NP-1複雑コミュニケーションサイエンスと人と機械の調和するシステムデザイン ～最新動向と今後の課題～

日常生活で使用する多くの電子機器は，スイッチの押下やレバー操作によって扱うことができる．
通常これら電子機器を使用する場合は手指を用いるが，視線や音声，ジェスチャーなどによっても可能となる．
しかし，四肢に障害をもつ肢体不自由者の場合，それらを直接操作することは困難であり代替となる支援機器が必要となる．
また，健常者であってもロボットアームや移動機器などの制御を，操作者の意思で行うことができれば
作業中の利便性が向上し，より効率的な作業が可能となる。
そこで我々は，支援機器の一つとして残存機能として残りやすい咀嚼に着目し，
奥歯の噛みこみにより発生する側頭筋の筋電位が利用できると考えた。
本研究では，四肢を用いない入力インタフェースとして左右の奥歯の噛み分けで動作する筋電位インタフェース「テンプラー」を開発し，
支援機器の一つとして本機器が有効であった事例について紹介する．

人間または機械単体ではなく，両者が同時に存在し，互いに影響を及ぼしあうシステムを，人間機械システムとよぶ．機械の構造が単純なうちは，人がその機械がどんなふるまいをするかを理解しやすく，機械の次の動きを予測することで，それに合わせた作業を行うことができる．すなわち，機械の機能とその効果の予測容易性は，人間機械システムの使い勝手を決める重要な要素である．しかし，多彩な機能をもつ機械では，機械が示すふるまいは多岐にわたり，人はその作用を十分に予測することができず，「思っていたのと違う」という違和感につながる．人と機械を１つのシステムとしてみたときの人間機械システム全体のパフォーマンスを最大化するためには，機械は人の感覚・運動機能の特性や限界に配慮して設計されるのが望ましい．本稿では，主観／客観パフォーマンスを両立させるヒューマンセントリックインタフェースについて述べる．

日常生活において我々は、多大な注意を払わずに歩く、コップを掴む、など巧みな動作を生成している。しかしながら、身体に内在する非線形性や冗長性により、巧みな動作を達成するメカニズムは未だ明らかでない。本研究では、講演者が取り組んでいる身体運動データに潜む課題関連成分や低次元空間を抽出する試みについて紹介する。

うなずきや身振りなどの身体的リズムの引き込みをロボットやCGキャラクタに導入することで、対話者相互の身体性が共有でき、一体感が実感できる「心が通う身体的コミュニケーションシステムE-COSMIC」を研究開発し、人を引き込む身体的コミュニケーション技術（身体的引き込み技術）を研究開発してきた。とくに音声から豊かなコミュニケーション動作を自動生成するシステム技術は、人とかかわるロボット・玩具、メディアコンテンツ、e-Learningやゲームソフト等に導入・実用化されており、教育・福祉・エンタテインメントなど広範囲な応用が容易に可能である。身体的引き込みによる一体感や共有感は、幸せな気持ちや安心感を支えるもので、人がつながるヒューマンインタフェースの要である。

われわれはインターパーソナルな主観的タイミング制御の技術に注目し、人間とロボットのあいだに「間(ま)」のあう自然な歩行を生成するロボットWalk-Mateを開発してきました。従来の歩行支援ロボットがパワーアシストをめざしていたことを考慮すると、本ロボットはリズムアシストであり、そのリズム同調によって、あたかも人間同士であるかのように、ロボットと人間が「間」を合わせて歩き、歩行を安定化します。このようなメカニズムを「共創インタラクション」と呼び、既にパーキンソン病や脳卒中の歩行リハビリへの有効性を確認してきました。今回のパネルセッションでは皆さまとこのような取組みについて意見交換できれば幸いです。