国立研究開発法人情報通信研究機構はBeyond 5G研究開発促進事業の執行機関として、委託研究開発を実施している。その狙い及び製品・サービス化を目指した、知財化・標準化の支援等の取り組みを紹介する。

Beyond 5G推進コンソーシアム　白書分科会では，ビジョン作業班と技術作業班の2つの作業班にて，Beyond 5Gのユースケースや通信の要求条件と技術を「Beyond 5Gホワイトペーパー第1版」（以下，本白書）としてとりまとめた．Beyond 5Gや6Gに関するホワイトペーパーは国内外のさまざまな国や機関から発行されているが，本白書の特徴は，Beyond 5Gが社会基盤として広く使用されることを念頭に置き，通信業界だけでなくさまざまな業界の現状の課題や将来への期待から見えてくる将来のユースケースとBeyond 5Gへの要件を導き出している点である．
本稿では，本白書に記載したBeyond 5G時代のユースケースやBeyond 5Gに求める性能要件について概説するとともに，Beyond 5Gを象徴する概念図についても紹介する．

6Gに向けた最新動向と技術展望 ～みんなでつくる6G～

6Gの実現に向けて，深層学習が物理層からアプリケーション層まで，各層で検討されている．また，クロスレイヤ最適化への適用も検討されている．
本稿では，6Gの実現に向けて検討されている深層学習に基づく信号処理のいくつかを紹介する．

移動通信分野では、2030年をターゲットとした第6世代移動通信（6G）に向け、既に活発な研究開発の取り組みが開始されている。6Gは、大量のデータを活用した高度のアプリケーションの実現により、Society5.0に示される様な私たちの生活や社会を高度化するための重要な技術基盤と考えられている。この様な大量データの利活用を、あらゆる場面で実現できるようにするため、6Gでは、さらなる高速、大容量、低遅延/同期、場所によらず安定したエリア構築、高効率/省電力化など、性能・効率や柔軟性などの観点で従来システムを凌駕するシステムを目指している。
本稿では，この様な第６世代移動通信システム（6G）に向けた無線通信技術の取り組みについて述べる。具体的には、将来に向けた技術開発として当社が現在取り組んでいる総務省研究開発、NICT研究開発など複数のプロジェクトのうち、無線技術と関連の深い、Sub-THz帯技術開発と中継技術、基地局シェアリング技術等に関する取り組みを中心に概説する。

This presentation will introduce an overview of 6G vision and technology under research and its latest progress. It includes the overall vision, use-cases/usage-scenarios, potential spectrum, key capabilities and also the target values from Huawei point-of-view. The key 6G technology pillars such as networked sensing, network AI, and sustainability are explained in details. Lastly, the study on IMT-2030/6G in ITU-R and the latest progress are also introduced.

The deployment of 5G systems has seen been expanding rapidly in parallel with enhancements introduced in Rel-16/17 and planned for 5G-Advanced (Rel-18+). 6G is expected to continue this evolution path. It is important to ensure the success of 5G to obtain lessens and learns from actual experiences in deployment. As we move to higher frequency, enabling mmW for mobile communication must be achieved.

Society 5.0 構想の中核となるサイバーフィジカルシステ ムは、物理空間に存在する物体や出来事をサイバー空間上 で再現し、膨大なデータの解析やシミュレーションとの統 合によって、現実世界の精緻な予測や制御を行うことを目 的としている。従来の地図では、主に地表の状態が2次元 平面上に簡略化された状態で表現されていた。これに対し てサイバーフィジカルシステムでは、地下や上空を含む三次元の現実空間とその時間変化が「デジタルツイン」とい う形で記述される。産業技術総合研究所では、点群・ BIM ・メッシュといった静的三次元データを統合するデジ タルツインプラットフォーム 3DDB の開発をすすめてい る。この 3DDB に動的な移動体の情報を取り込み、リアルタイム表示や長期解析のためのデータ蓄積を実現するためにすすめている開発の概要を紹介する。

惑星探査機が目的天体へランデブーしたり着陸したりするためには、様々な航行技術が必要となる。航行技術は、探査機の現在位置を知る航法技術、目標定点までの軌道を計画する誘導技術、計画した軌道通りに制御する技術に分けられる。これらについて、実際の探査機への応用例も交えながら、説明する。

国内では、例えば2015年に「小型無人航空機に関わる環境整備に向けた官民協議会」 が、2018年には「空の移動革命に向けた官民協議会」 が設立され、ドローンによる物流課題等の解決や、電動垂直離発着機(eVTOL)等による空の利用の拡大により都市部での新しいサービスの実現や離島山間部等での各種課題の解決などを目的に、そのための環境整備が図られている。
国内で”次世代空モビリティ”と言われている本分野は、世界においてはAdvanced Air Mobility(AAM)やUrban Air Mobility(UAM)の言葉を当てられて議論されている。
大会当日は、AAMやUAMに特に目を向け、世界的な議論のスクリーンショットを提供し、特に航行技術に関する専門性をお持ちの大会参加者様に、国内の次世代空モビリティ実現に欠いている安全航行のための知見をいただけるよう、その足掛かりのひとつになれるよう努めたい。

近年のドローンの飛行数増加に伴い，ドローンと有人航空機，特にドローンと近い低高度を飛行するヘリコプタ等との空中衝突リスクが懸念されている．このリスクを緩和するため，ドローンのための空中衝突防止システムの議論が進められている．既存の有人航空機においては，空中衝突防止装置 (Traffic alert and Collision Avoidance System: TCAS) と呼ばれる装置が普及しており，ドローンのためのシステムも，TCASを背景とした標準化・研究開発が行われている．本稿ではこのような背景を踏まえつつ，ドローンのための空中衝突防止システムの標準化・研究開発の状況について紹介する．

近年、他のモビリティー分野と同様、船舶海洋工学、いわゆる造船工学分野でも、自動運航に向けた動きが活発になっている。「船の運航の自動化」と一口で言っても、実際には運航のフェイズごとに難点や課題が異なる。ある港から別の港に向けて航行する場合、港湾内で障害物を気にしながらの離着桟操船、輻輳する海域を他船を避けながらの操船、障害物の少ない海域で燃費を考えての操船、というように、各フェイズでの運航で、重視をしなければならないことが大きく異なる．筆者の所属する研究室である「船舶知能化領域」では、特にこれらの運航フェイズの最初と最後に位置する、離桟・着桟の自動化技術の開発に力を入れている。本稿では、これらの研究の一端を紹介する。

埼玉工業大学が取り組んでいる自動運転バスの開発と実証実験についてお話する。

近年，九州地方などでは梅雨末期に持続的かつ時間雨量が比較的大きい降雨が発生し，これに伴う災害で多くの被害が報告されている．降雨現象は大気中の水蒸気が凝結して地上に落下するものであり，大気中の水蒸気量の情報は気象予報にとって有益な情報の一つである．本発表では，水蒸気量の連続観測で活用されているGNSS (Global Navigation Satellite System)について，観測概要の紹介と今後の展望を示す．

2030年以降，国内の通信事業においては，省エネ，再生可能エネルギーの大規模導入やオール光ネットワーク（APN）の実現により，2040年に100％カーボンニュートラル達成を目標としている．大規模な変革と共に，電磁環境やEMCの課題も大きく変わっていくと考えられ，中長期規模でこれらの変革を予想し研究開発テーマに挑戦していくことが重要である．本稿では，サステナブル社会への変革に備えて，今後想定される通信サービスの変化に伴う通信EMCの技術課題を予想している．

ウエアラブル機器は人体各部に直接装着するため、発生するESD現象は、国際規格で規定するESD試験が想定する適用範囲とは異なり、電子回路が受けるストレスを試験で再現できていない。これまでの先行研究では、頭部、腰部、上腕部に装着したウエアラブル機器からの放電電流測定からエネルギーと人体インピーダンスの関係を解明してきたが、放電電流の立ち上がり時間から周波数領域を確認してその違いについてまとめた。規格で優先して用いる接触放電方式と実際のウエアラブル機器で発生する厳しい気中放電の現象を明らかにすることで、今後のウエアラブル機器のESD耐性の課題を模索する

ドローンをはじめとする次世代自律移動体の運用に対して，5Gの技術が多く用いられている．一方で，次世代自律移動体内部から発生する電磁雑音が，通信及び制御に用いられている5Gの電波に妨害を与える恐れがある．このようなEMC問題は古くから存在し，機器自身から発生する電磁雑音による無線通信への干渉について考慮することが重要である． 本検討では複数の統計的に独立な成分から構成される波形から特定の成分を抽出する統計的手法である独立成分分析に着目し、EMC問題への応用の妥当性を検討するため，携帯電話の割当周波数及び電磁雑音を想定した複数の周波数帯域が混合された電磁波の測定結果に対し，独立成分分析を用いて各信号成分の抽出を行った.

青少年の電波ばく露と健康影響に関する大規模な疫学研究が実施されている。本論文では、同疫学研究のばく露量推定に用いられる携帯型個人ばく露計について、被験者に近接配置された際に人体による反射及び遮蔽影響が受信特性に与える影響を定量的に評価した。

電磁妨害波による無線通信システムの通信品質の劣化は，その電磁妨害波の振幅確率分布（APD）と高い相関があることから，APD測定器は国際無線障害特別委員会（CISPR）のCISPR16-1-1において，EMI適合性試験に用いる妨害波測定用受信機に備えるべき測定機能として規定されている．APD測定では2つの量，「妨害波包絡線の振幅」対「超過確率（超過時間率）」の関係が得られる．妨害波包絡線振幅に関する測定不確かさはCISPR 16-1-1に規定されているが，超過確率の測定不確かさは明確にされていない．よって，本報告では，市販のAPD測定器を使用し，統計的性質が既知の信号を用いて超過確率に関するAPD測定の不確かさの実験的評価を行い，不確かさの扱いについて考察する．

本報告では，核融合科学研究所の大型ヘリカル装置で使用されているミリ波ジャイロトロン発振器(周波数: 77 GHz, 最大出力: 1~1.5 MW/2秒)を対象とし，ホーンアンテナを用いて設置場所での電磁環境を定点調査した．その結果，発振器からおよそ30 m離れた場所での漏洩電界の周波数は，77 GHzが最も強く，そこから数 GHz離れた両側の周波数領域にも微弱なスプリアススペクトルが確認された．また，同じ場所で，数十秒から数百秒の発振運転に伴う漏洩電界(最大実効値: 数 V/m)が観測された．電界の漏洩箇所は，発振器を構成する接地電位の電子ビームコレクターと，その他の部位とを電気的に絶縁するために具備された窒化ケイ素製絶縁部と推定された．

高精度に時刻を同期するTSN（Time-Sensitive Networking）システムで同期異常が発生した際の異常要因特定が困難との課題に対し、機械学習を使用した異常要因推定方式を検討、評価した結果を報告する。IEEE 802.1AS-2020で規定されているネットワーク時刻同期プロトコルの概要を説明し、機械学習により時刻情報の変動を予測することで異常箇所を推定する方式を説明する。最後に評価結果として、マイクロ秒オーダの同期異常ケースに対して、90%以上の要因推定精度を実現したことを報告する。

5G/6G等に代表される情報通信技術の進展に伴い，Cyber-Physical System (CPS)の実現が期待されている．CPSでは，実社会の様々なセンシングデータをサイバー空間上で分析し，分析結果に基づいて実社会のシステム制御やデータ流通に活用する．NTTが近年提唱するIOWN構想においても，光ネットワークを中心とした情報処理基盤の高度化により，CPSを用いた社会インフラの実現を目指している．著者らはCPSの中でも特に遅延・信頼性要件に厳しいミッションクリティカルサービスを提供可能な共通基盤の研究開発に取り組んでおり，実社会とサイバー空間を繋ぐネットワークにTime-Sensitive Networking (TSN)の活用を検討している．本発表ではTSNをCPSへ適用する上での課題と，研究事例について紹介する．

イーサネットの適用が進んでいる産業分野では，制御通信と情報通信のネットワークの統合化を目的に，TSN(Time-Sensitive Networking)による時分割転送制御が注目されている．時分割転送のタイミングを決定するスケジューリングにおいて，従来の方式は，遅延保証性能は高いが演算の複雑なStream-based方式と，演算は容易であるが遅延保証性能の低いClass-based方式に大別される．本稿では，ストリームの許容遅延やホップ数などの情報を元に，ストリームに応じて両方式を使い分けることでタイムスロット数を抑制しつつ，遅延制約の厳しいストリームの低遅延転送を保証するハイブリッドのスケジューリング方式を提案した．

自動車の開発効率化や燃費向上のため，共用した車載ネットワーク上で様々な要件の通信を分離して制御可能な Time-Sensitive Network (TSN) の適用が検討されている。本稿では TSN の車載ネットワーク適用に向け，車載向けTSNプロファイル標準の中で唯一信頼性確保と低遅延化の両方に貢献する規格であるIEEE Std. 802.1CB (CB) の実機性能評価結果を報告する。既存の高信頼化方式との性能比較評価および低遅延化効果の評価により，CBが車載向け通信の信頼性および遅延時間の要件を満たし，車載ネットワークへ活用できることを確認した。

Society 5.0では，クラウド，エッジ，IoTデバイス群からなるIoTシステムとAI技術を活用して，エネルギー問題や超高齢化社会，地域格差等の様々な社会的課題を解決や，新たな価値の創造が期待されている．
しかしながら，サイバー攻撃の高度化，多様化により，社会インフラのサービス停止といった甚大な被害が発生するようになり，IoTシステムにおいても「ゼロトラスト」を前提としたシステムの設計，配備，運用が急務となっている．
本講演では，ゼロトラストIoT (ZT-IoT)システムの実現を目指し，システムソフトウェアに関する研究課題について議論する．

IoTは，人の介在しない通信，すなわちM2M通信を自発的に行うのが特徴である．将来は，IoTデバイス同士が，相互に通信することが想定だれる．人が関わらないため，パスワードによる認証が使えない．証明書を使う方法では，メモリ内容をコピーされた場合，なりすまされるリスクがある．そのため，HWで実現される信頼の基点を用いる必要がある．信頼の基点に基づいて行うデバイス相互の通信について，TrustzoneなどTEEでの実装と比較して論ずる．

ICTの発達とともにサイバー攻撃が増加しており、企業のICTシステムのセキュリティ対策が重要である。しかし、企業の情報セキュリティへの対策が進んでいない。その理由は、企業におけるセキュリティ対策のための予算、時間が限られている中、セキュリティ対策のために専門家の多大な工数が必要であり、対策が困難である。これに対し、セキュリティ対策を自動化するセキュリティ自律運用を提案する。特にセキュリティ対策の自動化のため、ICTシステムの状況を把握し自動でリスク分析を行うサイバー攻撃リスク自動診断と、セキュリティ対策案からシステム構成を自動的に導出するセキュアシステム自動設計の取り組みを紹介する。セキュリティ運用の各プロセスを自動化することで対策工数、時間を大きく削減することができる。さらに自動化プロセスを組み合わせることで、ICTシステムをセキュアに維持することができる。

サイバー攻撃の激甚化、リモートワーク・クラウド利用の普及に伴い、「”すべてを信頼しない”ことを前提にセキュリティ対策を行う思想」であるゼロトラスト（ZeroTrust） が急速に普及している。一方で、ゼロトラストを充足する要件やベストプラクティスは必ずしも定まっておらず、現在も様々な提案や議論がなされている。本発表では、アメリカ国立標準技術研究所（NIST）が 2020 年 8 月に正式公開したガイドライン「NIST SP800-207：ゼロトラスト・アーキテクチャ」や、近年アメリカ政府から発行された文献等を基軸に、ゼロトラストのあるべき姿や課題について紹介する。また、ゼロトラストに関連する日立の研究開発・運用等の取り組みについて紹介する。

近年、増え続けるサイバー攻撃のリスクに対応するために，サイバー攻撃の検知や分析，対策を行うセキュリティ組織である SOC (Security Operations Center)が設置される。Open XDR は，複数のベンダーのあらゆるセキュリティツールを統合し，攻撃の全体像を捉えることで SOC における課題である大量のアラートから重要なものを選別することを解決する.

DXが求められAI・機械学習が重要となっている今日では、学習用のデータが企業における競争優位性の源泉となり、多くの企業はインターネットを介して個人に関するデータを適切に収集・分析・活用している。一方、これらデータは個人のプライバシーにも関わり、近年の個人のプライバシー意識の向上や法規制の強化の影響から、適切なプライバシー保護が重要となる。
そこで、本講演ではDXにおけるプライバシー保護技術の動向を説明する。具体的にはデータを秘匿しながら処理する秘密計算技術や、データからのプライバシー侵害を防ぐための差分プライバシ技術について説明し、いわゆるBigTech企業における技術導入の動向などを説明する。

本講演では「優しい介護ケア」手法として知られるユマニチュード（Humanitude)を、センシング技術・計算科学・認知神経科学的手法を用いて解明しようとする我々の試みについて紹介する。ユマニチュードはフランスで開発されたケア手法で、見つめる・話しかける・触れる・立たせるの４要素からなる。これらを有効に組み合わせることにより、認知症の行動および心理的症状などの認知症の陰性症状を軽減し、向精神薬の使用および介護者の負荷を減らすことが可能である。計算科学的試みとしては、この介護技術をセンサや画像認識などを用いて自動的に解析・認識することで、介護現場や家庭介護環境でのスキル向上を自己学習できるシステムの開発を目指している。これには、現在のパターン認識では扱えない、高度な人のコミュニケーション認識手法が必要である。これが実現されれば、本プロジェクトでの目的にとどまらず、医療のAI化（コミュニケーションの処方）への展開など広い社会的効果が見込まれる。本プロジェクトは情報科学・ロボティクス・医学・脳科学の研究者からなる学際研究であり、その概要についても講演にて紹介する。

イノベーションの対象がビジネスから社会課題へと広がる中、住民や行政、学校、企業などの複数のステークホルダーが共創して課題解決を行うリビングラボに注目が集まっている。こうした活動では、参加者の多様性への配慮やCOVID-19の影響から、オンラインとオフライン、同期と非同期を適切に組合せたコミュニケーションが必要となる。しかし、適切なコミュニケーション手段の判断は難しく、現時点では各活動で試行錯誤している状況である。本講演では、筆者が参加しているリビングラボ活動を題材として、課題解決を目指すコミュニティにおけるコミュニケーションの役割という視点から、適切なコミュニケーションを考察する。

局所性と因果律に基づくオンラインユーザダイナミクスの理論モデルについて解説する

人（ワーカー、来街者、住人）、テナント、街区環境、街区運営者などのすべてのステークホルダにとって嬉しく（Well-being）全体が最適化された街を実現することを目指す取り組みの紹介です。

NECはこれまでのスマートシティ事業における活動や実績を通じて、スマートシティビジョン「世界に誇れる地域らしいまちの進化」を掲げています。スマートシティの社会実装を実現するための重要な要素のうちのひとつが、地域特有の課題を解決するための分野間データ利活用です。本セッションでは、分野間データ利活用を実現するための都市OSや目指すユースケース、それらを支える関連技術についてご紹介します。

1. 世界におけるスマートシティの潮流
2. 日本におけるトレンド
3. 会津若松における取り組み
4.今後の取り組み

現在，カーシェアリングやライドシェアリングのような新しいモビリティサービスが生まれている．また，Mobility as a Service (MaaS) のような複数の交通手段を繋ぐプラットフォームを生み出す流れも生まれている．この流れを受けて，モビリティシェアリングサービスの本質を明らかにするためのメカニズムデザインの研究として，カーシェアリングオークションに関する研究を紹介する．そして，その理論研究を社会実装したカーシェアオークション実験であるけいはんなNAISMoNを紹介し，これからの交通サービスの展望と課題を整理する．

IoTによってリアルな世界の情報が収集され，サイバーの世界でのデジタルツインが形成される．サイバーな世界では，シミュレーションや学習により，我々にとって住み良い世界を実現する方策が決定される．スマートシティにより，それがリアルな世界へと戻され，その結果がまたサイバーの世界へとフィードバックされる．このようなフィードバックが共進化を生み出して，住み良いリアルを作り出すことが期待されている．ここでは，リアルな世界で起こり始めたスマートシティへの取り組みとそれを実現するための情報基盤のあり方について議論したい．

3DセンサとしてLIDAR (Light Detection and Ranging) を複数用いてセンサネットワークを構築する。これにより、データを取得し統合することで、リアルタイムに実空間の3Dモデルを生成する。さらに、この3Dモデルをベースに予測的特徴を付与することでデジタルツイン (DT) 基盤が実現される。このDT基盤により事故リスクを予測することで、手動運転、自動運転いずれのモビリティにおいても、安全性を向上させることができる。

これまでの光ファイバ技術の国際標準について振り返り、近年のITU-TおよびIECにおける国際標準化の動向について概説する。また、空間分割多重伝送に向けた新たな光ファイバ技術に関する検討状況について紹介する。

海底光ケーブルシステムは国際間ネットワーク上の膨大なトラフィックを安定的に運ぶための重要な国際通信基盤である。海底光ケーブルシステムの需要はOTTと呼ばれるサービス事業者が海底光ケーブルシステムへの投資を開始し、益々高くなっている。同時に海底光ケーブルシステムの伝送容量を最大化するため、海底区間と陸上装置を別々に調達するためのオープンケーブルと呼ばれる標準化の流れが加速していった。本稿では、海底光ケーブルシステムで広く導入されているオープンケーブルシステムについて解説するとともに、現在ITU-T Study Group 15 課題 8で議論されている通信観測統合システムの標準化動向について紹介する。

光アクセスネットワークの標準化は，ITU-TやIEEEを中心に進められてきた．主にコンシューマ向けFTTH（Fiber to the home）を想定したPtMP（Point to multipoint）型のPON（Passive optical network），ビジネスユーザ向けサービスやモバイル基地局収容等に利用される一芯双方向PtP（Point to point）アクセスシステムが議論されてきた．それぞれ通信回線の高速，大容量化が進められてきたが，PONでは，多様なアプリケーションの異なるサービス要件に対応するためのスライシングの検討も進んでいる．また，ITU-Tでは，モバイル向けのDAS（Distribution antenna system）や MFH（Mobile fronthaul）等への適用を想定したRoF（Radio over fiber）の標準化も行われている．本稿では，ITU-T SG15での活動を中心に，PON，一芯双方向PtPアクセス，RoFの標準化動向を紹介する．

ITU-T SG15 WP2にて議論されている標準化トピックのうち、光基盤設備の接続性と保守・運用に関わる動向について概説する。

トランスポンダーとWSS/WXCのライフサイクルの違いやトランスポンダー機能の小型化によりオプティカルトランスポートネットワークとIPネットワークの導入モデルが多様化してきた動向と、その動向を支えるオプティカルトランスポートシステムのオープン化の取り組みを紹介する。

近年、5Gにおける低遅延・大容量を実現する次世代通信サービスにおいて、通信システム間の時刻情報を正確に一致させる技術（時刻同期技術）の標準化活動が活発化している。時刻同期技術はNTP(Network Time Protocol)が普及しているが、NTPよりも高精度で、マイクロ秒以下の精度を実現するPTP(Precision Time Protocol)の技術開発と標準化が近年進展している。PTPは4G以降、モバイル通信の高速化・帯域効率化を実現するために導入が進められてきたが、近年では通信分野以外にも金融、放送、電力分野等で利用が見込まれており、今後のデジタル産業や将来のBeyond 5Gの通信サービスを支える重要技術の一つである。本講演では、PTPを中心とした時刻同期技術の最新標準化動向を紹介する。

量子暗号通信の国際標準化がITU-TやETSI等の標準化団体で進んでいる。これらの議論の最新状況について、以下の内容で発表を行う。
1.量子技術の動向
2.量子鍵配送・量子暗号とは
3.量子暗号技術の国際標準化動向
4.ITU-T SG13 (Network)における標準化概要
5.ITU-T SG17 (Security)における標準化概要
6.ITU-T SG11 (Protocol)における標準化概要
7.QKD装置のセキュリティ認証にむけた取り組み

高速インタフェース標準化動向について報告する。

量子科学技術研究開発機構(QST)において技術開発を進めてきた複合型光ファイバーは、高エネルギーと大規模情報伝送の両方を扱うことができる光ファイバーである。この複合型光ファイバーは、核融合施設及び大型原子力施設における保守保全技術開発に役立つ特殊ツールとして誕生した。現在、本技術を基にした低侵襲レーザー治療機器を開発し、医療分野への展開を図っている。本稿では、これら医療応用について紹介する。

脳深部における低侵襲な蛍光画像観察の実現を目指し，スペクトル符号化法による単一ファイバイメージングシステムを構築した．本システムでは，伝送用のシングルモードファイバに長さ4cmのマルチモードファイバを融着接続した撮像用ファイバを用いて，撮像対象からの蛍光を分光計測し，得られた蛍光スペクトルから蛍光像を再構成する．被写界深度と解像度の評価を行い，ファイバ端から10mmの長作動距離では，6mmの深い被写界深度を有し，従来の内視鏡システムよりも高い解像度が得られる可能性があることを確認した．

CO2レーザは，古くから医療用レーザとして使用されてきた．しかしながら通常の石英ファイバが伝送路として使用できず，その適用範囲は限られている．赤外光伝送用の中空導波路は，CO2レーザ光を照射部位まで的確に伝送する可撓性のあるデリバリーデバイスとして注目され，これを用いた内視鏡下での早期消化管癌治療への適用が検討されている．本報告では，中空導波路の構造と特徴について概括するとともに，内視鏡下での使用を目的とした新な試みについて報告する．

金ナノ粒子中の局在型表面プラズモン共鳴を用いたバイオセンサとその周辺技術について解説する。光ファイバ端面に金ナノ粒子を固定化し、その表面に検出対象物質と相互作用を有する分子を固定化した。検出対象物質の結合は表面プラズモン共鳴状態の変化として現れる。具体的には、金ナノ粒子の色が変化する。特徴として、プローブ表面が小さく、微量での検出が可能であることがある。また、検出感度も伝搬型の表面プラズモン共鳴センサーと同等であることがわかった。

フォトニック結晶ファイバーに短パルス光を導入して発生するスーパーコンティニューム(supercontinuum: SC)光は、シングルモードであるため集光特性に優れ、顕微イメージングの光源としても適している。本講演では、SC光を用いて発表者らが開発したコヒーレント・ラマン散乱顕微鏡の紹介と、その生命科学への応用について発表する。

最近，水の吸収と散乱が小さい波長1.7um帯が「生体の第３の窓」として，深部イメージングに注目を集めている．我々は，波長1.7um帯に超短パルスファイバレーザーをベースとした高出力・低雑音な広帯域光源を開発し，それを用いて生体深部のOCTイメージングに成功した．また，同じ波長帯における超短パルスファイバレーザーを開発し，深部の多光子励起蛍光イメージングにも成功した．本講演では，高機能超短パルスファイバレーザーを用いたバイオイメージングについて，我々の成果を紹介する．

大規模クラウドは、多種多様なハードウェア、ソフトウェアによって構成されている。
このような大規模クラウドを商用サービスとして長期にわたり提供していくためには、物理設計や論理設計をし たものを実装してリリースするのはもちろんのこと、機能強化や品質改善に向けた継続的な開発検証や、日々拡大 していくサービス規模にも耐えうる運用が必要となる。昨今のソフトウェア、ハードウェア両面における各種技術 の標準化、水平統合により得た技術促進速度の反面、これらの組み合わせによる複雑さ爆発的に増加している。更 には、日に日に重要度が増しているセキュリティの対応により、これらの複雑性に拍車をかける構造となっている。
本講演では、エンタープライズ向け大規模商用クラウドサービスの提供の裏側でどのような実務がされているの かをまとめながら、上記のような複雑性を抱えた上で継続的に成長を遂げるための取り組み、今後解決すべき問題 点などを講演者の経験を交えながら述べる。

データセンターでのコンピューティング処理を担うサーバーについて、柔軟性・拡張性および電力削減の向上に向けた要素技術を、サーバーの内部アーキテクチャーから説明します。時間軸は、現時点から2020年代後半です。具体的には、２つの技術を取り上げています。１つはCXL (Compute Express Link)、CPUに近い周辺メモリー領域を拡張しかつアクセラレター・カード・デバイス間での直接通信・制御をすることで、コンピューティング全体の性能・効率・遅延を向上させる技術です。２つ目は、光半導体 (Silicon Photonics) が小型化されサーバーが光I/Oで直接接続されることによる、高速・低遅延・低消費電力の実現です。また、サーバーでデータをハードウェア・レベルで安全に扱うセキュリティー技術について、インテル® SGXを説明します。

GPUに代表されるアクセラレーターのさらなる活用や、メモリ・デバイスのより柔軟で効率的な利用を目的として、いま業界全体で新しいアーキテクチャーへの取り組みが行われています。この革新的で Disaggregated なアーキテクチャーは、必要なリソースを必要な時に必要なだけ割り当てることを可能とするので、メモリやGPUなどの高価なリソースを無駄なく有効に活用することができます。またCPUやGPUなどのアクセラレーターは、同一でコヒーレントなメモリ空間にアクセスすることも可能となるので、これまで必要だった異なるメモリ・デバイス間でのデータ移動が抑制され、結果としてさらなる性能向上および省電力化が期待できます。本講演では、こうした柔軟でより効率的な次世代コンピューター・アーキテクチャーを目指すオープン・スタンダード（Gen-Z および CXL）の最近の動向をお話した後に、実際の製品化の動きについてもいくつかご紹介します。

Composable disaggregated infrastructure (CDI)と呼ばれる，サーバ，ストレージ，ネットワークなどの単位で，大量のITリソース群をコンポーネントとしてプール化し，アプリケーション実装時には，必要なリソースを選択して容易に利用できる技術が注目されている．CDIの通信キャリアでの導入に向けて，通信キャリアで運用される通信サービス系システム，業務系システムの動向等を整理し，CDI導入時の運用課題について議論する．

本講演では、野生動物に添付したバイオロギング上でリアルタイムに行動認識を行う試みについて紹介する。小動物に搭載するカメラを備えたバイオロギングデバイスでは、バッテリ重量の制約上、常に映像を撮影し続けることは困難であり、生態学的に重要な発生頻度の低い行動を撮影することは困難だった。消費電力の小さいセンサで動物の行動をリアルタイムに認識するモジュールを搭載したバイオロギングデバイスを開発し、特定の行動（例：採餌行動）が発生したときのみカメラによる録画を行った。また、リアルタイムに認識された行動情報を用いた介入技術に関する近年の取り組みについても紹介する。

自然環境をモニタするIoT

IoTは「遠くに離れた現場をデジタルでつなげる」技術です。その構成要素はデバイス・通信・クラウドの３つであり、それぞれに入手性や利用のハードルが大きく下がっています。製造業を中心に活用され始めたIoTは小売りやサービス業、そしてMaaSなど多方面に広がっており、昨今では農業や漁業といった一次産業における屋外利用も増えてきました。本セッションではIoTプラットフォーム「SORACOM」をご活用いただいている20,000を超えるお客様の中から、屋外のIoT活用事例を通じて、自然環境モニタリングを今すぐ実現できる構成や、今後、自然環境のモニタリングに求められる考え方を皆さんと一緒に考えていきます。

本発表では，可視光領域で水中での光の伝搬損失が小さくなることに着目し，可視光デバイスを用いることで水中での測距が可能となることを示す．その上で，耐水容器に可視光デバイスを用いたLiDARを収容した水中LiDARについて紹介する．

世界人口の半数以上が住む都市は人工物に覆われており、自然との関わりの機会が乏しい。自然との豊かな関わりは人々の健康とウェルビーイングに貢献することから、樹林を訪れて散策を楽しんだり、農園で野菜を育てたり、身近な生き物の鳴き声を聞いたりといった自然体験を促進するための取り組みが求められている。しかし、取り組みに必要な日常的な自然体験行動の社会的データは著しく不足している。IoTによるセンシングは、都市の中でどういった人がどういった自然を体験しているのかを明らかにすることで、人と自然の関わりのモニタリングに貢献できる。本発表では、IoTコミュニティへの期待について、IoT専門家外の観点から紹介したい。

水産養殖業は、人口増加に伴うタンパク質不足、乱獲による海洋資源の減少・生態系の破壊といった社会問題に対する解決策として現在世界的に大きな注目を集めている。省力化・効率化が求められる水産養殖を持続可能とするため、昨今ではIoT・AIを活用した養殖活動のデータ化・最適化の取り組みが始まっている。しかし、海上養殖環境ではネットワークや電源の確保が困難なだけでなく、雨風など天候の影響も大きく、長期的な稼働を想定した電子機器にとって非常に過酷な環境である。本講演では、このような過酷な環境下でも365日安定して稼働するIoT・AIデバイスの実現に向けた弊社の取り組みについて紹介する。

近年、ネットワークに自律性を持たせることで、その柔軟・迅速な提供や、安定的・効率的な運用の実現を目指す、自律ネットワークの研究開発が盛んに取り組まれている。自律ネットワークを実現するには、監視・分析・計画・実行からなる運用工程の全体を自動化する必要があるが、このうち本研究では計画工程の自動化を目指し、特に利用者の要件に基づいてネットワークを含むシステムを自動的に設計する技術の研究開発に取り組んでいる。一般にシステムは、複数の多様な構成要素から成る。そして、これを構築者や各構成要素の提供者が期待する多様な要件を満たすように構成しなければならない。本稿では、満たすべき要件の種別を整理した上で、筆者らのシステム自動設計技術における要件の表現方法や、多様な要件を考慮した自動設計の実現方法について検討する。

近年，ネットワークアーキテクチャにおいて，ネットワーク機能の分離・細分化（マイクロサービス化）が進みつつある．このようなマイクロサービス化が進むと，ネットワークの設計や運用といったライフサイクル管理における負荷が増大することが懸念される．そこで，このようなライフサイクル管理に対し，自動化技術を導入することによって負荷を軽減し，より高度なネットワーク制御が実現されることが期待されている．本稿では，マイクロサービス型ネットワークのライフサイクル管理の中で自動化技術を適用した事例として，オプティカルコントローラによる光パス設計と，AI/MLを活用したモバイルコア網における予兆監視について紹介する．

AIによる運用（AIOps：AI for IT Operations）を実現するために、AIに環境変化（例：新規装置追加）をどう教えていくかが課題となります。NTTでは環境変化によるAIの精度低下を検出し、保守者にエスカレーションして、保守者の行動から自律学習を行う「AIティーチング技術」を研究しています。
現在の研究進捗状況を紹介します。

本講演ではソフトバンクが提供するセキュリティ運用サービスと、そのセキュリティ運用サービスの中でインシデント発生時の早期対応・品質維持のために進めているセキュリティオペレーションの自動化の取り組みについてご紹介します。

マルチクラウドも浸透し、増え続けるITシステムの保守運用に費やす時間も増えています。
IT人材不足が叫ばれる中、多様な障害アラートのコントロールや、障害の認知にはいまだ課題を抱えている現場も見受けられます。本セッションでは、イベント管理の考え方やその実現方法について解説いたします。

バックスキャッタ通信や、到来方向検知の送受信機をソフトウェア無線技術を用いて開発する場合、通信プロトコルの制約上、早い応答が求められる場合や、連続した通信フレームの処理が求められる場合には、信号処理をCPUによるソフト処理とFPGA等によるハード処理に適切に分離する必要がある。同相合成が必要な場合には汎用ソフトウェア無線装置を組み合わせる際の工夫も必要である。本発表ではUSRPを用いて実施しているバックスキャッタ通信システムの信号処理と実装について紹介する。

ソフトウェア無線の利点の１つは，新規に無線モジュール・ボードを設計・製造することなく，新しい無線技術や機能を実現可能であることである．
設計者・研究者は，ソフトウェア無線機に対して目的に応じた再定義を行い，既存の無線モジュールには含まれない機能や新しい無線規格に向けた技術を検討・評価することができる．
本稿は，ソフトウェア無線（Software Defined Radio : SDR）による無線LANシステムに関して，ナノ秒レベルの高精度な時刻同期と測位，人の動きを検出する無線LANセンシング，そしてポスト11be規格に向けた全二重MIMO伝送など，の研究開発事例を用いて紹介する．

通信規格が多様化するとともにハードウェア、主に集積回路の設計・実装コストがこれまでになく高まっていることにより、複数の通信規格に共通のハードウェアで対応することを目的としたソフトウェア無線（SDR; Software-Defined Radio）技術への要求は近年ますます高まっている。
本講演ではSDR無線機の実現に向けた受信機アーキテクチャ、ミキサファースト受信機、Nパスミキサ、ノイズキャンセル受信機等の技術についてそれらの詳細に触れる。

5GのモバイルネットワークのオープンソースソフトウェアであるOAIの紹介し、OAIの5G基地局機能とソフトウェア無線接続に関して解説する。更に実際にOAIのgNBとソフトウェア無線機のUSRPを用いて、5GモバイルNWの接続検証の結果を紹介する。

通信端末の小型化・高性能化に伴って，様々なアプリ ケーションが無線通信を介して利用されるようになった．将来的に多様なアプリケーションをあらゆる場面でネットワークを介して利用可能とするためには，大容量性，低遅延性，柔軟性を兼ね備えたネットワークが求められる．我々は，Analog-RoFのネットワークの柔軟性を最大限に高めることで，ネットワークアーキテクチャを抜本的に再設計することを目指している．本稿では，大容量性，低遅延性，柔軟性を兼ね備えたワイヤレスアクセスネットワークを実現することを目的として，光と無線を密結合したアーキテクチャである「ソフトウェア定義光ファイバ無線 (SD-RoF: Software Defined Radio-over-Fiber)」を提案する．

日本政府は,目指すべき未来社会の姿として,サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより,経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会である"Society 5.0"の実現に向けて取り組んでいる.
情報通信分野を所管する総務省では,Society5.0の基盤となる情報通信インフラとして,先端光伝送技術やBeyond 5Gの研究開発,社会実装に取り組むとともに,情報通信インフラの消費電力増大に対応し,カーボンニュートラル達成に向けたエネルギー消費の抑制技術の開発にも取り組んでいる.本稿では,Beyond5G,グリーン社会実現に向けた情報通信技術政策の動向について概要を述べる.

IOWNは光技術などを活用することで、既存のITインフラでは支えることが難しい次世代の広帯域・低遅延のサービスの基盤となるコミュニケーション、コンピューティングインフラを実現していく技術・サービスである。オールフォトニクスネットワークやディスアグリゲーテッドコンピューティングは、高性能、低遅延はもちろんのこと、低消費電力への貢献も期待できる。IOWN Global Forumを核に開発・実証を進めている。

カーボンニュートラルの重点分野である半導体・情報通信産業では，「グリーンbyデジタル」と「グリーンofデジタル」を両輪で推進することが求められている．光通信システムは情報通信を支える主要インフラの一つであり，その省電力化は重要な課題である．特に，基幹系光通信システムでは，2010年前後からデジタル信号処理（DSP）により支援されたコヒーレント光通信が広く用いられており，DSPによる省電力化とDSP自体の省電力化の双方を強く意識した開発が続けられている．本稿では，基幹系光通信システムの消費電力を最適化する際に，光変復調方式が与える影響について考察し，省電力化に有効な技術を示す．

PETRAではNEDOによる委託事業「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発」のもと「ディスアグリゲーション型次世代データセンタに適用する光電ハイブリッドスイッチを用いた高速低電力データ伝送システムの研究開発」に参画し、データセンタにおけるネットワークの低消費電力化を目標に研究開発を推進している。その概要について紹介する。

光トランシーバの低消費電力化に向けて、電気DACの機能を光側にオフロードする光DAC送信器を試作し、実証実験により省電力化の検証を行った。シリコン導波路で形成された、PIN-RC型のセグメント変調器とCMOSインバータドライバをフリップチップ実装により集積した光DAC送信器を試作し、128Gbps 16QAM動作時に2pJ/bitの高い電力効率を実証したので、これを報告する。

大容量伝送と低消費電力を両立する次世代の光通信ネットワークを実現するためには, 高速かつ低消費電力な受光素子が不可欠である. アバランシェフォトダイオード(APD)はアバランシェ増倍を用いた信号増幅機能を持つため, SOA集積pin-PDに比べて消費電力において優位である. 特にInP材料を用いたAPDは, GaInAs吸収層による高受光感度を幅広い波長範囲で実現できるため, さらなる低消費電力化が期待できる. 我々は,コヒーレント伝送向けに開発してきたバットジョイント導波路型構造をAPDへ適用することで, 大容量・低消費電力な光通信ネットワークの実現に寄与する, 広帯域・高受光感度なバットジョイント導波路型APDを開発したので, これを報告する.

ハイパースケールデータセンタやハイパフォーマンスコンピュータ(HPC)の実行性能向上に向けて、光インターコネクションはボードエッジからLSI近傍(NPO: Near Package Optics)へ、更にはLSIパッケージ上(CPO: Co-Packaged Optics)への光トランシーバ集積化へと進んでいる。今回、NPOをターゲットとした、超薄型光トランシーバモジュールを開発した。Siフォトニクス技術を用いたチップスケール超小型光トランシーバチップを搭載し、ファイバ端を斜めカットしたファイバアレイの適用による低背光接続を可能としたことで、高さ2.3mmの光トランシーバモジュールを実現した。

データセンタにおけるトラフィック・消費電力は年々増加しており、データセンタにおける通信機器の省電力化は急務である。我々は、データセンタ内の光通信の高速化・低消費電力化に適した光源デバイスとして、InP系メンブレン光デバイスの研究開発を進めている。本デバイスは、SiO2や空気などの低屈折材料でInP系薄膜を上下から挟むことで活性層へ強く光を閉じ込めることが可能となり、レーザの高速化・低消費電力化が実現できる。また、シリコンフォトニクス技術の活用により各種デバイスを集積化することで、モジュールの小型化・アセンブリコストの低減も期待できる。本稿では、熱酸化膜付きSi基板上で作製したメンブレンレーザアレイの低消費エネルギー動作、多波長光源化について述べる。

海水中で電磁波は大きく減衰することが知られており，水中のロボットの通信には広く音波が用いられている．しかしながら，水中音響通信では，遅い伝搬速度や狭い帯域幅といった伝搬の物理的制約があるために，データシンボル間でのドップラーシフトによる位相変化が大きい．また，遅延時間，振幅がともに大きいマルチパス波が受信されるため，時間変動の大きいマルチパス波が受信される，厳しい2重選択性通信路と言える．
発表者らは，上記のような時変動するマルチパス環境を想定し，マルチパス波の早い位相変化の影響を抑制する手法を考案した．本発表では，シミュレーションによる提案手法の復調性能の改善効果について報告する．

最近の海中調査では遠隔操作無人探査機(Remotely Operated Vehicle, ROV)と呼ばれる水中ロボットの活用に注目が集まりつつあり，水中ロボットの位置把握に必要な技術として水中音響測位がある．本稿では水中ロボット搭載型SBL(Short Baseline)方式の音響測位装置を開発したので報告する．本装置は水中ロボットに備え付けた深度センサやテザーケーブルを利用して装置構成を簡素化し，かつ音波反射に強い距離計測手法を採用している．

海中における電波を利用した無線通信について、これまでに行った実施した実験の内容を紹介する。

本稿では，伝送速度1Gbps×伝送距離100mの実現を目指して行った水中光ワイヤレス通信の方式検討，方式検討に基づいて開発した水中光ワイヤレス通信装置について紹介する．また開発した水中光ワイヤレス通信装置を用いて，相模湾沖水深900mの深海において1Gbps×100mの水中光ワイヤレス通信実験に成功したので報告する．また深海試験の事前試験として行った大型水槽での1Gbps×100mの水中通信実験についても紹介する．

本研究では，周波数領域で適応変調するDCO-OFDM信号と時間領域で適応変調するNRZ-TDHP信号とNyquist-TDHP信号の3種類を対象に，同信号帯域かつ同アナログ帯域狭窄の条件の下で，送信PAPR特性及び受信SNR対ビット誤り率についてシミュレーションによる比較検討を行う．送信段階および受信段階の2つの観点から損失および帯域狭窄が支配的な水中伝送路を対象とした適応変調信号として，シングルキャリア伝送とマルチキャリア伝送のいずれを選択するか指針を明らかにした．

水中機器への給電は有線かバッテリーであった．配線は設置負荷や動作範囲制限があり，バッテリーは稼働時間制限やその交換や充電作業が負荷となる．そこで無線給電，特に小型高効率かつ遠隔適用可能な光ビームを用いる光無線給電が有望である．この水中光無線給電は世界的にもまだごく少数の検討が始まった段階である．
青や緑色の光は水中損失が少なく数10mまでの適用が期待できる．青色半導体レーザの高出力化や高効率化の進展から光源は準備できたといえる．一方，受光側の太陽電池は青色向けがなく効率が低い．また太陽電池の光照射は均一強度が必要となる．水中光無線給電の応用や実現に向けた課題や今後の進展の可能性について議論する．

近年、可視光LED照明の開発が進み、可視光は水中でも100m以上伝搬することから、照明用の可視光LED素子を用いた水中光無線通信装置が提案されている。我々の研究グループでも水中における可視光無線伝送技術の開発を実施している。現在、平面マトリックス状に並べた発光素子を、主・補符号のペアで発光輝度を変化させ、素子の輝度を大きさとして画像認識することができる無線伝送システムの試作をしており、カメラ受信側で白飛びしても情報を得ることを可能としており、カメラの露出アンダー・オーバーに強いイメージセンサ通信が実現できる見通しである。