自動運転の実現に向けて，自動車分野だけでなく，様々な分野の専門家により関連技術の研究開発が進められている．近年の自動車は車載ネットワークで電子制御されており，また自動運転では自動車の外部ネットワーク接続が必須であることから，自動車に対するサイバー攻撃が懸念されている．本稿は，ハードウェアセキュリティの観点での近年の自動車セキュリティの動向を紹介する．また，ハードウェアセキュリティの分野と，自動車でも利用が検討されている機械学習(Machine Learning) のセキュリティ分野には，横断的なセキュリティ課題もあるため，これについても紹介し，将来の研究課題を述べる．

機密性、整合性、および可用性（CIA）に分類されるセキュリティの目的を満たすために、
様々な国際標準化団体が知られている。
ここではISO/IEC JTC 1 SC27/WG 2に焦点を当てる。
この団体SC27/WG 2 は、システムのセキュリティで重要な役割を果たす暗号化メカニズムを
標準化することをミッションとして活動している。本項ではその動向を解説する。

近年、Internet of Things（IoT）、デジタルトランスフォーメーション（DX）、サイバーフィジカルシステム（CPS）といったキーワードが注目を集めている。これらの仕組みが普及するとともに、サイバー攻撃による脅威が増大しており、情報システムだけでなく制御システムやサービスへも広がりを見せている。本講演では、CPSのフィジカル側（エッジ側）におけるセキュリティ技術について紹介する。

IoTセキュリティの標準化動向についてIETFでの活動や実際のサービスとの比較を報告する。また各国のガイドライン・認証制度・法制度などの動向も加えて報告する。

プロセスマイニング(Process Mining)の現状と幾つかの研究トピックス，さらに，その背景にあるDX(Digital Transformation)とデータ駆動(Data-Driven)が提起する研究開発の課題について解説する．

離散事象システムの理論の立場からプロセスマイニングの位置付け，技術的課題と既存結果，将来的な発展について解説する．

本講演では、会計監査におけるプロセスマイニングの実践から得た、プロセスマイニングの有効性と成功要因について紹介する。会計監査では被監査会社の業務プロセスを理解する必要があるが、従来のヒアリングや文書の閲覧のみに基づいての監査では、正確かつ網羅的に業務プロセスを把握するのが困難であった。これに対してプロセスマイニングは、システムに記録されたデータという客観的な事実に基づいて業務の流れを網羅的に視覚化することで、この課題の解決に大きく寄与した。20社程度で実施して判明したプロセスマイニングの成功要因は、イベントログを適切に作成することであり、そのためにはイベントログの基となる業務システムのデータを正確に理解すること、またその前提として事前に業務システムや業務内容を理解することである。また、分析要件と分析対象とするアクティビティの内容や粒度を適切に設定することも極めて重要である。

プロセスマイニングが誕生して20年が経過し、プロセスを対象とするデータ分析の「方法論（Discipline）」としては成熟しつつある一方、実践のための商用ツール（ソリューション）の機能拡張は、近年著しいものがある。

本講演では、プロセスマイニングツールの基本機能である「プロセス発見」、「適合性検査」などに加えて、「根本原因分析」や、「シミュレーション」、「モデリング」、「予測分析」などの最新機能群を既存のBIツールとの違いも踏まえて解説、また、myInvenioの操作画面を具体例として示しながら紹介する。

また、各種商用ツールが現在採用している「DFG(Directly-follows Graphs）」のアルゴリズムが抱える課題、および、これまでの方法論では対応困難であった、多層的な関係性を持つイベントログデータの特性に起因する課題と、その解決のための取り組み（Object-Centric Process Mining or Multi-Level Process Mining)に触れる。

最後に、さらなる進化が期待される今後のプロセスマイニングツールの機能拡張の方向性について述べる。

無線を使った制御システムでは，制御と通信との統合的な設計が必要である．本稿では，最も簡単な無線制御システムにおける上り下りの通信制御として，送信電力設計とそれに応じた制御入力との同時最適化を行う．

本発表では高信頼制御通信の目指す方向性についてシステム制御分野からの
視点で報告する．ネットワークを介した遠隔制御はサイバーフィジカルシステム
の基盤となる技術である．リアルタイムなフィードバック制御に必要な制御情報を
いかに限られた通信量の下で送信するかは，通信・情報と制御の両分野が深く関わる
課題である．近年，実社会での応用が進むと同時に，こうした課題への取り組みが
理論的な研究の進展をも促した側面があることを紹介する．

産業機器やロボット等の無線制御において，限られた無線通信リソースの下で更なる性能向上を図るため，単なる通信レイヤの最適化ではなく，上位の制御レイヤも含めたクロスレイヤ最適化の検討を進めてきた．具体的には，制御分野における代表的なフィードバック制御を無線化したシステムについて，多元接続，通信路誤り訂正，受信信号判定，情報圧縮の様々な視点から，数学モデルに基づく制御の状態予測といった制御レイヤの振る舞いを通信方式の設計へ考慮することの検討を進めてきた．また，フォーメーション制御の基礎となる合意制御について，多元接続の制約を考慮した性能向上手法の検討を進めてきた．以上の検討で得られた知見を紹介する．

本研究では，人間の目に見える光を用いた無線通信技術である可視光通信，特に送信機にLED，受信機にカメラを用いたイメージセンサ通信に注目する．本方式の特徴の一つは，カメラの空間分解能力による優れた雑音耐性を有している点にある．しかしながら，本方式はその通信速度がカメラの撮影速度に依存するため，低撮影速度のカメラを用いた場合，十分な通信速度が得られない．この問題を解決するため，筆者らは送信機自体が回転する「回転式LED送信機」を開発し，LEDの回転と点滅によって生じる光の残像を利用することで通信速度の向上を図った．本発表では開発した回転式LED送信機の構成および通信速度が向上する原理を説明する．

サイバーフィジカルシステムの制御では，通信を抑制しつつ高性能な制御性能を実現することが重要である．本発表では，センサネットワーク上のイベント駆動制御の手法を紹介する．センサごとにデータを制御器に送信する条件をもつ場合を考え，線形行列不等式（LMI）に基づく制御器の設計法を紹介する．

広域をカバーする無線通信システムは3G/LTE/5Gに代表されるような通信事業者が展開する通信システム（以下，インフラ型）と，いわゆるLPWAに代表されるような利用者が自前で機器を展開できる通信システム（以下，インフラレス型）に大きく分けられる．インフラ型は大規模災害時の通信の可否が通信事業者に依存する点や通信料金が必要となる点があるものの，大容量通信かつ広域での安定した通信を実現している．一方インフラレス型は通信容量に制限はあるものの，大規模災害時の通信の可否は外部に依存せず，通信料金は不要という特徴がある．本稿ではインフラレス型通信システムの特徴をドローンやロボットとの通信へ活用した実装例として，国立研究開発法人情報通信研究機構が開発した「複数周波数を用いたドローン制御監視通信システム（以下，コマンドホッパー）」を紹介する．

近年の情報通信技術の発展により，ICT関連技術は今や日常生活に広く浸透するものとなった．中でも，通信はあらゆるモノや人を結びつける基盤をなすものであり，通信品質の飛躍的な向上は，ICTの真価を引き出すのに大きな役割を果たしている．制御分野においても，通信を介したエージェント間の情報伝達に着目した協調制御や分散最適化が大規模ネットワークシステムに対する新しい制御・最適化手法として注目され，この20年ほどの間に大きな発展を遂げてきた．本稿では，大規模ネットワークシステムに対する協調制御や分散最適化について概観する．

ブラインド量子計算および、量子計算の検証といった、量子暗号プロトコルについて解説する。

例えばランダムオラクルに量子的なアクセスが可能となるような量子攻撃者に対する暗号プロトコルの安全性証明において，従来利用されてきた技法がそのままでは利用できない状況が多々ある．本講演ではそのような状況においても暗号プロトコルの安全性を証明するための量子攻撃者特有の証明技術の進展について解説を行う．

本発表では、量子計算機を用いた汎用的攻撃の既存の下界 ([BBBV97, Zha15, Zha19, LZ19] など) を解説する。また、事前計算を許した場合の下界 [HXY19] についても解説を行う。
更に、同様の証明手法を用いて、量子ブラックボックス構成にも効率の下界が存在することが示せる。

耐量子計算機暗号に関して講演する。