動するため,その測定精度が劣化するという課題がある.そのため,これまでエタロンフィルタを用いた波長補正手法を提案してきた.いっぽう,エタロンフィルタは環境温度に対して波長範囲の変動を持つという問題があった.そこで,今回我々は波長に対して温度変動の少ないガスセル用いた波長補正の検討を行ったので報告する.
今後MMI-LDのような100Gbit/sを超える光信号変調器の実用化が期待されている。その周波数特性を評価するには従来の電気的計測が非常に困難で当研究グループはTHz帯域幅を持つ光周波数コムを試験信号にして光周波数領域で周波数特性評価の手法を提案した。しかし光源であるMLFLをモード同期せるには入力RF繰り返し周波数が共振モード周波数の整数倍でなければならないので内部にあるリング共振器を調整する必要がある。本研究はあらかじめ共振モード周波数を概測しそれに合わせるRF繰り返し周波数を算出し共振長を調整せず或いは微小調整のみでモード同期し光信号変調器の周波数特性評価を報告することである。
光を用いて距離を測定するLight detection and ranging(LiDAR)技術の中でも、周波数変調を施したレーザ光源を利用したFrequency-modulated continuous-wave(FMCW)方式では、レーザ光源の周波数掃引の線形性が測距精度の向上において重要であり、発振スペクトル線幅の狭窄化は長距離測定時のSN比向上に寄与する。本研究では我々が提案している光負帰還狭線幅半導体レーザをFMCW LiDARに適用することを目的とした。また、光負帰還状態のレーザに周波数変調を施し、その周波数掃引波形の歪みを相殺するように電流変調信号を補正することで周波数掃引の線形化を行った。
量子カスケードレーザーは,中・遠赤外波長域の光を発振させる半導体レーザーであり,小型の赤外光源として高感度ガスセンシングや医療分野などへの応用が期待されている。これらの応用に向けて,高出力と高ビーム品質が両立可能で,更に量産性にも優れた素子構造として,フォトニック結晶を利用した面発光型QCLの開発を進めている。
今回,活性層の近傍にフォトニック結晶を形成する構造にて波長4μm帯の面発光型QCLを試作し,2°以下という狭いビーム広がり角でのレーザー発振を確認した。
3月10日 9:00〜11:45 Meeting 22 座長 田中信介(富士通)
[光集積・シリコンフォトニクス(1)]
C-3/4-16 |
偏波分離回転器フリー偏波多重コヒーレント光集積受信器
◎相馬 豪(東大)・石村昇太(KDDI総合研究所)・田之村亮太・福井太一郎・伊藤まいこ・中野義昭・種村拓夫(東大) |
C-3/4-17 |
1600nm帯受光に適した低逆バイアス導波路型Ge-SACM-APD
○小野英輝・高橋博之・太縄陽介・長谷川達志・志村大輔・八重樫浩樹・佐々木浩紀(OKI) |
C-3/4-18 |
キャリア空乏型マッハ・ツェンダシリコン変調器における光位相シフタのコンパクトモデルの提案およびパラメータ抽出
○村尾覚志・牛田 淳・高橋博之・徳島正敏・椎名明美・堀川 剛(PETRA) |
C-3/4-19 |
(依頼講演30分)広帯域・低PDL・小型8 × 8シリコン光スイッチ
○鴻池遼太郎・松浦裕之・鈴木恵治郎・河島 整・池田和浩(産総研) |
C-3/4-20 |
高速MZI光スイッチ
○北 智洋(早大)・マヌエル メンデス(NICT) |
偏波多重コヒーレント受信器は,二つの偏波成分の光強度と位相の情報を検出する素子として,現在の大容量デジタルコヒーレント光通信システムを支えている.近年では,データセンターネットワークに代表される短距離光リンクにおいてもコヒーレント通信方式の導入が期待されている一方で,送受信器のコストとサイズが大きな障壁となっている.特に InPプラットフォームでは,偏波分離回 転素子の集積が難しく,低コスト化を阻む要因となっている.
本稿では,光集積偏波多重コヒーレント受信器の新しい 構成を提案し,InP上での原理検証用素子の作製,および,実証実験に成功したので報告する.著者らの知る限り,偏波分離回転器を用いない偏波多重コヒーレント受信器の実証は世界初である.
低い逆バイアスでも高い受光感度が期待できる光吸収領域と増倍領域がチャージ領域を介して分離したSACM(separated absorption, charge and multiplication)構造を有し、Ge光吸収領域上にイオン注入もメタルコンタクトも必要としないAPDを試作し、次世代の光アクセスネットワークシステムへの適合可能性を検討した。その結果、我々が以前報告したSAM-APDやIMECが報告したSACM-APDと比較すると、受光感度は低いものの、低い逆バイアスで増倍が得られた上、暗電流も小さく、良好な結果が得られた。
シリコンフォトニクスの設計段階において,歩留予測を可能にする回路シミュレーションを実現するためには,コンパクトモデルの確立が不可欠である.しかし,変調器の光位相シフタのバイアス依存性を考慮したモデルは未だ存在せず,ウェーハ面内ばらつきを考慮したパラメータ抽出も報告されていない.
ここでは,プッシュプル駆動を想定し,キャリア空乏型マッハ・ツェンダシリコン変調器における光位相シフタの変調効率と吸収損失のバイアス依存性を考慮したコンパクトモデルを提案する.本モデルでは,大信号を考慮してもオフセット電圧および駆動電圧振幅の関数として表現できるとともに,小信号の欠点であった周波数チャープも記述できることを示す.さらに,300 mm SOIウェーハに対してパラメータ抽出を行った結果を示す.
シリコンフォトニクス光スイッチは,情報通信ネットワークの消費電力を大幅に低減する次世代技術の一つとして注目を集めている.近年我々は,2つのシリコン光スイッチおよびファイバ型PBSを用いて外部偏波ダイバーシティ型8 × 8光スイッチを実現した.一方で,本方式は多数の光部品が必要であり,フットプリント,PDL,DGDの低減が難しいといった課題があった.本発表では,PBSおよび2つの偏波成分に対応する光スイッチを同一チップ上に集積したオンチップ偏波ダイバーシティ8 × 8光スイッチを用いて,C帯を超える帯域において0.4 dB以下のPDLおよび1.8 ps以下のDGDを実現した結果について報告する.
光スイッチは光通信ネットワークや光センシングにおけるキーデバイスであり, 小型・低消費電力・高速な光スイッチの開発がシリコンフォトニクスを用いて進められている. 本研究では, 新たに開発した非対称ドーピングMZI構造とMMI位相シフタ上部にヒートシンクを装荷する事で約400 nsの非常に高速なスイッチング動作が得られた.
(10:30 開始) 座長 前神有里子(産総研)
[光集積・シリコンフォトニクス(2)]
C-3/4-21 |
50dB以上の高消光比Si光変調器
◎小島大輝・北 智洋(早大) |
C-3/4-22 |
Siフォトニクス光OFDMチャネル分離回路の最適構造検討
◎塚澤直也・植之原裕行(東工大) |
C-3/4-23 |
モザイク状素子を利用した超小型Oバンド4波長合波器
○中村航大・藤澤 剛・澤田祐甫・佐藤孝憲・齊藤晋聖(北大) |
C-3/4-24 |
中空スロット構造を有するNb2O5バーティカルグレーティング導波路の製作
◎端山喜紀・勝俣直也・山中直貴・中津原克己・武田正行・西澤武志(神奈川工科大) |
C-3/4-25 |
グレーティングカプラと可視光を用いた新しい表面結合法の製造公差に関する検討
◎喩 弘歴・吉本直人(千歳科技大)・小林壮一・藤井雄介(フォトニクサイエンステクノロジ) |
近年の情報通信量の増大に伴い、デジタルコヒーレント光通信をコア通信網からさらに近距離のネットワークに適用することが必要とされている。また、さらに伝送容量を拡大化するためには生産性と集積性に優れたSiフォトニクスの利用が有望である。本研究ではデジタルコヒーレント光通信で利用可能な25dB以上の高消光比Si光変調器の開発をしており、さらに50dB以上の高消光比化でより高精度なセンシングへの応用も期待できる。消光比減少要因としてキャリアプラズマ効果に伴う吸収係数の変化、製造誤差、上下アームでの異なる偏波回転効率、迷光の影響が考えられ、本研究ではパワーバランス調整用の熱光学式MZIの装荷と偏光子の利用、迷光対策を施すことで50dB以上の高消光比化に成功した。
インターネットの急速な普及に伴い、幹線系のコアネットワークだけでなく、メトロ・コアネットワークにも大容量化が求められている。光直交周波数分割多重変調(Optical Orthogonal Frequency Division Multiplexing, 光OFDM)は、副搬送波間の直交性を利用することで周波数利用効率向上を実現する光変調方式で、メトロ・コアネットワークへの導入を目指した研究開発が進められ、広帯域のサブチャネルを分離する光集積チャネル分離回路の実証例も報告されている。リングネットワークを繋ぐReconfigurable Optical Add-Drop Multiplexer(ROADM)に応用する場合、チャネルの分離とスイッチングの実現が必要で、透過スペクトルの性能にはサブチャネル間隔やクロストーク特性が重要となる。また、個別素子の報告例はあるが、シリコンフォトニクス集積化には精密なサイズ制御の課題がある。
そこで、本研究では光OFDMチャネル分離回路の実現とROADMへの適用を目的とし、シリコン導波路を用いた集積素子を作成し、基本動作を測定・最適構造を評価したので報告する。
モザイク状素子を利用した超小型のOバンド4波長合波器を提案します.提案構造は,CWDM用4波長合波器としての利用を想定しており,先行研究と比較すると約20分の1程度の小型化に成功しています.また,提案構造においては波長のスケーラビリティに優れています.今回提案するように,4波長の場合は3種の波長合波器を2段に接続することで構成されます.8波動作は7種の波長合波器を3段接続することで実現可能です.
スロット導波路は2つの高屈折率媒質に挟まれた微小な低屈折率媒質領域を有する構造であり、光電界の不連続性から低屈折率のスロット内にモードが局在する。水平スロット導波路は厚さ方向にスロット構造を形成することで実現し、TMモードの光に対して動作する。これらの特徴を持つスロット導波路はセンサ素子、非線形効果素子など、様々な用途への応用が期待されている。我々はNb2O5材料を用いた光デバイスの技術開発を進めている。今回、Nb2O5水平スロット導波路を用いたセンサ素子を実現するために、バーティカルグレーティングを有する水平スロット導波路の一部を中空構造とした素子を試作し、波長特性が得られたので報告する。
シリコンフォトニクス集積回路応用の課題の一つとして,集積回路と外部の光結合がある.既存の光結合の一つとして,グレーティングカプラ構造を利用した表面結合が挙げられる.グレーティング構造のメリットとしては,ウェハーレベルの検査や,スポット変換不要のダイレクト結合可能等がある.しかし,グレーティングカプラは結合調心時に観察系と結合系が観察干渉し,調心難易度と調心時間が増す点が課題であった.本課題の解決として,可視光を用いたグレーティングカプラ表面による回折光を利用したアクティブアライメント方法を提案した.提案方法の妥当性を検証するために、今回は主に回折格子の製造公差と可視光の回折光特性との関係についてのシミュレーション結果を報告する
3月12日 9:00〜11:45 Meeting 21 座長 齊藤晋聖(北大)
[設計・シミュレーション(1)]
C-3/4-26 |
誘電体層で挟まれた金属板に等長のクロススロット配列を設けた偏波変換器
○佐々木玲音・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-3/4-27 |
終端に直線導波路を用いたコヒーレント結合型スポットサイズ変換器(III)
◎小島功義・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-3/4-28 |
Improved coupling efficiency of spot-size converter with nano-pixels structure by using deep neural network
○Zan Hui Chen・Yu Han・Leiyun Wang・Haisong Jiang・Kiichi Hamamoto(Kyushu Univ.) |
C-3/4-29 |
(依頼講演30分)ビーム伝搬法を用いた光導波路の最適設計
○井口亜希人・辻 寧英(室工大) |
金属にクロススロットを配列した1/4波長板が提案されている. 従来の検討では, スロット長に僅かな差をもたせることで90度の位相差を得ていたが, 厳しい作製精度が要求される欠点があった. 筆者らは, 等しいスロット長を用いても, x, y方向の周期長比を変化させれば90度の位相差が実現でき, 広帯域に円偏波が得られることを明示してきた.
本稿では, 文献の構造を誘電体層で挟んだ際の偏波変換特性を評価する. 同等の特性が得られることを明示する.
導波モードパワーと放射モードの位相定数から算出されるテーパ角のガイドラインが提案されている.筆者らは,テーパ構造の終端において,ガイドラインを超えるテーパ角と直線導波路を設けるコヒーレント結合型スポットサイズ変換器が,TE,TM両モードで広帯域に動作することを明らかにしてきたが,その理由については未検討であった.本稿では,導波モードパワーの伝搬特性からコヒーレント結合による影響を調査し,両モードで広帯域に動作する理由を考察する.
Spot-size converter (SSC) is an essential building block for integrated photonic circuits applied as a mode transformer between optical components [1]. We have proposed a nano-pixel SSC (1 × 2 μm2) with changing hole size and density [2]. To obtain high coupling efficiency with the optical fiber; however; the aspect ratio of optical field is important. Herein, we designed the optical field in the lateral direction using deep neural network (DNN)-based learning to realize a perfect circular spot for high coupling efficiency that reached -3 dB at λ0 = 1.572 μm when the optical field aspect ratio was adjusted to 1 after training for 200 epochs.
光導波路素子の極限までの小型化・高性能化を目指して,数値計算に基づく最適設計が広く適用されている.
最適設計は数値計算の反復に基づくため,最適化の実行に要する時間は伝搬解析手法の選択に大きく依存する.
これまでに筆者らは,光導導波路の伝搬解析に広く応用され,飛躍して計算効率の高いビーム伝搬法(BPM)を活用した感度計算に基づく構造最適化手法を検討してきた.
本報告では,感度計算に基づく各種BPMを活用した光導波路の最適化法と,その適用例を報告する.
(10:15 開始) 座長 庄司雄哉(東工大)
[設計・シミュレーション(2)]
C-3/4-30 |
直接二分探索法を用いた2μm帯シリコン4モード交差導波路の設計
◎村椿太一・澤田祐甫・藤澤 剛・佐藤孝憲・齊藤晋聖(北大) |
C-3/4-31 |
WFM法設計6モード交換器における導波路長依存性の調査
◎朝間友一・菅原直人・藤澤 剛・佐藤孝憲(北大)・森 崇嘉・坂本泰志・今田諒太・松井 隆・中島和秀(NTT)・齊藤晋聖(北大) |
C-3/4-32 |
Fox–Li法を用いたMEMS-VCSELの回折損失マップ計算
○黒川知加子・鈴木雄太・北川雄真・手塚信一郎(横河電機) |
C-3/4-33 |
誘電体平行平板からなる入射偏波面無依存積層型偏波回転子
◎大石雅人・朝生龍也・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-3/4-34 |
励振効率で決定される光軸回転角による導波路型偏波変換器の特性評価
◎小竹翔太・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-3/4-35 |
TE to TM Polarization Rotator Based on Nano-pixel Waveguide
◎Yu Han・Zanhui Chen・Leiyun Wang・Haisong Jiang・Kiichi Hamamoto(Kyushu Univ.) |
3次元有限要素法解析に基づく直接二分探索法の使用により,波長2 µm帯向けシリコン4モード交差導波路の設計を行う.マルチモード交差導波路はモード分割多重回路の柔軟な配線や高密度な集積に必要な素子である.初めに2次元有限要素法解析に基づく最適化を行い,続いて2次元最適化によって得た構造を,3次元有限要素法解析に基づいて最適化する.最終的に得た構造は,波長2 µmにおいて最適化対象の全4モードで−0.8 dB以上の透過率を示す.この結果は,波長2 µm帯において高性能な4モード交差導波路の実現が可能であることを示している.
光通信システムの伝送容量拡大のために,モード分割多重 (MDM) 伝送に関する研究が行われている.しかし,MDLが大きい場合には,MDM伝送の受信側でモード間結合を取り除くMIMO信号処理が高負荷となる.そこで,MDLの影響を緩和する手段として,最適化手法の一つである波面整合 (WFM) 法を用い,各モードを適切に交換するWFM法設計6モード交換器を提案している.本稿では,WFM法設計6モード交換器における導波路長依存性に関する調査を行った.そして,WFM法で最適化を行う初期構造の導波路長を長くすることで,長距離伝送路に配置した場合のシステムMDLがより,低減されることを確認した.
MEMS-VCSELは広帯域な波長可変性能が特徴で、光共振器を構成する鏡はVCSEL中の光学多層膜鏡 (DBR) とMEMS技術で作製した凹面形状のDBRであり、Au-Auの熱圧着接合で光共振器を形成する。接合プロセスで生じる鏡の傾きや軸ずれは光共振器の回折損失を悪化させるため、レーザー発振に対し重要なパラメータである。そこで我々は光共振器のモード形状と回折損失の解析が可能なFox–Li法に、近軸近似が不要なRayleigh–Sommerfeld回折積分を適用し、微小光共振器であるMEMS-VCSELの回折損失計算を行った。さらに、回折損失の傾きと軸ずれ依存性を計算、可視化し、安定動作領域の凹面形状依存性を求めた。本手法を用いることで、傾き・軸ずれの影響を定量化し、柔軟な光共振器設計が可能になる。
1/2 波長板を任意の角度で積層することで,交差角の2 倍に入射偏波を回転する偏波回転子(PR) が提案されている.筆者らは,誘電体平行平板を積層した,入射偏波面に無依存なPRを提案し,通信波長帯で広帯域に動作することを見出した.しかし,これまでの議論では,媒質の波長分散性を考慮してこなかった.ジョーンズマトリクスとFDTD法を用いて,波長分散を考慮した場合であっても,PR が広帯域に動作することを明らかにする.
非対称の断面形状の導波路を利用した偏波変換器が盛んに研究されている.我々が提示してきた光軸回転角の評価式に励振効率を加味した光軸回転角を導入することで,TEとTMの入射モードの差異を評価し、差異に伴う消光比特性の変化を評価し得ることを明らかにする.解析にはYee格子に基づく虚軸ビーム伝搬法(YM-BPM)とFDTD法を使用する.
We have proposed a compact polarization rotator based on AI assisted inverse design. The polarization rotation section occupies a footprint of 2.10 × 12.58 μm2. The estimated polarization extinction ratio was 25.8 dB at the wavelength of 1620 nm. The fabrication tolerance and wavelength dependent performance shit is also examined, and the results show that the device has a tolerance of ±10 nm (±6.7%) and an application window from 1570-1680 nm. The results reveal the promising potential of the inversely designed rotator to be applied in integrated photonic circuits.
3月12日 9:00〜11:45 Meeting 22 座長 中津原克己(神奈川工科大)
[次世代光通信(1)]
C-3/4-36 |
(依頼講演30分)シリコン光集積回路上で多波長・高スペクトル利用効率波長分割多重を実現するCascaded AMZ Triplet型分波器
○秋山知之(PETRA/富士通)・小田祥一朗・中島久雄(富士通)・中舎安宏(PETRA/富士通)・田中信介(富士通)・田中 有(PETRA/富士通)・星田剛司(富士通) |
C-3/4-37 |
光ゲートなしで集積型光フーリエ変換フィルタのみを用いた光OFDMチャネル分離実験
○瀧口浩一・正木秀明(立命館大) |
C-3/4-38 |
SiN微小光共振器を用いたマイクロコムによるWDM伝送
◎大塚民貴(慶大)・藤井 瞬(慶大/理研)・熊崎 基・木暮蒼真・和田幸四郎(慶大)・古澤健太郎・関根徳彦(NICT)・田邉孝純(慶大) |
C-3/4-39 |
多波長光源光コムとSSB変調を用いた全光波長変換用高周波数精度ポンプ光生成の実験的検討
○松尾 駿・植之原裕行(東工大) |
スパコン・深層ニューラルネットワーク等の高並列システム中の相互結合網、データセンタ内や長距離ネットワーク等の幅広い適用分野に向けてシリコン光集積回路(Si PIC)を用いた高並列大容量で小型・低電力の光送受信器の開発が進められている。Si PICは光回路の大幅な小型化を可能にする一方で導波路寸法誤差の影響が大きく、大容量化に必須である波長多重(WDM)分波器のクロストークを実用レベルに抑えるのが極めて困難である。本稿ではSi PIC上で多波長・高スペクトル利用効率を実現する技術としてCascaded Asymmetric Mach-Zehnder Triplet (CAT)を報告する。
光OFDM(Orthogonal frequency division multiplexing)は、サブキャリアチャネル信号を各信号のシンボルレート間隔で直交して配置することによって、高い周波数利用効率(1 symbol/s/Hz)を実現する多重化方式である。チャネル分離にはフーリエ変換が必要である。光フーリエ変換回路構成の光OFDM信号分離フィルタを活用した、光領域直接での高速チャネル分離手法の検討を行っている。光OFDM信号分離フィルタの後段には、これまで有効分離時間を抽出するための光ゲートを用いていた。今回、信号受信に高速光受光器を用いることによって光ゲートを除去し、スラブスターカプラ型光DFT(Discrete Fourier transform)回路構成の光OFDM信号分離フィルタのみを用いてチャネル信号(各チャネル速度20 Gbit/s)の分離を行ったので、その結果について報告する。
2007年に微小光共振器を用いて生成される光周波数コムであるマイクロコムが報告された.報告以来,現在に至るまでマイクロコムの研究は大きく発展し,様々な応用先が提案されている.本研究はマイクロコムの波長分割多重通信応用に向け研究を行った.本研究では4種類のマイクロコムの伝送特性を測定した.それぞれ4種類のマイクロコムは異なる伝送特性を示した.このような結果となった原因をマイクロコムのビート雑音,強度雑音という2つの観点から調査した.本研究の結果は,マイクロコムの状態に対する伝送特性を示し,マイクロコム光源の光通信応用の可能性を示すものである.
光パスネットワークにおける光波長の経路が頻繁に変更されることにより周波数帯域の中に未使用領域が発生しネットワークの利用効率が低下するフラグメンテーションが問題となっている。
この問題の解決を目標に、多波長光源コムとSSB変調を用いた全光波長変換用ポンプ光生成の実験的検討を行い、波長設定精度と雑音特性の評価を行った。提案した構成によりこれまでより広帯域、高精度に制御可能なポンプ光を生成できた。また電気スペクトラムアナライザによる測定により、ポンプ光が波長変換に差し支えない品質であることを確認できた。
休 憩(10:30 再開) 座長 加藤和利(九大)
[次世代光通信(2)]
C-3/4-40 |
螺旋状長周期ファイバ回折格子を用いた2次,3次OAMモードの同時生成
○△出谷泰秀・趙 華・王 鵬・鈴木大河・李 洪譜(静岡大) |
C-3/4-41 |
(依頼講演30分)非線形差動符号化を用いた高ボーレートPAM伝送
○山本秀人・谷口寛樹・中村政則・木坂由明(NTT) |
C-3/4-42 |
(依頼講演30分)光スペクトル分割合成コヒーレント光スペクトラムアナライザを用いた広帯域光複素電界振幅波形測定
○五十嵐浩司(阪大) |
[背景]
OAM(軌道角運動量)はその特性から次世代モード分割多重 (MDM)光通信システムや光ピンセットなど様々な応用が期待されている.そこで,OAMを生成するOAM変換機の中でも螺旋状ファイバ回折格子(HLPG)は,OAMのような固有モードや偏光無依存性などの特性により,近年関心を集めている.
[目的]
4モードファイバを用いて,2次,3次回折次数を有する1本のHLPGを作製し,2次,3次 OAMモードの生成を観測する
[方法]
1.HLPGの作成
光ファイバをレーザで熱したサファイア管に通しながら,ねじることで螺旋構造を形成する
2.OAMの観測
2ビーム干渉法により2つの波長でOAMモードが生成されること及びその次数を観測する
[結果]
1つのHLPGから2次,3次のOAMモードを生成,観測することができた.
近年急成長を遂げているデータセンタトラヒックのさらなる増大に備え、800GbE/1.6TbEの標準化が計画されており、800GbE/1.6TbEでは4値パルス振幅変調(PAM4)信号を用いた200G/λ級の直接検波方式が必要となる。このような高ボーレートPAM伝送では、電気・光デバイスによる帯域制限に起因した信号品質劣化がより顕著となることが想定されており、PAM4伝送の高性能化についての検討がなされている。本稿では、簡易な非線形符号によりPAM4信号のスペクトル狭帯域化を実現し、高い帯域制限耐力を実現する、「非線形差動符号化PAM方式」を用いた高ボーレートPAM伝送を示す。
光電界振幅波形測定のためにスペクトル分割合成法を紹介する。この原理と12.5-Gbaud 16QAM光信号複素電界振幅波形測定の結果を紹介する。
3月12日 13:00〜17:00 Meeting 21 座長 名田允洋(NTT)
[光部品・実装/光無線(1)]
C-3/4-43 |
導波路型PDと光90度ハイブリッドPLCを用いたデジタルコヒーレント通信用光受信器のRF応答特性評価
◎佐野勇人・鈴木純一・長谷川清智・望月敬太(三菱電機) |
C-3/4-44 |
100GBaudコヒーレントレシーバ向け90°ハイブリッド集積導波路型p-i-n PDアレイの広帯域・高感度化
○沖本拓也(住友電工)・海老原幸司・山崎功一朗(住友電工デバイス・イノベーション)・八木英樹(住友電工)・岡本 悟・大倉佑介・堀野和彦・芦澤 建(住友電工デバイス・イノベーション)・江川 満・米田昌博(住友電工) |
C-3/4-45 |
3次元実装技術を用いた小型InP MZ変調器サブアセンブリのRF信号伝送特性の改善
◎鈴木純一・佐野勇人・長谷川清智・望月敬太(三菱電機) |
C-3/4-46 |
100G-ER4用VOA SOA集積4ch ROSA
◎前川享平・三井主成(住友電工)・平山 徹・寺西良太(住友電工デバイス・イノベーション)・原 弘(住友電工) |
C-3/4-47 |
全ファイバ構成による1.9μm帯チューナブルQスイッチファイバレーザ
○根本湖輝・野田岳靖・窪田将成・坂田 肇(静岡大) |
近年データセンタ関連の通信量は増加の一途をたどっており、従来のOOK方式に加えてデジタルコヒーレント方式の普及が進んでいる。当社ではこれまでInP素子を用いたコヒーレント通信向け光モジュールの開発を行ってきた。今回、導波路型PDと光90度ハイブリッドPLCを適用したデジタルコヒーレント通信用の光受信器モジュールを作製し、RF応答特性評価を行った。本特性結果より、64 GBaud級の光位相変調信号の復調の可能性を示した。
64GBaudコヒーレントレシーバへ搭載する受光素子として, 我々は90°ハイブリッドをモノリシック集積した導波路型p-i-n PDアレイの広帯域・高受光感度動作を実現してきた. 一方, 将来の800Gbps伝送に向けた100GBaud対応コヒーレントレシーバに搭載する受光素子にはさらなる広帯域化が必要となるが, バットジョイント構造をもつ導波路型PDであっても, 64GBuadを超える領域で広帯域・高感度を両立するには新規構造の導入が不可欠である. 今回, 薄層化した i-GaInAs 吸収層の上部に p-GaInAs 層を挿入した構造を採用し, 有効質量の大きいホールの走行時間を伸ばすことなくバットジョイント界面での光結合効率を高めることで, 64GBaud向け素子と同等の高感度(0.154A/W)と65GHzを超える広帯域動作の両立を実証した.
近年、高画質ストリーミングサービスやビッグデータ解析などにより通信トラフィックの増大は著しく、データセンタ関連の通信量は増加の一途をたどっている。通信の高速大容量化に向けてはデジタルコヒーレント方式が有用であり、当社でもこれまでコヒーレント通信向けMZ (Mach-Zehnder) 変調器の開発してきた。これまでの報告では電気フィルタを用いたインピーダンス不整合に起因する不要な反射の抑制手法を示したが、過剰損により信号振幅が劣化する課題があった。今回、振幅の改善を図りつつ、3次元実装技術を適用したMZ変調器サブアセンブリを作製し、RF応答特性評価を行ったので報告する。
分散データセンター間の40km以下の長距離高速相互接続に適した、100GBASE-ER4規格に準拠した光受信機の開発を行った。今回SOA+PIN-PDの構成で長距離伝送後の高感度化を図り、Overload対策としてVOAも含めて1つのパッケージ内に収納することで小型化を図り、光トランシーバへの搭載も可能とした。今回、その概要と受信特性に関して報告する。
Tm/Ho共添加ファイバレーザは1.7-2.15μmにわたる広い発振帯域を有し, 温室効果ガスや水の吸収帯とも重なることから,医療, 環境計測, センシング分野等での応用が期待されている. 全ファイバ構成による波長可変パルスレーザシステムは小型・堅牢になるため,上記応用分野の発展が期待される.本報告では,波長可変素子としてシングルモード–マルチモード–シングルモードファイバ(SMS)構造を,Qスイッチ素子としてファイバ結合型可飽和吸収体(SA)をファイバリング共振器に組み込み, 発振波長制御とパルスレーザ発振の結果を得た.
休 憩(14:30 再開) 座長 八木英樹(住友電工)
[光部品・実装/光無線(2)]
C-3/4-48 |
(依頼講演30分)マルチピクセル型フォトディテクターによる空間光通信応用
○梅沢俊匡・吉田悠来・Dat Pham Tien(NICT)・実野邦久(早大)・山本直克(NICT)・川西哲也(早大) |
C-3/4-49 |
テラヘルツ波を用いた高セキュリティ無線システムの原理実証
◎河合優佑・山内健太(九大)・伊藤 弘(北里大)・石橋忠夫(NTTエレクトロニクステクノ)・加藤和利(九大) |
C-3/4-50 |
テラヘルツパルス無線通信に向けた光パルス幅の狭窄化
◎白水孝始・一山昂平・山本留央・加藤和利(九大) |
近年我々は受光径20-30μm程度の高速フォトディテクターをタイル状に2次元的に集積化した2次元型フォトディタクターアレー(2D-PDA)の開発を行ってきた。応用例としてキャリア光レス,90度ハイブリッド回路レスでのコヒーレント受信(位相回復型レシーバ)やマルチコアファイバーからのパラレル光一括受信を報告してきた。これらマルチピクセル型高速フォトディテクターアレーデバイスは広い受光面を有することから空間光通信へも応用が可能である。本発表ではフォトディタクターアレーの空間光通信応用にフォーカスし,これまでの開発経緯とともに報告を行う。
無線信号は自由空間を伝わるため、有線で伝わる電気信号や光信号と比べ、第三者に傍受されるリスクが高い。そのため、無線の物理層でのセキュリティ向上は必須の課題である。我々は、指向性が高いテラヘルツ波の特長を利用し、暗号化した信号を異なる方向から二つの電波で送信し、両方の電波が重なり合う地点でのみ、コヒーレント検波の持つアンド演算機能を利用してもとの信号に復号する方式を提案している。今回、提案方式の受信原理を300 GHz帯キャリアを用いた500 Mbit/sの伝送実験により実証したので報告する。
テラヘルツ波による無線通信の大容量化が注目されている。我々はフォトミキシング技術により光からテラヘルツ波を生成する研究を行っており、特に光ビート法を用いて生成した、高繰り返しパルス波を搬送波に用いた情報通信に着目している。ここでパルス波にデータをのせるための変調技術として、従来の光変調器の動作周波数程度の繰り返し周波数の光パルス波を生成し、それを複数に分岐してそれぞれ光変調したのちに遅延を与えて時間多重する方法を検討している。この方法では、多重度向上のために、いかにパルス幅を狭窄できるかが重要となる。本稿では繰り返し周波数25GHzのパルス波生成において、合波する光波数を増加することで狭窄化を行ったので報告する。
休 憩(15:45 再開) 座長 望月敬太(三菱電機)
[光部品・実装/光無線(3)]
C-3/4-51 |
(依頼講演30分)深紫外AlGaN LEDを用いたギガビット級ソーラーブラインド光無線通信
○小島一信(東北大)・吉田悠来・白岩雅輝・淡路祥成・菅野敦史・山本直克(NICT)・平野 光・長澤陽祐・一本松正道(創光科学)・秩父重英(東北大) |
C-3/4-52 |
光無線給電システムの外観制御における多粒子ミー散乱特性のFDTD解析
Yu Liu・○宮本智之(Tokyo Tech) |
C-3/4-53 |
Improvement of stability of optical wireless power transmission system with recognition module and beam control
○Jing Tang・Koji Ueda・Tomoyuki Miyamoto(Tokyo Tech) |
C-3/4-54 |
回転機構における光無線給電に関する基礎的特性解析
◎佐山翔泰・宮本智之(東工大) |
5Gやbeyond 5Gにおける周波数資源の枯渇問題を解決する方策の一つとして、我々は窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)を発光層として備える深紫外(DUV)発光ダイオード(LED)を送信機とするソーラーブラインド光無線通信に関する研究開発を進めている。本発表では、屋内および屋外におけるギガビット級DUV光伝送実験の結果や、AlGaN LEDの持つ特異な構造に起因した高速応答性を中心に解説する。
本報告では、光無線給電の受光器側の受光デバイスである太陽電池の外観制御を目的に,外観用の可視光の散乱・反射を行うとともに給電用の近赤外光の反射は低減するために、FDTD解析によって多粒子ミー散乱下での近赤外光と可視光の透過特性を調査した.ミー散乱は波長に依存する散乱/反射/透過を制御するのに役立つ.結果として,適切な粒子サイズや粒子密度のMie散乱層の導入により波長依存性の強い外観・給電特性の制御が可能となる可能性を示した.
Optical wireless power transmission (OWPT) has advantageous of long-distance power transmission and no leakage of electromagnetic waves. In the OWPT system, depth camera detects solar cell position, and this information is sent to movable light source. Then the movable light moves towards the target. In previous research, when there was a recognition error, the beam control became unstable. One of the reasons of recognition error is the disturbance by beam irradiation for OWPT. In this research, multi-thread programming was used for beam control with PID, and the stability of recognition and beam control was investigated.
多くの機器に回転機構は利用されており,その回転機構上での電力利用や回転機構自身のセンシングが必要である.この回転機構への給電方式として遠隔性を特徴とする光無線給電が有用と考えられる.そこで本研究は,回転機構への光無線給電の実現を目標に,回転機構への光無線給電特性の解明とその実験検証を研究目的とした.回転軸上に設置した太陽電池の受光特性の回転動作依存性について,光源出力の太陽電池吸収量の比を,太陽電池が回転軸円筒に密着型(フレキシブル)と平板型の二つの場合に分けて解析し,回転による太陽電池の長さが大きい場合,給電量の変動が密着型かどうかで大きく異なることが分かった.
C-5. 機構デバイス
3月9日 10:30〜11:15 Meeting 10座長 宮永和明(富士通コンポーネント)
C-5-1 |
外部磁界印加時のAgSnO2接点によるDC20V-16Aまでの誘導性直流負荷回路における遮断アークの挙動観察
○長谷川 誠(千歳科技大) |
C-5-2 |
48VDC/300A抵抗性負荷回路内において銀−酸化物系接点材料を用いて発生させる開離時アークの形状と継続時間
◎矢崎晴子・関川純哉(静岡大) |
C-5-3 |
平板状10ターンコイルによるAl/Cu薄板の電磁圧接
○相沢友勝(都立工業高専) |
外部磁界を印加した状態で電気接点にて負荷回路を遮断すると、磁気吹消しと呼ばれる現象が発生してアーク継続時間が減少することは、良く知られている.これに関して著者のグループは、AgSnO2接点にて電源電圧20Vで負荷電流20A以下の直流誘導性負荷回路を、外部磁界を印加しながら1mm/s~200mm/sの開離速度で遮断すると、磁気吹消しが生じない場合に、ローレンツ力の印加方向とは逆方向の位置でアークが最終的に消弧する現象を再現性良く観察した.今回は、この現象に関する検討の一環として、あらためて遮断アークの挙動を観察した.
直流電源電圧48V,回路電流300Aの抵抗性負荷回路において,開離速度0.5m/s一定として開離時アークを発生させた.電気接点対としてAg,Ag/ZnO及びAg/SnO2を用いて開離時アークの継続時間について調査し次の結果を得た.Agの場合には波形にやや振動があるが,Ag/ZnOとAg/SnO2の場合には波形の振動が少なく滑らかだった.上面画像は,Agの場合は開離時アークが接点手前方向に伸長しているがAg/ZnOとAg/SnO2の場合は直線的だった.正面画像は,いずれの接点材料の場合も開離時アークは接点上方に伸長した.開離時アークの継続時間はAgが15.3ms,Ag/ZnOが11.9ms,Ag/SnO2が16.4msであった.継続時間はAgと比較してAg/ZnOは短く,Ag/SnO2は長い傾向があった.
部品などを電気接続する分野で,アルミ(Al)と銅(Cu)を溶接する需要が増加している.この電磁圧接 (溶接) は,Al薄板を電磁力を利用してCu薄板へ高速衝突させて接合させる.技術的にはコンデンサ電源から平板状コイルへ放電電流を急激に流して行われる.ここでは,圧接に必要な放電電流最大値を約 16kA に減らせる平板状10ターンコイルを用いる方法,実験装置および結果を報告する.
C-6. 電子部品・材料
3月9日 10:30〜11:00 Meeting 44座長 武山真弓(北見工大)
C-6-1 |
5G通信に適した低誘電正接LTCC材料の開発
○馬屋原芳夫(日本電気硝子) |
C-6-2 |
日本酒の電気的特性を用いたおいしさ評価の検討
◎△梶原朋也・佐藤 勝・武山真弓(北見工大) |
5G通信に適した3種類のLTCC材料を開発した。28-40GHzでの誘電正接が0.0016以下であり、誘電率はそれぞれ、4、6、8である。誘電正接が低く、電気抵抗の低い銀導体と同時焼成できるので、高周波での信号の減衰を抑えることができる。
現在,日本酒の評価方法として日本酒度,酸度などの評価方法があるが,人の味覚は複雑かつ繊細なため,従来の評価方法だけでは,日本酒の味は語れないという意見も多い.本研究では,日本酒の新たな評価方法として電気インピーダンス法を用いて,電気的な特性から日本酒が評価可能かどうかを検討しようとしている,まずは測定する電極材料の変化に応じて,どのように特性が変化するのかを検討した.その結果,電極材料としてはステンレス系材料がその候補として有用であり,日本酒も銘柄によって得られる円弧の位置や大きさが異なり,測定可能であることを示唆する結果を得たので,以下に報告する.
C-7. 磁気記録・情報ストレージ
3月9日 13:00〜13:45 Meeting 35座長 田河育也(東北工大)
C-7-1 |
MAMRによる多層記録におけるSTOのアシスト効果の一検討
○高松慧介・仲村泰明・西川まどか(愛媛大)・金井 靖(新潟工科大)・岡本好弘(愛媛大) |
C-7-2 |
SMRにおけるニューラルネットワーク検出器の結合荷重の一検討
○西川まどか・仲村泰明(愛媛大)・金井 靖(新潟工科大)・大沢 寿・岡本好弘(愛媛大) |
C-7-3 |
ホログラフィックデータストレージにおける深層学習に基づいた復調方式の検討
○齋藤大和・黒川真矢・吉田周平(近畿大) |
HDD(hard disk drive)の更なる記録密度向上のため, マイクロ波アシスト磁気記録(MAMR: microwave assisted magnetic recording)に用いられるSTO(spin torque oscillator)の発振周波数を変えることによって, 共鳴周波数の異なる複数の記録層を有する多層媒体に対して記録を行う方法が提案されている.
本検討では, 共鳴周波数の異なる2つの記録層から構成された媒体に対し, 記録を行う際に適切な記録媒体の保磁力と, 適切なSTOによるマイクロ波アシスト効果について検討する.
先に我々は, SMR(shingled magnetic recording)においてニューラルネットワーク検出器(NND: neural network detector)を適用したLDPC(low-density parity-check)符号化・繰返し復号化方式を提案した. 本稿では, NNDの適用によりAPP(a posteriori probability)復号器と同程度の復号性能を実現するため, NNDの結合荷重の算出法について検討したので報告する.
ホログラフィックデータストレージ(HDS)の記録方式の特徴は、「ページデータ」と呼ばれる画像を記録することで、一度の光アクセスで電子データを一括に記録または再生ができるところにある。ページデータを記録媒体の同一箇所に多重記録が可能なことから、記録容量・密度の潜在能力が高いといえる。また、記録媒体にフォトポリマーを用いた場合、50年以上に渡りデータを保持できるとされている。本研究では、定重み符号で変調されたページデータを、球面波シフト多重方式によってフォトリフラクティブ結晶に多重記録し、これらの復調にCNN(畳み込みニューラルネットワーク)を用いることで、従来の復調方式を用いた場合よりも高い判定精度の達成を目指す。
C-8. 超伝導エレクトロニクス
3月9日 13:30〜15:45 Meeting 16座長 日高睦夫(産総研)
C-8-1 |
電波天文のための超伝導ヘキサバンド帯域通過フィルタの開発
○關谷尚人・上江洲安祐(山梨大)・赤堀卓也(国立天文台) |
C-8-2 |
RSFQ Stochastic Computing回路のための再収斂経路を考慮した演算スケジューリング手法
○鬼頭信貴(中京大) |
C-8-3 |
アンシャント接合によるSFQ論理ゲートのエネルギー効率の向上
◎国吉真波・長岡一起・田中雅光・山下太郎・藤巻 朗(名大) |
C-8-4 |
単一磁束量子回路に基づく50GHzビット並列演算マイクロプロセッサの設計
○長岡一起・加島亮太・中埜智貴・田中雅光・山下太郎・藤巻 朗(名大) |
近年,電波天文では広帯域観測が求められている.しかしながら,国内での観測には携帯電話や衛星通信による電波干渉が多いため,複数の静かな周波数帯を束ねて広帯域化しなければならず,複数の帯域を持つ小型・高性能(低損失,急峻な遮断特性)マルチバンド帯域通過フィルタ(MB-BPF)の開発が求められている.これら要求をすべて満たすことができるのは超伝導体を使ったMB-BPFだけである.
そこで,これまで報告されているMB-BPFのなかでも最も多い6つの帯域を持つ超伝導ヘキサバンド帯域通過フィルタ(HB-BPF)の開発を行ったので報告する.
本稿では,RSFQ回路を用いたStochastic Computing回路を実現する際,同一データの再収斂による演算誤差増大を防ぐための演算タイミングのスケジュール手法を提案する.RSFQ回路において論理ゲートの各入力がラッチ機能を持つことを活用し,最小個数のDFFの挿入で同一入力データの再収斂が生じないようにできる.提案手法では,問題を整数計画問題として定式化し,定式化した問題をソルバで解くことによりスケジュールされた回路を得る.
単一磁束量子(SFQ)回路において、バイアス電圧(Vb)を下げることは省電力化に有効であるが、XORゲートなどの一部の論理ゲートは、低Vb時にとりわけ大きなセットアップ時間とホールド時間を持つために、回路全体の動作周波数を引き下げる要因となる。本稿では、Vbが異なるXORゲートを例に、動作周波数を改善することによるエネルギー効率の向上を目的として、回路の一部にアンシャント接合を導入した時の最大動作周波数及び消費電力をシミュレーションにより評価した。その結果、Vbが2.5 mVと0.5 mVの時には、動作周波数の向上によりエネルギー効率はそれぞれ14%と16%向上したが、Vbが0.1 mVの時には動作周波数が低下し、エネルギー効率も21%低下した。
我々は、単一磁束量子回路のスループット性能を最大限に引き出すことが可能なビットパラレルマイクロプロセッサの設計を行った。マイクロプロセッサの動作周波数を律速する要素回路間でのデータの受け渡し箇所を限定することで、タイミング設計を容易にした。シミュレーションでの50 GHz動作時の電源電圧のマージンは、2.5 mVで規格化して85-125%で、広い動作領域を確保でき、高スループットを達成した。
休 憩(14:45 再開)座長 明連広昭(埼玉大)
C-8-5 |
単一磁束量子回路の高集積化へ向けた細線受動伝送線路の評価
◎加島亮太・長岡一起・田中雅光・山下太郎・藤巻 朗(名大) |
C-8-6 |
単一磁束量子回路における微細受動伝送線路の特性評価
◎池戸駿介・山梨裕希・吉川信行(横浜国大) |
C-8-7 |
Design of Convolution Layer in Binarized Neural Networks using Single Flux Quantum Circuit
○Zongyuan Li・Yuki Yamanashi・Nobuyuki Yoshikawa(Yokohama National Univ.) |
C-8-8 |
単一磁束量子回路を用いた離散型Hopfieldニューラルネットワークの設計
○赫 厚聞・山梨裕希・吉川信行(横浜国大) |
受動伝送線路 (PTL) は、光速での信号伝搬が可能であることから、単一磁束量子(SFQ)集積回路の配線手法として必要不可欠である。本研究では、集積回路において、多いものでおよそ4割を占めているPTLによる配線領域を、細線化によって削減することを目指している。細線化による線路の特性インピーダンスの増加が引き起こす、インターフェース回路とのインピーダンス不整合に伴う反射・共振による動作の不安定性は、インターフェース回路を最適化することで低減した。最適化したインターフェース回路をリングテスト回路によって評価した結果、実際の回路に適用しても問題のないバイアスマージンが得られた。
近年の増加し続ける情報化社会に対処するためには、情報処理システムの高速化、高機能化が必要である。そこで、消費電力が半導体集積回路に比べ2~3桁低く、高速性においても数十GHzでの高速動作が可能である単一磁束量子 (Single Flux Quantum: SFQ) 回路が注目されている。SFQ回路の長距離配線には受動伝送線路Passive Transmission Line (PTL)が用いられる。回路面積を削減し、大規模回路設計の柔軟性を向上させるために、我々は、PTLの配線幅の縮小化を目指している。本研究では、配線幅を縮小化した異なる配線長のPTLについて、測定評価を行った。
We design a parallel pipeline 9-bit binary neural network (BNN) convolution circuit using Single Flux Quantum (SFQ) Circuit. We use a new algorithm to improve the efficiency and reduce the circuit area. It can also be used as any BNN convolution circuit less than 9-bit. The frequency of CLK is 40 GHz. We think it can play an important role in the future SFQ-BNN architecture.
人工ニューラルネットワークは人間の脳の神経ニューロンを数理化モデル化して組み合わせることより生体を模倣する回路であり、パターン認識や画像処理などの情報処理システムとして期待されている。半導体集積回路技術に基づく人工ニューラルネットワークは、微細化の限界、消費電力、発熱量などの問題が存在している。近年の増加し続ける情報化社会に対処するためには、情報処理システムのさらに高速化、高機能化される必要である。そこで半導体集積回路に代わる単一磁束量子回路(Single Flux Quantum: SFQ)回路が注目されている。SFQ 回路は数十 GHz での動作が可能であり、消費電力が半導体回路に比べ 2~3 桁程度低く動作することが特徴である。我々はSFQ 回路を用いて人工ニューラルネットワークの一種である離散型Hopfieldニューラルネットワーク(Discrete Hopfield Neural Network: DHNN)を実装することを研究している。
3月10日 9:30〜11:45 Meeting 16座長 田中雅光(名大)
C-8-9 |
AQFP回路を用いた可逆回路の論理合成
◎齋藤蕗生・Christopher L. Ayala・竹内尚輝・山栄大樹・吉川信行(横浜国大) |
C-8-10 |
断熱量子磁束パラメトロン回路用自動設計ツールにおける配線幅・配置最適化
○△田中智之・Christopher L. Ayala・齋藤蕗生・吉川信行(横浜国大) |
C-8-11 |
断熱量子磁束パラメトロン回路のゲート間配線におけるシールド効果の検討
◎高橋大地・竹内尚輝・山梨裕希・吉川信行(横浜国大) |
C-8-12 |
断熱量子磁束パラメトロン回路のゲート間配線における反射特性の低減
○△浅井和人・竹内尚輝・山梨裕希・吉川信行(横浜国大) |
我々は、断熱磁束量子パラメトロン(AQFP)回路と呼ばれる超伝導論理回路についての研究を行っている。AQFP 回路はCMOSより5桁程度低い極低消費電力で動作可能なことが特徴の一つであり、さらなる特徴として、いくつかのゲートを組み合わせることで可逆ゲートを構成することが可能であるという点がある。可逆ゲートを組み合わせると古典回路よりさらに計算エネルギーの低い可逆回路が実現出来る。近年では論理合成ツールによる回路設計支援が必要不可欠になってきている一方、既存のツールは回路構成などが異なり使用できないため、我々は現在AQFP 回路に適した可逆回路の論理合成ツールの研究を行っている。
近年の情報化社会は、半導体集積回路が牽引してきた。しかし、近年加工寸法は数nmにおよび、スケーリング則の限界を迎えつつあり、さらなる性能向上を満たすことが難しくなってきている。そのため、CMOSに代わる集積回路技術が必要である。
これを踏まえて、我々は断熱量子磁束パラメトロン(adiabatic quantum-flux-parametron; AQFP)に注目し、研究を行っている。AQFP集積回路は、CMOS集積回路に比べ、6桁程度の低い消費電力で動作し、5~10 GHz 程度で駆動できるという利点がある。
回路内の電流増幅用のバッファを削減するために、幅広い配線を使って配線インダクタンスを減少させることで配線長を延長できることに着目し、配線幅の最適化とゲート配置の最適化を同時に行う自動設計ツールの作成を行った。
断熱量子磁束パラメトロン(AQDP)回路は非常にエネルギー効率の高い論理素子であり、AQFPによる集積回路の構築は消費電力の観点から非常に有効である。AQFPにおけるゲート間配線には、配線層をグランドと1つ上の層でシールドしたストリップラインを用いている。また、AQFPに励起電流を供給する励起線にはマイクロストリップラインを用いている。配線を流れる信号電流は20 uA程度であるのに対して励起電流は数mAと非常に大きいため、励起電流が信号線に磁気的にカップリングすることで論理誤りの原因になりうる。本研究では、磁気カップリングによるAQFPの論理しきい値電流の変化を測定することで、配線のシールド効果の検討を行った。
我々はその中の一つである断熱量子磁束パラメトン (adiabatic quantum-flux-parametron; AQFP) 回路の研究を行っている。AQFP回路は静的な消費電力がなく、スイッチングの際にエネルギーポテンシャルを断熱的に変化させることで動的な消費電力を劇的に減少させることが可能である。したがって、CMOS回路と比較すると5 - 6桁程度低い消費電力で5 - 10 GHzの高速動作が可能である。
我々は、AQFP回路を用いた大規模回路設計を目指している。そこでより正確なディジタルシミュレーションモデルを考えるにあたりAQFP回路の配線間遅延を考慮する必要性がある。そのため、AQFP回路の配線として伝送線路モデルを用いた場合の影響を検討している。
今回は、AQFP回路の配線として伝送線路を用いた場合の動作シミュレーションを行い、反射特性を減衰した場合の配線長と動作の関係を調べた。
休 憩(10:45 再開)座長 知名史博(NICT)
C-8-13 |
断熱量子磁束パラメトロン回路の最大配線長増加のためのブースターゲートの動作実証
○水島直哉・竹内尚輝・山梨裕希・吉川信行(横浜国大) |
C-8-14 |
矩形励起電流を用いたdelay-line clockingによる断熱量子磁束パラメトロンの動作実証
◎山栄大樹・竹内尚輝・吉川信行(横浜国大) |
C-8-15 |
超伝導回路によるイジングモデルに基づいた論理ゲートの設計
○菅原瑠偉・山梨裕希・吉川信行(横浜国大) |
C-8-16 |
超伝導回路によるボルツマンマシンの最尤推定に基づく設計と最適化
◎△三宅航平・山梨裕希・吉川信行(横浜国大) |
半導体に代わる新たなデバイスとして、超伝導集積回路が注目されている。我々はその中でも特に優れた低消費電力性を有する断熱量子磁束パラメトロン(AQFP: Adiabatic Quantum Flux Parametron) 回路の研究を行っている。
AQFP集積回路の現状の課題として集積度が低いことが挙げられる。AQFP回路は数十uAという微小電流によって動作する回路であり、配線長の増加によって電流が減少すると、熱雑音の影響を受けやすくなる。そのため、回路の正常動作のために配線長が制限を受ける。この課題への対応策として、我々は複数のAQFP回路を組み合わせたbooster回路を考案し、従来回路に比べ約2倍の長さの配線が可能となることをシミュレーションより示した。今回はboosterについて測定を行い正常動作が確認されたので、その結果を報告する。
断熱量子磁束パラメトロン(AQFP)は断熱スイッチにより、低スイッチングエネルギーで動作可能な超伝導回路である。これまでに低レイテンシなdelay-line clockingが提案され、動作周波数4 GHzでの動作実証が報告された。しかしながら、delay-line clockingはゲート間遅延が小さいため、sin波の励起電流を用いた場合、低周波数になるにつれて出力電流が減少する。そのため、検出器の読み出し回路のようなMHzオーダーで動作する応用で用いることが困難である。今回は、矩形励起電流を用いることでdelay-line clockingによるAQFP回路が低周波数で動作することを示す。測定において、矩形励起電流を用いてAQFP buffer chainが200 MHzで正常動作していることを確認した。
量子アニーリングは,素因数分解や組み合わせ最適化問題をより高速に解く手法として注目されている.本手法は,イジングモデルと呼ばれる各格子点が上下どちらかにスピンの向きを持ち相互に作用しあう磁性体を模倣しており,時間経過とともに収束するスピンの向きを解として得る手法である.上下のスピンの向きは論理の"0","1"に対応させることができるので,イジングモデルのエネルギー関数の各係数を適切に決定することで,論理ゲートとして応用することが可能である.
我々は,超伝導回路の1つである量子磁束パラメトロン(QFP:Quantum Flux Parametron)を用いて,イジングモデルに基づいた論理ゲートの設計を行った.また,シミュレーションによって動作確認や,熱雑音に対する評価なども行った.
本研究では,超伝導回路によるボルツマンマシンのハードウェア実装を実現するための,最適化手法について検討した.
最適化ではボルツマンマシンの学習則である最尤推定を適用した.
ボルツマンマシンを超伝導回路を用いて実現することでより低消費電力での実装が可能であると考えられる.
C-9. 電子ディスプレイ
3月11日 13:00〜15:30 Meeting 44座長 水崎真伸(シャープディスプレイテクノロジー)
C-9-1 |
(依頼講演30分)有機ELディスプレイ最新技術開発動向
◎松枝洋二郎(Tianma Japan) |
C-9-2 |
透明パッシブマトリックス駆動OLED表示装置
○服部励治・此本光駿(九大) |
C-9-3 |
マイクロLEDアレイを用いたPOVディスプレイの駆動法の考察
◎此本光駿・服部励治(九大) |
C-9-4 |
極薄ポリイミドフィルムを用いた裏面駆動薄膜トランジスタの開発
○辻 博史・宮川幹司・中田 充(NHK) |
プラスチック基板上に薄膜トランジスタアレイを形成し、RGB有機EL材料を高密度で積層したフレキシブル有機ELディスプレイは、3D曲面を駆使したデザインと各種センサーを内蔵し、モバイル市場の頂点に立つ最先端の電子デバイスである。今後技術開発の中心は韓国から中国へと移り、中国が技術開発と生産の中心地となっていくであろう。
近年、透明ディスプレイと呼ばれる表示装置が注目され、既に有機ELダイオード(OLED)を用いた高精細なものが発表されている。しかし、この透明ディスプレイは原理的に黒を表示できず、どうしても低コントラストの映像表示になってしまう。したがって、いくら高精細でフルカラーの映像を求めても表示品位には限界があり、それよりも高透過率と高輝度を持つ透明ディスプレイで利便性を追求する方が表示装置として特徴を持たせることができる。これにより、非表示時は通常の窓として使え、表示時は視認性が高く照明として使えるぐらい明るく光る今までにないコンセプトのディスプレイが得られる。本研究では、透明PMOLEDディスプレイの製作とその定電圧駆動方法の開発について報告する。
我々は今までに市販のLEDテープを用いてPOVディスプレイを試作してきた。このLEDテープは一次元上にLEDが並んだもので、各LEDにはデジタル信号で輝度制御可能となる駆動チップが付属している。また、デジタル信号はシフトレジスターによって次のチップに送られ、イネーブル信号によって一斉に発光する。したがって、LEDの応答速度はこの信号伝送速度で制限される。我々はこのLEDテープを複数本用い2次元的に配置しパラレルに信号を伝送することにより応答速度を向上させるとともに、各テープをずれして配置することにより信号伝達方向の解像度を向上さてきた。
複数のパネルユニットで構成されるタイリングディスプレイは,様々なサイズにカスタマイズ可能であり,さらにフレキシブルなユニットを実現できれば,湾曲ディスプレイも可能になる.一般的なパネルユニットの場合,その周縁部に信号配線等を形成する必要があり,ベゼルを無くすことができず,継ぎ目が生じる課題がある.その解決策として,信号配線等をユニットの裏面側に取り出すことができれば,ベゼルレス構造を実現できる.そこで本研究では,ベゼルレスのフレキシブルなパネルユニットの実現を目指し,その要素技術として,ポリイミドフィルム基板の裏面側から信号入力可能な薄膜トランジスタ(裏面駆動TFT)を開発したので報告する.
休 憩(14:30 再開)座長 辻 博史(NHK)
C-9-5 |
高信頼性フッ素系減粘材および重合性モノマーを有する液晶混合物
○水﨑真伸・岡﨑 敢(シャープディスプレイテクノロジー)・岡本一男(オルガノサイエンス)・柴田俊博(キラコール) |
C-9-6 |
ハイブリッド配向疑似TNモードにおける極角アンカリング力と弾性定数の関係
○山口留美子・川田竣也・麦沢幸樹(秋田大) |
C-9-7 |
ナノ粒子添加PNLC調光素子への界面活性剤添加効果
福田枝里子(九産大)・○穐本光弘・宮崎雅大(山口東理大) |
C-9-8 |
ラインディスプレイにおける奥行きの知覚に関する検討
◎秋山和輝・奥村万規子・町田優希・川崎直紀・菅野広貴・熊木 亮(神奈川工科大) |
ポリマー支持垂直配向(Polymer Sustained Vertical Alignment:PSVA)技術,もしくは従来のポリイミド(Polyimide: PI)配向膜を用いないPIレス配向技術では,重合性モノマーを有する液晶層への紫外光照射により,高分子配向層を形成する.今回我々は,PSVAおよびPIレス液晶ディスプレイ用として,高速応答と高信頼性の両立が可能なフッ素系減粘材3HFFH3を開発した.さらに,これまでに開発したカルコン骨格を有する重合性モノマーと組み合わせることで,高信頼性PSVAおよびPIレスIPS液晶パネルの製造が可能であることを確認した.
液晶素子において,弱アンカリング界面を用いることにより,低電圧駆動が可能となることは,よく知られている。我々は,90度ねじれハイブリッド配向において,弱極角アンカリング界面を適用させた疑似TN (Q-TN)を提案し,通常のTN素子の1/7程度の超低電圧駆動が可能となること,などを数値解析により明らかにしている。本報告では,3つの弾性定数においてK22(ツイスト)とK33(ベンド)をK11(スプレイ)の比として規格化したモデルにおいて,Q-TNが成立する条件,電気光学特性に及ぼす影響を,数値解析的に明らかにした。
液晶性モノマーを液晶中で紫外線照射による光重合することにより形成されるポリマーネットワーク液晶(PNLC)調光素子は,調光窓や透明ディスプレイへの応用が期待されている。著者らはこれまで,表面が重合性官能基によって被覆されたナノ粒子を液晶性モノマーと液晶中で共重合させ,不均一なポリマーネットワークを形成することによりPNLC調光素子の大幅な低電圧化が可能であることを示してきた。本研究では,素子の画像品質にとって問題となっていたナノ粒子導入に起因する凝集を防ぐため,重合性あるいは非重合性イオン性界面活性剤を添加し素子の電気光学特性を調べた結果を報告する。形成されたポリマーネットワークのモルフォロジーについて,界面活性剤の末端基の果たす役割という観点から議論する。
まばたきや視線移動などで生じるサッカードと呼ばれる高速な眼球運動に着目し,一次元の光点列から二次元画像の情報を得られるラインディスプレイの研究を進めてきた.本稿では,立体表示可能なラインディスプレイを開発するために,奥行きのある画像に対する知覚評価実験を行った.その結果,線遠近法では複雑なものでは視認は難しいが,奥行きがあると多くの人が評価し,効果があることが確認できた.
C-10. 電子デバイス
3月12日 10:30〜11:30 Meeting 16座長 岩田達哉(富山県立大)
C-10-1 |
低温成長CVDダイヤモンド膜によるGaN HEMT表面の放熱性改善
◎矢板潤也・山田敦史・小谷淳二(富士通) |
C-10-2 |
GaN HEMTの低周波Yパラメータ特性における表面トラップの影響に対するTCAD解析
◎大塚友絢・山口裕太郎・山中宏冶(三菱電機)・大石敏之(佐賀大) |
C-10-3 |
慢性刺激に対応した人工視覚システム用AC駆動制御チップの設計
◎森 康登・長谷川 諒・Ronnakorn Siwadamrongpong(奈良先端大)・鐘堂健三・寺澤靖雄(ニデック)・竹原浩成・春田牧人・田代洋行・笹川清隆・太田 淳(奈良先端大) |
C-10-4 |
ウェアラブル歩行補助ロボット用スマートアクチュエータ制御ユニット
◎石倉佳汰・上口 光(信州大) |
窒化ガリウム高電子移動度トランジスタ(GaN HEMT)は高出力・高周波デバイスとして応用されているが、デバイス動作中の自己発熱も大きくなるため、GaN HEMTの放熱技術が重要な要素となる。そこで、本研究では熱フィラメントCVDを用いて、高い熱伝導率を持つダイヤモンドをGaN HEMT上へ形成した。形成したダイヤモンド膜は成長時間を長くするほど結晶粒径が大きくなり、熱伝導率は 200 W/mKまで向上した。これをGaN HEMT上へ適用したことにより、GaN HEMTの発熱を抑制し約 40 %の電流増加が観察された。より高い熱伝導率を持つダイヤモンド膜を適用することによって、GaN HEMTのさらなる特性向上を期待することができる。
GaN HEMTにおける表面トラップが低周波Yパラメータ特性に与える影響についてTCADを用いて解析した。TCAD解析の結果、表面トラップによりY21の虚部に正のピークの特性が現れるが、Y22の虚部ではフラットな特性となることを確認した。さらに、GaN HEMTの低周波Yパラメータ測定結果がTCAD解析と同じ傾向であることを確認した。
網膜疾患により視覚に障害を抱える患者に対し、埋植したデバイスを用いて網膜を電気刺激することで視覚を再建する人工視覚は、一部で実用化が始まっている。刺激点数を増やし、より高解像度の視覚を提供するため、刺激電極ユニット自体にCMOSチップを搭載したスマート電極デバイスを開発する。
本研究では、安全性向上のため埋植デバイスをカップリングコンデンサでグラウンド分離し、コンデンサ越しにAC給電・信号通信を行う。提案するAC駆動型埋植デバイスは、長期埋植・慢性刺激の実現に向け、双方向性刺激動作の不完全性による蓄積電荷を放電する機能がある。この提案方式を実現するためのチップを試作、機能検証を行った。
日本は高齢化社会を迎え,高齢者が自立して生活できるようになることが求められているため近年では,高齢者向けの歩行補助ロボットが実用化されつつある.
本研究では歩行補助ロボットに求められている小型化,省電力化,低ノイズ化を実現するためにアクチュエータを動かす三相交流回路を集積回路でカスタム設計してワンチップ化し,大幅な小型化を目標とし,回路のシミュレーション結果を検証し,集積回路のレイアウトを行なった.
C-12. 集積回路
3月10日 9:00〜11:45 Meeting 9座長 田島英幸(ルネサスエレクトロニクス)
C-12-1 |
増倍膜積層型撮像デバイス用高変換ゲイン画素の特性評価
○渡部俊久・為村成亨・峰尾圭忠・宮川和典・新井俊希・難波正和・島本 洋(NHK)・池辺将之(北大) |
C-12-2 |
自動配置配線可能な温度センサセル
◎平野皓士・小松 聡(東京電機大) |
C-12-3 |
サーミスタを用いた高速応答温度センサの設計
◎小川真弥・升井義博・田中一輝(広島工大) |
C-12-4 |
オンチップ光発電を利用したIC温度センサ回路
◎田中一輝・上見アレックス・升井義博(広島工大) |
C-12-5 |
オンチップ光発電での利用を想定したSAR型ADCの高精度化
○荒川祐貴・升井義博(広島工大) |
撮像デバイスの高感度・高S/N化を図るため、信号増倍機能を有する光電変換膜(増倍膜)をCMOSセンサ上に積層した増倍膜積層型撮像デバイスでは、読み出し機能を担うCMOSセンサの画素は3トランジスタ(Tr)構成のため変換ゲインが小さく、低ノイズ化の支障となっている。そこで、現行の4Tr画素をベースとした高変換ゲイン画素を提案し、研究開発を進めている。今回、本画素よりなるテストセンサを試作し、現行の4Tr画素と同じリセット-信号読み出しという駆動シーケンスに電荷注入・排出フェーズを加えた新たな駆動法によりセンサを動作させ、読み出し特性、ノイズ特性、残像特性を評価した。
PTAT 回路をアナログ参照電圧不要化,スタンダードセル化することで,自動配置配線が可能になり,デジタル回路内の特定箇所の温度を連続的に測定することで,システムの信頼性を維持することを目的としている.
本研究ではRohm CMOS 0.18μmプロセスで設計を行い,Synopsys 社のIC compiler を用いて温度センサセルが自動配置配線可能であることが確認できた.また,出力を差動出力にすることで温度に対する感度を大きくした.
生物の生態を調査するバイオロギングにおいてデータロガーの性能向上が求められている.特に水中生物用データロガーでは低消費電力で動作し,かつ生物が移動する際の水温変化に素早く応答することが求められる.本稿では,温度センサの中でも高速応答可能なサーミスタを利用し,高温時に感度が低下するという問題点を改善する回路構成を検討した
近年,経済活動の高度化・拡大に伴い,野生生物の生息圏と人々の生活・行動圏の重なりが顕著になりつつある.この結果,生物圏に対する人間活動の関与が,生物多様性の減少やこれら生物が構成する生態系の攪乱要因になっている可能性は無視できない.バイオロギングを用いて生物の行動や生態を調査する事で生態系の中で生物を資源として持続的に利用し,さらに人間の過剰な生態系への関与がもたらした影響を的確に見積もり,その回復を企てることが出来る.本研究ではバイオロギングでの利用を想定してオンチップ光発電を利用したIC温度センサ回路を設計し,実測評価を行ったので報告する.
近年,生物に取り付けることを想定した小型データロガーが開発され,その電力源をエネルギーハーベストで賄う研究が進められている.エネルギーハーベストで供給できる電力は微小であることが一般的であり,低消費電力かつ高分解能なAD変換器が求められている.本稿ではオンチップ光発電を電力源とすることを想定し,データロガー用AD変換器として高いスペックを期待できる逐次比較(SAR)型AD変換器を分解能12bitで設計したので報告する.
休 憩(10:30 再開)座長 三木隆博(ルネサスエレクトロニクス)
C-12-6 |
スタンダードセルによるRail-to-Railハイブリッドコンパレータ
◎福島拓実・小松 聡(東京電機大) |
C-12-7 |
Analysis of Strong-ARM Comparator with Offset Calibration Using Auxiliary Pair
◎Shuowei Li・Zule Xu・Tetsuya Iizuka(The Univ. of Tokyo) |
C-12-8 |
非接触CANセンサ向けCMOSアナログフロントエンド回路の入力結合容量ミスマッチ補正の検討
○清水 昂・宮地幸祐(信州大) |
C-12-9 |
圧力センサ用CV変換回路の容量オフセット除去に関する検討
◎島崎 凌・高木 駿・岩田達哉・吉河武文(富山県立大) |
C-12-10 |
多重結合リングオシレータの結合方式の比較検討
◎小池響太・岩田達哉・吉河武文(富山県立大) |
さまざまなものに半導体が組み込まれるようになってきたことで,アナログ-デジタルコンバータ(ADC)の需要はますます多くなってきている.コンパレータはADCにおいて重要な要素の一つである.通常ADCを設計する際にはその動作原理から手作業で一から全てレイアウトを書いていく「フルカスタム設計」が用いられてきたが,CMOSプロセスの微細化が進むにつれて,設計期間の長期化やコストの増大が問題になってきた.
本研究ではコンパレータをセミカスタムLSIであるスタンダードセルによって設計を行う.また,フルレンジADCで使用可能なRail-to-Railでの動作を目指す.
This paper systematically analyzes how the size of the auxiliary pair affects calibration range, decision time, and input-referred noise of the original strong-ARM comparator. With the derived equations, designers can size each transistor of the comparator according to their noise and calibration capability requirements.
近年、車両のメンテナンスを目的として、車載ネットワークであるCAN (Controller Area Network)の測定が求められている。そこで、容量結合による信号取得を利用した非接触CANセンサの開発が行われており、CANBUSの特性を変化させる必要なく簡単に信号が測定できるという利点がある。入力結合容量はCANBUSケーブルの被膜の厚さや不均一性によって変化し、AFE回路の入力信号振幅の変化やそれによるCMRR (Common Mode Rejection Ratio)の低下を引き起こす。本稿ではそれらに対応するために、入力ミスマッチ補正機構を備えたAFE回路について報告する。
歩行困難者のリハビリ等に供するシート状の足裏荷重センサシステムにおいては、中空の導電性樹脂及びゴム材で形成された圧力センサが複数配置されている[1]。この圧力センサは、荷重がかかると中空内の上下間距離が縮小するためセンサ容量(CS)が増加するので、その容量値変化(ΔCs)を外部で読み取ることにより圧力を検知している。この圧力検知には、基準容量(Cref)との容量差分を電圧に変換するCV変換回路を使用するが、CSとCrefに容量オフセットが在る場合には、そのオフセットにより無圧状態でも微妙な圧力が検出されてしまう。本件は、当該オフセットの除去情報について報告する。
現在の大規模集積回路(LSI)では、クロックの発生のためにPLL(Phase Locked Loop)が広く用いられている。このPLLの電圧制御発振器(Voltage Control Oscillator:VCO)には、複数段の遅延素子によるリングオシレータが一般的に用いられているが、LSI内部のクロックタイミングを精緻に選択できるようにするために、複数のリングオシレータを結合して多重結合リングオシレータ(Multi-path Ring Oscillator)にする場合がある。本件では、多重結合リングオシレータの結合方法について比較検討を行う。
3月10日 13:00〜17:00 Meeting 9座長 吉原義昭(キオクシア)
C-12-11 |
低位相雑音かつ低スプリアストーンを達成する高調波ミキサを用いた二重フィードバック型フラクショナルN位相同期回路
◎長田 将・徐 祖楽・飯塚哲也(東大) |
C-12-12 |
CMOS電圧制御発振器の高速化構成法の検討
◎筒井隆裕・三浦 凌・石井 清(中部大) |
C-12-13 |
CMOS電圧制御発振器の周波数制御技術の検討
◎三浦 凌・筒井隆裕・石井 清(中部大) |
C-12-14 |
0.18um CMOSを用いた27GHz動作IL-VCOの設計
◎高ヶ内洸太・松村一樹・前多 正(芝浦工大) |
C-12-15 |
60GHz帯CMOSシングルバランスドアップコンバージョンミキサにおけるクロスカップルキャパシタの最適値の検討
◎那須南美・高野恭弥・楳田洋太郎・佐原健太・山木 夏(東京理科大) |
高精度な周波数制御が行えるフラクショナルN位相同期回路は無線通信などの様々な応用において必要不可欠である。しかし分周比の変調による位相雑音や回路内の非線形性によって生じるスプリアストーンなどが課題となっている。これを解消するために様々な手法が提案されているが、複雑なキャリブレーションが必要なため高い消費電力と長い静定時間を要してしまう。そこで本研究では高調波ミキサに基づいたデュアルフィードバック構造を提案し、ループにおけるノイズの増幅を回避する。また提案構造を用いた位相同期回路を実装し、複雑なキャリブレーション機構を用いずに低位相雑音および低スプリアストーンを達成できることを測定により示す。
本研究では,フィードフォワード・抵抗分割型ソース結合論理回路を利用したVCO高速化構成法を提案した.0.18-μm CMOSプロセスモデルパラメータを用いてVCOを設計し,Spiceシミュレーションによってその特性を評価した.フィードフォワード型VCOの約1.2倍高い発振周波数が得られることが分かった.
本論文では,フィードフォワード型ソース結合論理(FF-SCL)回路を遅延段に用いたリング型VCOの周波数制御法について述べる.SCL回路のソースフォロアに周波数制御用NOSFETを接続し,ゲート電圧でMOS容量を変化させることにより発振周波数を制御した.0.18 µm CMOSプロセスモデルパラメータを用いて,従来型SCLおよびFF-SCLによるVCOの周波数特性を検討した.FF-SCL遅延段では制御用MOSFETを付加しても遅延時間がほぼ変わらなかった.FF-SCLによるリング型VCOでは,周波数制御MOSFETを付加しても動作速度の低下を軽減できる可能性があることが分かった.
近年,5G (第五世代移動体通信) などで,準ミリ波帯における回路技術の応用が広く期待されている.今回は,0.18um CMOSを用いて,27GHz帯にて動作する注入同期VCO (Injection Locked Voltage Controlled Oscillator : IL-VCO) を設計した結果を報告する.
60 GHz帯無線通信機においてアップコンバージョンミキサは搬送波を変調する重要な回路であり,性能向上が求められている.これまでに,容量中和技術をミキサに用いることにより変換利得が向上することが報告されている[1].しかし,容量中和に用いるクロスカップルキャパシタの最適値については検討されていなかった.本研究ではアップコンバージョンミキサに最適なクロスカップルキャパシタの検討を行い,それを用いてミキサの設計を行う.
休 憩(14:30 再開)座長 古田善一(ミライズテクノロジーズ)
C-12-16 |
60GHz帯CMOSダウンコンバージョンミキサに用いるデバイスのモデリング
○新谷理音・高野恭弥・楳田洋太郎(東京理科大) |
C-12-17 |
スプリアス抑圧技術を用いた45GHzCMOS周波数3逓倍器の設計
○佐原健太・高野恭弥・楳田洋太郎(東京理科大) |
C-12-18 |
容量中和技術を用いた135GHz CMOS周波数3逓倍器の設計
◎関根光輝・高野恭弥・楳田洋太郎(東京理科大) |
C-12-19 |
能動帰還を用いたインダクタレス広帯域能動バラン回路
◎川原啓輔・楳田洋太郎・高野恭弥(東京理科大) |
C-12-20 |
グラウンドシールド付きD帯CMOSマーチャントバラン
○酒井 元・高野恭弥・楳田洋太郎(東京理科大) |
60 GHz帯無線通信器においてダウンコンバージョンミキサは受信した高周波信号をベースバンド信号に変換する重要な要素回路である。また、0.18 μm CMOSプロセスは安価なプロセスであるため、あらゆるモノをインターネットに接続するIoTに適しているが、デバイスモデルがミリ波帯に対応しておらず、0.18 μm CMOSプロセスを用いて60 GHz帯ダウンコンバージョンミキサを設計することができなかった。通常、nMOSFETのスケーラブルモデルを作成するためには、DC特性、小信号特性、大信号特性を測定し、多くのパラメータをフィッティングする必要があるため、多くの時間と労力を必要とする。その問題を回避するために、本研究では、既に20 GHzまで対応しているモデルをコアとし、寄生素子を周りに追加することにより簡易モデルを作成する。局部発振器(LO)信号と高周波(RF)信号の入力電力は-20 dBmとした。RF周波数が60.0 GHzで変換利得は1.01 dBとなった。
近年の高速・大容量通信への期待の高まりに伴い、高周波数帯域を利用した無線通信回路の期待が高まっている。そのため、MOSFETの非線形性を利用し入力信号の高調波成分を出力する周波数逓倍器は重要度が増しており、性能の向上が求められている。しかし、周波数逓倍器は所望波以外に不要波も出力するため、この不要波によってその後の回路で高変調を起こすなどの問題が挙げられる。そこで本研究では、共振器とテール電流源を用いた差動増幅回路の同相除去技術をミリ波帯周波数3逓倍器に適用を行った。その結果、所望波と不要波の電力比を-18.1dB以下に抑えることができた。
近年、IoTの普及に伴い、高速・大容量の無線通信が求められている。182 GHzから325 GHzの範囲には、大気減衰の少ない広い大気の窓が存在する。また、2017年にIEEEにおいて、252から325 GHzの73 GHz帯域を用いて、100 Gb/sの通信速度を持つ無線通信の実現を目指したチャネル割り当てが示されたことにより、300 GHz帯を利用した高速無線トランシーバの実現が期待されている。300 GHz帯無線トランシーバを実現するためには、135 GHzの局部発振信号を生成するために45 GHzの信号を3逓倍する周波数3逓倍器が必要となる。そこで、本研究では、40nm CMOSプロセスを用いて135 GHz周波数3逓倍器を設計した。その結果、変換利得-7.86 dBの3逓倍器を設計できた。
近年の光ファイバ通信において,アナログ乗算を用いたDA変換器の高速化技術が注目を集めている.高速かつ高精度なアナログ信号処理の実現にはダブルバランス型ミキサ等の差動信号処理の適用が望ましい.従って処理される信号が単相信号である場合,単相-差動変換を行うバラン回路が必要となる.しかしバラン回路において生じる利得偏差と位相偏差により信号品質が劣化する.そこで本研究では広帯域に渡って小さな利得-位相偏差を実現できる能動バラン回路を提案する.提案回路を0.18μm CMOSプロセスを用いて設計し回路シミュレーションにより特性を評価した.
300GHz帯CMOS無線通信機の中間周波数帯(IF帯)としてD帯(110 – 170 GHz)の利用が検討されているが,単相IF信号と差動IF信号を変換するために小型でかつ広帯域なバランが必要となっている.従来のマーチャントバランでは信号線より発生する電磁界の影響を抑えるためにグラウンドフロアを広くとらなければならばいといった問題や,シリコン基板がむき出しになっており高周波帯では損失が大きくなってしまうといった問題が存在する.本研究では,結合線路をグラウンドウォールとグラウンドフロアで囲むことで上記の問題を解決したグラウンドシールド付きマーチャントバラン構造を提案し作成を行った.実測において中心周波数140 GHz帯域60 GHz損失2 dB未満の広帯域,低損失かつ小面積のグラウンドシールド付きマーチャントバランの作成に成功した.
休 憩(16:00 再開)座長 満仲 健(シャープ福山セミコンダクター)
C-12-21 |
ノッチフィルタ付き20GHz帯域CMOSベースバンド増幅器
○今中圭祐・吉田 毅・天川修平・藤島 実(広島大) |
C-12-22 |
30-70GHz CMOS増幅器
○スミス 力紀・吉田 毅・天川修平・藤島 実(広島大) |
C-12-23 |
ミリ波帯CMOS多段電力増幅回路の付加電力効率の改善
○伊藤 駿・吉田 毅・天川修平・藤島 実(広島大) |
C-12-24 |
0.18μm CMOS 2.4GHz Class-Fパワーアンプの設計
◎興梠浩昌・前多 正(芝浦工大) |
基本的に通信速度は帯域幅に比例しており,300GHz帯では帯域幅を大きくしやすい.受信機では受信した信号の帯域幅を維持したままベースバンド帯に変換する必要がある.ヘテロダイン方式によってベースバンド信号に変換する受信機に対し,インダクタピーキングによってDC~20GHzの信号を平坦に増幅できるベースバンド増幅器を,ミキサからの局部周波数50GHzのリークをカットするため直列共振器の並列接続によってノッチフィルタを設計した.また,複数巻のインダクタのビアを一つ外すことにより直列共振器として動作させ,ベースバンド増幅器にノッチフィルタとして組み込むと40.6% の面積でレイアウトでき,性能との比較で選択肢の一つとして有用であることを示した.
広帯域増幅器を設計する方法として,多段増幅器を段間に分けて設計し,その段間整合回路にLC共振を用いて段間全体を最大有能電力利得(MAG)で評価する方法がある.この方法で多段増幅器を設計すると,段間どうしを足し合わせた際にトランジスタの重複が起こるという問題点がある.その結果として,S21は3dB帯域幅が30GHzから70GHzまでの40GHzで,28.5±1.5dBとなり,消費電力91.5mWとなるCMOS多段増幅器を設計した.
QAM(quadrature amplitude modulation)方式では,十分なバックオフを設けた線形電力増幅器が用いられる.しかしバックオフの確保は付加電力効率(PAE)の低下につながる.つまり線形性とPAEの間にはトレードオフの関係があり,線形性を維持しつつ高効率化を実現する技術が要求される.一般に,多段化された電力増幅器では最終段のPAEのみ最適化され,前段のPAEについては考慮されない場合が多い.しかしミリ波帯では前段のPAEも全体のPAEに大きく影響を与えてしまう.そこで本研究ではいかにして各段増幅器のPAEを最適化するか検討を行った. 今回の検討では各段増幅器の入出力アドミタンスをゲート幅の関数とすることで各段の圧縮利得を制御し,後段ほど圧縮利得が大きくなるようスケーリングすることで,線形性を維持したままPAEを改善させることができた.
F級パワーアンプ(PA)は, 信号の高調波成分を調整することでスイッチ素子の電流電圧の位相をずらし, 理論効率100%が得られる回路で, 低消費電力なIoTデバイスとして魅力的である. 今回, 0.18µm CMOSプロセスを用いて2.4G帯のF級PAを設計したので報告する.
3月12日 9:15〜11:30 Meeting 9座長 矢野智比古(日立)
C-12-25 |
並列接続されたパワーデバイスの定常電流均一化を実現するデジタルゲートドライバICの設計
◎△堀井康平・森川隆造・畑 勝裕・桜井貴康・高宮 真(東大) |
C-12-26 |
バイオロギング用不揮発性メモリのための昇圧回路の設計
○平尾凌雅・升井義博(広島工大) |
C-12-27 |
A Design of Adaptive Charge Pumps with Minimum Circuit Area for Thermoelectric Energy Harvesting under Temperature Variations
◎Koichi Nono・Toru Tanzawa(Shizuoka Univ.) |
C-12-28 |
MLCC on SiliconスイッチトキャパシタDC-DCコンバータ
○崔 通(東京工芸大) |
パワーエレクトロニクス機器において、パワーデバイスの定格を超える大電流を扱う場合、複数のデバイスを並列接続して大電流に対処する。この場合、パワーデバイスのしきい値電圧(VTH)がばらつくと、VTHが低いデバイスに電流が集中して信頼性が劣化するので、電流を均一化する技術が必要である。一方、パワーデバイスのスイッチング時の損失とノイズを同時に低減する技術としてゲート波形を制御可能なデジタルゲートドライバ(DGD)が注目されている。そこで、本稿ではDGDの特徴を生かしたパワーデバイスの定常電流の均一化技術を提案する。
近年,生物の生態を明らかにするバイオロギングが注目されている.バイオロギングに利用されるデータロガーは小型であるため使用できる電池も小型である必要がある.しかし,小型のボタン電池1個では不揮発性メモリにデータを書き込む電圧が不足する.コイルを用いた昇圧回路では集積化が難しいため,集積化が可能なチャージポンプ型構成を採用し,設計した.設計した回路は必要な時のみ昇圧動作を行うように制御し,低消費電力化を図った.
環境エネルギーを電力に変換する発電素子に熱電発電素子(TEG)がある。温度差を電力に変換する。環境温度が変動すると開放電圧VOCが変動し発生電力が変動する。本発表では、TEG発電量の変動に応じて、TEGと昇圧回路であるチャージポンプ(CP)からなる電源回路の出力電力を最大とするCPの回路構成を提案する。CPの出力電圧VPPは他のIoTセンサ回路に供給されるため一定値に制御される。TEG出力抵抗600Ω、VOC=0.5V~2.0V、VPP=3.0Vの条件で出力電流IPPを最大とする段数Nと容量Cを計算式より求めた。NC積一定のままNとCをVOCに連動して切り替えることによって、VOC=0.5Vで最適設計したNとCに固定した場合に比べVOC=2.0VでのIPPを三倍に増加することができることが分かった。
スイッチトキャパシタDC-DCコンバータは、エネルギ蓄積素子にキャパシタを使用するので集積化に適している。しかし、インダクタタイプに比べ電力密度が低い。キャパシタにディープトレンチのような特別な素子を使えば高電力密度化が可能だが、通常のバルクCMOSプロセスでは使用できない。そこで、Siliconチップ上にMLCCを直付けして電力密度を上げる手法を取り組んできた[1]。本稿では65nmで試作したチップの実測結果を示し提案手法の有効性と設計上考慮すべき点を述べる。
休 憩(10:30 再開)座長 三輪 達(サンディスク)
C-12-29 |
FPGAにおけるIP開発向けフロアプラン手法検討
◎鈴木弘成・船附誠弘・平野 進・小川吉大(三菱電機) |
C-12-30 |
不良出現を加速させたモンテカルロシミュレーションによるSRAMの動作限界推定
○鶴薗陸人・居石壮平・牧野博之(阪工大) |
C-12-31 |
A Design Guideline of Scalable Capacitors in 3D Cross-Point Memory
◎Yuya Tone・Toru Tanzawa(Shizuoka Univ.) |
C-12-32 |
A Study of Sensing Schemes for NAND Flash: Shielded Bit-Line vs. All Bit-Line
◎Hikaru Makino・Toru Tanzawa(Shizuoka Univ.) |
FPGA開発において、シリーズ開発や機能アップデートを前提とした開発では、変更されないモジュールをIPとして開発を行い、流用することで開発効率化につながる。
RTLによるIPは周辺回路変更の際にIPの配置配線次第でIP回路のタイミング収束に時間がかかる恐れがある。そのため、RTLによるIPではレイアウトまで指定することが望ましい。レイアウトの指定は配置制約により可能であるが、配置制約の作成はユーザの裁量によるところが大きく、経験、知識によって完成度や作業時間が大きく左右される。本稿では、周辺回路変更による、再合成、配置配線時の性能ばらつき抑制を目的としたIP開発向けフロアプランの検討を行った。
MOSトランジスタの微細化に伴い,閾値電圧のランダムなばらつきが増加し,SRAMの安定動作が困難となっている.ばらつきに対する動作限界の見極めにはモンテカルロシミュレーション(MCS)が有効であるが,メガビット以上のSRAMに対してはシミュレーション回数が膨大になるという問題がある.本研究では,閾値電圧のランダムなばらつきを仮想的に大きくして不良の出現を加速することでMCSの回数を削減する手法を用いて,SRAMの書き込み,データ保持および読み出しの各動作に対して動作可否を調べることにより,広い閾値の仕上がり範囲に対して動作限界を明らかにした.本手法により,多ビットSRAMの動作限界の見極めを容易に行うことができる.
高性能不揮発性メモリである3Dクロスポイントメモリは3次元でセルを配列するため、積層数が増えるとそれに応じてワード線駆動用電源回路のキャパシタを増やす必要がある。このキャパシタとしてワード線やビット線間の配線容量を利用するスケーラブルキャパシタ構造が提案されている。本研究では配線層数が5層の場合に考えうる配線のキャパシタ構造ごとに容量密度CWのデザインルールS(配線幅、配線間隔、配線膜厚)と層間膜厚Hの依存性を調べた。その結果SH平面上で最大CWを与える構造は、同層間をショートした層間容量の構造と各層で交互配線間容量を持つ構造の二つに分類され、その境界線がH=0.36S+0.17 (単位はnm) で与えられることがわかった。
NANDフラッシュでは、セルデータを読出すセンス方式として主にShielded Bit Line (SBL)方式 とAll Bit Line (ABL)方式 が用いられてきた。発表者の知る限りビット線遅延Tblと1ビットを読み出すために必要なエネルギーEblの定量的な比較はされていない。センス回路モデルを1πモデルとし、遠端のセルを選択したときのワーストケースでSBL, ABLそれぞれのTblの解析式を導出した。SBLの充電時と放電時の電位差dVbl、ABLの1/0のデータ間電流差比%IsをパラメータとしてTblとEblを比較した。ビット線抵抗などのプロセスパラメータとBL電圧などのデバイス動作条件を仮定したところ、ABLで%Is=80%のセンスマージンと同等なTbl, Eblを持つようなSBLのセンスマージンはdBl=50mVが必要になることがわかった。
C-13. 有機エレクトロニクス
3月12日 9:30〜11:30 Meeting 8座長 田口 大(東工大)
C-13-1 |
Poly(vinylidene fluoride-trifluoro ethylene)の自発分極による摩擦発電
○田口 大・間中孝彰・岩本光正(東工大) |
C-13-2 |
炭素配線シートを使った長寿命電源システムの間欠動作における電源電圧特性
○野村昌弘・森 時彦(東大)・田中稔彦・桑原章史(東洋インキ)・瀬下雄一(東電設計)・関谷 毅(阪大)・桜井貴康(東大) |
C-13-3 |
Near-Infrared Light Detection with Organic Photodetectors Based on Phthalocyanine Derivatives
○Shahriar Kabir・Yukiko Takayashiki・Ming-Cong Yang・Jun-ichi Hanna・Hiroaki Iino(Tokyo Tech) |
摩擦発電は、ものとものを擦り合わせて電力を作り出すことができる。古くから静電気現象としての摩擦帯電現象が見いだされ、材料による帯電のしやすさは摩擦帯電列として広く知られている。摩擦電気発生のミクロな起源を考えると、摩擦帯電では正負電荷の分離が利用されているのに対して、摩擦発電では電流の起源が導電電流と変位電流の独立の2つの原因があることからも明確であるように、正負の電荷変位と双極子回転の2つのミクロ起源があることがわかる。今回の発表では、双極子配向による摩擦発電量の変化があることを確認するために、強誘電体ポリマーの自発分極方向による摩擦発電量の変化を、短絡電流の測定により確認したので報告する。
次世代構造物ヘルスケアを目的として、長期信頼性と安定性を兼ね備えた炭素配線シートを使った長寿命電源システムを開発している。炭素配線シートは銅配線に比べて約千倍の抵抗を持つため、エッジノードでの処理に備えて、間欠動作による蓄電により、短期間の処理電力を確保する。本論文では、間欠動作における電源電圧特性の解析手法がパラメータ選定の目安となること、構造物ヘルスケアのエッジノードで十分と考えられる電力消費量33mA@3.3V, 10s動作(1h周期)を仮定した配電に対して、倍の20sの場合も必要な電圧マージンを確保可能であることを確認した。
Organic semiconductor materials, specially phthalocyanine derivatives, are particularly suitable for the fabrication of near-infrared (NIR) photodetectors because of their high absorption coefficient and their spectral tunability in this spectral window. In this study, we demonstrate the fabrication and characterization of two solution-processed organic photodetectors (OPDs) based on octa-alkyl phthalocyanine (8H2Pc) and octa-alkoxy phthalocyanine (8OH2Pc) with peak absorption in the NIR window (760 nm and 850 nm, respectively). Between the two devices, the 8H2Pc-based OPDs showed low hysteresis and much better photoresponse indicating very few trap states in the active layer of these devices.
休 憩(10:30 再開)
C-13-4 |
狭帯域検出に向けたバルクヘテロ接合型高分子受光素子におけるドナー性とアクセプタ性材料の混合比の特性への影響
○梶井博武・近藤正彦(阪大) |
C-13-5 |
非線形光学ポリマーのシュタルク効果を用いた超高周波電界検出と応用
○山田俊樹・梶 貴博・山田千由美(NICT)・有川安信・中嶋 誠(阪大)・大友 明(NICT) |
C-13-6 |
液晶性n型半導体を用いた光電池の加工性向上
○望月博孝・近松真之・吉田郵司(産総研) |
C-13-7 |
有機ペロブスカイト太陽電池のPbI2前駆体形成と評価
○森 竜雄・大川大貴・清家善之(愛知工業大) |
近年,多波長検出することが注目されており,マルチスペクトル化することで人間の目では分からない物体の性質を知ることができ,医療分野や食品,農業,マシーンビジョンなどの様々な分野での応用が期待されている.マルチスペクトルを検出するためには受光素子を狭帯域検出することが必要である.ここでは,特に,ドナー性とアクセプタ性材料の混合比が受光素子の狭帯域化に与える影響に着目して,素子構造の検討結果について述べる.
本研究では非線形光学ポリマーのシュタルク効果を利用したテラヘルツ波検出方法について報告する。この検出方法は電界による吸光係数の変化を利用した検出方法である。従来のZnTe結晶を用いたEOサンプリング法との比較を行い、検出のための光学系の違い、テラヘルツ電場波形の精密計測、検出のバンド幅の観点から、シュタルク効果を利用したテラヘルツ波検出方法の優位性について言及する。また、シュタルク効果を利用した高周波電界検出の新規応用として、レーザー核融合燃焼の際に出る電子線や中性子線等の検出を試みた。
新しい有機n型半導体を開発した。この材料は液晶性を示し、液晶性を示すことによって、調整溶媒に室温で可溶になり、著しく作業性が向上した。p型半導体であるP3HTとの相溶性も向上した。P3HTとのバルクヘテロジャンクション型光電池の特性は当日発表予定である。
2ステップ法で作製されたPbI2の溶媒と膜質との関係を明らかにして、その太陽電池特性と比較した。DMSOの添加によりPbI2の結晶性が低下し良質なペロブスカイト膜が実現するが、PbI2成膜後に2-プロパノール浸漬処理を行うと、膜中のDMSO分子が抽出されてしまうことをIRスペクトルにて明らかにした。既報告と異なり、DMSO添加による顕著な膜質改善は見られなかったが、膜質が悪いPbI2を利用するとペロブスカイト膜の結晶性が高くなりセル特性が向上することは一致した。
C-14. マイクロ波・ミリ波フォトニクス
3月9日 9:00〜12:00 Meeting 8座長 飴谷充隆(産総研)
C-14-1 |
THz-TDSを用いた200-500GHzにおける建材の複素誘電率の特性評価
○△浦橋正朗・枚田明彦・水津光司(千葉工大) |
C-14-2 |
8アレーUTC-PDを用いた300GHzテラヘルツ波の強度増大
◎近藤和哉・松尾祐輝・加藤和利(九大) |
C-14-3 |
分散マネージメントファイバによる光パルス圧縮を用いた300 GHzビート出力の増大―周波数帯域の拡大―
◎多田 航・久富浩平・片桐亮吾・鈴木将之・戸田裕之(同志社大) |
C-14-4 |
光ビート法による300 GHz波発生における光パルス圧縮を用いた出力の増大 −実験検証−
久富浩平・片桐亮吾・鈴木将之・○戸田裕之(同志社大)・綾野史也・十市敬太・上村悠太・柴田紀彦・冨士田誠之・永妻忠夫(阪大) |
C-14-5 |
300GHz帯における光技術を用いた広帯域FMCWレーダ
◎要 遼平・易 利・永妻忠夫(阪大) |
C-14-6 |
600GHz帯Si誘電体回路実装モジュールの設計と評価
◎柴田紀彦・上村悠太・川本勇真・易 利・冨士田誠之・永妻忠夫(阪大) |
通信量の急激な増加に対応するため,次世代移動通信規格である6Gの研究開発が始まっている.6Gでは超高速通信に対応するため300GHz帯のテラヘルツ波の利用が検討されており,300GHz 帯無線リンクの実用化には,これらの帯域での伝搬モデルの構築が必要である.しかし,300GHz 帯での電波伝搬に関する実験例は少なく,特に300GHz帯における建材の反射率に関するデータはほぼ存在しない.本論文では,建材の200〜500GHz帯における複素誘電率をテラヘルツ時間領域分光法(THz-TDS)で測定し,建材の複素誘電率を算出した.さらに,建材の複素誘電率の測定値を用いて屋内環境での300GHz帯の伝搬シミュレーションを行った.
周波数が0.1~10THzであるテラヘルツ波を搬送波として用いることで、従来よりも大容量の無線通信を実現できると期待されている。我々はこのテラヘルツ波を生成する方法として、差周波数がテラヘルツ帯である2光波を単一走行キャリアフォトダイオード(UTC-PD)で光電変換するフォトミキシング技術を用いている。この技術では周波数が高くなるほど生成されるテラヘルツ波の強度が減少することに加え、テラヘルツ波そのものも大気中での減衰が大きいことから、無線通信の搬送波として用いるには出力強度の増大が課題である。これを受けて今回、アンテナのアレー化とPDの並列接続により300GHzテラヘルツ波の強度増大を行ったので報告する。
近年我々は,光ビート法による高周波(RF)発生において,光2トーンなどの繰り返し光パルスを,正常分散ファイバと異常分散ファイバを平均分散が 0 となるように接続した分散マネージメント光ファイバ(DMF)に伝搬させてパルス圧縮を行い,RF出力の増大を図る手法について検討を行っている.今回,RF周波数を300 GHzとし,圧縮用光ファイバを2組の分散補償構成(4セクション)としたDMFと異常分散の単一ファイバとした場合の,RF周波数の帯域について比較したので報告する.
光ビート法による高周波(RF)発生において,光検出器への平均光パワーが等しい条件で光パルス幅が狭くなると,RF出力が最大6 dB増大する.今回,RF周波数300 GHzにおいて,高非線形ファイバを用いて光パルス圧縮を行った時の出力の増大について実験的に検証し,光パルス圧縮を行うことで出力が増大することを初めて観測した.
テラヘルツ波を用いたイメージング技術は,特定の物質に対する高い透過性と,サブミリメートルの高分解能性を併せ持つことから,物質内部の非接触検査やセキュリティなどへの展開が期待されている.今回,高速な周波数掃引速度,広帯域による高い奥行分解能の観点から,テラヘルツ波の発生方法として,光をベースとした技術を採用し,離れた距離でも高速な検査が可能なFMCW (Frequency Modulated Continuous Waves)方式を導入した.そこで我々は光技術を用いた300 GHz帯の広帯域FMCWシステムを構築し,半値幅1.3 mmで奥行情報を取得することができた.また,波長掃引における非線形性を校正することによって,半値幅を小さくできることが実証された.
テラヘルツ波を用いた無線通信やセンシング技術の実用化の要は,システムの集積化により小型化と低コスト化を図ることである.これまでは金属導波管をプラットフォームとしたシステムが主流であったが,高周波化とともに限界を迎えつつある.例えば,600 GHz帯の導波管の伝送損失は数dB/cmに及ぶ.我々は,この課題に対処するために,Si基板に形成した誘電体回路を極低損失なプラットフォームとして用いることを提案している.今回,Si誘電体回路を既存の導波管ベースのシステムと共用できるようにするため,標準の600GHz帯導波管インターフェースを有するモジュールの設計と評価を行ったので報告する.
休 憩(10:45 再開)座長 堤 卓也(NTT)
C-14-7 |
格子パタンとの接触による透過性制御が可能な120GHz帯SRRフィルタの通過帯域広帯域化の検討
○枚田明彦・板倉弘一郎(千葉工大)・上村悠太・永妻忠夫(阪大)・渡邊一世・関根徳彦・笠松章史(NICT) |
C-14-8 |
光ヘテロダインを用いたミリ波無線信号の量子雑音マスキングによる秘匿化の提案・実証
○谷澤 健・二見史生(玉川大) |
C-14-9 |
ドローン搭載用ミリ波レーダの高速周波数掃引の検討
◎△徳永 遥・為則勇志・易 利・永妻忠夫(阪大) |
C-14-10 |
光フェーズドアレー高精度ビーム制御に関する検討
◎竹村勇人(早大)・梅沢俊匡・山本直克・山口裕也(NICT)・川西哲也(早大) |
C-14-11 |
誘電体線路を媒体とする120GHz帯RF信号伝送の研究
◎△牛尾政貴・枚田明彦(千葉工大)・上村悠太・永妻忠夫(阪大)・渡邊一世・関根徳彦・笠松章史(NICT) |
近年,情報をパーソナルデバイス同士で手軽に通信する手法の1つとして近接無線通信の需要が増加している.テラヘルツ無線では一つのシステムが広い帯域を使用するため,システム間の干渉を抑制するためには,不要電波の放射を抑制する必要がある.我々は,分割リング共振器 (SRR: split-ring resonator) バンドストップフィルタと格子パタンを利用することで,アンテナ単体時はSRR フィルタが不要電波の放射を抑制し,送受信のアンテナ同士を接触させた場合は,接触した部分だけは電波が透過可能となることを実証した.本稿では,格子パタンの形状の最適化により,SRR フィルタ―格子パタン近接時の透過帯域を広帯域化したので,報告する.
近年,通信の盗聴対策として信号が正しく受信されること自体を防ぐ,物理レイヤ暗号化が注目されている.我々は,あらかじめ共有した短い秘密鍵を使ってデータを光多値変調することで,シンボル毎に直接暗号化するY-00光通信量子暗号の研究に取り組んでいる.信号多値数を大きくし隣接シンボル間距離を短くすることで,原理的に取り除けないショット雑音により隣接シンボルが覆われる状況を作り出す.秘密鍵を持たない盗聴者の受信に不変な不確定性が課され,誤りのない受信が困難になる.ショット雑音量は信号周波数に比例するため,無線通信で用いられる電波帯で同様の多値変調を行っても,秘匿に十分なマスキングの効果を得ることができない.本稿では,光ヘテロダインを用いて電波帯で信号秘匿に十分なショット雑音によるマスキングを実現する手法の提案とこれを用いたミリ波帯(30GHz)の秘匿通信実験を報告する.
ドローンによるインフラ構造物の非破壊内部検査の需要が高まっている.ドローン等の飛行体にセンシングシステムを搭載し, 対象物の2次元・3次元情報を迅速に得るには, 測定時間の大幅な短縮化が必要である。我々は, ドローン搭載のための広帯域ミリ波レーダシステムを構築してきた. そこでは市販の広帯域信号発生器を用いており, 周波数掃引に4720 msを要していた. 計測系のSNRではなく, この周波数掃引時間が測定時間を決めていた.今回, 任意波形発生器を用いて所望の帯域の高速チャープ信号を生成し, 現在開発中のミリ波レーダシステムに導入した.周波数掃引時間として, 従来のシンセサイザに比べて約150分の1の短縮化が可能となった.
室内ワイヤレス通信として、現在WiFiが主に活用されているが、それに代わる高速大容量通信として空間光通信(FSO)がある。FSO通信の利点は、光ファイバー通信と同等の高速通信が可能であるが、欠点として送受信間におけるビーム制御性や光アライメントの問題がある。解決策としてこれまでに我々は受信側ではフォトディテクタアレー素子を中心とした大口径フォトディタクーの開発を行い、光アライメント緩和に関する検討を行ってきた。本発表では送信側の検討として、空間光通信のための高精度ビーム制御について基礎検討を行ったので報告を行う。検討内容はLN変調器技術をベースにした8素子光フェーズドアレーデバイスを試作し、ビーム制御に関する実験的考察を行った。
無線信号を誘電体シート内に封じ込めて伝送することにより,シート上に置いた端末のみが通信を行うことが可能となるLAN方式が検討されている .我々は,10 Gbps 級の LAN接続を可能にする誘電体シートを用いた120 GHz帯LANの研究の研究を行っている.本稿では,シート状LAN の実現に向けて、誘電体伝送線および誘電体伝送線上に形成した coupled lineを媒体とした 120 GHz 帯RF信号でのデータ通信が可能か検討を実施した.
3月10日 9:00〜11:45 Meeting 8座長 村田博司(三重大)
C-14-12 |
LiNbO3導波路によるMMI光結合器の作製と分配特性の電圧制御
◎平井杏奈・松本祐一(兵庫県立大)・佐藤孝憲(北大)・河合 正・榎原 晃(兵庫県立大)・中島慎也・山本直克(NICT) |
C-14-13 |
単一のRTD送受信器を用いた2次元イメージングシステム
◎水野遼子・易 利・要 遼平・大城敦司・岩松秀弥(阪大)・西田陽亮(ローム)・冨士田誠之・永妻忠夫(阪大) |
C-14-14 |
電気光学ポリマー導波路とパッチアンテナアレイを用いたWバンド帯光変調器の試作と評価
○梶 貴博・諸橋 功・富成征弘・小川 洋・関根徳彦・山田俊樹・大友 明(NICT) |
C-14-15 |
量子マイクロ波フォトニクスに向けた薄膜LNデバイス
◎山口祐也・菅野敦史・山本直克(NICT)・山崎歴舟(ICU)・加藤真也・青木隆朗(早大)・野口篤史・宇都隆宏・加納正太郎(東大)・佐々木 遼(理研)・不破麻里亜・宇佐見康二・中村泰信(東大) |
C-14-16 |
UTC-PDメサ面積縮小によるUTC-PD集積HEMTの光-ミリ波キャリア周波数下方変換利得向上
◎西村和樹・大森雄也・細谷友崇・岩月勝美・末光哲也・尾辻泰一・佐藤 昭(東北大) |
多モード干渉(Multimode interference: MMI)構造を利用すれば複数ポートの光結合器等が実現でき,光学素子への応用が期待されている.従来,MMI素子は主にSi等の半導体系導波路で実現されてきた。我々は,高速光変調素子との一体化や分配特性の電気制御などを目指して,電気光学材料であるTi拡散LiNbO3によるMMI光結合器を検討している.本研究では,90°光ハイブリッドカップラとして動作する対称4ポートの光結合器を実際に作製して特性を評価し,さらに、制御用電極を形成したMMI光結合器を作製して分配特性の電気制御について検討したので報告する.
テラヘルツ波はサブミリメートルの空間分解能を有し,紙などを透過する性質をあわせもつ.これを活用したイメージング技術は非破壊検査など様々な分野への展開が期待されている.
我々は最近,テラヘルツ動作可能な共鳴トンネルダイオード (RTD) に着目し,単一の送受信デバイスによるイメージング応用の可能性を報告した.今回は,単一のRTD送受信デバイスを用いたシステムのイメージング結果を報告する.
RTDから送信されたテラヘルツ波をサンプルに照射し,反射したテラヘルツ波を同一のRTDにて受信器することで単一のデバイスでアクティブイメージングが実現できることを示した.本研究は,テラヘルツイメージングシステムの小型化や低コスト化につながる成果であるといえる.
Beyond 5 Gにおける超高速・超大容量無線通信の実現に向けて、テラヘルツ波(0.1-10 THz)の信号波形を、光ファイバーを用いて伝送するテラヘルツ光ファイバー無線(THz-over-Fiber)の技術が重要になると予想される。本研究では、W バンド帯(75-110 GHz)電磁波の照射により直接光変調を行う光変調器の実現を目指し、電気光学ポリマー光導波路とパッチアンテナアレイを用いた新規デバイスを試作するとともにデバイス特性の評価を行った。
従来の光ファイバ通信と異なる機能を有するネットワークとして量子インターネットが提案され,研究が進められている.図1に示すように,量子インターネットは量子コンピュータや量子センサ等の量子デバイスによって構成されるネットワークであり、量子計算や量子計測、量子暗号等の応用が見据えられている。
量子状態を制御可能とするデバイスは用いる物理系を含めて多様な形態が提案されているが,本研究では超伝導量子ビットを使用することを想定する.超伝導量子ビットは制御性の観点で優れており,多ビット量子コンピュータの研究開発が進められている.離れて配置された各量子デバイス間を繋ぐ光ファイバ中では伝搬損失の観点から通信波長帯の光子の使用が想定されるため、超伝導量子ビット間を光ファイバで接続するためには量子トランスデューサが必要となる. 本発表では,高効率な量子トランスデューサの実現を目指して取り組んでいる薄膜LNデバイスについて報告する.
超広帯域かつ高レジリエントな次世代ネットワークシステムとして,光通信と無線通信をシームレスに接続したフルコヒーレントネットワークが提案されている.その実現には,光-無線間でシームレスにキャリア周波数を変換するキャリアコンバータが必要である.我々は,トランジスタを用いて光信号からミリ波帯へのキャリア周波数下方変換を行う光ダブルミキシングの研究を行っている.本稿では,我々が開発した光ダブルミキサであるUTC-PD集積HEMTのUTC-PDメサ面積を縮小すると同時に,入力光の集光スポット径をメサ面積よりも小さくすることで,光ダブルミキシング変換利得が格段に向上することを実験的に示した.
休 憩(10:30 再開)座長 本良瑞樹(東北大)
C-14-17 |
マルチモード光ファイバ伝送特性の時間変動性測定及び伝送容量拡大可能性の基礎検討
◎小山拓也・翁 祖楷(早大)・稲垣恵三(NICT)・川西哲也(早大) |
C-14-18 |
ミリ波W帯アンテナ電極電気光学変調器
◎児玉将太郎・横橋裕斗・森 拓人・村田博司(三重大) |
C-14-19 |
デジタル光トランシーバの送受信部を適用したRF信号の高位相安定伝送
○藤江彰裕・秋山智浩・原口英介・安藤俊行(三菱電機) |
C-14-20 |
PVC管壁に沿って伝搬するマイクロ波導波モードの通信応用への基礎検討
◎野間太桜・吉田光佑・村田博司(三重大)・枚田明彦(千葉工大)・水上雅人(室工大) |
C-14-21 |
マイクロ波中空円筒誘電体導波路におけるタルボット効果を利用したFRPMパイプラインの非破壊診断法
○松川沙弥果(産総研)・吉田光佑(三重大)・奥田忠弘・硲 昌也(クリモト)・黒川 悟(産総研)・村田博司(三重大) |
SMF一本あたりの伝送容量が理論限界に近づき、近年はFMFやMCFといったSDM技術による伝送容量の拡大に注目が集まっている。また、光ファイバはコア径が大きいほど接続が容易になるため、車載ネットワークの光化などでは、コストの面からMMFの利用が望ましい。MMFでは低コスト化を目指して、VCSELなどの線幅の大きい光源と組み合わせたシステムが主に検討されてきた。MMFによるファイバ無線などでは送信側、ファイバ、受信側の各部での伝送特性を切り分けて評価することが重要となると考えられる。本稿ではMMF伝送特性の時間変動を測定し、伝送帯域を従来よりも拡大出来る可能性について検討した。
近年,各国でミリ波を用いた第5世代(5G)無線通信システムのサービスが開始されている.また,ミリ波を用いたイメージング技術も注目を集めており,ミリ波応用技術の研究開発が進んでいる.一方,ミリ波は自由空間やケーブルにおける伝搬損失が大きいために,ミリ波無線信号を光信号に変換して伝搬するRadio over Fiber (RoF)技術が有用である.これまでに,本研究室では,無線信号を無給電で直接光信号に変換することができるパッシブなアンテナ電極電気光学変調器の研究を進めてきた[1, 2].特に,この光変調器は低攪乱な光電界センサとしてレーダーやアンテナから放射されるミリ波信号分布の評価も可能である.
今回は78 GHz帯で動作するアンテナ電極電気光学変調器の評価と,IF帯への信号変換を行ったので報告する.
電子線加速器などの分野では,マイクロ波信号を高い位相安定度で長距離伝送する事が望まれている.光ファイバ伝送を用いたアナログRoF (Radio-on-Fiber)技術が有効であるが,アナログ伝送向け部品の入手性や光路である光ファイバに温度変動,振動等の外乱が重畳されると伝搬位相が変動する課題がある.この課題に対して我々は,デジタル通信向け光トランシーバSFP+ (Small-Form-Factor-Pluggable-Plus)に対して入力信号とは異なる周波数,レベルの高いダミー信号を同時入力するアナログRoF伝送系を提案しており,これまで, SFP+のE/O変換部(以後、送信部)のみを利用した、高位相安定伝送実証を行ってきた[1].本報告では,伝送系の更なる簡素化を目指し,SFP+のO/E変換部(以後、受信部)も活用した高位相安定伝送の原理検証をしたので,結果を報告する.
我々は,これまでにFRPM管に沿って伝搬するマイクロ波導波モードを用いた計測・通信技術の開発を進めてきた.FRPMは,マイクロ波に対する誘電率(εr ~ 10)が空気や通常の土砂よりも高く,誘電損失も小さい(tanθ ~ 0.01).それゆえ,埋設FRPMパイプラインはマイクロ波に対して管壁部をコアとする円筒形導波路となる.この導波路の TE0nモードは,ダイポールアンテナ等を用いて高い結合効率で励振することが容易であり,簡単なシステム構成で地中埋設管路の非破壊診断やパイプラインを利用したデータ伝送が可能であることを実証している.
今回,この技術をPVC管パイプラインに適用して,配管検査用自走ロボットとの通信のための伝送線路に応用することを検討したので報告する.
本稿では,マイクロ波伝送路としての誘電体パイプの特性に着目して,円周方向への周期性を保ちながら管壁と近傍に閉じ込められて伝搬する導波モードの特性を活用した新しい診断法を提案する.円周方向における周期性を利用してマイクロ波の空間分布を制御することで,配管の管壁中で,タルボット効果のような周期的なパターンが観測された.さらに,各アンテナの励振位相を調整すると,周期的なパターンを維持したまま,マイクロ波の伝搬方向を管壁内で制御できることが分かった.これらの手法を用いることで,管壁全面にマイクロ波を伝搬させて検査することができ,2.4 GHz帯の狭帯域マイクロ波信号のみを利用したパイプライン診断が可能である.
C-15. エレクトロニクスシミュレーション
3月12日 9:00〜12:00 Meeting 26座長 石橋秀則(三菱電機)
C-15-1 |
1/4波長共振器を用いたチップレスRFIDタグの素子間干渉低減に関する検討
◎横田恵一・須賀良介・橋本 修(青学大) |
C-15-2 |
電子レンジにおける選択加熱に向けたパッチ共振器の配置位置に関する検討
○倉崎寛生・須賀良介・橋本 修(青学大) |
C-15-3 |
庫内を分割して使用する電子レンジに関する研究~入力インピーダンスに着目した高効率解析に関する基礎検討~
◎宮﨑龍一・倉崎寛生・須賀良介・橋本 修(青学大) |
C-15-4 |
レドームに用いるバンドパス性能を有する薄型FSSに関する検討
○坂上敦史・須賀良介(青学大)・荒木純道(東工大)・橋本 修(青学大) |
C-15-5 |
導体上に配置したノーマルモードヘリカルアンテナの基礎検討
大島一斗・◎中野聡太・須賀良介・上野伴希・橋本 修(青学大) |
近年の工場の自動化やIoT(Internet of Things)化の推進には,より多くの物にタグを設置する要求があり,そのために小型かつ高bitの安価なチップレスRFID(Radio Frequency Identifier)タグが必要とされている.
しかし,小型化によるRCS(Radar Cross Section)の低下や,素子の高密度配置により素子間干渉によるRCSのピーク周波数シフトやレベル変動が懸念されている.
そこで本研究では上記の問題を解決するために,パッシブRFIDタグとして1/4波長共振器を用いて素子間干渉の少ない素子の配置方法について検討した.
近年電子レンジに求められる付加価値の1つとして,目標とする被加熱物のみを集中的に加熱する選択加熱が挙げられる.この選択加熱性を向上させるためには,定在波分布の制御が必要と考えられる.これまでに,配列した3つのパッチ共振器を用いることによる庫内の電界の局所低減効果が報告されているが,任意の位置の電界の変化を可能とするものではない.そこで本研究では,電界を局所的に低減可能なパッチの配置位置について検討する.
最近の電子レンジには,マイクロ波加熱を併用したグリルやオーブン機能を有するものもあり,金属製の皿で庫内を上下に分割して利用されている.分割された庫内のうち波源の反対側にある被加熱物をマイクロ波により加熱するためには,金属皿の一部に孔を設ける必要があるが,効率的な加熱に必要な孔の大きさや配置位置の決定方法について議論されている例は少ない.そこで本研究では,給電導波管又は孔から見た各キャビティの入力インピーダンスに着目し,電子レンジ庫内の解析領域を分離して各キャビティの入力インピーダンス
を効率良く解析する手法の妥当性について検討した.
レドームにバンドパス性能を有するFSS(Frequency selective surface) への応用が検討されており,その性能を得るためにレドームの限られた面積に多数配列できる寸法の小さい金属素子が必要である .さらに,これまでに波長に対して十分に小さな素子により構成したインダクタとキャパシタを用いた多層FSSが報告されている.しかし,多層化による薄型化は困難となるため,そこで本研究ではバンドパス性能を有する薄型FSSを提案してその有効性を電磁界解析により確認した.結果として,矩形のソレノイドコイルの中心に金属板を挿入したFSSでもLC並列共振器になることが分かり,バンドパス性能を有する厚さ0.1mmの薄型FSSの実現の可能性を示した.
近年,腕部や衣服に取り付けることを想定したウェアラブルデバイス用アンテナとしてアンテナの需要が高まっている.
これらのアンテナには人体によりその特性が変化しないことが要求される.
本研究では人体からの影響を抑制するため,金属板を設けたノーマルモードヘリカルアンテナ(NMHA)について検討した.
休 憩(10:30 再開)座長 鈴木敬久(東京都立大)
C-15-6 |
リードフィールド行列を用いた心電波源推定における拍動の影響
◎中野裕貴・平田晃正(名工大) |
C-15-7 |
中間周波電磁界ばく露による末梢神経閾値の方向依存性
◎鈴木洋亮・ゴメスタメス ホセ・平田晃正(名工大) |
C-15-8 |
ラット尾部における温熱調整機能のモデル化
◎三浦郁亮・小寺紗千子・平田晃正(名工大) |
C-15-9 |
下肢を標的としたTMSのコイル配向に関する電磁ドシメトリ
◎林 和弥・ゴメスタメス ホセ・平田晃正(名工大) |
C-15-10 |
下肢機能マップを用いたtDCS電極条件の評価
◎濱島弘紀・ゴメスタメス ホセ(名工大)・上原信太郎・大高洋平(藤田医大)・田中悟志(浜松医大)・平田晃正(名工大) |
C-15-11 |
複数周波数局所ばく露に対するSAR及び吸収電力密度評価
◎三浦乃里佳・小寺紗千子・平田晃正(名工大)・東山潤司・鈴木恭宜(NTTドコモ) |
標準12誘導心電図は,心疾患の早期発見の役割を果たす重要なツールとして利用されている.一方,標準12誘導心電図を用いた心電波源推定は,観測情報が電極数の9と限られているため不良設定問題として知られている.また,心臓組織は正確な向きや大きさを定義することが困難な移動物体であるため,心電波源推定の高精度化にはこのような空間的アーチファクトの考慮が必要となる.そこで本稿では,詳細人体モデルに対して,心臓組織を回転及びスケーリングさせることで心臓の拍動を簡易的に模擬する.そして,リードフィールド行列を用いた心電波源推定を行い,拍動による推定精度の変動性を検討する.
近年,電磁界の生体影響に関心が寄せられている.ICNIRPおよび IEEEは,電磁界の生体影響を防護するための国際ガイドライン・規格を策定している.これらのガイドライン・規格では,10MHz以下の周波数における電磁界ばく露に対して,中枢神経系および末梢神経系の刺激効果,特に痛みからの防護を目的としている.しかし,人を対象とした刺激実験は,磁気共鳴システム,接触電流による感覚閾値の測定など限られている.つまり,本来防護すべき電波ばく露における痛覚の閾値に関しては,十分評価できているとは言い難い.そこで本研究では,電磁界解析と神経モデルを融合させた計算により,刺激閾値に対する外部磁界強度を推定する. さらに,得られた結果と国際規格の比較,検討を行うことによりその有効性を検討する.
電波の人体に与える影響は,周波数100kHz以下では刺激作用,100kHz以上では熱作用が支配的となる.ICNIRP,IEEEなどの国際ガイドラインで定められている基準値は,動物実験などから得られた知見を人体へ外挿することで定められている.これは,高出力電波を用いた人体実験は,倫理的な側面から実施が難しいことに起因する. 実験動物として多く用いられるラットは,尾を放熱器官として作用させており,暑熱環境では尾部血管を拡張し,寒冷環境では収縮させることで体温維持を行う.一方で,その詳細は明らかになっていない.本稿では,実験値に基づきラット尾部における温熱調整機能のモデル化を行い,その有効性について検討する.
近年,脳を電気的に非侵襲的な刺激をすることに関心が高まっている.その方法の一つとしてTMS(経頭蓋磁気刺激法)が挙げられる.TMSとは,頭部近傍にコイルを配置し,コイルに中間周波帯のパルス電流を流した際に発生する磁界の変化により脳内に電流を誘導し,大脳を刺激する手法である.この方法は,脳機能の診断や脳障害のリハビリテーション方策などでの有効性が示されている.計算ドシメトリの発展により,TMSの誘導電場は定量化が可能となり,神経細胞を活性化させる主な物理的要因として知られている.しかし、脳の深部に位置する下肢を標的としたTMSの先行研究において,運動誘発と誘導電場の関係については十分な議論がなされていない.
本研究では,まず,TMSコイルの角度を変更した際の下肢運動閾値を測定する.さらに,測定実験と同条件での電磁界シミュレーションにより脳内誘導電界を算出し,運動閾値との関係について評価を行う.
近年,脳の組織を非侵襲的かつ局所的に刺激することに関心が高まっている.その方法の一つとして,tDCS(経頭蓋直流電気刺激)が挙げられる.tDCSとは頭部に貼付した電極間に微弱な電流を流すことにより,皮質興奮性を変化させる手法である.本刺激法は,脳卒中のリハビリテーションにおける補助療法として有効性が検討されている.脳卒中患者を対象とした歩行のリハビリテーションにおいて、異なる下肢機能の活性化を協調させることが重要となる。しかし,先行研究において,下肢の運動機能を細分化し,各部位を刺激対象としたtDCSの評価は十分に議論がなされていない.本研究では,18 体の人体頭部モデルを用いて,人体頭部内における電界を算出し,先行研究から得られた下肢機能のマップをもとに下肢の各部位への刺激に有効な電極貼付方法の評価を行った.
電波の人体に与える影響は,周波数100kHz以下では刺激作用,100kHz以上では熱作用が支配的となる.2019年,2020年に改訂されたIEEE規格,ICNIRPガイドラインでは熱作用に対する評価指標として,6 GHz以下では局所10g平均SAR(Specific Absorption Rate [W/kg])を,それ以上の周波数帯では,吸収電力密度(APD:Absorbed Power Density [W/m2])が用いられている.近年,注目されている第5世代移動通信システム(5G)では,28GHz帯が利用される.一方,従来の無線通信では6GHz以下の周波数帯が利用されており,今後実用化される通信端末においては,安全性評価指標の 異なる周波数帯のアンテナを用いることも想定される.本稿では, 複数周波数アンテナを持つ通信端末からの電波ばく露による人体の温度上昇について検討する.
3月12日 13:00〜17:00 Meeting 26座長 阪本卓也(京大)
C-15-12 |
数値逆ラプラス変換法による2次元音場の時間応答解析
岸本誠也・○石川直也・大貫進一郎(日大) |
C-15-13 |
半陰的FDTD法によるTM透過型THz導波路偏光子の解析
◎五味頌子・柴山 純・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-15-14 |
テラヘルツ帯における非対称スプリットリング共振器の透過特性
柴山 純・◎吉川 圭・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-15-15 |
FDTD法による生体内光パルス伝搬解析の基礎検討
岸本誠也・◎三枝美波・井上修一郎・大貫進一郎(日大) |
C-15-16 |
2D-FDTD法とRay-tracing法を併用した空港面電磁界解析手法の提案
橋本真輝・◎渡邊 恵・須賀良介(青学大)・毛塚 敦(電子航法研)・橋本 修(青学大) |
気体や固体中を伝播する音場や弾性波のシミュレーションは,ホール設計や弾性表面波デバイス設計等に有用である.しかし,時間応答解析手法としてFDTD (Finite-difference Time-domai)法を用いると,時間分解能が解析対象物中における波の伝搬速度と空間離散間隔の最小サイズにより制限され,計算回数が膨大となる場合がある.
本報告では,音場時間解析にて分解能の制限がない解析手法を提案する.音場の支配方程式を複素周波数領域に拡張し,数値逆ラプラス変換(FILT: fast inverse Laplace transform)法により音場の時間応答を得る.
半陰的FDTD 法を用いて,THz 帯でのTM 透過型導波路偏光子を解析し,算出した消光比の周波数特性を陽的FDTD法を用いた場合と比較する.最大のCFLN を選んでも,陽的FDTD 法と同様の周波数特性が得られることを明示する.
角型スプリットリング共振器の構造に非対称性を導入し,周期構造を扱うための3次元FDTD法を用いて解析する.非対称性の度合いがファノ共鳴におよぼす影響を調査し,ギャップの変位をd = 4 µm に選ぶことで鋭い共鳴が得られることを明示する.
光の干渉性を用いた光干渉断層撮影(OCT:Optical Coherence Tomography)は,生体内部からの反射光より表面から深さ数十mm程度の断層構造を5μm以上の分解能で撮影可能な技術である.しかし,反射光に基づく可視化の高分解能化には,目的とする層からの反射波信号に対するS/N比の改善が必要である.
本報告では,OCT等で取り扱う生体内による反射光シミュレーションの基礎検討を行う.細胞を模擬した楕円柱を複数配置し,FDTD(finite-difference time-domain)法により光パルスの伝搬解析を行う.
次世代着陸誘導システムであるGround based augmentation system (GBAS) が開発されている.GBAS による自動着陸のサポートには100MHz帯VHF data broadcast (VDB) アンテナを用いてGPS の補強情報を送信する必要があり,滑走路上3.6m~10.8mの高度におて-72dBm 以上の受信電力が要求される.この覆域を実現可能なVDB アンテナの設置位置の決定には電磁界解析が有効である.空港面の電磁界解析手法としてFull-wave 解析が知られているが,波長に対して空港面は広大であるため膨大な解析時間を要する.したがって空港面に対してFull-wave 解析を適用することは困難である.そこで本稿では空港面に適した電磁界解析手法として,2D-FDTD 法とRay-tracing 法のハイブリッド手法を提案する.
休 憩(14:30 再開)座長 岸本誠也(日大)
C-15-17 |
テラヘルツ帯における3次元SPR導波路型センサの固有モード解析
柴山 純・◎田中宏季・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-15-18 |
InSbコート誘電体球配列に対する傾斜入射特性
柴山 純・○黒田匠真・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-15-19 |
感度情報を活用した進化的手法による光デバイスのトポロジー最適設計の効率化に関する検討
◎奥谷怜平・井口亜希人・辻 寧英(室工大) |
C-15-20 |
ベイズ学習を用いたスタブ付きプラズモニック導波路の最適設計
◎丸山皓貴・井口亜希人・辻 寧英(室工大)・柏 達也(北見工大) |
C-15-21 |
関数展開法と随伴変数法によるNRD回路素子のトポロジー最適設計
◎稗田直哉・井口亜希人・辻 寧英(室工大)・柏 達也(北見工大) |
本稿では,Yee格子に基づく虚軸ビーム伝搬法により,3次元SPR導波路型センサの固有モードを解析する.固有モードの実効屈折率を評価し,センサに必要な試料の大きさを検討する.試料の高さを100μm,幅を200μm以上に選ぶ必要のあることを明らかにする.
InSbでコートされた誘電体球配列の傾斜入射時における透過特性及び界の振る舞いを評価する.ディップ周波数において,導波モード共鳴及び表面プラズモン共鳴が生じ,ディップ周波数によって,基板内の界の伝搬方向が異なることを示す.
高性能な光デバイスの開発を目指して計算機を用いた自動最適設計法の開発が盛んに行われている.自動最適設計においては,一般に,デバイス構造を有限個の設計変数で表現し,特性が改善するように設計変数の値を最適化する.最適化に勾配法を用いると効率的な解探索が可能である反面,多様な目的を取り入れるには工夫が必要で,また初期解依存性が強く局所解に陥りやすい.一方,進化的手法では多様な条件を設計に組み込みやすく,比較的大域的な解探索が可能である反面,収束解を得るために膨大な回数の特性評価が必要であり計算コストが高い.本研究では,これらの手法をハイブリッド化することで,より柔軟で効率的な最適設計を行うための検討を行なっている.
プラズモニックデバイスは回折限界を超えて光をナノ領域に閉じ込められることから,超小型光デバイスの実現に向けた研究が盛んになされている.筆者らはこれまで主に誘電体光デバイスの高性能化を目指して,随伴変数法による感度解析を用いたトポロジー最適設計法の検討を行なってきた.一方で,金属を含むプラズモニックデバイスの設計では感度解析を精度良く行えない場合があり,進化的手法を用いた最適設計に頼っていた.本研究では,感度解析を必要とせず比較的効率的な解探索が可能なベイズ最適化を用いた最適設計の検討を行なっている.
NRD(Non-Radiative Dielectric) ガイドは内部が空気である平行平板線路のカットオフ周波数において誘電体に沿って電磁波を非放射で伝送できることから,ミリ波帯における小型回路の構成のために重要である.本研究では,これまで光回路素子の設計のために開発してきた関数展開法に基づくトポロジー最適設計を, NRD ガイドの設計に応用するための検討を行なっている.
休 憩(16:00 再開)座長 岡部 寛(村田製作所)
C-15-22 |
高速逆ラプラス変換における並列計算コストの最適化
○呉 迪・岸本誠也・大貫進一郎(日大) |
C-15-23 |
データ同化による簡易体温推定手法のパーソナライゼーション
◎上松涼太・平田晃正(名工大) |
C-15-24 |
Neural Network Tensorflowを用いた位置推定システムの評価
◎鄭 博俊・増田健史・柴田随道(東京都市大) |
C-15-25 |
多群間比較に資する共起ネットワーク構築の基礎検討
○中村文紀・新里皇喜・岸本誠也・大貫進一郎(日大) |
本稿では,高速逆ラプラス変換(Fast Inverse Laplace Transform: FILT)の並列処理における最適な負荷分散法を検討する.また,提案法を複素周波数領域での有限差分 (Finite-Difference Complex-Frequency-Domain: FDCFD)に適用し,並列計算コストの最適化を検証する.
近年,気温上昇や高齢化を背景に熱中症による搬送人員数が増加し,大きな社会問題となっている.熱中症の発症リスクは,年齢や体格などの個人差や環境によって大きく異なるため,ウェアラブルデバイスによって取得したバイタルデータを利用した個々人ごとのリスク管理が検討されている.本研究グループでは,スマートフォンやPC に実装可能な,ウェアラブルデバイスを用いた簡易体温推定手法の開発を行ってきた.本稿では,提案推定手法を,運動量の入力方法の変更,測定体温によるデータ同化によって,詳細に個人差を考慮できる計算手法を提案する.また屋外での運動実験から提案手法の有効性を確認する
高齢者などの見守りシステムとして,今後のセンサネットワークの普及に伴い,多様な環境情報と人や物の位置情報を同時に取得するシステムが期待できる.施設や住居内に複数のゲートウェイ装置を配置し,携帯するセンサ端末(ビーコン)からの受信信号強度と機械学習技術を用いて位置を推定することができる.本研究では,受信信号強度の教師データの分類にTensorflowによるニューラルネットワークの機械学習を用い,その結果を先行研究のサポートベクターマシンによる推定結果と比較する.
共起ネットワークは,記述回答の分析結果を可視化できることから,高等教育機関においても教学IR等で広く利活用されている。しかし,特に大規模な大学では,回答者総体の分析だけでは顕在化しない特性もあり,学部・学科や入試区分等の属性をふまえたデータがより有用であろう。そこで,筆者らは,属性による多群間比較が可能な共起ネットワークを構築し,群間の差異から各群の特徴量や特性を検証することとした。本稿では,その手はじめとして,首都圏にある大規模大学の1学部を対象に,群間比較の必要性について基礎検討を行う。