未踏の周波数領域であるテラヘルツ帯に挑戦する次世代通信技術に向け、これまでの無線と光、エレクトロニクスとフォトニクスの知見や技術を活用した新たな基盤技術（無線・光融合基盤技術）創出の必要性について、JSTの研究開発戦略センター（CRDS）でまとめた戦略提案書を基に紹介する。

第5世代移動通信システム（5G）の普及が進みつつある中、次世代のBeyond 5G/6Gの研究開発が既に開始されています。2019年の世界無線会議（WRC-19）では275～450 GHzの周波数帯において、合計137 GHzもの帯域が、陸上移動業務と固定無線業務に特定されました。Beyond 5G/6Gでは、この様な高い周波数（テラヘルツ）も新しい帯域として利用し、より高速な無線通信を実現しようと言う機運が高まっています。現在行われている国際電気通信連合 無線通信部門での技術トレンド調査にもテラヘルツ波の活用が盛り込まれています。研究開発も世界各国において大規模に開始されているところです。講演では研究開発状況や今後の見通し、標準化動向などについて述べます。

NTTが提案しているIOWN (Innovative Optical and Wireless Network)構想とは、光を中心とした革新的技術を活用した高速大容量通信ならびに膨大な計算リソース等を提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤の構想であり、2024年の仕様確定、2030年の実現をめざして、研究開発を推進中である。このIOWN構想では、ネットワークから端末まで、すべてにフォトニクス（光）ベースの技術を導入したオールフォトニクス・ネットワークおよび光電融合デバイスが不可欠となる。本講演では、これらのハードウェアに関する研究開発の取り組みを紹介する。

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本稿では、第6世代移動通信システム(6G)に必要とされるミリ波帯・テラヘルツ帯のフェーズドアレイ無線技術について紹介する。現状の28GHz帯や300GHz帯のCMOSフェーズドアレイ無線機について紹介し、また、フェーズドアレイ無線技術の可能性について理論的考察を行う。

次世代無線通信において利用が想定されている異常反射メタサーフェスについて概説した．非局所能動損失設計により材料基板内部の損失を除くとほぼ100%の効率を達成している．140GHz帯において異常反射メタサーフェスを試作し，45, 60, 75 deg設計において材料損失を含めた効率がそれぞれ88、84、82%となる高い反射効率を実現し，高精度計測による材料定数の実測により精度の良い設計が可能であることを実証した．

近年は医師不足や僻地医療などの課題があり、再び遠隔手術への期待が高まっている。2020年度からはAMEDと日本外科学会を中心に「遠隔手術ガイドライン」の策定が進められている。2022年6月に初版が発行され、医師の配置、通信の要件、手術ロボットに求められる機能要件、サイバーセキュリティ対応などが規定されている。
本発表では、AMEDプロジェクトで実施した遠隔手術実験を紹介する。手術ロボットおよび映像伝送装置について説明し、本プロジェクトで実施した遠隔手術実証実験について述べる。また、今後の通信技術に期待することを述べる。

筆者は2022年5月まで光電子融合基盤技術研究所（PETRA）の専務理事として、最先端光デバイスとそれらを集積・実装する技術を開発し、フォトニクスとエレクトロニクスを融合したデバイス、システムの技術開発に取り組んできた。本シンポジウムでは、筆者の現所属先であるアイオーコア株式会社を生み出したNEDOプロジェクト「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」（光エレ実装PJ）について、その概要を紹介する。光エレ実装PJは2012年9月～2022年2月に遂行された大型プロジェクトである。本プロジェクトの目的は、電気回路と光回路の特徴を活かした要素技術の実装・集積化による光配線・光素子の新たな機能創出を図り、情報機器の小型化低消費電力化を実現することである。さらにシステムレベルでの光配線技術の有効性を示すとともに、その事業化への道を拓くことを目指し、多くの成果を生み出すことに成功した。

次世代ネットワークを支える光無線融合技術の研究動向と今後期待される応用分野について概観する。これまでにミリ波帯を用いた滑走路や鉄道設備監視のための高精度レーダやインフラ向けの高速通信についての研究開発の例がある。これらは、既存のマイクロ波を用いた無線では困難であった高精度センシングや大容量通信の実現を目指すものである。ここ数年、ミリ波帯よりもさらに周波数が高いテラヘルツ帯への注目が集まっている。本発表ではテラヘルツと光の融合に焦点をあてて、要素技術の現状と課題について紹介する。

超伝導量子コンピュータの技術開発競争が加熱している。超伝導量子コンピュータは量子ビットの回路基板にのみ注目が集まりがちである一方で、量子ビット基板は超伝導体により構成された低損失なアナログの受動素子にすぎない。超伝導量子ビットを量子コンピュータにするためにはソフトウェア定義の量子ゲートをマイクロ波技術により実装する必要がある。本講演ではマイクロ波技術と超伝導量子コンピュータとの関係について概説し、課題と展望を紹介する。

窒化物材料は、NbやAlといった単元素材料に比べて表面酸化に対する耐性が高く、誘電損失の原因となる非晶質の表面酸化膜が形成されにくい。また、エピタキシャル成長した接合を作製可能でありトンネル障壁層での電荷揺らぎによる位相緩和を抑制できる可能性がある．さらには、TCがAlに比べて高いことも窒化物超伝導材料の魅力である。本発表では、窒化物超伝導体を用いた量子ビットについて、研究開発の現状と今後の展望について述べる。

超伝導デバイスを用いた集積回路のうち，磁束量子を情報担体とするディジタル回路は，極低消費電力で数十GHzの高速動作が可能である。これまでに，簡単ではあるが，プロセッサのような複雑な回路の動作実証がいくつも報告されており，量子コンピュータ周辺回路として有望である。本講演では，量子コンピュータに向けた超伝導高周波ディジタル周辺回路について，特に単一磁束量子回路を中心に最近の研究の現状と課題の解説を行う。

評価対象デバイスである超伝導量子ビットを∼ 10 mKに冷却し、室温から操作のためのマイクロ波を導入するには、希釈冷凍機内部の極低温環境下にマイクロ波の実験セットアップを構築する必要がある。そのためには、極低温で動作するマイクロ波コンポーネントが必要となる。本講演では、超伝導量子ビットを評価するために必要となる極低温用のマイクロ波コンポーネントについて述べる。さらに、セミリジッド同軸ケーブルを用いた希釈冷凍機内部における配線に関して、具体的な設計指針を示しながら議論する。

本報告では、HTSフィルタや低温LNAおよび断熱配線を用いた電波天文向け小型化受信ユニットの開発例を報告する。

極低温技術は，気象レーダ[1]，移動帯通信基地局[2]，宇宙システムや電波天文において，通信システムの低雑音特性を実現するために研究開発が進められてきた．近年は，量子コンピューティング分野[3]への応用で，さらなる注目が集まっている．特に，低雑音増幅器（LNA）は，受信機において，キーとなるデバイスであり，一層のデバイス性能向上と高温動作による経済化が望まれている．本研究では，動作温度77Kの超伝導フィルタとLNAの集積化[1],[4]を目的として，0.25m GaAs pHEMTファンドリプロセスを用いた6-10GHz帯LNA MMICの検討を行っている．　
極低温LNAの設計においては，極低温時のデバイスモデルの不正確さにより，シミュレーションと実測の差が大きい．本報告では設計精度の向上を目指し，GaAs pHEMT線形モデルにおいて，雑音源を含むすべての素子に半導体材料の温度特性に基づいた温度依存性を有する線形モデルを検討，提案している．モデルを用いて極低温LNA MMICの設計・試作，実測により，モデルの有効性を実証する．

半導体量子ナノ構造の結晶成長技術の進展により、将来の光デバイス応用の新展開に大きな期待が寄せられている。特に半導体量子ドットの光デバイス応用では高い成長技術の開発が急務の課題である。本講演では、量子ドットデバイスに必要な高密度で高均一なInAs/GaAs系量子ドットの作製技術の開発動向について解説し、特に最近著者らが注目している面内超高密度のInAs量子ドットのMBE成長技術について述べる。また面内超高密度量子ドットの特異な物性とその量子ドットレーザへの応用について紹介する。

半導体光デバイスのパイオニア領域として、far-UVC LED及びTHz-QCLの開発が注目されている。220-230nm far-UVC LEDは、強いウイルス不活化効果を有するだけでなく、生体に照射しても無害であることから、人が活動する空間で利用できるウイルス撃退用光源として重要である。また、THz-QCLは、透視検査や医療分野、環境計測、無線通信など様々な分野で期待されている。本発表では、AlGaN系far-UVC LED、並びに、GaAs系THz-QCLの開発について、結晶成長、デバイス設計、作製プロセスを含めた最近の進展について紹介する。

プラズマプロセスは半導体デバイス製造に不可欠な製造プロセスであるが加工表面に欠陥を生成するという問題があり、特にナノデバイスでは特性劣化の大きな原因になっている。その問題を解決して無欠陥加工のできる中性粒子ビームが各種デバイスで大きな効果をあげ、注目を浴びている。本講演では各種デバイスにおける中性粒子ビームの効果をお話しするとともに、特により欠陥制御が重要であるマイクロLEDへの展開についてもお話しする。

We will discuss photonic hybrid integration using transfer printing, which is based on pick-and-place operations with a rubber stamp and enables flexible assembly of photonic devices on chip without being limited by material compatibilty. We used the technique for integrating nanolasers and single photon souces with InAs/GaAs quantum dots on silicon photonic circuits processed in a foundry. In the talk, we will compare the transfer printing technique with other major hybrid integration techniques and discuss its prospects for hybrid-integrated photonics and integrated quantum photonics as well.

市販されているVRゴーグルやHMD（ヘッドマウンディスプレイ）と呼ばれるAR/MRグラスは、サイズが大きく　重たいものが多い。この為、屋外での使用や気軽に使うにはまだハードルが高い。ユーザーが日常的に使用できるようにするには、小型軽量でスタイリッシュなデザインが求められている。我々は小型軽量化の一端を担う為、従来品と比較し10分の１のサイズとなるレーザーモジュールを開発したので紹介する。

シリコンフォトニクス技術に代表される次世代の光デバイスでは、実装工程で扱うデバイスの薄化が更に進むと考えられており、ボンダ
ー装置を始めとする従来技術ではハンドリングが困難になると予想される。本講演では、次世代の実装技術として開発を進めているレー
ザ転写技術とその応用に関する取り組みを紹介する。

We report a micro-machined tunable VCSEL which is a potential example of miniaturized version of conventional bulk external cavity tunable lasers. Long coherence length and wide wavelength tuning at high speed make it a potential candidate for various field level applications.

ものづくりが複雑化する中、仮想モデルを中心に開発プロセスを進めるモデルベースデザイン/モデルベース開発は、設計開発を効率化する手法として採用されている。本講演では、その中でもLSI/FPGA向けのHDLコード生成機能にフォーカスし、ハードウェア/ソフトウェア協調設計、AI実装、速度・面積の最適化機能などの最新動向について解説する。

アナログ集積回路はその性能がトランジスタや受動素子のサイズ、製造プロセス、バイアス条件にも大 きく依存するため、設計が難しく多くの設計時間を必要とする。そのため、効率的な設計の一つの選択肢として計 算機による自動化が求められている。近年の機械学習の著しい発展は、アナログ集積回路設計のこれらの問題を解 決する一つの選択肢となっている。本稿では、アナログ集積回路設計に機械学習を用いる手法について報告する。

ロームにおけるモデルベース開発（Model Based Development）手法の活用事例を紹介する。事例 1 は、新トポロジーの AC/DC コンバータのシステム仕様決定、検証からプロトタイプボード作製までを一貫してモデルベース開発で実現した例である。モデルベース開発が有効に機能し、少人数、短期間でのプロトタイプ開発が実現できた。事例 2 は、モータ制御における適用例である。モータ制御ICの仕様検証では、高い品質の作り込みと手戻りの無い開発のために、モータプラントモデルを含めた全体システムの検証が重要視される。

仮想プロトタイプはSWの先行開発を目的とする技術であり、実機やプロトタイプを用いず仮想で設計を加速していく手法として様々な分野で適用されている。ここでは、急激に進化する仮想プロトタイプ技術がどのように発展してきたかを説明し、その適用範囲について紹介していく。Synopsysは仮想プロトタイプ技術のリーダーであり、この技術を用いたSW開発やHW/SW協調設計のため様々なソリューションを提供している。ここではSynopsysが提供するソリューションについても紹介する。

　IoTの普及に伴い、アナログな実空間(Physical space)とデジタルな仮想空間(Cyber space)を橋渡しするインタフェイスの重要性が増している。複雑性が増すCyber Physical System(CPS)のインタフェイスおけるミックスト・シグナル系の開発において、デバイス、回路、システムの協調設計が開発効率の改善に重要な役割を果たす。
　我々のグループでは、これまでにIoTのセンサノードで使用するための、低電力センサシステムとその回路の研究を行ってきており、小型・低電力のガスセンサ（分子センサ）システムを開発してきた。
　本講演では、これら低電力センサシステム、およびそのためのアナログデジタル変換器(ADC)などミックスト・シグナル回路の開発に用いた、回路とシステムの協調設計に関して報告する。

　半導体ナノ結晶の中でも, 近年注目されているのが「ペロブスカイト量子ドット」である. ペロブスカイト量子ドットは, ハロゲン化鉛ペロブスカイトバルク結晶を数 nmから20 nm程度に微小化した半導体ナノ結晶であり, 次世代の発光材料として最も有力視されている. 現在では, 赤・緑・青色の三原色のペロブスカイト量子ドットの高性能化に向け, 作製時に用いる前駆体種や配位子種等を中心とした研究が展開され, 分散液状態で100%に迫る高い発光効率や, 25 nm以下の狭線発光を達成している.
　本発表では, 当方の研究グループが保有するペロブスカイト量子ドットの多様な作製法に関する技術シーズとともに, そこで得られた各量子ドットの光学特性に関して紹介する.

有機薄膜太陽電池(OPV)は低コスト、室内光で発電可能などの特徴を持つが、光電変換効率(PCE)は無機系太陽電池やペロブスカイト太陽電池と比較して低く、更なる性能の向上が求められている。OPVの性能を向上させるためには、新たなp型およびn型有機物半導体の開発とp型有機半導体とn型有機半導体の界面構造を制御することが重要である。本発表では、これまでにOPVの性能向上のために取り組んできた(1) ペリレンジイミドを基本骨格としたn型有機半導体材料の合成、(2) 光誘起縮環反応を用いたコロネンジイミド薄膜の作製、(3)共有結合性有機構造体(COF)薄膜の作製について報告する。

鉛ハライドペロブスカイトは新しい太陽電池材料として目覚ましい発展を見せている。多くの場合、鉛ハライドペロブスカイト薄膜はウェットプロセスで作製されるが、真空蒸着法をはじめとしたドライプロセスによる成膜技術が向上すれば、積層化などの構造的な選択肢が増え、太陽電池だけに限らず多様なオプトエレクトロニクスデバイスへの展開にも期待が持てる。我々は、真空蒸着法を用いた鉛ハライドペロブスカイト薄膜の成膜手法の確立に取り組んでいる。講演では、異種ハロゲンのヘテロ接合面におけるハロゲンイオンの自発的な混合、およびヘテロ接合を利用した太陽電池の高性能化への取り組みについて報告する。

有機半導体や有機無機ハイブリッドペロブスカイトを用いた電子デバイスは，軽量・低コスト・フレキシブルなどの利点から注目されており，数多くの研究がなされている．一方で，その電気伝導メカニズムや結晶成長メカニズムなどについては無機半導体と異なる特徴が多くみられ，未だ研究途上である．我々は結晶成長メカニズムに関する研究や，薄膜構造が素子特性に与える影響などに着目した研究をこれまで行ってきた．また，最近では有機半導体の電子状態における電荷の局在／非局在といった特徴に注目して，理論モデルを構築することを目指した研究を行っている．本発表ではペロブスカイトおよび有機半導体の電子状態に関する我々の研究を紹介する．

コロイドQDとしては、有機溶媒などに分散したQDであり、光吸収のQDサイズ依存性、溶液プロセスとの親和性などの特徴を生かして、様々なタイプの太陽電池を作製することができる。特に、コロイドPbS-QDとZnOやTiO2などとのヘテロ接合型太陽電池が、最も注目されている。われわれは、赤外吸収コロイドナノ粒子（PbS-QD、AgBiS2QD）とZnOナノワイヤで構築するバルクヘテロ構造に着目してきた。バルクヘテロ構造とすることで、実行的なキャリア拡散長の伸長が行えるため、活性層の厚膜化とキャリア輸送の両立に効果的であり、QD層の吸収が弱くなる赤外領域の光電変換に有効である。本講演では、赤外光電変換の高性能化について、われわれの取り組みを中心に紹介する。

ドライエアーを照射するエアフロー法を利用してペロブスカイト薄膜を作製し、それをペロブスカイト太陽電池に適用した。未処理ペロブスカイト膜に比べ、エアフロー法で成膜されるペロブスカイトグレインサイズは小さくなるが、欠陥が少なくなり、セル性能にばらつきが小さくなる。また、ソルベントアニール法と組み合わせることにより、大きなグレインサイズを形成でき特性は向上する。

ペロブスカイト太陽電池には，「寿命が短い」という解決しなければならない大きな問題が指摘されている。本研究では、イオン液体（IL）を用いたMAPbI3ナノ粒子（NP）膜を成長させ、その上にトリプルカチオン（CsFAMA）のペロブスカイト前駆体溶液を製膜することで，MAPbI3 NPにより CsFAMAペロブスカイト膜が大きな粒子と高い結晶性を持つ膜に誘導・成長する手法を開発した。また、新たな長寿命化技術としてCsIインターカレーション技術も検討した。これは，MAPbI3系ペロブスカイト薄膜にヨウ化セシウム（CsI）層を真空蒸着することでCsIのインターカレーションを正確に制御し、高品質のセシウム含有ペロブスカイト薄膜を製膜する技術である。

日本政府は,目指すべき未来社会の姿として,サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより,経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会である"Society 5.0"の実現に向けて取り組んでいる.
情報通信分野を所管する総務省では,Society5.0の基盤となる情報通信インフラとして,先端光伝送技術やBeyond 5Gの研究開発,社会実装に取り組むとともに,情報通信インフラの消費電力増大に対応し,カーボンニュートラル達成に向けたエネルギー消費の抑制技術の開発にも取り組んでいる.本稿では,Beyond5G,グリーン社会実現に向けた情報通信技術政策の動向について概要を述べる.

IOWNは光技術などを活用することで、既存のITインフラでは支えることが難しい次世代の広帯域・低遅延のサービスの基盤となるコミュニケーション、コンピューティングインフラを実現していく技術・サービスである。オールフォトニクスネットワークやディスアグリゲーテッドコンピューティングは、高性能、低遅延はもちろんのこと、低消費電力への貢献も期待できる。IOWN Global Forumを核に開発・実証を進めている。

カーボンニュートラルの重点分野である半導体・情報通信産業では，「グリーンbyデジタル」と「グリーンofデジタル」を両輪で推進することが求められている．光通信システムは情報通信を支える主要インフラの一つであり，その省電力化は重要な課題である．特に，基幹系光通信システムでは，2010年前後からデジタル信号処理（DSP）により支援されたコヒーレント光通信が広く用いられており，DSPによる省電力化とDSP自体の省電力化の双方を強く意識した開発が続けられている．本稿では，基幹系光通信システムの消費電力を最適化する際に，光変復調方式が与える影響について考察し，省電力化に有効な技術を示す．

PETRAではNEDOによる委託事業「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発」のもと「ディスアグリゲーション型次世代データセンタに適用する光電ハイブリッドスイッチを用いた高速低電力データ伝送システムの研究開発」に参画し、データセンタにおけるネットワークの低消費電力化を目標に研究開発を推進している。その概要について紹介する。

光トランシーバの低消費電力化に向けて、電気DACの機能を光側にオフロードする光DAC送信器を試作し、実証実験により省電力化の検証を行った。シリコン導波路で形成された、PIN-RC型のセグメント変調器とCMOSインバータドライバをフリップチップ実装により集積した光DAC送信器を試作し、128Gbps 16QAM動作時に2pJ/bitの高い電力効率を実証したので、これを報告する。

大容量伝送と低消費電力を両立する次世代の光通信ネットワークを実現するためには, 高速かつ低消費電力な受光素子が不可欠である. アバランシェフォトダイオード(APD)はアバランシェ増倍を用いた信号増幅機能を持つため, SOA集積pin-PDに比べて消費電力において優位である. 特にInP材料を用いたAPDは, GaInAs吸収層による高受光感度を幅広い波長範囲で実現できるため, さらなる低消費電力化が期待できる. 我々は,コヒーレント伝送向けに開発してきたバットジョイント導波路型構造をAPDへ適用することで, 大容量・低消費電力な光通信ネットワークの実現に寄与する, 広帯域・高受光感度なバットジョイント導波路型APDを開発したので, これを報告する.

ハイパースケールデータセンタやハイパフォーマンスコンピュータ(HPC)の実行性能向上に向けて、光インターコネクションはボードエッジからLSI近傍(NPO: Near Package Optics)へ、更にはLSIパッケージ上(CPO: Co-Packaged Optics)への光トランシーバ集積化へと進んでいる。今回、NPOをターゲットとした、超薄型光トランシーバモジュールを開発した。Siフォトニクス技術を用いたチップスケール超小型光トランシーバチップを搭載し、ファイバ端を斜めカットしたファイバアレイの適用による低背光接続を可能としたことで、高さ2.3mmの光トランシーバモジュールを実現した。

データセンタにおけるトラフィック・消費電力は年々増加しており、データセンタにおける通信機器の省電力化は急務である。我々は、データセンタ内の光通信の高速化・低消費電力化に適した光源デバイスとして、InP系メンブレン光デバイスの研究開発を進めている。本デバイスは、SiO2や空気などの低屈折材料でInP系薄膜を上下から挟むことで活性層へ強く光を閉じ込めることが可能となり、レーザの高速化・低消費電力化が実現できる。また、シリコンフォトニクス技術の活用により各種デバイスを集積化することで、モジュールの小型化・アセンブリコストの低減も期待できる。本稿では、熱酸化膜付きSi基板上で作製したメンブレンレーザアレイの低消費エネルギー動作、多波長光源化について述べる。

海水中で電磁波は大きく減衰することが知られており，水中のロボットの通信には広く音波が用いられている．しかしながら，水中音響通信では，遅い伝搬速度や狭い帯域幅といった伝搬の物理的制約があるために，データシンボル間でのドップラーシフトによる位相変化が大きい．また，遅延時間，振幅がともに大きいマルチパス波が受信されるため，時間変動の大きいマルチパス波が受信される，厳しい2重選択性通信路と言える．
発表者らは，上記のような時変動するマルチパス環境を想定し，マルチパス波の早い位相変化の影響を抑制する手法を考案した．本発表では，シミュレーションによる提案手法の復調性能の改善効果について報告する．

最近の海中調査では遠隔操作無人探査機(Remotely Operated Vehicle, ROV)と呼ばれる水中ロボットの活用に注目が集まりつつあり，水中ロボットの位置把握に必要な技術として水中音響測位がある．本稿では水中ロボット搭載型SBL(Short Baseline)方式の音響測位装置を開発したので報告する．本装置は水中ロボットに備え付けた深度センサやテザーケーブルを利用して装置構成を簡素化し，かつ音波反射に強い距離計測手法を採用している．

海中における電波を利用した無線通信について、これまでに行った実施した実験の内容を紹介する。

本稿では，伝送速度1Gbps×伝送距離100mの実現を目指して行った水中光ワイヤレス通信の方式検討，方式検討に基づいて開発した水中光ワイヤレス通信装置について紹介する．また開発した水中光ワイヤレス通信装置を用いて，相模湾沖水深900mの深海において1Gbps×100mの水中光ワイヤレス通信実験に成功したので報告する．また深海試験の事前試験として行った大型水槽での1Gbps×100mの水中通信実験についても紹介する．

本研究では，周波数領域で適応変調するDCO-OFDM信号と時間領域で適応変調するNRZ-TDHP信号とNyquist-TDHP信号の3種類を対象に，同信号帯域かつ同アナログ帯域狭窄の条件の下で，送信PAPR特性及び受信SNR対ビット誤り率についてシミュレーションによる比較検討を行う．送信段階および受信段階の2つの観点から損失および帯域狭窄が支配的な水中伝送路を対象とした適応変調信号として，シングルキャリア伝送とマルチキャリア伝送のいずれを選択するか指針を明らかにした．

水中機器への給電は有線かバッテリーであった．配線は設置負荷や動作範囲制限があり，バッテリーは稼働時間制限やその交換や充電作業が負荷となる．そこで無線給電，特に小型高効率かつ遠隔適用可能な光ビームを用いる光無線給電が有望である．この水中光無線給電は世界的にもまだごく少数の検討が始まった段階である．
青や緑色の光は水中損失が少なく数10mまでの適用が期待できる．青色半導体レーザの高出力化や高効率化の進展から光源は準備できたといえる．一方，受光側の太陽電池は青色向けがなく効率が低い．また太陽電池の光照射は均一強度が必要となる．水中光無線給電の応用や実現に向けた課題や今後の進展の可能性について議論する．

近年、可視光LED照明の開発が進み、可視光は水中でも100m以上伝搬することから、照明用の可視光LED素子を用いた水中光無線通信装置が提案されている。我々の研究グループでも水中における可視光無線伝送技術の開発を実施している。現在、平面マトリックス状に並べた発光素子を、主・補符号のペアで発光輝度を変化させ、素子の輝度を大きさとして画像認識することができる無線伝送システムの試作をしており、カメラ受信側で白飛びしても情報を得ることを可能としており、カメラの露出アンダー・オーバーに強いイメージセンサ通信が実現できる見通しである。