本講演では，有機発光デバイスの基礎特性に関して説明した後，発光材料として印刷プロセスで作製可能なフルオレン系ポリマー材料を用いたキャリア蓄積制御による発光デバイスとして，有機半導体層内でのチャネル形成をゲート電圧で制御することで発光が生じる発光トランジスタ(OLET)における高い伝導性と発光性の両立を目指したOLET特性について述べる．また、絶縁型交流駆動有機EL素子の誘電体層としても機能する無機・有機ハイブリッド誘電体ミラーを内包した微小共振器構造を有する交流電圧駆動ポリマーELへの展開についても議論する．

電気化学発光セル (Light-emitting electrochemical cell: LEC) は，発光層が発光材料と電解質により構成される発光素子である．我々は蛍光ポリマーであるSuper Yellow (SY) とケイ素含有イオン液体 (Ionic Liquid: IL) を用いたLECにおいて，ILのアニオンおよびカチオンの化学構造の制御によって電荷バランスを最適化することで14.1 cd/Aの高効率LECを実現したので報告する．

Mechanoresponsive materials are of high practical value as they can be used as mechanical stress or damage sensors and can visualize stress distribution in polymers via non-destructive methods. We developed photoluminescent Cu-based mechanophores that can be covalently attached to polymers showing gradual increase in photoluminescence intensity as the sample is being stretched. This response is repeatable for multiple cycles and it shows remarkable sensitivity when the mechanophore is attached as a cross-linker in polybutylacrylate. Moreover, we further found a class of triboluminescent Cu complexes that emit light in crystalline state or when simply blended into amorphous polymethylmethacrylate films.

我々は独自材料である高分子有機EL材料について、印刷法による有機ELデバイス形成に適した溶解性、膜形成能を有し、かつ単純な層構造でありながら高い発光特性を発現させるべく開発を進めてきたが、近年、特性やプロセス性に大きな進捗が得られ、パネルメーカー各社の評価を得てパネル製造への適用が始まる段階に至った。
本稿では、我々のこれまでの開発を振り返り、高分子材料の現時点での立ち位置を確認するとともに、ディスプレイや照明への適用シミュレーション、及び今後要求される性能への対応策などの議論を通じ、塗布型有機EL材料の市場拡大、及び有機EL業界全体の発展に寄与するために我々が取り組むべき課題について考察を行ないたい。

印刷方式有機ELはマスクレスで大気中RGB塗分けが可能な革新的な作製方法で、長年開発が行われてきた。我々は印刷方式での商品化に世界で初めて成功し、多方面で採用が進んでいる。本講演では印刷方式有機ELの利点、課題、今後の展開を中心に紹介する。

ジョセフソン接合の発見直後から開始された計算機応用の歴史について振り返る。IBMによる演算回路はラッチング方式と呼ばれ、零電圧状態と有限電圧状態を信号の”0”と“1”に対応させた。当時としては高速・低電力であったが、CMOS集積回路の高性能化が進むと、競争力を失った。続いて出現したのが超伝導ループに磁束量子があるかないかを二値信号に対応させる単一磁束量子回路である。この技術により、今では数十GHzで動くマイクロプロセッサも実証されている。単一磁束量子回路は、様々な方法で低消費エネルギー化が進み、熱雑音や量子雑音の物理的極限近傍で動作する回路も提案されてい。将来は、量子計算機と融合し、超伝導ならではの計算機が構築できると考える。

超伝導回路を用いた量子コンピュータは, 拡張性の高い量子コンピュータの実現方式として,
大規模化に向けた研究開発が近年急速に進んできている.
量子コンピュータにおいては, すべての量子ビットに制御線を配線する必要があるため,
スケーラブルな3次元配線手法を確立することが, 大規模化を実現する上での喫緊の課題となっている.
本発表では, ゲート型超伝導量子コンピュータの基礎や最近の進展・課題について紹介し,
我々の開発している垂直配線可能な量子ビットチップ・パッケージの設計や性能評価についてに述べる.

ジョセフソンパラメトリック発振器(Josephson ParametricOscillator, JPO) は、量子猫状態の決定論的生成が可能など、量子光学の観点から興味深い系であるといえる。近年、複数のJPO を結合したネットワークをアニーリング型量子コンピュータとして動作させ、組み合わせ最適化問題を量子断熱計算により高速に解くという理論的提案がなされており、量子計算への応用という観点でも活発な実証実験が行われている。本講演では、JPO の概略とともに、量子ビットの実証実験について述べる。

単一磁束量子（ＳFQ）回路を用いた超伝導コンピュータの開発研究の動向と今後の展望及び課題について述べる。

SNSやIoTの普及に伴い、全世界のICT機器で消費される電力は増加の一途をたどり、2030年には電力需要の約20%を占めると予測されている。よって、Society 5.0のような未来の情報社会を実現するためには、極めてエネルギー効率の優れたデジタル回路技術が必要になる。このような状況の下、ここ10年で様々な低電力超伝導ロジックが提案され、日米を中心に超伝導デジタル回路の研究開発が行われている。本研究は、低電力超伝導ロジックの一つである断熱磁束量子パラメトロン（Adiabatic quantum-flux-parametron: AQFP）について、基礎（研究背景、動作原理、設計方法）から最新の研究成果までを包括的に報告する。

令和元年度フェロー受賞にあたり、受賞対象である「光信号処理とそのシステム応用に関する先駆的研究」の概要を述べる。またフェロー称号は電子情報通信学会においては当学会への貢献度も研究上の功績以外に評価対象であり、このたびの講演の機会に、自らの研究活動と学会で何をしてきたのか、を俯瞰することにした。特にこれから研究開発の道を目指す若手・学生に向けたメッセージを送りたい。

近年のCMOSイメージセンサの大きな技術進展に伴い，様々な分野への応用が展開されている．本稿では，CMOSイメージセンサのバイオ医療分野への応用について，生体とイメージセンサとの係りあいの観点から具体的な実例を交えてその開発状況について解説する．

光の波面（位相の空間分布）を自由に操る技術である波面制御技術の高精度かつ高度化を目指し、位相変調型液晶空間光変調器（LCOS-SLM）をはじめとした液晶デバイス開発と、それを用いた各種応用研究を推進してきた。我々は、点像分布関数の理論計算およびLCOS-SLMによる動的な制御に注目し、アクティブな制御による各種光学系の高機能化を図っている。本講演では、それらの中で、LCOS-SLMを用いた光刺激装置と点像分布関数制御による3次元高速イメージング手法を検討し、マウス脳内のシングルシナプスの3次元高速イメージング手法として採用した3次元位置選択的複数ビーム生成とヘリカルビームイメージングについて報告する。

ウイルス、細菌、タンパク質などのバイオ物質を検出するバイオセンサは、COVID-19によりウイルス検査の需要が劇的に増大し、かつその重要性が広く一般に認知されたことから、大きな注目を集めている。バイオセンサは酵素反応、抗原抗体反応といった生体由来の選択的反応を利用し、サンプル中の標的物質を特異的に検出する。本講演ではバイオセンサの原理、および光を用いたバイオセンサにつき紹介する。

局在プラズモン共鳴（LSPR）を用いた光エネルギー変換システムは、長波長の可視光をエネルギー変換に利用できるという大きな特徴を有している。さらに、LSPRとファブリ・ペローナノ共振器のモード強結合を利用した光電極は、LSPR単独の光電極に比べて吸収強度を大きく増強させることができ、また吸収波長域を可視光のほぼ全域に拡張することも可能になる。さらに、本強結合光電極を用いた水分解においては、反応の量子収率がLSPR単独の光電極に比べて増大することも明らかとなり、LSPRの吸収特性の改善のみならず、電子移動反応を加速する強結合特有の反応メカニズムが存在することも示唆された。

人工多能性幹細胞(iPS細胞)から、様々な人工細胞や人工組織が作られるようになり、iPS細胞を用いた再生医療にますます期待が高まってきた。その中で、iPS細胞の品質評価・管理の規格化は急務である。我々は、散乱光計測の非接触・非侵襲のアドバンテージを活かし、ラマン散乱光計測と光第二高調波計測を応用したiPS細胞およびiPS細胞由来体細胞の品質/機能評価技術を開発している。本来、散乱光計測では、遺伝子やタンパク質の発現パターンなど、詳細な情報を得ることが出来ない。しかし、機械学習や数学的手法がこの問題を解決してくれる。本シンポジウムでは、我々が行っていつ実例について紹介したい。

皮膚の内部構造を非侵襲的に可視化かつ定量評価する技術の１つとして、光コヒーレンス断層画像化法（OCT）の臨床応用が進められている。近年では、OCTに力学的な性状評価機能を付与するなどの多機能化に関する研究も精力的に進められている。多様なOCTの応用展開の中でも、我々は、OCTを用いて微細な血管構造を可視化するOCTA (OCT Angiography) を皮膚科学・美容領域へ応用しているので、その事例について紹介する。

トポロジーは、何らかの形を連続的に変形させても変わらない性質や、不変に保たれる量(トポロジカル数)に
着目する数学の分野の1つである。たとえば、ある点のまわりを閉曲線がぐるぐる回っているとき、回った回数は、曲線の形を曲げたり伸ばしたりしても、点をよぎらない限りは変わらないため、トポロジカル数である。大まかにいえば、形が連続的に変わっても、何らかの性質を示す値が整数であれば、整数は連続には変化できないので不変量になりうる。本稿では、物理で馴染みの系から出発して、ベリー位相などのトポロジカルな性質が現れる様子へと誘導し、フォトニクスへ繋げる道筋について、
背景となる理論の考え方を中心に述べる。

トポロジカル光波の原理と発生法について概説するとともに最新の応用例についても紹介する。

我々は半導体蜂の巣フォトニック結晶（PhC)における局所的な変形によって、トポロジカル特性を示す電磁光状態の創出に成功した。最近、トポロジカルPhCを トポロジカル的に自明なPhCで囲むことによって、トポロジカル共振器面発光 レーザー（TCSEL）の開発に成功した。講演ではこれらについて紹介する。

近年、トポロジーと関連する様々な光学現象に関する研究が盛り上がりつつある。その一つが、光のバンド構造のトポロジカルな性質を活用するトポロジカルフォトニクスと呼ばれる分野である。本講演では、半導体（誘電体）のみで実現できるトポロジカルフォトニック結晶の一つであるバレーフォトニック結晶を用いたトポロジカル光導波路について、我々の取り組みも含めて紹介する

フォトニック結晶がトポロジカルな性質を持つ様々な特異点を持つことが近年注目されている。特異点は特殊な偏光状態や角運動量状態を作るのに有効であり、フォトニック結晶のバンド制御によって、特異点を制御することにより、新しい光制御技術の創成が期待できる。本講演では、フォトニック結晶の特異点として、Bound States in the Continuum (BIC)と呼ばれる特殊な束縛状態に注目し、この特異点を結晶の対称性制御によってどのように制御が可能かを論じる。また、もう一つの特異点として、損失や利得を持つ非エルミート周期系で現れる例外点（Exceptional Point）についても取り上げ、どのような光制御が可能になるかを議論する。

電波と光波の境界領域の周波数を有する電磁波であるテラヘルツ波は，次世代の6G通信応用などが期待されている．しかしながら，テラヘルツ帯はエレクトロニクスの高周波極限に相当するため，金属配線の損失が大きく，デバイスシステムを小型集積化するための技術が未開発である．本講演では，テラヘルツデバイスの集積化技術の候補となるトポロジカルな性質を有するフォトニック結晶のテラヘルツ導波路への展開に関して，紹介する．

本講演では我々が取り組んでいるテラヘルツ周波数領域の光渦を用いた研究について紹介する。テラヘルツ領域には多くの固体素励起が存在するため、軌道角運動量を持つ光と固体物質の相互作用を研究するのに非常に適した周波数帯である。さらに、時間領域で電場を直接測定することができるため、光渦の位相を含めた直接観測が可能である。これらの特徴を生かした物性研究の例として、我々は擬似局在表面プラズモンにおける高次モードの選択励起を行った。その結果、励起されるモードは光と物質の全角運動量保存で決まる選択則に従うことが実験的に示された。

題目「BodySharing: 固有感覚の共有インタフェースとその未来」確定後に記載

2020年4月にAI/IoTなど情報テクノロジーにより、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を抑え、医療崩壊を回避する『COVID-19-ResQ（コビッド・ナインティーン・レスキュー）』プロジェクトを立ち上げました。
医療の現場・病院・研究機関・データサイエンティストが幅広く連携し、開発・普及に取り組んでいます。
ウェアラブルIoTを装着しバイタルサインのデータ共有を行い常時モニタリングします。ご本人が認めた範囲で医療機関等とデータ共有が可能です。また、「①体温、②酸素飽和度」のデータを用い患者施設間搬送トリージの判断を支援するためのAI解析に取り組んでいます。

LSI技術とバイオセンサ技術を融合することにより，これまで見ることができなかった化学物質の動きを可視化できるマルチモーダルバイオイメージセンサの開発を進めている．医療技術のイノベーションを拓くには，新しい計測技術の誕生は欠かせない．遺伝子や細胞情報などの生体内情報を高感度に計測できる，LSI技術とバイオセンシング技術が融合したスマートバイオセンサデバイスは，ビッグデータ解析技術と連携しながら我々の健康・医療を支える技術として，成長するものと確信する．

本研究は、CMOS集積回路チップ上に微小なセンサー電極を高密度で配置し、その表面で細胞・細胞シート・組織等を直接培養してインピーダンス測定することを目指すものである。CMOSチップ上微小電極による細胞インピーダンスセンシングから回路設計に至るまで幅広く取り組んでおり、本稿ではその最近の成果について報告する

周知のとおり，生体は多くの水分子でできており，その水分子は水和水やバルク水と形を変えながら生命機能の維持に役立っている。これまで，我々はこの状態変化による数十GHz～数THz帯での誘電特性の変化を利用したユニークなバイオセンサを開発してきた。本発表では，この近接アレイ型センサの特性とともに，その周辺技術や応用研究例についても紹介し，本技術の社会実装への可能性を議論したい。

後ほど記述

有機EL (OLED)は近年急速に研究開発が進められ、高コントラスト・自発光という特長から照明やディスプレイとして広く一般家庭に普及している。これまで、成膜性や発光特性に優れることから、有機分子発光層はアモルファス状態で成膜され、発光分子を分散状態とするためホスト－ゲスト型発光層が用いられてきた。本研究では発光材料（ゲスト）を従来のアモルファス材料から結晶性分子材料へ変更することで、ホスト材料中における結晶性制御を試みる。結晶性分子を用いることで意図的な結晶状態を誘起し、分子間相互作用が分子発光へ与える影響を検証するとともに、単一分子による発光波長や色調制御に関して紹介する。

本研究では難溶性のπ共役分子の単結晶育成法であるナフタレンフラックス法について紹介する。ナフタレンをフラックスに用いることで、従来法では結晶育成が困難であったような巨大なπ共役分子の単結晶を育成することが可能になった。ナフタレンフラックス法を用いることにより、結晶構造が既知の分子３つを含めて合計6つの分子について結晶構造を決定することができた。単結晶育成は基礎物性評価を行う上で不可欠であり、得られる結晶構造から量子化学計算により様々な物性を予測する上でも重要なものである。色々なπ共役分子の単結晶育成が可能なナフタレンフラックス法の開発により、有機半導体材料探索の幅が大きく広がると考えられる。

有機半導体デバイスの特性は、薄膜の凝集構造や分子配向といった高次構造の影響を受ける。一般に薄膜成長では、吸着、拡散、脱離などのプロセスを経て安定核が形成し薄膜が成長するため、薄膜の高次構造制御のためには成長初期過程を理解することが極めて重要となる。我々はこれらの素過程を明らかにするため、種々のin-situ測定を組み合わせて薄膜成過程の評価を行っている。今回の講演では、水晶振動子マイクロバランスと二次元X線回折を同時かつリアルタイムに測定した結果について紹介する。

有機薄膜太陽電池（OPV）の高効率化を目指して活性層に用いられる有機半導体材料の開発が活発に行われてきた。特にn型材料として非フラーレン系n型材料を用いることで、17%を超える効率を示すものも報告されはじめている。本発表では非フラーレン系n型材料を用いたOPVの高効率化に向けたアプローチとして非フラーレン系n型材料を少量添加する三元系太陽電池、非フラーレン系n型材料と組み合わせるp型半導体ポリマーの開発、非フラーレン系n型材料の開発について発表する。

有機太陽電池は次世代の太陽電池デバイスとして注目されており、これまでの精力的な研究によって、従来の太陽電池と比較しても遜色ない性能を示す有機太陽電池が実現されている。一方、有機太陽電池の社会実装の観点からは、素子の「性能」だけでなく「耐久性（特に、光耐久性）」も重要な要素である。
高い光耐久性を有する有機太陽電池の開発研究において、デバイスの耐久性は素子中の異種材料界面で起こる現象と密接に関わっていることが分かった。本発表では「有機活性層と電子輸送層との界面」において、デバイスの光駆動中に起こる現象について調査を行い、耐久性向上を目指して界面（表面）改質を行った結果を報告する。

フォトンアップコンバージョン（UC）は長波長の光を短波長に変換する技術である。今回、有機半導体界面でのスピン反転を介した新原理UCを実現した。その動作原理は、吸収した光をドナー／アクセプター界面で電荷分離し、スピンがランダムな自由電荷を生成、さらに界面での再結合の際に電荷移動状態を経て三重項励起子を生成し、三重項消滅から短波長発光が観測できる。その結果、従来の固体系UCより100倍以上高い量子収率を実現し、さらにフレキシブル薄膜上で近赤外LED光を黄色の高輝度発光に変換することに成功した。

テラヘルツ帯を使った超高速大容量無線を次世代の移動体通信システム（Beyond 5G(6G)）において実用化しようという機運が高まって来ています。これを本当に実現するためには、Beyond 5Gが社会実装される2030年代の社会経済生活を予測して、そこからの要求仕様としてのテラヘルツ無線のあり方を考える必要があります。さらにテラヘルツ無線を実現するための技術や標準化についての展望を明らかにしておくことも重要です。本講演では、これらに関して議論します。

近年，合成開口レーダー（Synthetic Aperture Radar: SAR）技術を利用したテラヘルツイメージングが報告されている．我々は非破壊検査技術に対する研究開発の一環として，テラヘルツSARシステムの実装，評価を実施している．ダイオードベースのテラヘルツ光源，検出器を搭載したテラヘルツSAR評価装置において，点像分布関数に対応するイメージング結果を取得し，2点分解能に相当する半値全幅は設計値5 mmと同等であることを確認した．さらに高感度化, 高分解能化に向けてシステムの改良を進めており, 本講演ではこれまでの進捗を紹介する．

COMS集積回路を用いた300GHz帯トランシーバの概要とその将来について講演する

beyond 5Gでは，100 Gb/s ~ 1 Tb/sものデータレートが要求されるといわれている．このような大容量無線を実現するためのトランシーバ（TRX）において，化合物半導体，特にInP を用ることの利点を説明し，さらに，InP がbeyond 5Gに向けた超高速TRX実現のための有望なデバイスであることを示す一例として，InP 系高電子移動度トランジスタ（InP-HEMT）を用いて実現された300 GHz 帯120 Gb/s TRX について報告する．

周波数0.1 THz~10 THzの電磁波であるテラヘルツ波は，Beyond 5Gに向けた超高速無線通信応用やセキュリティ分野、非破壊イメージング応用等が期待されている．共鳴トンネルダイオードは半導体ベースのテラヘルツ素子であり，小型で低消費電力な発振器および検出器を実現できる．本発表では特に300 GHz帯の共鳴トンネルダイオードに関して，無線通信応用および，実用化に向けたパッケージ技術の進展について紹介する．

テラヘルツ･エバネッセント波と励起光との相互作用を利用したテラヘルツ波計測法を提案・実証してきた。チェレンコフ位相整合によりテラヘルツ波を発生させ、全反射を利用してテラヘルツ・エバネッセント波を結晶界面に局在させる。この領域にサンプルを近づける事でエバネッセント波を介したテラヘルツ波帯の情報取得を行い、テラヘルツ波の受けた変化を励起2波長光に転写する。この励起2波長光の強度変化を差分検出する事でサンプルの情報が得られる。テラヘルツ波の発生・検出部となる非線形光学結晶を光導波路化し、全光ファイバでの実験系構築を行っている。本手法はテラヘルツ波検出にも適用可能であり、原理的な検証を実施している。

将来のモバイル通信やセンシングシステムにおいてはさらなる性能向上を目指してテラヘルツ帯の活用が検討されている。その波長の短さからアンテナを含めた送受信器の大幅な小型化が期待される。一方で、大きな大気減衰の影響でカバーできる範囲が限られるという課題があり、多数の送受信器をネットワーク化する必要がある。本稿では光と無線をシームレスに接続するファイバ無線技術(Radio-over-fiber)のテラヘルツシステムへの適用について、技術的課題と期待されるアプリケーションについて紹介する。

我々がこれまで研究開発を続けてきたA-RoFベースMFHのBeyond-5Gに向けた発展性について、主要な残課題と、モバイルサービスの容量拡大およびサービス多様化への対応の観点からそれぞれ今後検討するべきと考えられる技術課題を提示する。

5Gで用いられている準ミリ波帯はパスロスが大きく、今後のByeyond5G/6Gで用いられるミリ波帯でも同様にカバレッジエリアの確保が必要になると考えられる。侵入損失が多いエリアへの無線信号の伝送技術としてアナログ光ファイバ無線（A-RoF）があるが、多くのエリアをカバーするためには経済性も重要になる。そこでマルチモード光ファイバを用いた光通信システムで用いられている光コンポーネントをベースとした直接変調-直接検波型の28GHz帯A-RoFを試作し、5G-NR規格の28GHz帯無線信号を用いた伝送実験の実証結果を報告する。

　5Gの普及に伴いMFH/MBH(Mobile Fronthaul/Mobile Backhaul) 等のネットワークにも更なる大容量化が要求されており、光空間通信(FSO)によるアプローチを検討している。一方で、FSOは指向性が高いことから、鉄塔など揺動がある場所に設置した場合には、高精度なビーム捕捉追尾技術が必要となる。
我々はこのような課題を解決するため、電子的に光ビームを高速かつ高精度に走査可能な光フェーズドアレイ技術を開発してきた。今回は、光フェーズアレイにて10Gbpsの空間伝送試験を行ったのでその結果を報告する。

無線容量の拡大のためには，広い帯域を確保できる高周波数帯の利用が効果的だが，伝搬損失が大きくなり，無線設備の高密度展開が必要となる．このとき，RoF (radio-over-fiber) を適用して無線信号処理機能をCS (central station) に集約し，RRU (remote radio unit) を簡易化・小型化・低消費電力化することで，無線エリアを柔軟に・経済的に展開することが可能となる．我々は，無線信号処理機能をもたないRRUのビーム制御をCSから遠隔で行うことで，RRUを最大限簡易化する検討を進めてきた．本稿では，提案する遠隔ビーム制御手法として，光波長をアンテナ素子に固定的に割り当てる手法，パッシブビームフォーマを用いた手法の2つを紹介する．

次世代大容量RANの実現に向けて5Gの高度化や6Gの研究開発が精力的に進められている。超高速、超低遅延、超多接続といった特性を同時に満足する6Gにおいては、大容量のデータを複数のアンテナへ効率良く配信できる経済性の高いMobile Fronthaul（MFH）が不可欠となる。そのようなMFHとしてこれまで我々はアナログコヒーレント光伝送技術を適用した光・無線融合型フルコヒーレントアクセスシステムを提案している。本講演ではフルコヒーレントアクセス伝送に関する我々の最近の研究成果を紹介する。

In recent years, terahertz (THz) band imaging has attracted significant attention owing to its excellent resolution and decent transparency to some electrical insulators. The precise 3-dimensional (3-D) image is not only crucial for nondestructive testing (NDT) applications but also in other areas such as security, medicine, and agriculture.In both industrial and remote sensing applications, the utilization of the THz band is highly expected owing to its high spatial resolution and small device size. Although it suffers from atmospheric attenuation, relatively long-range (meter order) image applications have been successfully realized in several related works. Such a working distance can have numerous practical applications; however, many limitations still remain unsolved. In this paper, the authors have provided a brief review of long-range THz imaging techniques, mainly based on continuous wave (CW) systems, by addressing both hardware and software issues.

MSLの電流偏在影響を考慮可能な平衡非接触PIM測定測定系が提案されている．本測定系は，平衡化したMSL被測定試料（DUT）を非接触コネクタ基板二枚で挟み込むことにより，MSLの電流偏在の影響を考慮可能で，かつ非接触PIM測定を可能にしたものである．測定系の平衡化に伴い，MSLの地導体を排除することができ，非接触コネクタについては信号導体のみを考慮すればよくなっている．平衡測定系を用いて，同一DUTに対し不整合系と整合系の両方でPIM測定を行うことができれば，整合測定系と不整合測定系でのPIMの関係を明らかにするうえで有用である．本稿では，平衡非接触測定系に用いる非接触コネクタを提案し，その設計について示すことを目的とする．

相互接続された電子機器のコネクタ部に接触不良が生じた場合、イミュニティが低下し、周辺の電磁環境に影響を与える可能性がある。過去の報告にて、コネクタの緩みによって高周波素子が増加し、放射電磁雑音を増加させることが示されている[1,2]。しかし、緩みの程度と接触面の高周波素子の増加の関係に関しては十分な議論がなされていない。本報告は、緩みの指標としてコネクタの締め付けトルクを用い、トルクを変化させた状態での接触面の高周波素子の測定することでコネクタの締め付けトルクの変化が接触面の高周波素子に与える影響について検討し、高周波素子の変化からトルクの変化による導体の接触状態の変化について考察する。

本稿では，PCB内配線及び電子機器間の接続技術として差動伝送技術に着目し，差動伝送線路の信号品質劣化及び不要電磁放射とその対策技術に関して検討した例について紹介する．

シリコンフォトニクス（SiPh）を用いた次世代の光インタコネクトに向け、それに資する高精度位置決め不要な新規光接続技術の確立が期待される。高精度位置決め不要な光接続技術として、自己形成導波路による光接続技術が存在する。しかし、自己形成導波路による光接続に不可欠な可視光のSi導波路伝搬が難しく、SiPhへの適用は困難であった。我々はSiPhに集積可能なSiONを用いた新規構造により、自己形成導波路のSiPhチップ端面からの形成を実現した。また、それにより汎用光ファイバとSiPh間の低損失かつ高精度位置決め不要な光接続を確認したので報告する。

大規模データセンター等のネットワーク光スイッチにおける伝送容量改善に向け，高ch密度光コネクタが潜在的に求められており，マルチコアファイバ(MCF)を用いたMCFコネクタ技術はその解決手段の一つとして期待される．一方，MCFはクラッドの中心以外にコアを有するため，MCFコネクタの実現には以下の2つの本質課題がある．すなわちMCFの回転角度を合わせる回転調心技術，及びPC接続のために必要なコネクタ押圧力の抑制である．本稿では上記2つの課題に対する我々の取り組みを中心に，開発した単心MCFコネクタ(SC/LC)，多心MCFコネクタ(MT/MPO)について紹介する．

データセンター内のネットワークを高密度且つ低コストで構築する技術として，複数の光ファイバを一括で接続できる多心光コネクタが広く導入されている．近年，データトラフィックの増大に伴い，データセンターは大規模化しており，経済的な構築に向けた検討が日々行われている．データセンターにおける課題としては，消費電力の削減，ネットワーク構築部材及び施工の低コスト化，ネットワークの高密度化等があり，これらに対し，多心光コネクタにおいては，低損失化，繰り返し着脱再現性，多心化が主に検討されている．本稿では上述の検討項目に対する，技術動向について報告する．