セッション名「新型コロナウイルス対策と「New Normal」おけるICTの活用」
デジュール国際標準化団体での国際規格の開発作業は対面での会合による意思決定を重視しており、従来は多くの案件が対面形式のプレナリ会合での承認を要件とする運用であった。
しかしながら、2020年初めからの新型コロナウイルスの感染拡大に伴う各国の対策強化により、会議開催地に集合する対面形式でのプレナリ会合の開催が困難となった。このため、ISO、IEC、ITU-T等のデジュール国際標準化団体においても、意思決定を含むすべての会合を遠隔会議ツールによるバーチャル形式とせざるを得ない状況となった。
本稿では、各デジュール国際標準化団体のバーチャル会合の運用状況を概観し、意思決定プロセスの規則改訂や浮かび上がった課題についての状況を報告する。

COVID-19パンデミックの感染症対策に活用されるICT技術としてOECD加盟国、その他の国で実施されたソリューションを例示する。また、ICT技術を活用した公衆衛生上の緊急事態対応に関連する標準化の動向について概観し、AI、ビッグデータ、IoT等の最新デジタル技術を駆使する方式がISO等に提案されていることを示す。更にCOVID-19対応ソリューションに関してWHO、欧州等で議論されているプライバシー保護に関する議論動向も概観し、ICT技術の公衆衛生上の緊急事態対応の標準化には、プライバシー保護の配慮が求められ、適切な感染症対策のデジタルソリューションの活躍が期待されることを示す。

2020年度Covid-19下において，NTT研究所の事業継続のためにシステム観点で実施した対応について報告する．在宅での業務への急激な移行に対応し，リモートアクセス環境，同期コミュニケーションツールとしてのWeb会議システム，非同期コミュニケーションツールとしてのチャットシステムを整備した．導入に当たってはセキュリティに対する考慮をしつつ最短時間での導入を最優先にしたため，利便性を犠牲にした部分が多い．このうち，同期コミュニケーションツールについては急速に利用者の適応が進んでおり，インフラとして確立しつつあることが示唆されている．

COVID-19の全世界での蔓延により国際的な移動制限が実施されている。電気及び電子技術分野の国際規格の作成を行う国際標準化機関である国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission: IEC）もその影響により、世界各地から各国の標準化機関を代表する委員らが一堂に会して審議を進めるという形式を取ることが不可能になった。本講演では、主にIECの光ファイバ関連技術を取り扱う技術委員会(Technical Committee: TC)86での国内、国際標準化活動の変化を紹介すると共に、いわゆるNew Normal時代を迎えての国際標準化活動のありかたについて考察する。

数年前より農水省を主体とした農業データ連携基盤（WAGRI）の構築が進めらたり、欧州ではワーゲニンゲン大学のAutonomous Greenhousesプロジェクトが行われ、これを基軸とした商用製品もリリースされるなど、データドリブンでの農業が盛り上がりを見せている．一方で、現場にて普及・浸透されたデファクトスタンダードなソリューションはない．その背景となる課題感は、「リテラシーをもった人材の不足」「環境要因の根深さ」「データ定義の乱立」にあると捉えており、弊社による食農ビジネスを通じた「地域づくりや人づくり」にかかわった幾つかの事例を通じ、解決のアプローチを含め紹介する．

状態監視の主目的は，緊急の意思決定を必要とする「平常とは異なる」状態を早期に検知し，監視依頼者に通知することである．例えば，牛繁殖農家は牛を監視しながら分娩の介助や人工授精のタイミングに関する意思決定を行う．こうした状態監視の多くは専門性の高いデータを扱うためオープンデータはほとんど存在せず，かつアノテーションに専門知識が必要なことが，人工知能技術を用いた自動化への障壁となっている．また，意思決定に際しては，判定プロセスがblack-boxな予測システムは使い勝手が悪い．我々は，このような問題の解決のためには，専門家の意思決定プロセスを状態監視モデルに組み込みながら，専門家によるアノテーションのみに頼らずに学習できるようにモデルを設計するアプローチが有望と考えている．本稿では，提案アプローチを繁殖牛の状態監視に適用した事例を紹介する．

近年ネットワークやサーバの著しい処理性能の向上に伴い、AI(人工知能)を活用した取組みが様々な産業へ浸透している。本稿では、事前に制御ルールを定められていないデバイス等が特定環境下でその環境下の特徴に合わせて、所定の報酬を満たすための制御解を自律的に習得する環境適応型デバイス協調制御技術AIレゾナンス[1]にフォーカスし、その技術的特徴とサービス適用例及び実用化へ向けた取り組みについて取りあげる。

近年の深層学習をはじめとするAI技術の大躍進により，画像処理技術の分野では，2015年には画像認識における人間の認識率をAIが超越し，実用化への期待が高まっている．AI技術の実用化に際しては，課題解決の手段としてAIによる実装が有効な手段かを一般的にPoC検証を行うが，PoCの段階で幾度となく検証を行うこととなり，PoC貧乏のような用語までうまれている．そのように，AI技術の実用化を阻む大きな壁が存在するのが現実である．これは，殆どの場合，コンセプト詳細を言語ベースで落とし込むことに起因し，非言語である質的情報が欠落してしまうためにPoC貧乏に陥る．本稿では，画像処理技術の視座からこれら課題の要となるファクターXについて考察を述べる．

「感覚から心理までの情報処理プロセス過程の個人性」と定義される感性への工学的接近，すなわち感性工学は，人間重視社会の実現に向けた具体的・実行的な一方法論であると言え，今や，感性を共通のキーワードに，広く人間に関する学生的な研究領域を包括するに至る。感性工学の進展とともに，感性の計測はその基幹技術の一つに位置づけられ，特に生理指標に基づく感性計測は，工学的応用を目的とした感性の客観化・定量化への要求を背景に，様々な分野での発展が期待される。本講演では，AIを用いた心臓血管系・温熱系指標に基づく感性計測・モデリングについて，著者らによる本手法の応用事例を紹介する。

多様なセンサを搭載したIoTデバイス、コネクティッドカー等の普及に伴い、実世界から時々刻々と収集・蓄積されるデータが溢れつつある。実世界データを解釈し、様々なサービスへ活用するニーズも増えており、膨大な実世界データからリアルタイムに状況を認識し、さらに適切な判断のもとシステムを制御するためにAI・機械学習が導入されて始めている。本稿では、その一例としてスマートフォン位置情報から生成される人流データへのAI適用の取り組みを紹介すると共に、実用時の課題について議論する。

本稿は，近年社会問題となっている熱中症に対する予測を，NN，回帰モデル2つのアプローチで予測した事例紹介である．熱中症は，体内における熱バランスの崩れや脱水症状が要因となり発症し，その救急搬送人員数は年々増加傾向にある．外気温やWBGTとの相関がよいといわれているが，その発生機序は外部環境のみならず，年齢や活動状況などが大きく影響を与えるため，そのリスク予測は単純ではない．本稿では， 既存の救急搬送者データを用いてリカレントニューラルネットワークと非線形回帰モデルを用いて名古屋市全域，および行政区ごとの熱中症搬送者予測モデルを構築し，両者を比較する．

We propose a physics-informed deep convolutional neural network (CNN) for the super-resolution (SR) simulation system that consists of the combination of the CNN for SR and a physics-based meteorological simulation. The CNN is trained using pairs of high-resolution (HR) and low-resolution (LR) images created from meteorological simulation results for different resolutions so that it can map LR simulation images to HR ones. In the developed physics SR for temperature distribution image, building height map and sunshade map, in addition to the temperature map are utilized. We performed HR micrometeorology simulations on a supercomputer to obtain datasets for training and evaluating the SR. The results show that the present physics SR outperforms the image SR by as much as about 40% in the case with a spatial scaling factor of 4 for temperature distribution images.

はやぶさ２の小惑星サンプルリターンミッションに代表されるように，近年の宇宙探査ミッションは高度化を続けている．地上では計算機性能が向上するにつれ，エッジコンピューティングの概念が浸透してきており，宇宙開発においてもエッジ，すなわち探査機側で高度な処理を行うことが求められる．特に宇宙空間では地上局－探査機間の通信回線が非常に細いことから，探査機側でのエッジ処理はミッションの高度化に有利である．一方で，宇宙空間で深層学習をはじめとした高度な処理を行うには宇宙空間ならではの制約が多く存在する．本講演では宇宙空間における環境の制約やエッジコンピューティングの事例について述べ，また宇宙空間における深層学習の利用例として，開発中の宇宙機自撮り用
小型スマートカメラについて紹介する．

Aiありきのプロジェクトは失敗する。企業にとって価値を生まないプロジェクトには資金は配分されない。企業システムではAIの工数は１０％程度でその他の作りこみが価値判断になる。現在の深層学習の技術は数理的な支配方程式でモデル化できない事象をモデル化する技術と割り切って応用を考えれば応用分野は無限にある。Googleの囲碁システムや自動運転は特別な応用で一般企業では手は付けられない。人間の五感即ち、目、耳、蝕感の処理は高性能センサーと組み合わせ、AIで処理すればイノベーションになる。AIプロジェクトの成否はプロジェクトの企画にある。