プログラム
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一般セッション
- この目次は,インターネット講演申込登録のデータを元に作成されています。
- また,講演者を○,◎印で示し, ◎印は本会「学術奨励賞受賞候補者」の資格対象であることを示します。
- ○,◎の後ろに△がある場合はキャリアエクスプローラーの掲載を希望しています。
C-1. 電磁界理論
3月18日 9:30〜12:15 工学部 講義棟1F 112講義室 座長 鈴木敬久(首都大東京)
C-1-1 |
Uniform Asymptotic Solution For Conducting Wedge Diffraction Based On Physical Optics Current
◎Minh Duc Nguyen・Hiroshi Shirai(Chuo Univ.) |
C-1-2 |
貴金属球における表面波共鳴の近似境界条件を用いた解析
○松島 章・福田恭平・田島元樹(熊本大) |
C-1-3 |
2次元スラブ導波路解析のためのモードの直交性を用いた面積積分方程式
○田中雅宏(岐阜大) |
C-1-4 |
軸対称多層誘電体モデルを用いた誘電率分布推定方法の実験的検証
○末延 博・田中 泰・瀧川道生・米田尚史(三菱電機) |
C-1-5 |
ブロック反復法を用いたCBFMの解析精度に関する一考察
○田中 泰(三菱電機)・新納和樹・西村直志(京大)・瀧川道生・米田尚史(三菱電機) |
Physical optics (PO) approximation is a powerful tool for estimating the electromagnetic scattering field by large electric conducting objects. In this paper, an uniform asymptotic solution is proposed for evaluating the conducting wedge diffraction based on the PO current on the illuminated surface of the object.
貴金属球による光波の局在プラズモン共鳴は種々の応用の観点から注目を集めている.筆者らは球散乱におけるMie係数を利用し,波長と同程度以上の半径をもつ貴金属の球体及び球殻におけるプラズモン表面波が周回して定在波を形成するという観点から,波長変化における吸収量の極大点を考察した.これは貴金属円筒に対する検討の三次元版であった.本稿では球散乱の問題を表面インピーダンス境界条件のもとで近似解析し,共鳴現象に関する厳密解との相違点を明らかにする.
我々は,2次元スラブ導波路を解析するための境界積分方程式を提案した.そこでは,導波モードの反射係数および透過係数は未知定数である.未知定数を決定する新たな条件式を導出するため,導波モードと放射界の直交性を用いた.提案した境界積分方程式は,モード展開を用いることなく,境界要素法により数値的に解くことができる.
本報告では,同様の手法を面積積分方程式に適用し,モードの直交性を用いた面積積分方程式を提案する.
軸対称な多層誘電体モデルの散乱特性を用いた誘電率分布の推定方法について,測定による検証を行った.誘電体で構成された軸対称散乱体試料の電波散乱特性を測定し,散乱体を含む空間の誘電率分布を推定したところ,推定値はを含む空間の誘電率分布を再現した.この結果より,本推定方法の有効性を確認した.
CBFM(Characteristic Basis Function Method)は,散乱問題への適用性が高いことが知られている.その基底関数であるCBFを反復的に生成することで,解析精度を改善できる.本発表では,CBFの反復生成に対するパラメータとして平面波の入射角度間隔と収束性のしきい値に対する依存性および解析精度の関係について評価した結果について述べる.
休 憩(11:00 再開) 座長 渡辺仰基(福岡工大)
C-1-6 |
補間した観測電界データを用いた入射波の情報を使わないエネルギー汎関数による円筒ターゲットの再構成
○森山敏文・森根凜太郎・HAIYANG MA・田中俊幸・竹中 隆(長崎大) |
C-1-7 |
分散性媒質中に井戸型空洞をもつパルス応答解析
○尾崎亮介・山崎恒樹(日大) |
C-1-8 |
正弦変調誘電体格子によるTE平面波の散乱
◎中川弘樹・小見山 彰(阪電通大) |
C-1-9 |
マイクロストリップ線路の伝送・反射・放射の30GHz帯における過渡電磁界特性のFDTD解析
○ラカパン バラスブラマニアン(シンクレイヤ)・宮崎保光(愛知数理工科研) |
C-1-10 |
導体平板導波路の曲り部におけるプラズモンモードの反射・モード変換電磁界の等角写像による考察
○宮崎保光(愛知数理工科研) |
この報告では,入射波の情報を使わず,更に電界のみを利用した逆散乱問題解法について報告する.提案方法では,観測曲面で観測した電界を利用して等価問題を考える.しかし,等価問題を解くために,観測面上の電界を連続的に観測する必要がある[1].しかし,この計測は困難である.本報告では,観測電界を離散的に観測し,その間を補完して等価問題を解き,更に遺伝的アルゴリズムを用いて逆散乱問題を解いた結果を報告する.
著者らは,これまでに周期配列の任意方形空洞を有する分散性媒質のパルス応答を高速逆ラプラス変換(FILT)法とフーリエ級数展開法(FSEM)を併用して解析し,空洞形状がパルス応答波形に与える影響を検討してきた.
本文では,分散性媒質中に井戸型空洞を有するパルス応答を解析し,媒質の厚み を変化した場合に対する空洞厚みの影響をパルス応答波形から検討する.
正弦的に変調された誘電体格子によるTE平面波の散乱を摂動法で取り扱い,回折振幅を解析的に導出した.得られた結果は屈折率の変調度が小さい場合にマシュー関数を使って得られる結果と一致している.
マイクロストリップ線路における電磁界の過渡応答特性を解析は小型・広帯域・高効率アンテナ設計の基礎となる。ミリ波帯周波数を利用した無線通信や無線アクセスシステムが普及しており、5G等の各種のアンテナ開発が進められている。マイクロストリップ線路の電磁界問題については、これまでLaplace方程式とMaxwell方程式のFDTD数値解析法を用いて線路の伝搬特性を明らかにしてきた。また、有限長のマイクロストリップの端部における反射・放射の過渡電磁界特性を検討してきた。本論文では、FDTD法を用いてアンテナ素子の基礎となる有限長マイクロストリップ線路の電界成分について伝送・反射・放射特性の解析を行いその詳細を論じる。
導体性導波路の伝送波は電磁表面波であり、曲り部における反射と放射特性は基本課題である。これまで、複雑な電磁界問題に対して、等角写像とGreen関数を用いた積分方程式の手法が有効であることを示してきた。ここでは、導体導波路の曲がり部におけるプラズモンモードの反射とモード変換、放射の基本問題を、2次元構造の導体平板導波路について検討する。物理空間における曲り導体平板を、複素関数の等角写像により、新空間の真直の導体平板に写し、新空間において真直な導体平板に関するGreen関数を用いて、Greenの公式を適用し、積分方程式を導き、Born近似により反射とモード変換、放射界を検討する。
3月18日 13:30〜17:15 工学部 講義棟1F 112講義室 座長 後藤啓次(防衛大)
C-1-11 |
間隙をあけたスプリットシリンダーによる複素誘電率推定
○平山浩一(北見工大)・柳本吉之(関東電子応用開発)・杉坂純一郎・安井 崇(北見工大) |
C-1-12 |
マイクロ波非破壊検査のためのCSI法による複素誘電率再構成の実験的検討
○花房崇裕(電通大)・仲村慎吾・工藤高裕(富士電機)・木寺正平(電通大) |
C-1-13 |
マイクロ波非破壊検査のためのCSI法に基づく目標形状位置及び複素誘電率推定の双方向処理
◎諸岡貴英・木寺正平(電通大) |
C-1-14 |
簡易河川堤防境界モデルに対する偏波散乱解析
後藤勇世・○佐藤亮一・山口芳雄・山田寛喜(新潟大) |
C-1-15 |
土壌水分センサにおける乾燥密度を考慮した電極形状の一検討
○佐野宏靖・秋山美郷・井原房雄(都産技研)・坂本浩介・中村圭亨(東京都農林総合研究センター) |
スプリットシリンダーの間に間隙をあけ、そこに薄い平板試料を挿入することで隙間をつくって、試料及びシリンダー内部の温湿度が周囲のそれらと同じになるようにする測定法について検討し、試料が間隙の中央にうまく配置されない場合でも1%程度の相対誤差で推定可能であることを示している。
マイクロ波非破壊検査技術は,非接触で大規模領域を迅速に検査することが可能であるため,老朽化した交通インフラの検査等に有望である.
逆散乱解析法は目標の複素誘電率分布を定量的に画像化できるため,空洞・鉄筋腐食等の目標識別に有効であることが期待される.
しかし,一般的な非破壊検査の観測モデルでは観測方向が制限されるため,極めて劣悪な不良設定逆問題を解く必要がある.
そこで,先行研究としてレーダ方式と,逆散乱解析法であるDBIM(Destorted Born Iterative Method)法を統合した手法が提案されており,数値計算モデルに対する有効性が示されている.
本稿では,CSI(Contrast Source Inversion)法と同手法の実験的検討に必要なデータ較正手順法を導入し,その有用性を空洞を有するコンクリート試供体で実験的に検証する.
マイクロ波超広帯域(UWB: Ultra-wide Band)レーダは,高い距離分解能とコンクリート等への深い到達深度を実現するため,老朽化した交通インフラ等の非破壊計測技術として有望である.空洞や鉄筋腐食等の複素誘電率はコンクリート等と有意に異なるため,同誘電率の情報を空間的な分布として推定するトモグラフィ方式を導入することで,その識別率が飛躍的に向上すると期待されている.上記応用を想定し,先行研究は,レーダ方式であるRPM(Range Points Migration)法とトモグラフィ方式であるCSI(Contrast Source Inversion)法を融合した手法を提案している.同手法では,RPM法により関心領域(ROI: Region of Interest) を事前推定して絞り込むことで,CSIの未知数を大幅に減らすことに成功した.しかし,同手法のROIの推定精度は不十分であり,所望の複素誘電率推定精度を達成することができていない.同問題を解決するため,本稿では事前分布を与えたランダムサーチにより,ROI及び複素誘電率を更新する手法を導入する.同手法の有効性を数値計算によって示す.
近年,大雨に伴う超過洪水による河川堤防の越水,浸透,侵食・洗掘を主要因とする決壊が各地で頻発している.このため,平時,大雨時を問わず,堤防の越水,浸透,侵食・洗掘の状況把握を広域高精度で可能とする観測手法が求められている.
本稿では,多偏波SARを用いて堤防の侵食状況を把握するための基礎研究として,簡易河川堤防境界モデルに対する偏波散乱解析を行う.異なる大きさの侵食部をもつ堤防モデルに対するFDTD電磁界解析を行い,取得される計算結果に詳細な偏波解析を実行することで,侵食部の開口面の大きさや侵食深さと特徴的偏波状態との対応について検討する.
園芸用培地は,通常の土と比べて乾燥密度小さい.そのため,誘電特性から土壌水分量を測定するセンサにおいては,空気を多く含めた比誘電率を測定し,体積含水率が下がって見える問題があった.乾燥密度の影響を改善するため,培地に力を加えて測定してしまうと本来の使用状態と異なってしまうため,適切な方法ではない.
そこで本研究では,乾燥密度による測定誤差を軽減する電極形状について検討する.ここでは,電極形状による比較のため,円筒型電極と平板型電極のどちらが乾燥密度による誤差が大きいか実験により明らかにする.
休 憩(15:00 再開) 座長 平山浩一(北見工大)
C-1-16 |
ニューラルネットワークとホログラムを用いた微小欠陥の凹凸識別システム
◎有馬秀三朗・杉坂純一郎・田口健治(北見工大) |
C-1-17 |
表面プラズモンの解析画像を用いた金属材料推定 -CNNによる画像認識-
◎朱 権・田丸幸寛・呉 迪・岸本誠也・大貫進一郎(日大) |
C-1-18 |
電磁界と磁化の高速複合解析法を用いた磁化特性解析
◎安田拓弥・田中和幸・岸本誠也・大貫進一郎(日大) |
C-1-19 |
光走査デバイス設計に向けた円柱状微小レーザ発振器の指向性解析
◎三島拓馬・岸本誠也・大貫進一郎(日大) |
C-1-20 |
陰解法を用いた時間分割並列計算による電磁界解析
◎中沢 佑・大西崚平・呉 迪・岸本誠也(日大)・柴山 純・山内潤治(法政大)・大貫進一郎(日大) |
微細加工技術の進歩に伴い,製造プロセスにおいて異物の付着 (凸型欠陥) や傷 (凹型欠陥) のように,欠陥の種類や原因を正しく把握することが重要である.近年では人工知能を用いた自動認識技術が飛躍的に進歩しているが,従来の光学顕微鏡では,人工知能を用いても正確な認識が困難である.我々は,人工知能とホログラムによる,光学系と計算機処理の双方を用いた正確な凹凸識別を目指している.本研究では,電磁界シミュレーションとニューラルネットワークを用いて凹凸識別のシミュレーションを行った.ホログラムの有無に対して識別率の比較を行い,ホログラムを用いた人工知能の優位性が示された.
微細な金属膜の構造や媒質は,プラズモン特性に影響を与える .我々は,所望のプラズモン特性が得られる条件を機械学習により検討している.本報告では表面プラズモンを利用したセンシング技術などに用いられるクレッチマン配置を対象とする.各種金属に異なる角度から平面波を入射した際の電磁界分布の画像データを機械学習し,未知の電磁界分布から金属材料の予測について検討する.
従来の解析法では表現できない磁化の非線形性を考慮し た電磁界の時間応答解析を行うために,著者らは Maxwell 方程式と LLG(Landau-Lifshitz-Gilbert)方程式を連成する複 合物理解析法を提案した.しかし詳細なモデル化を行う際 は計算コストが膨大となり解析が困難となった.本報告で はマルチスケールモデリングにより磁化と電磁界の相互作 用を解析する高速複合物理解析法を提案し,計算時間の削 減を検討する.
車載用センサーなどに用いられるレーザ光を走査するデバイスには,回転機構を有するものが多く,耐久性や小型化に問題が生じている.そのため機構部を光学技術に置き換え,レーザ光を走査する方法が検討されている.本研究ではWGM(Whispering Gallery Mode)レーザの放射パターンを制御することで,レーザの指向性を時間的に変化させ,レーザ光を走査するデバイスの開発を目的とする.本報告ではWGMレーザを2つの異なる共振モードで発振させた場合の放射パターンについて検討する.
近年,Finite-Difference Time-Domain(FDTD)法の高速化として,陰解法や並列計算法の研究が盛んに行われている.著者らが開発した時間分割並列計算法では,時間軸方向に計算を分割し,独立した複数ノードで並列計算を実行する. 本報告では,陰的なLocally One-Dimensional FDTD(LOD-FDTD)法による時間分割並列計算を実現し,陽的FDTD法を用いる従来法との計算精度及び計算時間を比較検討する.
休 憩(16:30 再開) 座長 杉坂純一郎(北見工大)
C-1-21 |
DCP-TRC-FDTD法を用いた金属円柱配列の解析
柴山 純・◎岩本哲弥・鈴木和人・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-1-22 |
3次元FDTD解析のためのCP-EP法
◎鈴木和人・柴山 純・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-1-23 |
Leapfrog 型LOD-FDTD法による導波路グレーティングの2 次元解析
◎大城輝明・柴山 純・山内潤治・中野久松(法政大) |
筆者らは分散性媒質と誘電体の任意境界を精度よく取り扱うDispersive Contour Path(DCP)アルゴリズムをTrapezoidal Recursive Convolution(TRC)法に基づくFDTD法に導入した.本稿では,DCP-TRC-FDTD法を用いて2次元金属円柱配列を解析し,透過特性の評価を行う.また,透過ディップが観測された波長における界分布の評価を行い,レイリーアノマリー,表面プラズモン共鳴,導波モード共鳴が生じることを明らかにする.
Contour Path Effective Permittivity(CP-EP)法を3次元FDTD法に拡張し, 誘電体球を解析する. CP-EP法により球表面のスプリアスな界を除去できることを示す. また, 階段近似を用いたFDTD法の結果と比較し, 空間の刻み幅に対して収束の早い結果が得られることを明らかにする.
Leapfrog型の局所的一次元(LOD)法に基づくFDTD法を2次元問題に適用し,導波路グレーティングの解析を行う.従来のLOD-FDTD法と比較して精度を保ったまま,計算メモリの削減と計算時間の短縮が可能であることを示す.
C-2. マイクロ波A(マイクロ波・ミリ波能動デバイス)
3月20日 9:30〜12:15 工学部 講義棟1F 111講義室 座長 佐藤 優(富士通研)
C-2-1 |
バンドパス構造を有する2.5-10.0 GHz帯GaN MMIC分布型増幅器
○神岡 純・半谷政毅・三輪真一・加茂宣卓・新庄真太郎(三菱電機) |
C-2-2 |
高電力密度GaN HEMT を用いたX 帯100 W 級高出力・広帯域増幅器 MMIC
○福永 啓・杉谷拓海・山口裕太郎・半谷政毅・新庄真太郎(三菱電機) |
C-2-3 |
デジタル制御超広帯域GaN増幅器における変調信号入力時の高効率動作に向けた制御方法
○榊 裕翔・山下 青・小松崎優治・安藤暢彦・中溝英之(三菱電機) |
C-2-4 |
出力電力に応じた入力電力分配比を実現する分配器を備えたドハティ増幅器
○坂田修一・小松崎優治・新庄真太郎(三菱電機) |
C-2-5 |
T型スタブを用いた低スプリアス・高効率非対称ドハティ増幅器
◎髙木裕貴・長谷川直輝・太田喜元(ソフトバンク)・石川 亮・本城和彦(電通大) |
今回は広帯域と高出力の実現を目的としたバンドパス構造を有する分布型増幅器を提案し,GaN MMIC HPAを試作・評価した.2.5-10.0 GHz で飽和出力電力44.3-47.9 dBm(27-61 W),電力付加効率(PAE) 24-44%を得た.この結果はX 帯を含む比帯域100 %以上の広帯域増幅器において世界最高出力電力および効率であり,提案する増幅器構成の有効性を示した.
近年、通信やレーダ用途で用いられるマイクロ波送受信
モジュールにはさらなる高出力化・広帯域化が求められて
いる。特に送信系の最終段に用いられる高出力増幅器は、
送受信モジュールの出力電力・帯域・電力効率・小型化・
コストなどを決定づける重要なデバイスである。これらの
要求を満たすための半導体として、耐電圧に優れ、高電力
密度化を可能とする窒化ガリウム(GaN)を用いたトランジ
スタの開発が盛んに行われている。
本稿では100W 級増幅器MMIC の実現を目的とし、高電
力密度GaN HEMT を用いてMMIC を設計した。MMIC を
Drain 電圧(Vd)=40 V で動作させることにより、X 帯(8.5-
10.5 GHz)において飽和出力電力(Pout) 85 W (49.3 dBm)以上、
電力付加効率(PAE) 42 %以上、電力利得(Gp) 17.8 dB の世界
最高レベルの性能を得たので、これを報告する。
近年の移動通信基地局用の増幅器には,一つの増幅器で複数の周波数帯に対応し,かつ高効率な動作が要求される.著者らは並列する2つの増幅器から構成され,増幅器の周波数に応じて各増幅器に入力する信号の入力電力と信号間の位相差を制御することで,広帯域かつ高効率に動作するデジタル制御超広帯域GaN増幅器(以下,デジタル制御増幅器)を提案し,定包絡信号(CW)を用いて有効性を確認した.本稿では,通信で使用する変調信号の入力時に,包絡線の瞬時電力に応じて各増幅器の入力電力と信号間の位相差を最適に制御する制御方法を提案し,シミュレーションにより有効性を確認した結果について報告する.
ウィルキンソン分配器を用いた1入力のドハティ増幅器においては、ピーク増幅器のゲートバイアスをC級にすることにより理想動作に近づけているが、各増幅器への入力電力を動的に制御することは不可能である。本報告では、ウィルキンソン分配器を変更することにより、入力電力分配比の動的制御が可能であることを理論と実測で確認したので報告を行う.
移動体通信システムの進化に伴う大容量通信を実現するために,デジタル変調多値数は 256QAM(Quadrature Amplitude Modulation) などに増加されることから, 第4世代で使用されている変調信号よりも PAPR(Peak-to-Average Power Ratio) が大きくなり, 電力増幅器にはより広ダイナミックレンジで高効率なものが求められている. 筆者らは 2次3次高調波を同時短絡するT型スタブを用いた低スプリアスドハティ増幅器を考案し,その有用性を確認した.本研究では,提案手法に基づくドハティ増幅器を非対称構成に適用した設計・試作を行い,良好な特性が得られたので報告をする.
休 憩(11:00 再開) 座長 高野恭弥(東京理科大)
C-2-6 |
3.9GHz帯小型合成回路によるアウトフェージング増幅器
◎小笠原遼一・高山洋一郎・石川 亮・本城和彦(電通大) |
C-2-7 |
1ポート CRLH 線路で構成した R 級増幅器向け高調波処理回路
◎飯坂尚章・田中愼一(芝浦工大) |
C-2-8 |
最小雑音測度を実現する低雑音フィードバック増幅器の設計
◎小野孝祐・吉田 毅・天川修平(広島大) |
C-2-9 |
パルス動作型高効率GaNパワーアンプ設計のための熱デバイスモデルの検討
◎西田修都・石崎俊雄・松室尭之(龍谷大) |
C-2-10 |
80-nm InP-HEMTテクノロジを用いた300 GHz帯高線形パワーアンプ
○濱田裕史・堤 卓也・松崎秀昭・杉山弘樹・野坂秀之(NTT) |
大容量通信を実現するためデジタル変調信号では振幅変動が大きく電力増幅器は幅広い出力レベルにおいて高効率であることが求められる.アウトフェージング増幅器は負荷変調により幅広い出力レベルで高効率特性が得られる.本報告では直列負荷補償方式に基づき1つのコンデンサと1つのインダクタのみで構成された小型アウトフェージング合成回路を用いたアウトフェージング増幅器の提案をする.また電力増幅器の設計ではダイナミックレンジを拡大するためにバックオフ領域および飽和領域での2 条件の最適化を行った.その設計・実証結果について報告する.
基地局 PA は高調波処理回路の導入により効率改善が期 待されるが、回路寸法が制約されている。我々は一部を CRLH 線路に置き換えて小型化した高調波処理回路を F 級 増幅器等 に適用してきた。今回、高調波リアクティブ 終端処理(R 級)増幅器に対応する高調波処理回路を CRLH 線路のみで構成して回路の更なる小型化を検討した。
低雑音増幅器(LNA)は,受信機の初段で使用される. 受信機全体の低雑音化のためには,LNAの性能指標として,雑音指数よりも雑音測度を使うのが適切である.LNAは雑音測度が最小になる時が最良だが,その時の雑音指数とavailable gain(Ga)の組み合わせには自由度がある.もしLNAより 後段の雑音指数を定数とみなせるなら,Gaを最大化することで受信機の雑音指数を最小にできる.あるトランジスタが与えられた時,これが雑音性能的には理論上の限界性能となる.そこで最小雑音測度を実現し,かつGaを最大化する無損失フィードバック回路網と,対応する信号源インピーダンスを求める方法を考えた.
近年、工業用の電子レンジやバイオマス生成の加熱には、高効率かつ高出力が可能なマイクロ波加熱装置が用いられている[1]。マイクロ波加熱装置の信号源にトランジスタを用いる場合、CW(無変調連続波)でのマイクロ波加熱が現在の主流である。しかし、CWでのマイクロ波加熱には様々なデメリットが存在する。例えば、大電力で効率が低下したり、トランジスタが自己発熱により熱破壊を起こしたりする。本報告では、トランジスタの自己発熱によっておきるドレイン電流の変化から熱等価回路を導出し、熱の影響が最大出力や効率にどのような影響を与えるかを解析した結果について述べる.
300 GHz帯無線通信用高線形PAを検討した.単位PA並列化および4 finger HEMT使用による飽和出力向上,低インピーダンス段間技術による利得向上を行い,最大利得 20 dB, OP1dB 6 dBmの高線形性を確認した.我々の知る限り,本PAは300 GHz帯において報告されたPAのなかで最も高いOP1dBを有している.
3月20日 13:30〜16:45 工学部 講義棟1F 111講義室 座長 半谷政毅(三菱電機)
C-2-11 |
900 MHz/4.5 GHz帯2×2次元切替スイッチの開発
○石井岳人・中丸靖崇・水谷 浩(サレジオ高専)・石川 亮・本城和彦(電通大) |
C-2-12 |
準ミリ波帯WiCoPTシステム用制御局の開発と電力伝送実験
◎△衣川幸汰・西田海都・松室尭之・石崎俊雄(龍谷大) |
C-2-13 |
コレクタ接地されたパッケージ化バイポーラトランジスタの負性抵抗制御
○佐薙 稔・山本裕生(岡山大) |
C-2-14 |
インダクタレスアクティブ方向性結合器ICの試作結果
○藤原孝信・萩原達也・森野芳昭・津留正臣(三菱電機) |
C-2-15 |
イメージリジェクション機能を備えた送信用V帯2周波混合ベクトル合成型移相器ICの試作結果
○横溝真也・平井暁人・藤原孝信・津留正臣(三菱電機) |
C-2-16 |
出力に逓倍器を備えたベクトル合成型移相器における高移相精度の広帯域化手法の検討
○山本 航・堤 恒次・津留正臣(三菱電機) |
C-2-17 |
シャント抵抗に並列スイッチを装荷した広帯域低位相変動π型CMOS可変減衰器の試作
◎川崎健吾・津留正臣・下沢充弘(三菱電機) |
5G(第5世代)高速移動通信をはじめとするIoT(Internet of Things)時代の高速無線通信において、RFフロントエンドは、複数の周波数および複信方式で送受信を行うため、高価になることが予想される。部品の共用化による低コスト化のためDuplexerとSPDT Switchの電気的な切り替え動作を可能とするデバイス「2×2次元切替スイッチ」が提案された。先行研究 では、High Band(HB)4.5 GHzの特性の改善が課題であった。本研究では、2×2次元切替スイッチの特にHBでの特性改善を目的とした。結果は、先行研究と比較してHBのアイソレーション、挿入損失ともに改善された。
年、準ミリ波帯無線で情報と電力を同時に伝送するWiCoPT(Wireless Communication and Power Transmission)システムの研究が進められている。準ミリ波帯は直進性が強いため、ビームフォーミングで送電エリアを絞り込みスポット的に高効率送電が可能である。本研究ではバッテリーレスセンサ端末への電力伝送を想定し、デモシステムで使用する電力伝送用の送電モジュールと24GHz帯アレイアンテナを設計、制御局を組み上げ電力伝送実験を行った。
パッケージ化されたマイクロ波帯用バイポーラトランジスタをコレクタ接地で用いるとベース端子から見て負性抵抗を示す.エミッタ端子に接続する出力回路のインピーダンスを変化させることで,負性抵抗特性を制御した.
本稿では抵抗と電圧増幅器のみから構成される小型なアクティブ方向性結合器を提案し,DC~100MHzにて動作する原理検証チップの評価結果を報告する.3.3V耐圧CMOSプロセスにより原理検証チップを試作し,コア部の面積は120umx80umと小型に収まり, 1MHz以下における方向性が61dB以上と良好な性能が得られ,提案構成の有効性を実証した.
近年,5Gや衛星通信において,電子的にビームを形成可能なAPAA(Active Phased Array Antenna)が注目されている.通信の大容量化のためには,APAAの広帯域化が必要であり,アンテナ素子毎に装荷される移相器も広帯域化する必要がある.広帯域な移相器として,Poly Phase FilterをLO経路に配置し,直交ミクサで信号とLOを混合する2周波混合ベクトル合成型移相器を提案している.しかし,実際の送信機で利用するためには,受信機の妨害波となる所望波近傍のイメージ波を抑圧する必要がある.本稿では提案方式の移相器を送信機へと適用するためのイメージリジェクション機能を備えた送信用V帯2周波混合ベクトル合成型移相器ICの試作結果を示す.
近年ミリ波帯での位相制御の必要性が高まっており,移相精度の向上が課題となっている.ミリ波帯での位相制御を実現する回路の一つとして,低周波数帯での移相器と周波数逓倍器を組み合わせた構成が考えられる.この構成では,移相器として360度の可変幅を有するベクトル合成型移相器を使用すると,周波数の2逓倍後に720度の可変幅が得られる.本稿では,この冗長性を利用して広帯域に渡って移相精度を改善する手法を提案する.
通信容量の増大に伴い,RFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)の広帯域化が求められている.送受信器の利得調整に用いられる可変減衰器としてπ型可変減衰器がある.π型可変減衰器は減衰量可変時に信号経路を切換えるため, 寄生容量が変化してしまい高周波での可変減衰量の低下が生じて広帯域性に課題がある.
これまでに我々は, シャント抵抗に並列スイッチを装荷することで寄生容量の変化が小さいπ型可変減衰器の構成を提案した[1]. ここでは提案したπ型可変減衰器を試作,評価し 可変減衰量が広帯域に一定の特性を得たので報告する.
休 憩(15:30 再開) 座長 片山光亮(早大)
C-2-18 |
Crescent形状微小ループアンテナを用いる2.4GHz帯レクテナ
◎米村 翼・辻田真一郎・坂井尚貴・伊東健治(金沢工大) |
C-2-19 |
高調波処理FDAを用いる2.4 GHz帯高効率レクテナ
◎△麦谷彰彦・廣野敦哉・坂井尚貴・伊東健治(金沢工大) |
C-2-20 |
自己同期型 FET 整流器におけるドレイン高調波制御の効果について
◎野口敬則・田中愼一(芝浦工大) |
C-2-21 |
ゼロ閾値 GaAs HEMT を用いた広ダイナミックレンジ整流器
◎山崎 純・石川 亮・本城和彦(電通大) |
C-2-22 |
宇宙情報通信エネルギー技術のためのRF HySICデバイスに関する研究
○薮田直人・後藤優花(上智大)・小渕大輔(東大)・内海 淳(神奈川県立福祉大)・中岡俊裕(上智大)・吉田賢史・西川健二郎(鹿児島大)・正光義則・川崎繁男(JAXA) |
電波を用いるエネルギーハーベスティングでは,微弱な電波から直流電力を高効率に取り出すために,微小ループアンテナ(SLA)と整流器により高い共振インピーダンスを得る構成が検討されている.低利得であるSLAの高性能化が課題である.本報告では,Crescent形状SLAを用いる2.4GHz帯レクテナを示す.
無線電力伝送システムにおいて,レクテナの高効率化が課題である.筆者らは高効率化のために折り返しダイポールアンテナ(FDA)とブリッジ整流器を直接整合した2.4GHz 帯レクテナの報告を行っている.ここでは更にFDA の給電部にDC カットと高調波処理の機能を与え,高効率化するレクテナについて報告する.
無線電力伝送用の整流器の1選択肢として FET 整流器が 注目されている。ドレイン(D)側からの RF 入力の一部が Cgd を介してゲート(G)に注入されることを利用する自己 同期型 FET 整流器では、G 信号の位相・振幅の調整が重要 となる。以前、基本波(f0)と2次高調波(2f0)における 最適 G インピーダンス(ZG)を実現する G 回路を提案した。今回、D 側での高調波の制御が自己同期型 FET 整流器 の動作に及ぼす効果について調べたので報告する。
近年,電磁波を用いて電力を伝送する無線電力伝送技術や環境電磁波を集めて利用するエナジーハーベスティングなどの研究が進められており,これらの技術には RF-DC 変換を行う整流器が必要となる.我々は高効率トランジスタ増幅器の設計手法を用いたトランジスタ整流器の研究開発を進めており,高効率動作が実現されている.一方これらの課題として,電波の受信位置によって入力電力が大きく変化するため,広いダイナミックレンジで高効率を維持することが要求される.今回,低電力から高電力までの高効率動作を実現するためゼロ閾値を有する GaAs HEMTを用い,さらに自己ゲートバイアス調整により広ダイナミックレンジ動作を実現したので,その結果について報告する.
宇宙機内の情報通信と電力伝送をワイヤレス化するためのRFデバイスをHySICの技術を用いて試作した。HySICは混成半導体集積回路を意味しており、集約化が容易なSiと高性能な化合物半導体を1つの基板に集約する技術である。このHySICの技術を用いて、送電部のパワー・アンプと受電部における整流回路を試作した。同時にHySICにおいて重要な要素技術である常温接合に関しての報告も行う。
C-2. マイクロ波B(マイクロ波・ミリ波受動デバイス)
3月17日 11:00〜12:15 工学部 講義棟1F 109講義室 座長 吉川博道(京セラ)
C-2-23 |
28GHz誘電体装荷インターリーブ型OAMモード円形アンテナアレイの放射特性
◎△北川敬太・繁田雄大・真田篤志(阪大)・福田敦史・岡崎浩司(NTTドコモ) |
C-2-24 |
第5世代携帯電話基地局用準ミリ波帯アクティブ集積アンテナに関する検討
◎青木孝弘・松室尭之・石崎俊雄(龍谷大) |
C-2-25 |
60 GHz帯有極形4段マイクロストリップフィルテナの設計
○大平昌敬・馬 哲旺(埼玉大) |
C-2-26 |
フリップチップ実装に向けたミリ波帯オンチップアンテナの基礎検討
○佐藤奈央・平野拓一(東京都市大)・井上 剛・曽我部正嗣(住重アテックス)・岡田健一(東工大) |
C-2-27 |
擬似表面プラズモンを用いた非相反CRLH線路のビーム走査アンテナ応用
◎岡本浩司・上田哲也(京都工繊大)・伊藤龍男(カリフォルニア大) |
本研究では, 28GHz帯インターリーブ型アナログOAMモード円形アンテナアレイのOAMモード利得の向上を目指し, 誘電体円柱を装荷するOAMモード円形アンテナアレイを提案する. 電磁界分布シミュレーションによりアンテナ素子の利得が最大となるように誘電体構造を最適化した誘電体装荷円形OAMアンテナアレイに対して, 電磁界分布計算によりOAMモード生成を確認した. また, 放射特性の計算結果から, 誘電体を装荷していない場合と比べてOAMビームのサイドローブレベルが抑制され, ピークの利得が約7 dB上昇することを確認した.
近年、情報通信量の増加に伴い、第5世代通信サービス(5G)が注目されている。5Gの帯域の一つとして、準ミリ波帯の28GHz帯が設定されており、複数のアンテナを組み合わせたフェーズドアレイアンテナによる空間多重が試みられようとしている。この方式では良好なビームを維持するために、各アンテナ素子の位相と利得を精密に制御する必要がある。本報告では、より精密な位相制御を実現するため、4 象限ベクトル合成法を用いた精密移相器とその制御方式に関する検討結果について述べる。
ミリ波帯ではコンポーネント間を接続する際に用いられる伝送線路による損失が非常に大きい.その低減策の一つとして,従来個別に設計されてきた2つのコンポーネントを一体設計する方法がある.本報告では,有極形帯域通過フィルタとパッチアンテナを一体化したフィルタリングアンテナ(フィルテナ)の新しい構造を提案し,60 GHz帯で有極形フィルテナを設計する.
オンチップアンテナは接続損失の低減が期待できるが、損失の大きなSi基板による放射効率の低下が課題となっている。そこで、Si基板での損失を軽減するために、水素またはヘリウムイオンを照射する技術が提案されている。イオンを照射することで、Si基板の抵抗率が上がり、損失を軽減できる。本研究では、放射効率のさらなる改善と別の実装方法に対応するため、フリップチップ実装用60GHz帯オンチップダイポールアンテナの設計を行った。60.5GHzにおいて反射-33.2dB、放射効率62%、最大利得2.5dBiの結果が得られた。
本稿では,フェライト基板マイクロストリップ線路の金属ストリップ片側にコルゲーション構造と容量性素子を周期的に装荷することにより非相反性が増強された右手/左手複合伝送線路の構造を提案するとともに,外部直流磁界によるビーム走査アンテナへの応用を試みている.フェライト基板マイクロストリップ線路の片側にのみコルゲーション構造および容量素子を装荷することで,非相反右手/左手複合伝送線路の非相反性が増大することを確認した.また,その線路を用いたビーム走査アンテナが従来と同程度の走査角を得るのに必要な外部直流磁界の大きさを大幅に低減できることを数値計算により示した.
3月18日 9:30〜12:15 工学部 講義棟1F 111講義室 座長 河口民雄(東芝)
C-2-28 |
分岐線路に基づいた電力N合成回路における解析手法の一検討
○青山裕之・大島 毅・湯川秀憲・高橋 徹・米田尚史(三菱電機) |
C-2-29 |
積層造形技術を適用したK帯電力分配回路に関する検討
○牛嶋 優・湯川秀憲・高橋 徹・米田尚史(三菱電機) |
C-2-30 |
2本の分岐端子を短絡端に対し45度傾けて接続したT分岐形OMTの試作評価
○湯川秀憲・牛嶋 優・高橋 徹・米田尚史・宮崎守泰(三菱電機) |
C-2-31 |
小形化した低結合偏差ループ方向性結合器の試作評価
◎西村拓真・大島 毅・石橋秀則・高橋 徹・野々村博之・河村由文(三菱電機) |
高周波数帯の電力合成回路として分岐線路を基にした回路が知られている.前記回路は,等価回路上,合成数が2かつ等合成の場合には対称性を利用して偶奇モード理論に基づき回路解析できる.しかし,合成数が2の場合でも不等合成の場合や,合成数が3以上の場合には偶奇モード理論をそのまま適用することができない.本稿では偶奇モード理論を用いた不等合成を含む前記電力N合成回路の解析手法を検討している.その結果,前記回路の反射振幅,通過振幅を,合成比と偶奇モード等価回路における反射係数を用いて表現できることを示している.
近年,衛星メーカは低コスト化や軽量化に向けて,アンテナや導波管の給電回路の
金属3Dプリンタ製造品を衛星へ搭載しようと試みている.しかし,金属3Dプリンタ
で複数のコンポーネントを一体成形する場合,異種材料(例えば、電波吸収体)
を製造途中で挿入することができない問題がある.そのため,吸収体を必要とする
無反射終端器(以下、終端器)までも一体成形することが困難であった.
これまでに積層造形術(AMT)に適した終端器を報告した.本稿ではその終端器を
適用した1入力7出力電力分配回路について報告する.
同一の周波数帯の直交するふたつの偏波を分離する偏波分離回路のひとつとしてT分岐形OMT(Ortho-Mode-Transducer)が知られている。2本の分岐端子を短絡端近傍に「T分岐」状に配置することで軸長を短くできる利点があるが、偏波を分離するためには各分岐端子の広壁面の向きは直交させる必要がある。このため、各分岐端子の周波数特性は異なるものとなり、広帯域化が難しいという問題がある。そこで筆者らは、広帯域化を図るため、2本の分岐端子を短絡端に対し45度傾けて接続したT分岐形OMTについて検討している。ここでは、提案するOMTについて金属3Dプリンタによる試作評価を行ったので報告する。
ループ方向性結合器は,導波管と同軸線路とを結合孔を介して結合させる構造である.従来構造は,円形キャビティ直径がλg/4であり,小形化に課題があった.そこで筆者らは,結合度と結合孔の関係に着目し,円形キャビティ直径が,結合偏差を維持したままλg/8程度まで小形化できることを確認した.このため,製造公差に関する検討,およびループ方向性結合器の試作評価結果を行い,小形化後も良好な電気特性,同等の結合偏差が得られることを確認した.
休 憩(10:45 再開) 座長 大平昌敬(埼玉大)
C-2-32 |
120GHz帯反射型SRRバンドストップフィルタの検討
◎厚地穂乃佳・加藤圭悟・枚田明彦(千葉工大)・戸村 崇・広川二郎(東工大)・渡邊一世・関根徳彦・笠松章史(NICT) |
C-2-33 |
基地局用4重モード2段フィルタに向けた励振方法の検討
○坪内啓浩・松室尭之・石崎俊雄(龍谷大) |
C-2-34 |
電磁界結合線路型λ/2共振器フィルタの減衰極制御に関する検討
◎二ッ矢幹基・松室尭之・石崎俊雄(龍谷大) |
C-2-35 |
高Qピン型人工誘電体共振器を用いたフィルタの検討
○竹原 黎・石崎俊雄(龍谷大) |
C-2-36 |
マルチモードJインバータのマルチアドミタンス化
◎牛山太陽・宮田尚起(都立産技高専) |
C-2-37 |
アンテナ素子間相互結合と結合係数に関する検討
○吉川博道(京セラ) |
近接テラヘルツ無線の実現には,近接配置した送信–受信アンテナ間で生じる多重反射を抑制する必要がある.本研究では,分割リング共振器 (SRR: slot-ring resonator) を使用した反射型バンドストップフィルタを平面アンテナ上に一体集積することで,近接配置した送信–受信アンテナ間多重反射を抑制する近接無線通信の実現を目指している.本稿では,石英基板上を使用した反射型バンドストップフィルタを試作し,その反射特性をベクトルネットワークアナライザ(VNA) により評価した.
近年、スマートフォン等の普及により通信量が増大し、その対策として小セル化が進められている。その際に基地局フィルタの小型、低コスト化は重要な課題である。著者らは円柱型4重モードフィルタを既に発表しているが[1]、実使用を考慮し、8段フィルタの実現を目指して4重モードフィルタの単体評価や2つの4重モード共振器間結合の検討を行ってきた[2]。しかし、これまでは同軸コネクタの先端に電界プローブを設けて外部結合をとっていたが、所望以外の共振モードへの結合が無視できない程発生していた。そこで本研究では、容易に8段フィルタを実現する励振方法について検討を行った.
近年,携帯機器の普及に伴いデータ通信量が急激に増加している.そのため小セル化が必要となり基地局の需要が増加している.基地局には通信障害を防ぐフィルタが必要であるが,フィルタは小型基地局(RRH)のおよそ半分の体積を占めるためフィルタの小型化が必須である.今回,フィルタ小型化のために,電磁界結合線路型λ/2共振器を用いたフィルタの減衰極制御の検討を行った.
近年、通信機器の普及によりデータ量が増加し、それによる通信障害が問題となっている。この問題の解決策として小セル化が挙げられる。そのため通信基地局用フィルタの高性能化、小型化、低コスト化が求められている。本研究ではピン型人工誘電体共振器を用いたフィルタの開発を目指す。ピン形状による周波数の調整、誘電体の装荷による特性の向上、実測による特性の評価について述べると共に、当該共振器を用いたフィルタ特性について報告する。
筆者らはこれまでにマイクロ波フィルタを設計する際に用いられるJ インバータとして複数の周波数で動作するマルチモードJ インバータを提案してきた.しかしこの手法では全ての動作周波数においてJ インバータの特性アドミタンスJ が同一である必要があった.そこで本研究では各動作周波数ごとに異なる特性アドミタンスを設定可能なマルチモードJ インバータを提案し,任意の数の周波数で異なる特性アドミタンスJ を設定可能なマルチモードマルチアドミタンスJ インバータとして2 通りの回路を示し各素子値の設計式を導出した.また,設計したマルチモードマルチアドミタンスJ インバータの周波数特性をシミュレーションし,所望の動作を確認した.
マイクロ波・ミリ波帯における通信システムにおいて、省スペース化によりアンテナを近接配置させる状況にあり、アンテナ素子間相互結合の低減が課題となっている。アンテナの素子間相互結合に対してフィルタ調整の技術に基づき、アンテナ間の結合を抑制できることを示した。
本報告では、アンテナの素子間相互結合と結合係数について詳細な検討を行った。
3月18日 13:30〜17:15 工学部 講義棟1F 111講義室 座長 上田哲也(京都工繊大)
C-2-38 |
直線テーパー線路インピーダンス変換器の設計と製作に関する検討
○浦上大世・草間裕介(香川高専) |
C-2-39 |
帯域阻止フィルタ機能を有するミリ波帯垂直給電部の試作評価結果
○安部素実・高橋智宏・大塚昌孝・高橋 徹・米田尚史(三菱電機) |
C-2-40 |
栓抜形スタブ装荷スルーホールレス導波管-マイクロストリップ線路変換器の試作評価結果
◎上田 凌・牛嶋 優・石橋秀則・高橋 徹・丸山貴史・宇田川重雄(三菱電機) |
C-2-41 |
フェライト基板上に構成された対称メタマテリアル結合線路
◎山上航平・上田哲也(京都工繊大)・伊藤龍男(カリフォルニア大) |
C-2-42 |
ミリ波帯におけるSRR構造メタマテリアルの設計および試作
○田中将樹・渡部遥也・伊藤桂一(秋田高専) |
C-2-43 |
インクジェット銀配線と銅箔配線を組み合わせたハイブリッド配線による高周波回路
○杉山勇太・石橋秀則・大島 毅・高橋 徹・米田尚史(三菱電機)・遠藤聡人・原田 光(紀州技研工業) |
C-2-44 |
AMとめっき技術を用いたミリ波帯導波管の作製と透過率の改善
○滝沢耕平・藤原康平・渡部雄太・小林隆一・桑原聡士・竹村昌太(都産技研) |
C-2-45 |
電磁界シミュレーションを用いた金属メッキ導波管の特性評価
○花澤理宏・鈴木仁哉(UL Japan) |
マイクロストリップライン(MSL)を用いたインピーダンス変換器の1つである直線テーパー線路インピーダンス変換器の設計から測定に至る一連のプロセスについて検討した.MSLインピーダンス変換器として,指数関数テーパーが良く知られており,設計理論は比較的容易なものの製作には階段近似を使う必要があり製作に手間がかかる.一方,直線テーパーは製作が容易なものの設計に必要な理論計算が面倒である.そこで,直線テーパーの設計方法として,高速フーリエ変換(FFT)を適用したところ,本手法の有効性を確認することができた.また,製作において直線テーパーは製作が容易と考えられているが,テーパー部分が正確な直線でなければ測定値に影響を与えることを実験により確認した.
アンテナ素子と高周波ICの表裏を接続する多層基板垂直給電部において、ミリ波帯でフィルタ機能を持たせる検討を行い、試作評価結果、その有効性を示した。
導波管(WG)-マイクロストリップ線路(MSL)変換器において、低コスト化のためにスルーホールレスが要求されている。スルーホールレス化した際に、導波管開口部からの不要放射が問題となる。これまでに、MSL側が1出力の抜形スタブを装荷したスルーホールレスのWG-MSL変換器を提案し、浮遊導体の切り欠きを装荷することで更に不要放射が低減できることを示した。本稿ではこの変換器を試作し、評価したので報告する。
最近,垂直磁化フェライトを用いた非相反CRLHメタマテリアルの分散特性を用いて,結合線路への新たな応用が提案されている.本稿では,数値シミュレーションにより,フェライト基板上に構成されたCRLHメタマテリアル対称結合線路の透過係数および結合係数の非相反性を調べている.
近年,左手系メタマテリアルと呼ばれる負の屈折率を有する人工物質が回折限界を打ち破るスーパーレンズを実現可能とする材料として注目されている。メタマテリアルを実現する構造の一つとして,金属円環にギャップを設けることでコイルとコンデンサの直列回路を構成する分割リング共振器(SRR:Split Ring Resonator)を配列するものがある。本研究では,ミリ波領域に適用可能な1分割1重SRRの各構造パラメータの設計値について,共振周波数と実効透磁率の点で検討を行い,樹脂基板に導電性塗料を塗布することでSRR構造の製作を試みた。
インクジェット印刷は版を必要としないため,回路形状のカスタマイズを行い易く,多品種少量生産に向いている.しかし,印刷に用いられる銀配線は,銅箔配線に比べて抵抗率が高く,高周波回路では損失が課題となる.そこで,インクジェット印刷銀配線と銅箔配線を組み合わせた配線を利用した高周波回路を提案する.ここでは,プリント基板上に銅箔配線した共通基板をベースとして,そこにインクジェット印刷を用いて銀配線を塗り分けることで,多種の回路に変更可能なカスタマイズ性を実現する.また,回路形成に必要なインクジェット印刷銀配線の面積を最小限とすることで低損失化が実現することを試作により明らかにする.
近年、ミリ波産業が急速に発展してきている。これは自動車の自動運転や5G をはじめとした超高速通信分野での研究開発が活発化しているからである。今後、ミリ波技術は更なる研究開発が予想されるが,課題もある。一般的なミリ波部品には銅などの金属に金めっきしたものが使用される。そのため、ミリ波部品は重く、高額になる場合が多い。今後のミリ波技術の発展と普及のためには軽く、廉価なミリ波部品の開発が不可欠である。本研究では更なる廉価化のためにナイロン粉末の積層造形により成形した部材表面に、Ni めっきしたWR-10 の導波管を作製した。今回、長さの違う導波管を作製し、その透過率を測定したので報告する。
軽量化,製作コスト削減等の観点から,樹脂材料表面を金属メッキした導波管が検
討されている.金属メッキ樹脂導波管の伝搬損失は,金属製導波管に比べ大
きい傾向にあることが知られている.本検討では,シミュレーションを用いて
金属メッキ樹脂導波管の基礎検討を行ったので報告する.
休 憩(15:45 再開) 座長 清水隆志(宇都宮大)
C-2-46 |
高周波プローブのティルト角度の自動調整技術の実デバイスへの適用
○坂巻 亮・堀部雅弘(産総研) |
C-2-47 |
マイクロストリップ線路の電流偏在を考慮した非接触PIM測定
◎室伏竜之介・久我宣裕(横浜国大) |
C-2-48 |
同軸プローブ法の等価回路におけるコンダクタンスモデルの検討
◎中村昌人・田島卓郎・瀬山倫子(NTT) |
C-2-49 |
低濃度グルコース溶液の誘電率測定手法
◎星 佑太・杉本泰博(中大) |
C-2-50 |
同軸管共振器を用いた導体材料の損失評価
◎石井佑典・久我宣裕(横浜国大) |
C-2-51 |
薄型誘電体フィルムの50GHz帯温度依存性評価システム
○髙萩耕平・古神義則・清水隆志(宇都宮大) |
デバイス評価手法の一つとして高周波プローブを用いた平面回路評価装置がある。産総研ではこれまで、高周波プローブの位置再現性を高める事で、平面回路評価の測定再現性を向上させる試みをしてきた。今回は、Sパラメータを解析する事で、DUTの位置において非接触でプローブ角度を調整する技術の開発を検討した。今回はその初期検討結果について報告する。
移動体通信において,受動回路における相互変調ひずみ(PIM:Passive Intermodulation)が干渉波として問題となっている.非所望のPIM源の影響を避け,高感度にPIMを測定可能な方法として同軸管を用いた非接触PIM測定法が提案されている.この方法は,素材としての銅箔特性評価が可能であるが,電流が地導体側に偏在するマイクロストリップ線路については,この影響を考慮した特性評価ができないという問題があった.そこで本稿では,影像モデルである平衡MSLを用いて,MSLの電流偏在効果を考慮した非接触のPIM測定を行っている.
同軸プローブを用いた誘電率測定はその広帯域性から液体試料の誘電緩和測定に多く用いられている手法である.本手法は簡易な等価回路モデルに基づく校正標準との相対値測定であり,一様な誘電率を持つ材料を精度よく測定できる.一方で,生体や層状材料のような侵入長よりも浅い領域に誘電率分散の存在する材料の測定値は材料の構造とプローブ開口に依存することが報告されているが,不均質媒質測定時の回路モデルおよび誘電率分散測定に関する報告は少ない.本稿では,同軸プローブ法の高度化に向け,誘電率に対し高感度な成分である放射コンダクタンスの理論モデルについて検討し,実測との比較によりその妥当性を評価したので報告する.
血液中のグルコース濃度を,非侵襲で測定する方法を模索中である.様々なアプローチのうち,マイクロ波を利用するフリースペース法に注目しているが,現状では検出感度が低く不十分である.前研究では,感度の増大を計る目的でS21パラメータを測定する方法を検討し,約3倍程の感度増大が期待される事を確認した.しかしながら現状ではいずれも, 感度不足が否めず実用化には遠い状況である.そこで本論文では,他の感度上昇を目指すアプローチを検討したので,その結果について紹介する.
同軸管共振器を用いた導体材料の損失評価を行っている.被測定試料を測定用同軸管内部に設置し,1/2波長共振器を構成し無負荷Q値により導体材料の損失を評価している.5種の異なる金属線について測定結果を示している.なお,測定は2GHzにて行われている.
ミリ波回路の小型・薄型化の需要が高まり、薄型材料の複素誘電率の周波数・温度依存性評価法が求められている。従来、円筒空洞共振器法を用いた薄型フィルムの温度依存性評価では厚さ130um程度のフィルム試料に対し有効性を実証してきた。しかしながら、130um以下のフィルム試料に対する有効性は報告されていない。
そこで、本研究では厚さ50um程度のフィルム試料に対し温度依存性評価を行い、130um以下の厚さに対応可能な測定システムを実現した。
C-2. マイクロ波C(マイクロ波・ミリ波応用装置)
3月17日 9:30〜10:45 工学部 講義棟1F 109講義室 座長 吉田賢史(鹿児島大)
C-2-52 |
Wi-Fiバックスキャッタを用いた5GHz帯簡易ビームフォーミング無線IoT通信の提案
○末松憲治・枝松航輝・町井大輝・本良瑞樹・亀田 卓(東北大) |
C-2-53 |
5GHz帯Wi-Fiバックスキャッタ通信の回線設計
◎枝松航輝・町井大輝・本良瑞樹・亀田 卓・末松憲治(東北大) |
C-2-54 |
小型アンテナモジュールを用いた5 GHz帯Wi-Fiバックスキャッタ通信における受信電力の測定
◎町井大輝・枝松航輝・本良瑞樹・亀田 卓・末松憲治(東北大) |
C-2-55 |
混成共振モードを利用した120GHz帯近接無線のデータ伝送特性
○板倉弘一郎・枚田明彦(千葉工大)・東本大樹・永妻忠夫(阪大)・渡邊一世・関根徳彦・笠松章史(NICT) |
C-2-56 |
屈曲させた誘電体導波路による通信エリアの拡大
○福田敦史・岡崎浩司・鈴木恭宜・河合邦浩(NTTドコモ) |
5GHz帯の無線LANに注目して,工作機械の基部に設置された複数アンテナ素子を備えるアクセスポイント(AP)により,比較的高速に移動あるいは回転する工作機械の可動アーム自身あるいは,アームの先にとりつけられた物体のセンサノード(SN)を,簡易的なビームフォーミングでトラッキングすることを提案し,その実現性を検討する。
我々は,工場内無線IoT通信としてAP (Access Point)とセンサノード (SN)間の通信に5 GHz帯Wi-Fi信号を用いたバックスキャッタ通信を利用することを提案している.本稿ではその回線設計を行ったところ,理想環境におけるOOK変調バックスキャッタ通信において最大通信距離が2.8 mであることを示した.
我々は工場内無線IoT通信において,5 GHz帯Wi-Fi信号を用いたバックスキャッタ通信を検討している.ここではバックスキャッタ通信機能を持つセンサノード用の小型アンテナモジュールを試作し,バックスキャッタ通信の受信電力を測定した.その結果,約1.1m以内であれば通信可能であることが明らかになった.
近年、大容量データをパーソナルデバイス同士で手軽に通信する手法の1つとしてテラヘルツ近接無線通信が注目されている。テラヘルツ無線では一つのシステムが広い帯域を使用するため、システム間の干渉を抑制するためには、不要電波の放射を抑制する必要がある。我々は分割リング共振器 (SRR: split-ring resonator) を使用した帯域阻止フィルタに格子パタンを接触させると、帯域阻止フィルタの通過損失が 30 dB 以上減少することを示した。本稿では、SRR帯域阻止フィルタと格子パタンを接触した場合の混成共振モードのメカニズムを明らかにするとともに、これらのフィルタを用いた120GHz 帯無線のデータ伝送特性について報告する。
今後の移動帯通信において予測される急激なトラヒックの増大に対応するためミリ波帯の利用が注目されている。著者らはこれまで誘電体導波路(以下、DWG)を屈曲させることにより電磁波を放射する特性をアンテナに応用し、ミリ波帯通信エリアを形成する手法を提案した。また、広帯域伝送が可能であることを実証した。本稿では、通信エリア拡大のため、DWGに2か所の屈曲部を設け、2か所のエリアを形成した場合の伝送特性を報告する。
3月17日 10:15〜12:00 工学部 講義棟1F 111講義室 座長 松室尭之(龍谷大)
C-2-57 |
AM放送波を利用した土壌含水量測定用埋め込みセンサーの数値的検討
◎内田悠斗・黒木太司(呉高専) |
C-2-58 |
含水率に対する真砂土及び砂質土の中波帯複素誘電率測定
◎岩城昴琉・内田悠斗・黒木太司(呉高専) |
C-2-59 |
共振型電極による40MHz帯簡易土中筍探知の考察
◎岩本孝太・黒木太司・坂本雅弥・内田悠斗(呉高専) |
C-2-60 |
ホーンレンズアンテナを用いた77GHzレーダにおける方位推定精度向上の一検討
○北山 晃・永石英幸・栗山 哲(日立)・黒田浩司(日立オートモティブシステムズ) |
C-2-61 |
アレーキャリブレーションを用いた長距離・高分解能ミリ波レーダの開発
◎中尾美裕・田中 咲・赤峰幸徳(日立)・嶋田堅一・黒田浩司(日立オートモティブシステムズ) |
C-2-62 |
非線形チャープ信号を用いた遠近目標物の同時距離検出
○水谷浩之・中溝英之(三菱電機) |
C-2-63 |
RFアンダーサンプリング方式水蒸気ラジオメータの超ナイキスト帯域化の提案
◎呂 行・本良瑞樹・亀田 卓・末松憲治(東北大) |
バイスタティックレーダー方式のラジオ放送波を用いた土砂災害検知システムにおいては、AM放送波を用いた局所的な含水量評価が困難であった。しかし、5m以上の地中から崩壊する土砂災害の検知には、深層部の含水量を局所的に評価することが要求され、最大数十mの地中まで到達し得るAM放送波を利用する必要がある。そこで、AM放送波を受信するアンテナを地面に埋め込み、センサーとして用いる方法を検討した。
AMラジオ放送を用い土砂崩れを予知するシステムを提案し、土砂災害を引き起こす真砂土の含水率に対する複素誘電率を測定した。その際含水率は15%まで5%刻みで設定していたが、実際2018年7月広島県地方豪雨による土砂崩れは含水率5%程度で引き起こされていた。そこで本論では広島県に広く分布する真砂土、及びその次に多く分布する砂質土をもとに、含水率を1%ステップで4%程度まで設定し、各土の中波帯における複素誘電率を計測したので報告する。
筍は土中で育成している状態での収穫が最も理想的で、このような筍は酸化しぶみが無く、高価格で市場取引されることから土中筍探知が望まれている。土中探知に関しては地中レーダーなどの優れた技術があるが一般農家での使用には低価格性が重要になる。そこで本論では平面型電極で共振回路を構成した簡便なセンサを提案し、数値的に筍探知の可能性を検討した。
自動運転向けの前方監視用遠距離ミリ波レーダ(LRR)では,遠方車両の車線位置を認識するために0.1degオーダの方位推定性能を実現することが要求の一つに挙げられる。日立がこれまで開発を進めてきたLRR向けのホーンレンズアンテナ方式は,放射効率が高いだけではなくアンテナ間の電気的な結合が小さいことが特徴で,基板上にアンテナパタンを配置するアンテナ方式等よりも方位推定誤差を小さく出来る利点がある。本報告ではホーンレンズアンテナ間の結合度を評価した結果(-30dB)と,ホーンアンテナを適用したレーダモジュールにおける方位推定誤差を確認した結果(0.2deg)について報告し,LRR向けに有用なアンテナ方式の一つであることを主張する。
自動運転ではさまざまな想定シーンが考えられ,そのひとつに高速道路での衝突防止が挙げられる.高速道路では,制御距離や雨天などの条件を考慮すると200m以上の遠方から車両がどの車線にあるか検知する必要があり,カメラやLiDARでの検知が難しく,ミリ波レーダの利用が期待されている.遠方の車両を分離検知するのに有効な超高分解能方位推定では,各アンテナの利得や位相誤差,アンテナ間の干渉,アンテナ間隔誤差が生じた場合,方位精度が大きく劣化する.このため,本来の性能を発揮するためにアレー校正が必要である.アレー校正では校正行列を用いた補正方法が知られている.しかし,校正行列に方位依存性がある場合,正面から離れた方位では校正精度が大きく劣化する.本稿では角度依存性に対応したアレー校正と遠方の分解能を向上させる信号処理方式を提案する.
周波数が時間に対して非線形に変化するチャープ信号を目標物に送信することにより、遠距離と近距離の目標物を単一の送信波形で検出する方式を提案し、シミュレーションによる原理検証を行った結果を示す。
集中豪雨の早期予報や電波位置天文観測の確定性向上のため,大気中の水蒸気量や雲水量を正確に計測する水蒸気ラジオメータの開発が重要である.水蒸気と雲水で放射量の周波数特性は異なっており,広帯域(16-30 GHz)に測定することで,より正確に水蒸気と雲水からの放射量の分離が可能となる[1].今回,受信機小型化のため,最大サンプリングレート16 GHzの一つのADCで14 GHzの超ナイキスト帯域の信号を受信できる新しい受信機構成とクロック切り替えを用いたスペクトル復元手法を提案する.復元手法を用い,数値計算で復元結果と元信号の最大差は1 dB以下であった.
3月17日 13:30〜17:30 工学部 講義棟1F 111講義室 座長 岡崎浩司(NTTドコモ)
C-2-64 |
肺ガン部位推定を目的としたピンセット型電極による牛肺内異物検知の実験
◎坂本雅弥・空 翔太・黒木太司(呉高専) |
C-2-65 |
発振素子装荷リング共振器型電極を用いた循環腫瘍細胞による原発巣同定に関する検討
◎空 翔太・黒木太司(呉高専) |
C-2-66 |
高周波止血鉗子の刃部形状に対する数値的検討
◎千田純一・黒木太司(呉高専) |
C-2-67 |
マイクロ波CTマンモグラフィの開発
◎花島朋弥・長山好夫・渡辺 茜・斎藤久美・浅井朋彦(日大)・森山敏文・田中俊幸・竹中 隆(長崎大)・山口聡一朗(関西大)・土屋隼人(核融合研) |
C-2-68 |
逆散乱解析法を用いたマイクロ波アブレーション画像化法
◎高石ゆり子・木寺正平(電通大) |
C-2-69 |
マイクロ波マンモグラフィのための周波数統合型CSI法を用いた複素誘電率再構成法
佐藤宏樹・○木寺正平(電通大) |
胸腔鏡下手術は肺癌手術の主流であり、マーカーによる目視癌部位推定が行われていることから推定精度向上を目的として、高周波で動作するピンセット型共振電極が検討された[1]。今回は牛肺をネットワークアナライザに接続されたピンセット型電極で把持し、その共振周波数を測定することで肺癌部位推定の可能性を検討した。
癌による死亡原因の大半を転移性癌が占めるが、この癌組織は原発巣に由来し、血液中を移動する循環腫瘍細胞(CTC)の内容を精査することで原発巣の特定や転移ステージの評価が期待される。今回はCTCから原発巣を推定することを目指し、臓器の複素誘電率の差異を発振周波数スペクトル分布で観測するため、リング共振器型電極と発振素子を組み合わせた電極に関して検討を進めた。
現在、ガン摘出などの内視鏡を用いる手術に、多くの高周波デバイスが用いられ、マーキングや粘膜切開、止血などの様々な施術場面によって使い分けられている。今回は高周波デバイスの中でも粘膜切開及び止血に用いることが出来る高周波止血鉗子に関して、特に安全性の高いバイポーラ型に着目し、その刃部形状を変化させた際の諸特性について検討を行った。
Forward-Backward Time Stepping method(FBTS法)を用いるマイクロ波CTマンモグラフィ装置開発を続けている.ターゲットに中空円筒誘電体を用いて、マイクロ波CT実験を行なった結果、FBTS法を用いて実験データから画像再構成ができることがわかった。広い周波数帯域を使用することにより、FBTS法の精度を上げることができる。そこで、広帯域でモデル化しやすい平面ダイポールアンテナを開発している。新型アンテナについて、電磁界計算によりアレイ化による干渉を調べた結果、マルチアンテナアレイ化が画像再構成計算の障害にはならないことがわかった。現在新型アンテナでのFBTS計算のためにより良いモデリング開発を進めている。
マイクロ波アブレーションは悪性腫瘍をマイクロ波加熱により焼灼して治療する技術であり,最小限の侵襲で癌を治療できるため,肝臓や乳がん治療などに有用である.同治療においては安全かつ確実な癌組織の焼灼のため,焼灼領域の逐次モニタリング技術が必須である.同技術には,超音波やMRI 等が導入されているが,近年マイクロ波を用いたモニタリング法が,簡便さ等の観点から有望であるとされている.先行研究[1] では,波形比較に基づく焼灼領域境界推定法が提案されている.同手法は焼灼前後の波形の比較により,高速かつ高精度に焼灼領域を画像化するが,焼灼前後のプローブ近傍の複素誘電率値を与える必要がある.本稿では,複素誘電率を再構成する逆算解析の一種DBIM(Distorted Born Iterative Method) を導入する.本手法の有用性をMRI 画像から抽出された精緻な乳房ファントムを用いた数値計算により確認する.
乳癌は国内外において罹患率の最も高い癌の一つであることから,簡便かつ高頻度な検診技術であるマイクロ波マンモグラフィが注目されている.癌組織や他の組織に対して有意に複素誘電率が高いことがわかっており,同誘電率分布を画像化することで確度の高い診断が可能となる.複素誘電率再構成法として,CSI(Contrast Source Inversion)法が提案されている.同手法は順問題解析を必要としないため,高速かつ高精度な再構成が可能であるが,ノイズに対する耐性改善が課題である.同問題を解決するため,本稿では生体組織の周波数分散性を考慮した複数周波数統合型CSI法を提案する.単極デバイモデルの1次微分に基づく統合法により,分散性媒質に対応する.MRI画像から抽出される精緻な乳房モデルを用いたFDTD(Finite-Difference Time-Domain)法による数値計算によって,本手法の有効性を示す.
休 憩(15:15 再開) 座長 黒木太司(呉高専)
C-2-70 |
ミリ波帯の廉価な周波数変換器の検討
○鶴田 誠・臼井 亮(KISTEC) |
C-2-71 |
SFP+光モジュールを用いた光ファイバ給電ダイレクトディジタルRF送信機のイメージ出力特性
◎田村 涼・本良瑞樹・亀田 卓・末松憲治(東北大) |
C-2-72 |
アンテナ兼用共振器を用いた60GHz 180μW 小型低消費電力ミリ波ASK送信機
○本良瑞樹・亀田 卓・末松憲治(東北大) |
C-2-73 |
体内外両用920MHz/5.02GHzデュアルバンドRFIDシステム
○党 博文・本良瑞樹・亀田 卓・末松憲治(東北大) |
近年,ミリ波帯の電磁波を活用した研究開発が活発化してきている.ミリ波(30GHzから300GHz)は,波長が1mmから10mmの電磁波である.波長が短くて,周波数帯域幅が広いという特徴を活かして,車載レーダ・非接触のバイタルセンサ・高速データ伝送・非破壊のイメージングなど幅広い分野の応用が期待されている.
ミリ波帯の一般的な計測環境を整備した場合には,現時点でも少なくとも数千万円程度の予算規模が必要となる.
本報告では,廉価なミリ波帯の周波数変換器を構築し,構築したミリ波送受信システムの高周波特性等を検討した結果を報告する.
1bit BP ΔΣ変調はRF信号を1bitのデータストリームで伝送できることから,10Gb Ethernet (10GbE)向けのSFP+ (Small Form-factor Pluggable)モジュールを用いて1次ナイキストゾーンの基本波成分が伝送可能であることが報告されている.本稿では,SFP+光モジュールを用いた光ファイバ給電送信機を構成し,その高次イメージ出力の伝送特性を測定する.2.5GHz, 20MbpsQPSK信号を10Gbpsの1bit BP ΔΣ変調信号に変換し,これを1.3μmシングルモード光ファイバで伝送し,その出力を評価した.2次ナイキストゾーンの7.5GHzのイメージ出力において,SNR = 47.8 dB, ACLR = 40.3 dB, EVM = 3.1 %が得られ,ダイレクトディジタルRF送信機としての動作を確認した.
ミリ波無線通信は主に大容量通信の実現に用いられてきたが,近年IoT(Internet of Things)の発展に伴い,ミリ波帯などでも高速大容量通信以外の用途が広がると考えられる.そのためには低消費電力で動作するアナログフロントエンドが必要になると考えられる.我々はこれまでに, 60GHz帯での発振器の低消費電力化について検討し報告してきた[1].本稿ではミリ波IoT用のフロントエンドとして小型低消費電力なASK送信機について報告する.
RFIDシステムは医療分野においても患者生活の質を改善するために広く用いられている.部分義歯を使用している高齢者が多く、義歯の紛失に対しての対策が重要だと考えられる.部分義歯は2cm程度で有り,従来の無線タグでは実装が困難であった.また,義歯を誤飲した場合や、紛失した場合において,体内外を区別し所在を明らかにする必要がある.本稿ではそれを解決するために体内外両用RFIDシステムを提案し,人体内外で利用でき部分義歯に装着できる小型無線タグを設計した.
休 憩(16:30 再開) 座長 末松憲治(東北大)
C-2-74 |
放射素子を4素子装荷した電子レンジの電界分布に関する基礎検討
○板倉 洋・大島 毅・大和田 哲(三菱電機) |
C-2-75 |
K帯無線通信とC帯マイクロ波無線電力伝送の両立によるワイヤレスセンサシステムの検討
○吉田賢史(鹿児島大)・小渕大輔・松浦賢太郎(東大)・西川健二郎(鹿児島大)・川崎繁男(JAXA) |
C-2-76 |
2つのS/H回路のクロック信号と出力信号の位相差情報を用いたアンダーサンプリング周波数検出方式
○和田 平・水谷浩之・中溝英之・森 一富(三菱電機) |
C-2-77 |
高周波半導体マルチチップパッケージの検討
○石橋秀則・柴田博信・川崎健吾・桑田英悟・神岡 純・高橋 徹・米田尚史・宮崎守泰(三菱電機) |
電子レンジ調理は短時間で加熱できる利点があるが、同時に加熱むらを生じるという欠点がある。加熱むらの原因は、電子レンジに関しては、マイクロ波を電気的に閉じた空間に照射するため、電磁波の性質上庫内に定在波が必然的に生じてしまうことが挙げられる。その対策として、従来は電子レンジの庫内に加熱対象を回転させるターンテーブルの設置や、マイクロ波放射素子自体を回転させることで加熱むらの対策を取っていた。そこで本研究では、上記以外の加熱むらの解決法として、電子レンジにアンテナを複数配置し、位相設定による加熱むらの改善について基礎検討を行ったので報告する。
本稿では,無線通信に24.5 GHzを使用し,マイクロ波無線電力伝送には5.8 GHzを用いたワイヤレスセンサネットワークシステムの実験結果を報告する.
到来する未知の信号の周波数を特定する周波数検出方式として,アンダーサンプリングを行うSample and Hold (S/H)回路のクロック信号の周波数を切り替える方式が提案されている.しかし,周波数が未知の入力信号が複数の場合,入力信号数の増加に伴ってクロック信号の切り替え回数が増加し,周波数検出に要する時間が増大する.本稿では,入力信号をアンダーサンプリングする2つのS/H回路を並列化し,2つのS/H回路に与える同一周波数のクロック信号の位相差とS/H回路の出力信号の位相差から入力信号の周波数を検出する方式を提案し,原理検証を行った結果を示す.
送受信モジュールは,小形・低コスト化の要求から,タイル型モジュール等の高密度に実装するモジュールの開発が進展している.これに伴い,高周波半導体パッケージも小形化が要求されている.高周波半導体パッケージを小形化する方法としては,機能性回路を高密度に配置できて低コストであるシリコン半導体と,高出力化や耐電力性に優れる化合物半導体の,それぞれの優位性が活かせるマルチチップパッケージが有望であると考えられる.そこで,マルチチップパッケージ化に適用できる技術として,再配線技術を用いたファンアウトパッケージおよび部品内蔵基板に注目し,それぞれの技術を適用したマルチチップパッケージの構造を比較したので報告する.
C-3/4. 光エレクトロニクス/レーザ・量子エレクトロニクス
3月17日 9:30〜12:30 工学部 講義棟1F 107講義室 座長 山形友二(フジクラ)
[シミュレーション(1)]
C-3/4-1 |
エアブリッジ型導波路の下部クラッド層厚依存性
○山中直貴・端山喜紀・勝俣直也・中津原克己(神奈川工科大) |
C-3/4-2 |
Nb2O5を用いた水平スロット導波路のスロット位置依存性
◎端山喜紀・中津原克己・西澤武志・武田正行(神奈川工科大) |
C-3/4-3 |
平行平板からなる積層偏波回転子のジョーンズマトリクスを用いた一考察
朝生龍也・◎大石雅人・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-3/4-4 |
誘電体層に装荷された金属クロススロット配列偏波変換器
山内潤治・◎佐々木玲音・中田涼太・中野久松(法政大) |
C-3/4-5 |
Au膜に誘電体スロット導波路配列を付加した光学ミラー
◎大川内 巧・山内潤治・中野久松(法政大) |
強誘電性液晶 (FLC:Ferro-electric Liquid Crystal)を用いた可変位相シフタの性能向上を目指して、新たなプロセスを用いて製作するために、エアブリッジ導波路の下部のAirクラッド層厚依存性の解析を行ったので報告する。
Nb2O5を用いた水平スロット導波路について有限要素法により得られた光強度分布を規格化することにより、スロット位置によってスロット内に局在する光強度が変化することを解析により明らかにした。
水晶を用いた1/2 波長板を積層した,入射偏波面に依存しない偏波回転子(PR) が提案されている.他方,筆者らは,平行平板を積層することで,入射偏波面に依存しないPR を提案した.本稿では,ジョーンズマトリクスを用いて楕円率と位相遅延の波長特性を評価し,平行平板で構成されるPR が,水晶に比べて広帯域に動作することを明らかにする.
クロススロットを設けた 1/4 波長金属板が提案されており, わずかに異なるスロット長を利用することで 90◦の位相差を生み出し, 偏波変換を実現してきた. ただし, 基本特性を把握するために金属板は自由空間に配置していた.本稿では, 金属板に誘電体層を装荷した際の透過波の偏波変換特性を評価し, 円偏波が得られることを示す.
赤外光レーザーの操作性向上のために,入射光の位相状態を制御する様々な光学ミラーが開発されている.我々は,誘電体スロット導波路配列で位相変化を生じさせるミラーを提案した.しかしながら,我々の提案構造を含め,現在のミラーの多くは誘電体多層膜による高反射層(HRC)で光波を反射しているため,楕円率特性に波長依存性が生じていた.本稿では,Au 反射膜にグレーティングを設けたミラーを提案する.金属層にグレーティングを付加した簡素な構造で,波長依存性が緩和されることを明示する.
休 憩(11:00 再開) 座長 中津原克己(神奈川工科大)
[シミュレーション(2)]
C-3/4-6 |
可変光OFDM信号分離用集積型光フィルタの性能評価
◎正木秀明・瀧口浩一(立命館大) |
C-3/4-7 |
シリコンリング共振器を用いた光演算回路の飛躍的な演算次数増大に向けた検討
◎佐藤孝憲・榎原 晃(兵庫県立大) |
C-3/4-8 |
ニューラルネットワークによるモザイク型モードディバイダの特性学習
◎白田 幹・藤澤 剛・齊藤晋聖(北大) |
C-3/4-9 |
熱光学効果を利用したWINC型チューナブルモードディバイダ
◎中村航大・藤澤 剛(北大)・坂本泰志・松井 隆・中島和秀(NTT)・齊藤晋聖(北大) |
C-3/4-10 |
DBS法を用いた2µm帯モザイク型シリコン4モード合波器の設計
◎藤原広紫・澤田祐甫・藤澤 剛・齊藤晋聖(北大) |
C-3/4-11 |
ANNによるマルチモードNFPからのモード振幅,位相推定
○△菅原直人・藤澤 剛(北大)・坂本泰志・松井 隆・中島和秀(NTT)・齊藤晋聖(北大) |
スラブスターカプラ型光DFT(Discrete Fourier transform)回路と結合率可変光カプラアレイから構成される、可変光OFDM(Orthogonal frequency division multiplexing)信号分離用の集積型光フィルタに関して、フィルタ設計のための各種パラメータ値、導波路位相誤差に対する耐性の検討を行った。光フィルタのチャネル数と、チャネル間隔、隣接遅延線長差との関係を明らかにした。また、位相シフタの設置によって、位相誤差の無い場合の理想特性と同等の特性が得られることがわかった。
近年,ムーアの法則の限界を超える1つの突破口として,光・量子演算に注目が集まっている.特に,光導波路をベースとした全加算回路や行列積演算回路は,電子デバイスとの融和性が高く,それぞれ光信号の低遅延性が電気回路の性能を大幅に上回る可能性,ならびに,光MIMO処理によるDSP負担軽減の可能性が示されている.しかしながら,光回路は電子回路に比べて素子サイズが大きく,スケーラビリティの改善が不可欠であった.そこで我々は,リング共振器を用いた位相シフタ・パワーディバイダを用いて,行列積演算回路を構成することで小型化可能であることを報告した.本発表では,共振器のQ値と屈折率変化量,反応時間について検討し,どの程度まで演算次数Nを増大可能であるかを示す.
近年,急速な情報通信技術の進展に伴い通信容量の拡大が急務となっている.なかでも全体の通信容量のうちデータセンタ間・内における通信容量が占める割合は大きく,データセンタ内の電気配線の通信技術が伝送容量や消費電力といった点で限界を迎えつつある.それらの課題に対応する方法の一つとして,空間分割多重 (Space division multiplexing: SDM) 伝送技術が注目を集めている.そのうち複数のモードを用いるモード分割多重伝送 (Mode division multiplexing; MDM) 技術は,次世代の通信技術として大きな注目を集めている.シリコン導波路を用いたMDM用デバイスは,デバイスサイズの小型化に有用なため,大きな注目を集めている.特に,モザイク素子は従来の導波路型デバイスをさらに小型化する可能性を秘めている[1].モザイク素子の設計はDirect binary search (DBS)によって行われるが,特に3次元構造の設計をする場合,計算時間が膨大となる問題点がある.ここでは,ニューラルネットワーク (Neural network: NN) [2]を用いてモザイク素子設計を簡略化するための基礎検討を,MDM用基本素子のモードディバイダに対して行ったので報告する.
長距離モード分割多重システム構成にはエルビウム添加光ファイバ増幅器を利用した数モード増幅が必要不可欠だが,利得のモード依存性を補償するためにモードゲインイコライザが必要となる.空間光学系を利用したモードゲインイコライザではサイズが大きくなるためシリコンフォトニクスのように集積可能なプラットフォームで作製されることが好ましい.シリコンフォトニクスでのモードゲインイコライザの作製においては任意分岐比の広帯域モードディバイダが必要となる.今回,熱光学効果を利用したマルチモード波長無依存カプラ型の小型で調整可能なTE0-TE1モードディバイダを製造,測定し,測定結果より波長無依存カプラ型任意分岐比モードディバイダが柔軟なモード操作に役立つことが示された.
新規波長帯における光通信の実現に向け,シリコンを用いた中赤外光デバイスに関する研究が盛んに行われている.MDMは,単一波長の光を用いて伝送容量を拡大することが可能であり,波長可変光源が手に入りにくい新規波長帯においては,有望な多重化技術と考えられる.2 μm帯の波長を用いた,チップ上のMDM伝送実験が報告されており,ADC型のモード合波器が用いられている.しかし,ADC型モード合波器では,多重モード数が増えるにつれ,長手方向のサイズが大きくなるという問題点がある.モード合波器を小型化する一つの試みとして,1.55 µm帯において,モザイク状素子を用いた3モード合波器が提案されている.そこで本報告では,FEM解析に基づき,DBS法を用いたモザイク素子の設計を行い,波長2 μm帯での使用を目的とした,小型の4モード合波器を提案する.
近年,インターネットトラフィックの増大により,空間多重技術 (Space Division Multiplexing: SDM) の一つであるモード分割多重 (Mode Division Multiplexing: MDM) 技術を用いることで,伝送容量の拡大が期待されている.MDM伝送は,各モードに独立した信号をのせて数モードファイバ (Few Mode Fibers: FMFs) で同時に伝送させる.その際,FMFや関連デバイスから出射されたモードの振幅,位相を推定する技術が有用となる.最近,人工ニューラルネットワーク (Artificial Neural Network: ANN) を用いて,3,5モードファイバの近視野像 (Near Field Pattern: NFP)から,そのモード振幅,位相を推定する手法が提案された.ここでは,多層のANNを用いて,平面光波回路型3モード交換器のNFP から,モード振幅,位相の推定を行い,実験結果との良い一致を得たので報告する.
3月18日 9:30〜12:15 工学部 講義棟1F 107講義室 座長 高原淳一(阪大)
[ナノフォトニクス(1)]
C-3/4-12 |
(依頼講演30分)Telecom-band lasing nanowires at room temperature
○Guoqiang Zhang・Masato Takiguchi・Kouta Tateno・Takehiko Tawara・Hideki Gotoh(NTT) |
C-3/4-13 |
(依頼講演30分)フォトニック結晶集積ナノワイヤ受光器
○滝口雅人・佐々木 智・舘野功太・Edward Chen・野崎謙悟・Sylvain Sergent・倉持栄一・Guoqiang Zhang・新家昭彦・納富雅也(NTT) |
C-3/4-14 |
Simultaneous Optimization of the Lateral and Vertical Spot Size Converter by Using Different Dot Density Nano-pixel
○Zan Hui Chen・WenYing LI・HaiSong Jiang・Kiichi Hamamoto(Kyushu Univ.) |
Telecom-band single nanowire lasers made by the bottom-up vapor-liquid-solid approach, which is technologically important in optical fiber communication systems, still remain challenging. Here we report telecom-band single nanowire lasers operating at room temperature based on multi-quantum-disk InP/InAs heterostructure nanowires. The demonstration of telecom-band single nanowire lasers operating at room temperature is a major step forward in providing practical integrable coherent light sources for optoelectronics and data communication.
半導体ナノワイヤはシリコン上に集積できる素子として注目されている。これまで通信波長帯ナノワイヤレーザ[1]や、ナノワイヤLED[2]、全光スイッチ[3]を作製した。p-i-n構造を有する半導体ナノワイヤは、静電容量が非常に小さいため高速動作することが期待できる。そこで、今回は、フォトニック結晶にZnO透明電極を用いることで、世界で初めてシリコンチップ上のフォトニックナノ構造に集積した単一ナノワイヤ光検出器を作製した[4]。
[1] M. Takiguchi, et.al., APL Photonics, 2, 046106 (2017)
[2] M. Takiguchi, et.al., Appl. Phys. Lett., 112, 251106 (2018)
[3] M. Takiguchi, et.al., IEEE IPC 2019, TuC1.4, San Antonio, USA
[4] M. Takiguchi, et.al., CLEO 2019, SM4J.3, San Jose, USA
Spot size converter is one of the essential building blocks in integrated photonic circuits due to the advantages of compact footprint, broad operation bandwidth and wavelength Non-dependent. One of the issues for typical spot size converter is that the structures can’t confine the vertical mode field due to the fixed dot-size. Because dot density determines the vertical field confinement, which is affected by dot-size. Herein, we propose an on-chip spot size converter which not enables the lateral field confinement, but it can work on vertical field confinement by using different dot density nano-pixel.
休 憩(11:00 再開) 座長 望月敬太(三菱電機)
[ナノフォトニクス(2)]
C-3/4-15 |
Ti拡散LiNbO3を用いたMMI光導波路の作製と光変調素子への応用の検討
◎平井杏奈・佐藤孝憲・河合 正・榎原 晃(兵庫県立大)・中島慎也・山本直克(NICT) |
C-3/4-16 |
シリコンナノ粒子を用いたテラヘルツ領域における屈折率制御および広帯域反射防止膜への応用
○添田淳史(帝人)・河田陽一・里園 浩・高橋宏典(浜松ホトニクス)・池田吉紀(帝人) |
C-3/4-17 |
ブラックシートにおける吸収特性の可視化
◎高橋直希・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-3/4-18 |
(依頼講演30分)高Q値ナノ共振器シリコンラマンレーザの進展
○高橋 和(阪府大) |
多モード干渉(Multimode interference: MMI)導波路では複数ポートの光結合器が実現できるので,光回路の一部に用いることで光学素子の高性能化が期待できる.従来,Si等の半導体光導波路ではMMI素子が実現されてきたが,光変調素子で良く利用されるTi拡散LiNbO3(Ti:LN)では複数ポートのMMI素子を実験的に動作実証した報告は見当たらない.本報告では,マッハツェンダー型電気光学変調器(Mach-Zehnder modulator: MZM)への応用を想定し,Ti:LNで2×2ポートのMMI光導波路構造による90°光ハイブリッドを設計し,実際に試作・評価したので報告する.
シリコンを素材とするテラヘルツ光学素子では,シリコン-空気間の屈折率差に起因して,界面反射によるテラヘルツ光の損失が課題である.本研究ではテラヘルツ光学素子の反射防止技術として,シリコンナノ粒子(SiNP)を利用した樹脂の屈折率制御技術および反射防止膜を開発した.今回用いたSiNPは,テラヘルツ領域で低吸収,低散乱性を示し,テラヘルツ帯における屈折率制御材料としての有用性が明らかになった.シリコン基板上に形成した,SiNPと樹脂との複合膜からなる2層型反射防止膜は,0.7-1.5 THz帯域で90 %を超える振幅透過率を有し,優れた反射防止性能を示した.
チタンとアルミナの交互層で構成されたブラックシートを評価した.
短波長側,長波長側のそれぞれのパワー密度分布,及びポインティングベクトル分布を示すことで,吸収原理を視覚的に明示した.
シリコンシリコンフォトニクス素子を集積化したモジュールは,巨大データセンタの省電力化・高速化に貢献すると期待されている.今後の大規模産業化には,低コスト化,低損失化,光通信以外の新たな産業分野の創出が課題となる.この克服に向けて,間接遷移型半導体であるシリコンを用いた小型レーザ光源を開発することは重要と考えられてきた.
シリコンラマンレーザは光励起型のレーザであるが,室温で安定な連続発振を達成しており,20%以上のエネルギー変換効率が報告されている.我々は,100万以上のQ値を有するフォトニック結晶微小共振器(ナノ共振器)を用いてマイクロワット以下のしきい値で発振するシリコンラマンレーザを開発してきた.本講演では,このレーザについて,ここ数年の進歩について説明する.
3月18日 9:30〜12:15 工学部 講義棟1F 108講義室 座長 山本直克(NICT)
[光無線]
C-3/4-19 |
Light intensity fluctuation under the influence of dynamic motion of water wave in case of Underwater Optical Wireless Power Transmission
◎Jiaying Li・Tomoyuki Miyamoto(Tokyo Tech) |
C-3/4-20 |
Design of optical wireless power transmission system with multiple light sources
◎Jing Tang・Kenta Takahashi・Jiahe Zhang・Tomoyuki Miyamoto(Tokyo Tech) |
C-3/4-21 |
Oblique incidence characteristics of solar cells with controlled appearance for OWPT
○△Yu Liu・Tomoyuki Miyamoto(Tokyo Tech) |
C-3/4-22 |
レーザ光による無線通信と無線給電の同時伝送
◎加藤広隆・Alexzander William Setiawan Putra・丸山武男(金沢大) |
C-3/4-23 |
高セキュリティ無線通信の提案と動作原理実証
◎山内健太・加藤和利(九大) |
Optical wireless power transmission (OWPT) is a method of transmitting power by using light over long distances and it is especially attractive in underwater. One important characteristic is the power transmission efficiency. There are new problems which can influence the efficiency that appear in underwater OWPT system. One of these problems is the existence of water waves when light passes through the interface between air and water.
We have discussed about the 1-D light distribution before. In this paper, we discuss about the output power of the solar cell under the influence of dynamic water waves.
In this research, we proposed and constructed an OWPT system with multiple light sources and solar cell recognition module so that the beam can be transmitted under efficiently controlled switching in real time.
In this report, we carried out experiments to clarify the effect of oblique incidence and polarization direction on the OWPT efficiency including realization of white colored surface. Under the OWPT light source, in the case of p-waves, the reflection decreases, the transmission increases, and the power generation increases from normal incidence.
ダイクロイックミラーを用いた,自由空間上での光通信と光給電を組み合わせたシステムを構築し,実際にこのシステムを用いて実験を行ったので,その結果について報告する.
5G(第5世代移動通信システム)の実用化が目前に迫る中、将来さらに増大する無線トラフィック需要や無線システムの高機能化を目指して6G(ポスト5G)に向けた技術開発に注目が集まっている。特に無線のセキュリティ性向上は必須の課題である。無線通信方式はオープンな伝送路を用いるため必然的に上位レイヤでの暗号化を行うことになるが、上位レイヤでの完全なセキュリティ性を実現するのは困難であると予想される。今回我々は高周波電波の特長を利用した物理レイヤでの暗号化方法を考案し、光キャリアを用いてその動作原理実証実験を行ったので報告する。
休 憩(11:00 再開) 座長 西村公佐(KDDI総合研究所)
[RoF・THz]
C-3/4-24 |
(依頼講演30分)車載向け大容量有無線光伝送技術
○相葉孝充・芹澤直嗣・若林知敬(矢崎総業) |
C-3/4-25 |
28GHz帯A-RoF用光受信モジュールの温度特性
○安田裕紀・相葉孝充(矢崎総業)・川西哲也(早大)・若林知敬(矢崎総業) |
C-3/4-26 |
テラヘルツ波自己相関計による高速光波形の高分解能測定
◎山本留央・加藤和利(九大) |
C-3/4-27 |
光ファイバの波長分散特性を用いたテラヘルツ波位相制御
○齋藤 匠・内藤裕太・加藤和利(九大) |
近年、インターネットや無線技術の普及により情報通信の容量は増加の一途をたどっているが、自動車においても高機能化が一層進んでおり、センサやカメラなど搭載機器間をつなぐネットワークへの要求も高度化している.車載用光通信システムは欧州を中心に実用化され、ギガビットクラスの標準化も進められている.一方、コネクティッドカーでは車外からのデータ通信にも対応し、今後は大容量の移動体無線通信への対応も必要になると考えられることから、本講演では車載における大容量の光有無線伝送技術を報告する.
近年,無線アクセスシステムの伝送容量が固定アクセスシステムの容量を超える勢いとなっている.IoTの普及により,今後,無線通信のさらなる伝送容量の増加が予想され,広帯域信号に対応すべくSHF帯の適用が検討されている.我々は建物等による遮蔽の影響の大きいSHF帯の信号を確実かつ低コストにリレーする技術として,マルチモード光ファイバ(MMF)を用いたAnalog-radio over multi-mode fiber(A-RoMMF)の検討を行っている.28GHz無線信号を伝送するA-RoMMFの光受信モジュールの周波数特性および伝送特性の温度依存性の評価を行った結果について報告する.
光通信の大容量化に伴い変調周波数の増大や多値化の研究が進展している。これら変調信号の波形観測は通信品質を予想する上で重要な技術であるが、現在の測定技術では100GHz以上の高速波形観測に限界がある。そこで我々は光干渉計を用いて自己相関波形を測定する方法を検討している。光パルス波形(包絡線波形)が確認できるものの、光波自身の干渉による振動も相関波形に含まれている。さらに高速な波形測定にはこの光干渉の影響を除く必要がある。我々は、光波形の自己相関をテラヘルツ波に変換後に行うことにより、光波の干渉をなくして変調波形そのもののみを観測できるテラヘルツ波自己相関計を考案し、実験によってその効果を確認したので報告する。
テラヘルツ波を用いた無線通信が注目されているが、一般に電磁波出力は周波数の2~4乗に反比例して低下する。このためテラヘルツ波無線通信においては送信出力増大とビームフォーミング・ビームステアリングによる受信方向への強度集中が課題である。ビームステアリングにはアレー状の複数のテラヘルツ波源とこれらテラヘルツ波間の相対位相の調整が必要である。我々が用いている二光波のフォトミキシングによるテラヘルツ波発生法においては、二光波間の位相差調整によりテラヘルツ波の位相調整をすることが可能である。今回、シングルモードファイバの波長分散特性と波長可変光源によるテラヘルツ波位相調整法を提案し、波長可変DFBレーザアレー(TLA)から光周波数差400GHzの二光波を光源として用いた原理確認実験においてテラヘルツ波の位相変化が確認されたことを報告する。
3月18日 13:30〜17:30 工学部 講義棟1F 108講義室 座長 瀬川 徹(NTT)
[通信用デバイス(1)]
C-3/4-28 |
(依頼講演30分)112Gb/s PAM-4アンクールド(25~85℃)動作InGaAlAs-SR-LBH-DFBレーザ
○中原宏冶・菅 一輝・岡本 薫・早川茂則・荒沢正敏・西田哲也・鷲野 隆・北谷 健・三瀧雅俊・坂本裕則・佐久間 康・田中滋久(日本ルメンタム) |
C-3/4-29 |
800GbEに向けた1500-nm帯 EA-DFBレーザの53-Gbaud PAM4アンクールド動作
◎高群哲義・中井義博・早川茂則・山内俊也・浅倉秀明・山口頼儀・中島良介・浜田重剛・直江和彦(日本ルメンタム) |
C-3/4-30 |
高効率9xx nm帯LDおよびその共振器長依存
○能川亮三郎・山形友二・吉田京平・貝渕良和・山口昌幸(フジクラ) |
C-3/4-31 |
リング共振器とDBRを反射器とした集積型波長可変レーザ
○若葉昌布・吉田匡廣・丸山一臣・濱 威・奥山俊介・西田昌義・鈴木理仁・石井啓之・川北泰雅(古河電工) |
C-3/4-32 |
波長可変レーザーモジュール向け超小型波長ロッカー用PLCチップの開発
○佐藤直樹・松原礼高・長谷川淳一・山岡一樹・有賀麻衣子・稲葉悠介・片山悦治(古河電工) |
C-3/4-33 |
二段リッジ構造を有するIII-V/Siハイブリッドレーザの室温連続動作
◎平谷拓生・藤原直樹・菊地健彦・新田俊之(住友電工)・エイッサ モータズ・王 雨寧・槇原 豊・西山伸彦(東工大)・八木英樹(住友電工) |
C-3/4-34 |
メンブレンDBRレーザの低しきい値電流化
◎菅野絵理奈・武田浩司・藤井拓郎・硴塚孝明・松尾慎治(NTT) |
新たに提案したBH構造[6]にて112Gb/s (56Gbaud) PAM4動作を25~85℃の温度範囲にて実現したので報告する。
近年のSNSやクラウドサービスの成長に伴い、データ通信量は年々増加している。さらなる大容量通信に向けて、800GbEトランシーバの標準化の議論が開始されている。当社では1300-nm帯の4波長と1500-nm帯の4波長から成る8波長を多重し、それらを50-Gbaud PAM4 (100-Gb/s)動作させることで800GbE用光源とする検討を行ってきた。
本報告では新たに開発した、1500-nm帯EA-DFB (electro-absorption modulator-integrated distributed-feedback) レーザを用いて53-Gbaud PAM4動作を20-85°Cで実現したので報告する。
高出力9xx nm帯LDの重要パラメータであるPCEを、素子の抵抗を下げることで大きく向上させた。抵抗の低減はLD結晶内のドーピング濃度の最適化と、ヘテロ界面の設計を改良することで実現した。試作したLDのPCEは世界最高レベルの73.6%に達した。この新たな構造をベースに共振器長がPCEに与える影響を、実験と計算により検証した。高出力動作に特化させた設計のLDでは25W出力時も66.3%のPCEが実測され、PCEを重視した設計では低出力ながら82%が得られると計算された。
波長可変レーザは,波長多重を用いた大容量光通信用光源として重要なデバイスである.光通信システムの大容量化に伴い,長距離のシステムに導入されてきたが,メトロ領域やデータセンタ間通信などの比較的短距離の通信にも応用が期待されている.この領域では,光トランシーバの小型化・省電力化が要求され,同時に光源の小型化への要求も高まっている.我々が新たに設計した波長可変レーザチップは,InP基板上の集積型シングルストライプレーザで,微小ヒータにより波長可変を行う.試作したリング反射器と位相変調DBRを集積化した新たなモノリシック波長可変レーザチップはC帯全域をカバーし,光出力17dBm,線幅100kHz以下での動作が可能である.
波長可変レーザーモジュールの小型化への課題であった空間光学系の波長ロッカーを、SiO2-ZrO2をコア材料に用いた5.5%⊿PLCを使用する事で、1.7×2.5mmと超小型波長ロッカー用PLCチップを作製する事に成功した。PLCを搭載した波長可変レーザーモジュールも安定して動作する事を確認した。短距離間でのデジタル・コヒーレント通信への適用が期待される。
近年, デジタルコヒーレント技術のデータセンタ間への適用が検討され, データレート1 Tb/s超に対する議論も始まっている.このような中, 光源である波長可変レーザに対しても高性能化が要求されており, Si導波路による外部共振器とIII-V 族半導体による利得領域を組み合わせた波長可変光源は, 狭線幅化の観点で次世代光源の一つとして有望である.本稿では, Si導波路上にテーパ導波路と二段リッジ構造を有する利得領域を形成したIII-V/Siハイブリッドレーザの室温連続動作について報告する.
チップ間通信のような短距離通信にも光インターコネクトを導入する試みがなされており、極低消費電力で動作する光源が望まれている。我々は活性層長を短くすることによりレーザの低消費電力化に取り組んでおり、本研究ではさらなる低しきい値化を目指してDBR(distributed Bragg reflector)をInGaAsP埋め込み導波路で作製した。活性層長5~80 μmの素子において室温連続発振を実現し、活性層長が5 μmのDBRレーザにおいて、低しきい値電流51 μAでの発振を達成した。短活性層長化によるしきい値電流低減の効果が確認でき、スロープ効率の改善と低抵抗化によって、さらなる低消費電力化が期待される。
休 憩(15:45 再開) 座長 名田允洋(NTT)
[通信用デバイス(2)]
C-3/4-35 |
Fundamental Study of Saturation Output Power on Quantum Dot Semiconductor Optical Amplifier (SOA) under High Temperature (85°C)
○Yinglei Qu・Ryota Kuwahata・Haisong Jiang・Kiichi Hamamoto(Kyushu Univ.) |
C-3/4-36 |
半導体レーザの注入同期を用いたSSBコムのS/N改善
○横田信英・八坂 洋(東北大) |
C-3/4-37 |
50 Gbaud向け大口径表面入射型PIN-PDの低電圧・高速動作
○濱田 博・豊中隆司・田中滋久・荒沢正敏・鷲野 隆・佐久間 康・直江和彦(日本ルメンタム) |
C-3/4-38 |
高線形性・特性均一性を有する400Gイーサネット向け8チャネル導波路型InP系アバランシェフォトダイオード
○沖本拓也(住友電工)・芦澤 建・海老原幸司・岡本 悟・遠藤 匠・堀野和彦・竹内辰也・内田 徹(住友電工デバイス・イノベーション)・八木英樹(住友電工)・米田昌博(住友電工デバイス・イノベーション) |
C-3/4-39 |
小型コヒーレントトランシーバ向けInP系多機能モノリシック集積受光素子
○八木英樹・沖本拓也(住友電工)・岡本 悟・堀野和彦・海老原幸司・竹内辰也・山崎功一朗・米田昌博(住友電工デバイス・イノベーション)・江川 満・小路 元(住友電工) |
C-3/4-40 |
InGaAsP多重量子井戸吸収層を有するSi導波路結合型薄膜受光器
○前田圭穂・開 達郎・相原卓磨・藤井拓郎・武田浩司・土澤 泰・松尾慎治(NTT) |
C-3/4-41 |
Inter-core Crosstalk Mitigation in Multicore Fibers with Spreading Technique
○Yizhou Wang・Takeshi Fujisawa・Kunimasa Saitoh(Hokkaido Univ.) |
In this work, we have studied the saturation output power of 1.3-µm wavelength quantum dot semiconductor optical amplifier (QD-SOA) under high temperature by using Fabry-Pérot LD structure.
マイクロ波・ミリ波発生や光通信用多波長光源への応用に向けて光周波数コム発生法が数多く報告されている。その中で単側波帯(SSB)変調器と帰還ループ構造を用いた構成は簡便であるが、帰還ループ内の光損失を補償するために用いられる光増幅器の自然放出光ノイズがループ毎に蓄積されるため、スペクトルの広帯域化に伴いS/Nが劣化する課題があった。この解決に向けて、本研究では波長多重シード光を同時にSSB変調することで波長多重SSBコムを生成し、それらを注入同期法によって一括同期する高S/N化手法を実験的に検証した。波長多重SSBコム間の同期が得られることを確認し、最大15.4 dBのS/N改善を実現した52本の平坦なコムスペクトル発生に成功した。
近年, 大容量データセンタネットワークの実現するため, 400 Gbit/s イーサネットの標準化が推進されている。これに用いる50 Gbaud (PAM4)対応受光素子(PD)は,高速動作に向けた低容量化を実現する為,通常は受光径の縮小を図っている. 一方, 光学実装の観点からは受光径は大きい方が望ましい.今回我々は,25 Gbaud製品相当である20 µmの大きな受光径を有する表面入射型PIN-PDで, 28 GHzの広帯域動作を実現したのでこれを報告する.
400Gイーサネットにおいて, 25GBaud PAM4信号を用いた8チャネル波長分割多重(WDM)方式が検討されている. 受信器では, 10kmを超える伝送距離への対応が重要となっており, 消費電力抑制の観点から光電流の増幅機能を有するアバランシェフォトダイオード(APD)への期待が高まっている. 一方で, APDに対しては, PAM4信号受信における高い応答線形性に加えて, 受光素子の多CH化における高い特性均一性が求められている. 我々は,これまでコヒーレント受信器向けに実現してきた導波路型pin-PDアレイ技術を応用することで, 今回, 8CH導波路型InP系APDアレイを実現し, 高い線形性と均一性を達成したので報告する.
コヒーレント伝送のメトロ系ネットワーク, データセンタ間への展開に伴い, トランシーバの小型・低コスト化が必須であり, 波長可変レーザ, 多値変調器, 受光素子が一体実装されたIC-TROSA (Integrated Coherent Transmitter-Receiver Optical Sub-Assembly)がモジュールの抜本的な小型化に向けて期待されている.また, 伝送容量は400 Gb/s, さらには, その先のデータレートが求められている.その実現に向けては, 受光素子の小型化, 実装部品数削減が強く求められる.我々は, 光部品を多機能集積したBeyond 400 Gb/s向けInP系受光素子を実現した.
InGaAsP多重量子井戸吸収層を有するSi導波路結合型薄膜受光器について、ファイバ入力パワーに
対する受光感度0.49 A / Wと23 GHz以上の3 dB帯域幅を実現した。
Multicore fibers as an effective implementation of space division multiplexing (SDM) had been studied a lot. However, the number of cores that can be incorporated in the limited cladding diameter is severely affected by the inter-core crosstalk (XT). in order to better suppress the inter-core XT, additional structure such as trench assisted core is proposed. Many papers had presented these structures are effective, but the inter-core XT suppression is limited by the manufacturing process since large relative refractive index difference is difficult to be realized. In this paper, as another aspect, we propose to use the spreading technique from code division multiple access (CDMA) field to further reduce the signal distortion caused by the inter-core crosstalk in the one-ring core layout multicore fibers.
3月19日 13:30〜15:45 工学部 講義棟1F 107講義室 座長 三浦健太(群馬大)
[光部品(1)]
C-3/4-42 |
(依頼講演30分)メタサーフェスを用いた1-f SPOC光学系による超小型WSS
○小仁所志栞・中島光雅・宮田将司・片寄里美・妹尾和則・橋本俊和(NTT) |
C-3/4-43 |
(依頼講演30分)アクティブオプティカルパッケージ実現に向けたシリコンフォトニクス用マイクロミラー
○天野 建・乗木暁博(産総研)・浮田明生・玉井 功・指宿康弘(PETRA)・須田悟史(産総研)・志村大輔・竹村浩一(PETRA) |
波長多重伝送方式などにおける光ノードでは、柔軟かつ効率的なネットワークを構築することのできる波長選択スイッチ (WSS) が使用されている。WSSでは出力ポートを選択する角度選択と、波長を分波する波長分散の2つの機能を担う。市販のWSSは様々なバルク光学素子から構成されるため、その装置サイズが大きいという課題を抱えている。その要因は、WSSの各機能が光路長によって制限されることにある。角度選択機能では6-f光学系、波長分散機能では長い回折距離を要することから、光路長が長くなる傾向にある。そこで本講演では、光路長を短くするため、1-f SPOC技術とメタサーフェスを用いた超小型なWSSの光学構成を提案する。作製したWSSの特性も報告する。
現在、Co-Packageと呼ばれるLSIパッケージ上に光デバイスを集積する形態が注目されている。本発表では我々が提案するCo-Package、Active optical packageに関して言及するとともにその主要コンポーネントであるシリコンフォトニクスに集積された曲面ミラーの成果に関して発表する。
休 憩(14:45 再開) 座長 中川剛二(富士通)
[光部品(2)]
C-3/4-44 |
螺旋状ファイバ回折格子による軌道角運動量モード変換器の実現
◎露木裕太・王 鵬・李 洪譜(静岡大) |
C-3/4-45 |
偏波保持ファイバと反射型半導体光増幅器による遅延干渉型波長変換器型全光ゲート構造の簡素化
◎髙橋直生・長坂恭輔・鈴木悠司・王 超一・石井幸弘・石田耕大・上野芳康(電通大) |
C-3/4-46 |
螺旋サンプリング法による多チャンネル螺旋状長周期ファイバ回折格子の製作
◎水島 瞭・王 鵬・李 洪譜(静岡大) |
C-3/4-47 |
オンボード光インターコネクトのためのレンズGIポリマー光導波路集積光モジュール
◎高武直弘(日立)・石井真穂・石槫崇明(慶大) |
光ファイバに螺旋構造を形成することで屈折率変調を制御する螺旋状長周期ファイバグレーティング(HLPG)は,内在的な螺旋特性における光偏光や光の軌道角運動量(OAM)モード状態を制御可能であるため,偏光変換器, ねじりセンサ, OAMモード変換器などの応用を目的として大きな関心を集めている[1-6].OAMモードは伝搬方向に対して螺旋面状の等位相面を持つ,直交性がある電波である.OAMモード多重光通信システムは,OAMモードの異なる多数の光を同時に伝送させるものであり,そのシステム全体の通信容量は,使用したOAMモードの数だけ整数倍に大きくなる.このようなシステムの実現のためには全ファイバ系OAMモードの発生デバイスが不可欠である.
本研究では, 4モードファイバを用いてHLPGを作成し,2次のOAMモード変換器の実現を目的とする。4モードファイバを用いたHLPGによる2次のOAMモードを有するデバイスの作成法を提唱・実証を行った.基本モード(HE11)を2次のOAMモードに変換することができるHLPGの作成に成功した.
我々のグループは遅延干渉型波長変換器型全光ゲート(DISC-gate)を用いたDISC型モード同期レーザ (DISC-MLL)による分子センシング方式や小信号周波数成分伝達特性評価方式を研究・開発してきた.しかし,従来型DISC-gateでは,非対称マッハツェンダー干渉計(AMZI)内に透過型半導体光増幅器(SOA)とカルサイトを用いており,それらのコストや構造上の複雑さから,他研究グループでDISC-MLLを用いることが困難だった.今回,これら2つの素子をより簡素な反射型SOA(RSOA)と偏光保持ファイバ(PMF)に置換することで,DISC-gate構造作製の低コスト化・簡素化を図った.簡素化したDISC-gateの出力光パルス波形・スペクトルの評価と,これを用いたアセチレン吸収線2成分同時検出を行い,この分子センシング方式に応用可能な安定度を有することを実証した.
光ファイバに螺旋構造を形成することで屈折率変調を制御する螺旋状長周期ファイバグレーティング(HLPG)は,内在的な螺旋特性における光偏光や光の軌道角運動量(OAM)モード状態を制御可能であるため大きな関心を集めている.これまで提唱,並びに実証されたHLPG のほとんどは,クラッドモードに対して一つの損失ノッチを有する単チャンネルのもので,損失ノッチを複数有する多チャンネルHLPGの提案,実証はほとんどされていない.本研究では,螺旋サンプリング法という複数のHLPGを重ね合わせる方法を用いた新しいマルチチャンネルHLPGの製作法を提案し,実際に3チャンネルのHLPGの作製を行う.
近年,クラウドサービスやIoT,ビッグデータサービスの進展により,データセンタのトラフィック量が急増している.データセンタ内の高速データ通信に対応するため,我々は情報装置間を接続する25Gbit/s/ch並列小型光モジュールを開発してきた.今後,データセンタのトラフィック量はさらに増加することが予想されており,情報装置間だけでなく情報装置内部(オンボード)にも並列光モジュールの適用が進められている.これまで開発した並列光モジュールは,光デバイス‐ファイバ間の接続にレンズミラー集積コネクタを適用している.データ通信速度の高速化に伴って,光デバイスの発光/受光径が減少するため,ファイバとの高効率な光結合には複数のレンズが必要になり,高密度化が困難になる.
そこで本報告では,高密度かつ高効率な光結合の実現に向け,GI(Graded Index)ポリマー光導波路のレンズ機能を応用した並列光モジュールについて報告する.
3月20日 9:45〜12:15 工学部 講義棟1F 106講義室 座長 小野英輝(OKI)
[センシング(1)]
C-3/4-48 |
(依頼講演30分)Widely tunable MEMS based high speed swept VCSEL source operating over a wide temperature for SS-OCT
○Mohammed Saad Khan・Changdae Keum(Santec)・Nobuhiko Nishiyama(Tokyo Tech) |
C-3/4-49 |
ゼロパディング補間法を用いたFMCW LiDARの高精度化
○上野雅浩・赤毛勇一・岡 宗一(NTT) |
C-3/4-50 |
FMCW LiDAR system simulation on conventional photonic network simulator
○Napat J.Jitcharoenchai・Nobuhiko Nishiyama・Tomohiro Amemiya(Tokyo Tech) |
We report a high reliability MEMS based tunable VCSEL operating at 1040-nm wavelength range for the SS-OCT application. An electrically pumped half-VCSEL with a semiconductor bottom DBR is used for its superior reliability and simple optical configuration as a light source. The developed tunable VCSEL is composed of an SOI-MEMS based diaphragm mirror with a high reflective dielectric coating, and is mounted by the thermo-compression bonding of gold onto a half-VCSEL chip with strained InGaAs multi-quantum wells gain medium. Wavelength tuning range over 96 nm is achieved by mechanical and thermal means which includes over 88 nm MEMS swept tunability.
LiDARは光を使った測距技術であり、光偏向器と組み合わせることにより、2次元または3次元距離データを取得できる。我々は鉄塔等のインフラのメンテナンス用にFMCW LiDARの研究を行っている。FMCW LiDARの高精度化の先行研究としてVCSELを使用したものがある。対象物の反射面を表すPSFのピーク位置を算出する方法として、ピーク付近を近似した2次関数を使い、その結果42cm先の対象物を12μm精度で測距が可能と報告されている。我々は、出力パワーの観点からDFBレーザを波長掃引光源として使用したLiDARを構築し、PSFピーク位置 を算出する方法としてゼロパディング法用いた結果、約70cm先で2μmという高精度測定を実現したので、報告する。
A LiDAR system simulation on conventional photonic network simulation software aimed for verifying a behavior of a compact size Silicon Photonics FMCW lidar prototype module. The system is setup on a Lumerical INTERCONNECT software with all build-in building blocks to simulate the external electrical signal modulation. The beat signals from range measurement are successfully extracted and has a correct frequency concur with the variation of line length. The system is also currently used for noise investigation of the current version of LiDAR module.
休 憩(11:00 再開) 座長 大道浩児(フジクラ)
[センシング(2)]
C-3/4-51 |
振幅変調連続波レーザスキャナにおける測距不確定性除去
○△張 超・セット ジイヨン・山下真司(東大) |
C-3/4-52 |
高精細・干渉フリーTime-of-flight LiDARのためのソフトウェア補正に基づく光サンプリングシステム
◎石崎 優・張 超・セット ジイヨン・山下真司(東大) |
C-3/4-53 |
ROV搭載可視光LiDARによる水中3Dスキャン実験
○高橋成五・山田 直(トリマティス)・吉田 弘・石橋正二郎(JAMSTEC)・鈴木謙一・太田和哉・矢島晴久・野田健太(トリマティス) |
C-3/4-54 |
可視光帯ヘテロダイン検波に関する基礎検討
○伊藤優佑・後藤広樹・今城勝治(三菱電機) |
C-3/4-55 |
Integrated optical waveguide gas sensing using amplifier-assisted technique
○LEIYUN WANG・WENYING LI・YU HAN・ZANHUI CHEN・HAISONG JIANG・KIICHI HAMAMOTO(Kyushu Univ.) |
インダストリー4.0の台頭と共に、スマートファクトリーが注目されてきた。このような自律した生産システムの実現のためには、機械が自動で行う作業により造られる部品等の三次元形状を測定する必要がある。振幅変調連続波(AMCW)レーザスキャナは高精細な三次元計測を実現でき、測定距離も比較的長く取れるため、工業検査に適している。本稿では高精細AMCWレーザスキャナにおける測距不確定性の除去について報告する。
Time-of-flight (ToF) light detection and ranging (LiDAR)は正確な測距システムとして近年自動運転等の応用に向けて近年活発に研究開発が行われてきた。ところが従来のToF LiDARの分解能は検出器の電気帯域により厳しく制限されている。また、自動運転用LiDARの今後の普及を考慮して、複数LiDAR間の相互干渉が指摘されるようになった。そこで筆者らは上記の課題に対応するためソフトウェア補正を用いた光サンプリングシステムを新規研究開発し、これをToF LiDARに導入することを提案する。本サンプリング方式によりToF LiDARにおいて165umの距離分解能及び最大測定距離1966mを実現でき、LiDAR同士の相互干渉を防止することが可能である。
水中での高精度な3D空間情報の把握の実現を目指し、青色LDを用いた水中LiDARを開発した。防水ケースに格納した水中LiDARをROVに搭載し、水深2 mの大型水槽中に設置したターゲットの3Dスキャン測定を行った。距離分解能 5 mmの性能が得られ、可視光LiDARの水中での可用性が実証できた。
これまでに開発を行ってきたコヒーレントドップラーライダの適用分野拡大に向けては通信やセンシング領域においてメリットが高いと考えられるが、同分野において水中利用することまで想定し、波長領域を可視光帯まで拡げることを検討している。水中の場合、可視光帯として波長532nm のインコヒーレント方式が主流であるが、受信感度の向上を図るべく波長532nm のコヒーレント光源を利用したコヒーレント検波の基礎検討を実施している。今回、波長532nm のコヒーレント光源を用い、ベンチトップで自己ヘテロダイン系を組むことにより、基礎実験としてCWベースでビート信号の測定を行った。
Breath sensor which monitors health condition by sensing human expiration is desired because of the population aging problem The breath sensor using waveguide realizes that in hand-held size for home use, because we can integrate long optical sensing path on the chip by using waveguide.
In this work, we applied the polarization direction controller scheme into the real CO2 sensing experiment. As a result, we detect 3% CO2 concentration successfully.
3月20日 9:30〜12:15 工学部 講義棟1F 107講義室 座長 田中信介(富士通)
[シリコンフォトニクス(1)]
C-3/4-56 |
(依頼講演30分)シリコンハイブリッド型ポリマー変調器を用いた高速送信器
○横山士吉(九大) |
C-3/4-57 |
歪SiGe層を用いたCバンド帯高性能Si光変調器およびSi光トランシーバへの応用
○藤方潤一・清水隆徳(PETRA)・関根尚希(東大)・牛田 淳・岡本大典・鈴木康之・中村 滋(PETRA)・竹中 充(東大)・中村隆宏(PETRA) |
C-3/4-58 |
Si基板上薄膜InGaAsPマッハ・ツェンダ変調器におけるアーム内半導体光増幅器の集積
◎相原卓磨・開 達郎・藤井拓郎・武田浩司・土澤 泰・硴塚孝明・松尾慎治(NTT) |
C-3/4-59 |
2×2/2×1マッハ・ツェンダーフィルタとオンチップ偏波分離回転子を用いた低損失400GbE用シリコン2 × 4波長合波器の作製
◎高野純矢・藤澤 剛・澤田祐甫・齊藤晋聖(北大) |
高性能電気光学ポリマーを用いた高速光変調器とデータ伝送特性にして報告する。光変調器はシリコン導波路と高い電気光学係数を持つポリマーで形成しており、低電圧駆動と広帯域特性を有している。データ伝送実験では、1Vpp台の駆動電圧でシンボルレートが100Gbaud以上のNRZ信号やPAM4信号の生成が可能である。本稿では、変調器の作製技術や光変調特性、ファイバ伝送特性などの詳細について発表する。
歪SiGe層を用いることにより、Cバンド動作用空乏化型Si光変調器の特性改善およびSiフォトニクストランシーバへの適用を検討した。デバイス構造を最適化することにより、2dB/mmの低光損失化を実現した.この時、変調効率(VπL)として0.6-1.0Vcmが得られ、Si光変調器の性能指標(αVπL)として12dBVを実現した.さらに、Siフォトニクス・トランシーバに適用し、CMOS電子回路で駆動することにより、25Gbpsの高速動作と10dB程度の高消光比が得られ、高効率かつ低消費電力な光電子集積インターポーザ実現に向けて、SiGe光変調器が有望であることを検証した。
Si基板上の大規模光集積回路の高性能・高機能化にむけて、Si基板上の化合物半導体素子の集積が期待される。我々は、これまでに化合物半導体を用いた高効率マッハ・ツェンダ変調器MZMや半導体光増幅器(SOA)をSi基板上に実現してきた。
一般にSOAに入力する光強度が高いと光利得は低下する。そのため、十分な光利得を確保し、高光出力化を達成するためには、光回路内で光強度が低下した場所にSOAを配置することが望ましい。そこで我々は、光強度が最も低いMZMの干渉アーム内かつ位相シフタの後段にSOAを配置した集積素子を作製した。本研究では、SOAにより光増幅と位相調整をすることで、最大4.4 mWのファイバ光出力と28 Gbit/sの変調動作を実現したので報告する。
近年,データセンター間・内といった短距離系の通信容量の拡大が求められており,400GbEが2017年に標準化された.その中でも,伝送媒体にSMFを用いる400GBASE-FR8, -LR8は伝送距離が長いため注目されている.これらは,1.3 µm帯における,ガードバンドを含む800 GHz間隔の8波長を合波するLAN-WDMが採用されており,送信側で8波長合波器 (または2個の4波長合波器) が必要不可欠である.今まで我々は,100/400GbE用4波長合波器として,非対称方向性結合器とTE1-TM0モード変換器で構成される広帯域な偏波分離回転子を導入し,2段型マッハ・ツェンダー(MZ)合波器中で製造トレランスの特に厳しい,FSRが1600 GHzのフィルタを除去した合波器を提案したが,1段目の3200 GHzフィルタにおける導波路幅の製造誤差に起因するピーク波長ずれついては,別々の調整をする必要があった.本稿では,2×2と2×1のMZフィルタを使い,フィルタ間の相対的なピーク波長位置を自動的に固定することで,ピーク波長の制御を簡略化した4波長合波器を提案し,CMOSプロセスで作製,測定実験を行い,400GbE用2×4波長合波器を低損失で実現したので報告する.
休 憩(11:00 再開) 座長 西山伸彦(東工大)
[シリコンフォトニクス(2)]
C-3/4-60 |
通信用SMFと高効率結合する非球面レンズ付きエレファントカプラの開発
○渥美裕樹・吉田知也・面田恵美子・榊原陽一(産総研) |
C-3/4-61 |
Si細線導波路とスポットサイズ変換器の突き合わせ結合
山内潤治・◎小島功義・中野久松(法政大) |
C-3/4-62 |
L字Si 細線導波路型偏波変換器の正規化周波数特性
◎中川雄斗・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-3/4-63 |
屈曲した埋め込み型Si細線導波路における最適なコア位置に関する一考察
◎石黒雄大・朝生龍也・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-3/4-64 |
屈曲Si細線導波路側壁のラフネスの相関長が損失及び偏波クロストークに及ぼす影響
◎土屋俊貴・朝生龍也・山内潤治・中野久松(法政大) |
我々は、イオン注入応力によりシリコン導波路をチップ表面方向に物理変形させた高効率・広帯域な表面光結合器(エレファントカプラ)を提案実証している。これまで高NA光ファイバ(MFD ~5µm)との光結合に向け、デバイス技術、ファイバ実装技術の開発に成功してきた。一方、シリフォトモジュールの低コスト化に向けては、安価かつ高い実装アライメント耐性を有する通信用シングルモードファイバ(MFD ~10µm)との結合技術も求められる。そこで今回、非球面レンズ構造を有するコンパクトな10µmスポット径エレファントカプラを設計し、作製に成功したのでご報告する。
Si細線導波路へのスポットサイズ変換器が提案されている. 他方, 我々はSiコアを空気界面からわずかに埋め込んだ導波路(Slightly buried waveguide: SBW)が, 屈曲損の低減に有効であることを明らかにしてきた. 本稿では, SBWとの突き合わせ結合で生じる遷移損に関して, 空気界面に接したSiコアへの接続が想定されている構造と比較しながら議論する.
筆者らはL 字Si 細線導波路型偏波変換器において,広帯域かつ低損失に動作させるための設計指針を提示した.変換部におけるハイブリッドモード間の正規化屈折率差Δbに極大値が生じる現象が,広帯域化に貢献することを見出した.しかし,この現象が生じる理由についての検討は不十分であった.本稿では,欠損部のない通常の導波路における固有モードのふるまいを評価することで,Δb に極大値が生じる理由を考察する.
屈曲損の低減手法として、コアを空気界面から僅かに埋め込む構造を提案してきた。本稿では、埋め込み型 Si 細線導波路において、コア形状を変化した際の屈曲損特性を調査し、適切なコアの埋め込み量を明らかにする。
基板装荷型屈曲Si 細線導波路側壁の片側及び両側にラフネスを考慮して, 散乱損及び偏波クロストークを評価し, 相関長との関係を明らかにする. 直線導波路の固有モード (TE, TMモード)を入射波とし, 円筒座標系FDTD法を用いて解析する. 偏波に関わらず, 損失にピークが生じることを示す. 加えて, TMモードの場合, TEモードに比べて, 損失がより小さく, 半分ほどになることを明示する. クロストークは相関長を変化させても, 約2dB程度しか変化せず, 相関長に大きく依存しないことを見出す.
3月20日 14:45〜16:30 工学部 講義棟1F 106講義室 座長 柳生栄治(三菱電機)
[光部品(3)]
C-3/4-65 |
(依頼講演30分)400 Gbpsイーサネット向け小型集積送信モジュール
○大畠伸夫・川本洋輔・村尾覚志・備海正嗣・今井雄大・佐野勇人・板本裕光・長谷川清智(三菱電機) |
C-3/4-66 |
(依頼講演30分)導波路格子による広 FSR シリコン波長選択スイッチ
○池田和浩・鈴木恵治郎・鴻池遼太郎・河島 整(産総研) |
C-3/4-67 |
交互スイッチセレクト型光スイッチのスケーリングについての検討
◎鴻池遼太郎・鈴木恵治郎・河島 整・池田和浩(産総研) |
C-3/4-68 |
100Gbit/s同軸型無温調光送信モジュール
○佐伯智哉・三澤太一・大川幸祐・鈴木三千男・藤村 康・原 弘(住友電工) |
C-3/4-69 |
シリコン光導波路設計におけるフルベクトル波面整合法の有用性
◎澤田祐甫・藤澤 剛・齊藤晋聖(北大) |
近年、スマートデバイスの普及により通信トラフィックが増大しており、ゼタバイト時代が到来しつつある。
次世代短距離用光通信デバイスとして400Gbps(106Gbps×4λ)の光送信モジュールは有力な候補の一つであり、
我々はこれまでそれらモジュールの開発を進めてきた。今回、小型集積送信モジュールを作製し、良好な光波形及び10 kmのファイバ伝送特性が得られたため報告する。
近年通信容量が急激に増大しているデータセンタネットワークにおいて、400Gbpsやそれ以上の光トランシーバの需要が高まっており、WDM技術が重要となっている。こうした大容量インターコネクトで構成されるネットワークを柔軟かつ効率的に運用するためには波長選択スイッチ(Wavelength-Selective Switch: WSS)がキーデバイスになると考えられる。シリコンフォトニクスは高集積・小型・省電力であることに加えて、データセンタやHPC向けネットワークに求められる高速光スイッチを実現できる。これまでに、複数のシリコンフォトニクスによるWSSが提案されているが、高次の共振や回折を用いているため自由スペクトル領域(Free Spectral Range: FSR)に制限があり、広帯域・多波長に用いることが困難であった。本研究では、FSRが非常に広い導波路格子を備えた方向性結合器をフィルタ素子として用いたシリコンWSSを提案し、その動作を実証したので報告する。
多ポート光スイッチは情報通信ネットワークにおける消費電力を大幅に低減できるキーデバイスとして注目されている.小型で信頼性の高い集積光回路型の光スイッチを実現するトポロジーとして,従来,PILOSS型やSwitch and Select型が用いられてきた.近年我々は,通過する単位スイッチ数が少なく,かつ経路依存性の少ない新たなスイッチアーキテクチャとして交互スイッチセレクト(Port-Alternated SAS)型光スイッチを提案した.本検討では,PA-SAS型光スイッチの実レイアウトを作成し,典型的なシリコン光スイッチのパラメータを用いて,そのサイズおよび損失のスケーリングについて議論する.
近年、情報通信量は飛躍的に増大し、光トランシーバの高速化、小型低消費電力化、低コスト化の要求が高まっている。今回我々は、1波長で伝送速度100Gbit/sに対応した同軸型で無温調の光送信モジュール(TOSA)を開発した。一般的な同軸型のパッケージ(PKG)は、高周波配線として、ガラス封止されたリードピンを用いる構造のため、インピーダンスマッチングが困難であり、高速動作において特性劣化が懸念される。本TOSAは、積層セラミックPKGを用いた同軸型の構造とし、高周波配線のPKGとの接続部にAuワイヤやリードピンを使用しないことでインピーダンスを最適化し、良好な高周波特性を確認した。発表ではTOSAの構造及び光波形特性等の諸特性について報告する。
光導波路設計における設置面積と性能のトレードオフを打開するため,最適設計手法による光導波路設計が盛んに行われている.波面整合法は,光導波路の最適設計手法の1つである.従来のスカラビーム伝搬法を利用した波面整合法はシリカ系PLCの設計に利用されてきた.我々は,独自にフルベクトルビーム伝搬法を利用した波面整合法を開発し,シリコン光導波路の設計を行っている.しかし,これら2つの波面整合法によって得られる効果の差分は示されてこなかった.本研究では,これら2つの波面整合法によってシリコン光導波路レンズの設計を行い,シリコン光導波路設計におけるフルベクトルビーム伝搬法に基づく波面整合法の有用性を示す.
3月20日 14:45〜17:15 工学部 講義棟1F 107講義室 座長 藤田和上(浜松ホトニクス)
[次世代光源(1)]
C-3/4-70 |
(依頼講演30分)フォトニック結晶レーザーの短パルス・高ピーク出力発振
◎井上卓也・森田遼平・吉田昌宏・Menaka De Zoysa・石﨑賢司・野田 進(京大) |
C-3/4-71 |
100ギガヘルツを超える光変調器の小信号変調周波数成分伝達特性を擬似連続計測する光コム応用計測方式の開発(その2)
◎王 超一・長坂恭輔・鈴木悠司・高橋直生(電通大)・竹下 諒(NTTエレクトロニクス)・浜本貴一・姜 海松(九大)・上野芳康(電通大) |
C-3/4-72 |
圧縮比2倍程度に断熱ソリトンパルス圧縮された10ギガヘルツパルス列の光コムスペクトルのコヒーレント度(線幅)向上方法の提案・実証
◎鈴木悠司・長坂恭輔・Chaoyi Wang・岡野謙悟・上野芳康(電通大) |
C-3/4-73 |
WDM通信用光源としての光周波数コムデバイス
○大塚民貴・藤井 瞬・熊崎 基・和田幸四郎(慶大)・古澤健太郎・関根徳彦(NICT)・田邉孝純(慶大) |
短パルス(100ps未満)・高ピーク出力(100W以上)動作が可能な半導体レーザーは、微細加工やリモートセンシング、バイオイメージングなど、多岐に亘る分野における次世代の小型レーザー光源としての利用が期待される。本講演では、高出力と高ビーム品質の両立を可能とするフォトニック結晶レーザーについて、短パルス・高ピーク出力動作を実証した結果を報告する。はじめに、フォトニック結晶レーザーの面内に可飽和吸収領域を導入し、受動Qスイッチング動作により、パルス幅40ps未満・ピーク出力20W級の短パルス発振を実現したことを示す。さらに、より高出力な短パルス発振を実現しうる新たな手法として、屈折率の空間勾配を導入したフォトニック結晶レーザー構造を提案し、単一光源から100Wを超えるピーク出力の短パルス発振が実現可能であることを示す。
今後、帯域幅100GHzを超えるE/O変換デバイスの応用が期待されている。しかし、従来の電気計測では100GHzを超える広帯域の周波数伝達特性評価が非常に困難だ。そこで、当研究グループは光周波数コムを光源とする新しい計測方式を提案し、原理的100GHz以上の周波数伝達特性評価が可能で、2019年ソサイエティ大会にて報告した。但し、不連続な周波数伝達特性評価であった為、本研究は光源である光パルスの繰り返し周波数を制御し、複数回の測定結果をまとめ、疑似連続な周波数伝達特性評価結果を報告する。
光周波数コムは、希薄気体分子分光用光源や100 GHzを超える高周波な光変調信号周波数伝達特性の計測などの応用目的に期待されている。これらの応用目的では、狭い線幅が要求される。
これまでに、本グループは全光半導体ゲート (以下DISC-gate)を用いた市販のインコヒーレントなコム光源をコヒーレント変換する手法を提案し、その出力コム線幅を評価した。
本研究では、上記のコヒーレント変換を広帯域にわたって行う事を目標とした。そのために、DISC-gate出力光コムの時間幅を短縮することで帯域幅を拡げ、そのコム成分線幅を評価した。
その結果、パルス圧縮を用いて広帯域光コムをコヒーレント変換した際にもそれらのコム成分の線幅は概ね種光DFB-LDの線幅と等しくなった。
シリコンナイトライド微小共振器において, 光周波数コムを生成し, 波長とITU-Tグリッドの合わせこみ行った. これは, この微小共振器を用いた光周波数コム光源をWDM通信に適用する場合に必要なものである. ITU-Tグリッドへ合わせこみは20チャネル以上で0.1 nmの精度を達成した. また, 生成された光周波数コムの線幅を測定し, 電力効率の良いMIコムでも80 kHzが達成されることを示した. 本研究は, 短距離WDMアプリケーションに向けた最初のステップとなる.
休 憩(16:15 再開) 座長 永井正也(阪大)
[次世代光源(2)]
C-3/4-74 |
(依頼講演30分)超高速利得スイッチ半導体レーザー
○秋山英文(東大) |
C-3/4-75 |
自己注入同期型1.5 μm帯利得スイッチングDFB-LDによる10 GHz, 6.2 psフーリエ限界コヒーレント光パルスの発生
○葛西恵介・中沢正隆(東北大) |
C-3/4-76 |
ナイキストパルスと光領域受信信号処理を用いた可変容量テラヘルツ波通信
○瀧口浩一・西尾 望(立命館大) |
半導体レーザーの利得スイッチによる光パルス発生は、制御性の高い電気パルスに応じて光パルスを発生することが可能で、小型・堅ろうで経済性にも優れた、応用上とても魅力的な技術である。10ピコ秒以下、すなわち、一桁ピコ秒台のパルス幅は、半導体レーザーの光子寿命限界と同程度であり、利得スイッチ半導体レーザーから直接発生するパルスとしては超高速領域に属する。我々は、その限界に迫り、更に突破する基礎物理研究と実用を目指した素子開発研究とを推進している。それらの研究の現状を紹介する。
利得スイッチングLDは簡便な構成でピコ秒光パルスを容易に生成することが出来る。しかしながらコヒーレンスが極めて低く、動作原理に依存して出力光パルスには大きなタイミングジッタが生じる。利得スイッチングLDの発振特性を改善する手法として外部よりCW光を注入する方法や出力光の一部を帰還する自己注入同期法が報告されている。今回、自己注入同期型利得スイッチングDFB-LDの外部に波形整形光フィルタを適用することにより、繰り返し周波数10 GHz、パルス幅6.2 psのガウス型Transform-Limitedコヒーレント光パルスの発生に成功したので報告する。
ナイキストパルスと光領域での受信信号処理を用いて、THz帯でのチャネル数可変通信(1 x 10 ~ 4 x 10 Gbit/s)を実施したので、その結果について報告する。調査した範囲では、ナイキストパルスを用いたTHz帯可変チャネル通信の実現は初めてである。
C-5. 機構デバイス
3月17日 11:15〜12:00 総合科学部 K棟1F K104講義室 座長 萓野良樹(電通大)
C-5-1 |
500VDC/10A抵抗性負荷回路内で磁気吹き消しされる開離時アークの形状に対する横磁界の磁束密度の影響
◎金子裕汰・関川純哉(静岡大) |
C-5-2 |
48VDC/50A-300A回路におけるAg系接点材料ごとの開離時アークの消弧直前の形状と長さ
◎矢崎晴子・関川純哉(静岡大) |
C-5-3 |
分断板の跳ね上がりを抑制した場合の開離時アークのPTFE製の分断板による強制分断
◎木村雄一朗・関川純哉(静岡大) |
直流高電圧回路において,Ag接点対を等速で開離して開離時アークを発生させ,磁気吹き消しにより消弧させた.接点接触開離時の回路電流I0を10A,電源電圧Eを200-500Vとした.また,開離時アークの水平方向での変形を単純化させるため,横長の永久磁石を用いて,印加する磁束密度Bを60mT,80mT,100mT,及び120mTと変化させた.その様子を2台の高速カメラで正面方向と上面方向の 2 方向から同時に撮影し,画像から開離時アークの形状を解析した.その結果,どの条件下でも陰極・陽極輝点の位置が共に確認でき,上面方向における消弧直前の開離時アークは電気接点とほぼ平行に引き伸ばされた.また,本報告の実験で各条件において10回ずつ合計320回放電を行った結果,再発弧は一度も発生しなかった.
48VDC/50A-300Aの抵抗性負荷回路において, 電気接点対を開離させ, 開離時アークを発生させる. 接点対の材料をAg, Ag/C, Ag/ZnO及びAg/SnO₂とした場合のそれぞれの消弧直前の開離時アークの形状と長さを調べ, Ag接点対の場合と比較する. Ag, Ag/C, 及びAg/SnO₂の開離時アークの色は緑色であるが, Ag/ZnOの開離時アークは青緑色である. また, Ag/ZnOとAg/SnO₂の場合にはAgと Ag/Cに比べて水平方向のアーク形状が直線的である. Ag/Cの消弧直前のアーク長さは Agのそれとほぼ等しい. Ag/ZnOの消弧直前のアーク長さは回路電流が150A以下のときはAgよりも長く, 回路電流が200A以上ときはAgとほぼ等しい. Ag/SnO₂の場合の消弧直前のアーク長さはAgのそれと比べて長い.
150V-600VDC/10Aの抵抗性負荷回路内で発生する開離時アークに対して,PTFE製の分断板を挿入し,開離時アークを強制的に消弧させる実験を行った.過去に,絶縁物の分断板を用いて開離時アークを空間的に分断し強制消弧させる手法を用いた結果を報告したが,分断板を受けるためのV字の溝を切った絶縁物のブロック(板受けと称する)に接触後分断板が跳ね上がり,生じた隙間を通して開離時アークが継続した.そこで,分断板の跳ね上がりを抑えるために分断板の板厚に合わせて板受けに新たに溝を設け,差し込まれた分断板が溝に留まる様な構造に変更した.結果として分断板は下へ押すように開離時アークを変形させながら落下し,溝に到達する.その後開離時アークを溝の中へ押し込むようにして消弧に至った.また,すべての電圧条件において開離時アークの分断に成功した.
C-6. 電子部品・材料
3月17日 13:30〜15:00 総合科学部 K棟1F K104講義室 座長 中村雄一(豊橋技科大)
C-6-1 |
ZrN膜上に成膜したCu(111)優先配向
○佐藤 勝(北見工大)・安田光伸(東レリサーチセンター)・武山真弓(北見工大) |
C-6-2 |
極薄TaWNバリヤ上のCu(111)高配向制御
○武山真弓・佐藤 勝(北見工大)・安田光伸(東レリサーチセンター) |
C-6-3 |
Raspberry Piを用いたスマート農業支援
◎天野渓太・佐藤 勝・武山真弓(北見工大) |
C-6-4 |
マイクロストリップラインと同軸ケーブルとの接合部の電磁界解析
○福嶋隆広(拓殖大/第一精工)・和泉峻介・前山利幸(拓殖大) |
C-6-5 |
磁気ホログラムメモリ用Bi置換希土類鉄ガーネットの特性評価
○中村雄一・是川真吾・田中健太・後藤太一・Pang Boey Lim・内田裕久・井上光輝(豊橋技科大) |
C-6-6 |
触媒反応支援CVD法で作製したZnO膜へのNOガス中アニール
○安井寛治・伊庭竜太・神林広樹・斎藤太朗(長岡技科大)・大石耕一郎・片桐裕則(長岡高専) |
Si-集積回路には、エレクトロマイグーレション(Electromigration:EM)耐性に優れたCuが配線として使われてきた。EM耐性を向上させるには、Cu膜を (111)面に優先配向させることができる下地材料が切望されている。そこで、本研究では、拡散バリヤと同じ材料系であるZrN膜を用いて、Cu(111)面を優先配向させることが可能かどうかを検討したので、以下に報告する。
エレクトロマイグレーション耐性に優れたCu(111)配向を実現することがSi-LSIをはじめとするデバイス関連で切望されている。しかしながら、これまでは比較的厚い下地材料とCuの拡散を抑制するバリヤ材料との2層構造を余儀なくされ、そのためスケールダウンすることが難しかった。しかし本研究では、薄いバリヤ材料を用いて、その上にCu(111)面を配向制御することができることを明らかにした。さらには、5nmのバリヤの構造はこれまで分析不能であったが、新しい分析装置にて世界で初めて分析に成功した事例を報告する。
日本の農業分野では、農業従事者の人手不足や高齢化の問題が深刻化しており、農業と工学を組み合わせたスマート農業が注目され始めている。IoTなどのセンサを用いて人手不足の解消などを実現しようとする試みがいくつかなされており、既に製品化されているものもある。しかしながら、これらの製品は発想としては有用であるが、初期導入費用などが高価であり、その普及がまだ難しい状況にある。そこで我々は、安価なデバイスを用いて必要な情報を入手する、あるいは表示するシステムが構築できるかどうかをまず検討した。結果、比較的安価なデバイスを用いて、データの見える化が可能であることがわかった。
近年、スマートフォンやタブレット端末などの電子機器は更なる高速化や小型化が要求されている。これらの回路で配線として用いられているマイクロストリップ線路は、コネクタやケーブルと接続されており物理的にも高周波的にも不連続点が多数存在する。不連続点では他回路との干渉やインピーダンス不整合などを生じ、伝送信号に悪影響をもたらす。特に5Gの利用周波数であるミリ波ではその影響がさらに大きくなると考えられる。本報告では、2.4GHzを例として簡易モデルで解析をすることで、その現象を明らかにする。
磁気ホログラムメモリ用記録材料としてBi高置換Nd鉄ガーネットのFeサイトにGaを置換し、その特性を評価した。Ga置換量を増すことでFaraday回転角の絶対値は低下したが、Fe:Ga=3.6:1.4の組成においても7 deg./µm以上の回転角を示し、角形性も良いことがわかった。またその組成における消衰係数は約0.025程度であり、従来使用している材料に近い値であった。これより本材料は磁気ホログラムメモリ用記録材料として使用できる可能性が高いと考えられる。
白金(Pt)ナノ粒子表面での水素と酸素の燃焼反応により生成した高エネルギーH2OとDMZnを気相中で反応させ生成したZnOプリカーサを基板に供給するCVD法を考案し,a面サファイア基板上に成長を試みた結果,電気的・光学的特性に優れたn型ZnO結晶膜を得た.さらに,p型結晶の作製を目指し窒素ドーピングを試みてきた.その中で一酸化窒素(NO)ガスを加熱金属触媒体(Ir)表面で分解し生成した窒素ラジカルを供給することで1019 cm-3のオーダーの窒素の取り込みに成功した.ただ同時に1020 cm-3オーダーの水素も取り込まれておりその提言が課題となった.そこでZn-N結合の窒素の脱離を抑制させつつドナー源の脱離を促すためNOガス下で窒素ドープZnO膜をアニールしその変化についてXPSを用いて調べたので報告する.
C-7. 磁気記録・情報ストレージ
3月18日 10:30〜11:30 総合科学部 K棟1F K103講義室 座長 永澤鶴美(東芝)
C-7-1 |
SMRにおける磁化反転情報を用いたニューラルネットワークを備えるLLR調整器の一検討
○西川まどか・仲村泰明(愛媛大)・金井 靖(新潟工科大)・大沢 寿・岡本好弘(愛媛大) |
C-7-2 |
HDMRにおいて4.5Tbit/inch2の記録密度を達成するための異方性磁界強度とドットのばらつきの関係
○松島直史・赤城文子(工学院大) |
C-7-3 |
MAMRにおいて記録媒体からの静磁界と発振磁界成分が記録に与える影響
◎栗田佳典・赤城文子(工学院大) |
C-7-4 |
STO再生による三次元磁気記録のための繰返し復号におけるAM・FM検波の一検討
◎増田圭太・仲村泰明・西川まどか・岡本好弘(愛媛大) |
先に我々は, SMR(shingled magnetic recording)のためのLDPC(low-density parity-check)符号化・繰返し復号化方式において, ニューラルネットワークを備えたLLR(log-likelihood ratio)調整器のAPP(a posteriori probability)復号器出力を調整することで, 効果的な繰返し復号を実現できることを示した[1].本稿では,APP復号器出力のISI(inter-symbol interference)およびITI(inter-track interference)[2]の影響をLLR調整器で考慮するため, 復号対象トラックおよび隣接トラックのLLRを硬判定して算出した磁化反転情報を用いたニューラルネットワークを構成し, LLR調整器に適用する.
磁気ディスク装置の高記録密度化のために,熱アシスト磁気記録(heat assisted magnetic recording : HAMR)とビットパターン媒体(bit patterned media : BPM)を組み合わせた記録方式(heated-dot magnetic recording : HDMR)が提案されている.本研究では,BPMの異方性磁界を増加させてドットのばらつきの許容条件をマイクロマグネティクスシミュレーションを用いて検討した.その結果,異方性磁界を増加させることでドット径, ドット位置のばらつきはそれぞれ6%と5%まで広げることができた.
本研究では,記録媒体からSTOへ印加される静磁界によってSTOからの発振磁界が悪くなるという先行研究の結果から,媒媒体からSTOへの静磁界と発振磁界成分が,記録へ及ぼす影響を検討した.その結果,媒体からSTOへの静磁界の影響はほぼなく,媒体からヘッドへ引火される静磁界の影響が大きいことが判明し,発振磁界においてはz方向成分を減らす構造の検討が必要だと判明した.
HDD(hard disk drive)の更なる記録密度向上のために,媒体からの漏れ磁界がほとんどない反強磁性交換結合(AFC : antiferromagnetic exchange coupling)構造の記録層を多層化した三次元磁気記録が注目されている.この方式の再生方法として,スピントルク発振素子(STO : spin-torque oscillator)と記録層の磁気共鳴を利用したSTO再生が提案されている.先に我々は,STO信号の包絡線の変化をモデル化し,各種信号処理の検討を行ってきた.さらに、AM(amplitude modulation)およびFM(frequency modulation)検波に対する信号処理方式を開発するために,振幅と周波数の両方が変化するSTO信号モデルを構築した.
そこで本研究では,このSTO信号モデルより得られる再生波形をAMおよびFM検波し,LDPC(low-density parity-check)符号化・繰返し復号化方式に適用し,BER(bit error rate)特性を求めて性能を評価する.
C-8. 超伝導エレクトロニクス
3月18日 9:30〜12:15 工学部 講義棟1F 117講義室 座長 山梨裕希(横浜国大)
C-8-1 |
深宇宙探査用地上局向けX帯超伝導フィルタの開発
◎△林 拓磨・關谷尚人(山梨大)・大野剛志(日本通信機) |
C-8-2 |
HTS-SQUIDを用いた配管の非破壊検査へのAIの導入
廿日出 好・東 雄貴・○渡邉敬祐・林 泰地・上本歩樹(近畿大) |
C-8-3 |
航空機搭載型TEM用デジタルSQUID磁束計
○明連広昭・松繩 諒・板垣航希・成瀬雅人・田井野 徹(埼玉大) |
C-8-4 |
量子メトロロジートライアングルに向けた差電圧トラッキング速度の検討
◎松丸大樹(産総研)・Zhengsen Jia(National Inst. of Metrology, China)・丸山道隆・金子晋久(産総研) |
C-8-5 |
Thermal Design of a PJVS Module for QMT Measurement
Daiki Matsumaru・Michitaka Maruyama・Nobu-Hisa Kaneko(AIST)・○Zhengsen Jia(National Inst. of Metrology, China) |
JAXAの深宇宙探査用新型アンテナ向けの超伝導フィルタの開発を行った.フィルタの基板に選択したr-Al2O3は低コストかつ機械的強度が高く化学的安定性に優れた材質である一方で,誘電率異方性によって設計と測定結果とが一致しないために確実に設計仕様を満たすことが要求される実用化には不向きであった.そこで,誘電率異方性を考慮したフィルタ設計方法を提案することで設計仕様を確実に満たすフィルタを実現した.それによって,開発したフィルタはJAXAの深宇宙探査用地上局への採用が決定した。
化学プラントや電力設備等のパイプラインでは一度に配管の数~10 mの範囲を検査可能な超音波ガイド波試験が用いられている。しかし、欠陥の周方向、位置、形状に関する情報を得ることは困難であった。磁歪式超音波ガイド波と高温超伝導(HTS)SQUIDを組み合わせたリモート式非接触ガイド波検査技術を用い、アルミ管に人工貫通欠陥を作成し、全周検査を行った。その後、超音波伝搬解析シミュレータSWAN21を用いてガイド波伝搬解析を行った。実験による磁場分布と解析の変異分布における欠陥信号は空間的に一致したため、NNフレームワークKerasを用いて、CNNベースで画像分類のためのプログラムを作成し、欠陥形状推定を試み、欠陥形状の判別を行うことができた。
サブ磁束量子フィードバックによるデジタルSQUID磁束計は、優れた分解能、広いダイナミックレンジ、大きなスルーレイトを持つ。この特長は、広いダイナミックレンジと大きなスルーレイトを必要とする航空機搭載型時間領域電磁測定(TEM)用の磁束計として有望である。本講演では、航空機搭載型TEM用の磁束計としてデジタルSQUID磁束計を用いる事を前提として、デジタルSQUID磁束計の低消費電力設計についての検討結果について報告する。
電流・電圧・抵抗を量子力学的に独立に求め、オームの法則が成り立つかを検証する実験を量子メトロロジートライアングル(QMT)という。実際に検証を行う場合、単電子ポンプ素子(電流)、量子ホール抵抗素子(抵抗)、ジョセフソン電圧標準素子(電圧)が接続された回路を用意し、単電子ポンプ素子で発生させた電流を量子ホール抵抗素子に流したときに発生する電圧降下と、ジョセフソン電圧標準素子から得られる電圧値を比較する。本研究では、ジョセフソン電圧標準素子が発生する電圧にフィードバック機構を組み込むことで不確かさの主要な要因となり得る差電圧の影響を抑えることを目指し、その実行にかかる遅延時間の見積りを行った。
In this paper, we analyzed the structure of the PJVS model, calculating the thermal conductivity. By rationally designing the wire connection between the cold head and the PJVS module, make sure the temperature can be optimally controlled under the condition that the cooling power of cryocooler is guaranteed.
休 憩(11:00 再開) 座長 明連広昭(埼玉大)
C-8-6 |
ビットレベル処理を用いたRSFQ可変精度行列乗算器の検討
○鬼頭信貴(中京大)・高木一義(三重大) |
C-8-7 |
低電圧駆動単一磁束量子回路を用いたゲートレベルパイプライン乗算器の高周波動作
○長岡一起・田中雅光・佐野京佑(名大)・山下太郎(名大/JSTさきがけ)・井上弘士(九大)・藤巻 朗(名大) |
C-8-8 |
単一磁束量子回路に基づく 50 GHz 並列処理データパスの設計
◎加島亮太・長岡一起・田中雅光・佐野京佑(名大)・山下太郎(名大/JSTさきがけ)・藤巻 朗(名大) |
C-8-9 |
SFQ FFTを用いた畳み込み演算プロセッサの設計
◎柯 飛(横浜国大)・Ao Ren・Yanzhi Wang(Northeastern Univ.(USA))・Olivia Chen・山梨裕希・吉川信行(横浜国大) |
C-8-10 |
単一磁束量子シフトレジスタデータリンクを用いたFPGAの設計
◎和田洋明・山梨裕希・吉川信行(横浜国大) |
単一磁束量子(RSFQ)ディジタル回路はパルスを用いて論理演算を行い,省エネルギで高速な演算が可能であると期待されている.近年,画像の認識などのタスクにおいて高い性能を実現することから、ニューラルネットワークが注目を集めている.ニューラルネットワークの推論処理においては行列積(行列乗算)の計算が多用され,高速に行うことが求められている.この行列乗算の精度は必ずしも高くなくてよいと考えられている.本稿では,可変精度で計算でき,低精度で計算する際は高速に計算が可能なRSFQ回路向け行列乗算器を提案する.
我々は、ビットパラレル処理とゲートレベルパイプライン、低電圧駆動単一磁束量子(LV-RSFQ)回路を用いた高スループットかつ高エネルギー効率な4 × 4-bit乗算器の開発を行った。電源電圧を通常の1/5の0.5 mVに下げたことで、スイッチング速度は60%に低下したが、精密なタイミング設計により52 GHzまで動作した。消費電力は134 µWであり、エネルギー効率は381 tera-operations per second per watt (TOPS/W)に達した。
高速性と低消費電力性に優れた単一磁束量子 (SFQ) 回路を用いて、並列処理マイクロプロセッサの要素回路となるデータパスを設計した。この設計では、SFQ マイクロプロセッサのスループットを最大限に引き出すことができるゲートレベルパイプライン構造を用いており、パイプライン段数を増加させることでカウンターフロークロッキングの厳しいタイミング制約を克服した。Verilog を用いて論理シミュレーションを行ったところ、設計したデータパスは 55 GHz において 80% から 125% という十分に広いバイアスバイアスマージンを持ち、最大で 68 GHz で動作した。
現在、ビッグデータ処理能力の向上のおかげで、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)は自動運転、マシン翻訳、画像認識などの分野で広く応用されている。一方、CNNのサイズと計算量が増加しつつあり、多層なCNNは現在主流となるCMOS回路の計算速度などの問題により、性能を上げることができない。
我々は高速動作と低消費電力が特徴のSFQ(Single Flux Quantum)回路を用いた超高性能なプロセッサを行っている。以前の報告では、すでに7 bit - 8 point SFQ FFTプロセッサをオンチップ高速測定において正常動作を確認した。本研究では、超高性能なCNNシステムを実現することを目指して、SFQ FFTを用いた畳み込み演算プロセッサを設計した。
現在FPGAは主に半導体集積回路を用いて作られている。その半導体集積回路に代わる新たなデバイスとして高速動作性、低消費電力性が特徴である単一磁束量子回路(Single Flux Quantum : SFQ) が存在する。我々はこのSFQ回路を用いてFPGAを作成する研究を行っている。その中でもSFQ回路の高速伝搬性を生かすことができるシフトレジスタに注目している。我々は従来のFPGAのSwitch box,Connection Blockの代わりにシフトレジスタを用いてLogic Blockに入出力を行うハイスループットのデータリンクの検討をしている。本研究では新たなFPGAのアーキテクチャの提案に向けて、SFQシフトレジスタを用いて、2bitLUT(Look Up Table)に入出力を行う回路の設計、シミュレーションによる検証を行った。その結果、作成した回路がシミュレーション上で正しく動作することを確認した。
3月18日 13:30〜16:15 工学部 講義棟1F 117講義室 座長 田中雅光(名大)
C-8-11 |
AQFP 順序回路設計のための論理合成自動化法
◎齋藤蕗生・Christopher L. Ayala・Olivia Chen・田中智之・田村智大・吉川信行(横浜国大) |
C-8-12 |
Glitterチャネル配線アルゴリズムによる断熱量子磁束パラメトロン集積回路の信号線のインダクタンス最適化
◎△田中智之・Christopher L. Ayala・吉川信行(横浜国大) |
C-8-13 |
機械学習による断熱量子磁束パラメトロン集積回路の配置順序最適化の調査
○山田剛久・Christopher L. Ayala・齋藤蕗生・田中智之・吉川信行(横浜国大) |
C-8-14 |
断熱型量子磁束パラメトロン回路のゲート間配線の伝送線路効果の検討
◎浅井和人・竹内尚樹・山梨裕希・吉川信行(横浜国大) |
C-8-15 |
量子磁束パラメトロンを用いた両方向結合型構成による論理ゲートの検討
○三宅航平・山梨裕希・吉川信行(横浜国大) |
我々は、断熱磁束量子パラメトロン(Adiabatic Quantum Flux Parametron, AQFP)回路と呼ばれる超電導論理回路についての研究を行っている。
これまでに、CMOSで用いられている論理合成ツールをAQFP回路でも利用できるよう、トップダウンツールが開発されている。これにより基本的な組み合わせ論理回路が自動生成可能になった一方、フィードバックを含むような順序回路をどのように合成するのかについては詳しく検討されていなかった。本研究ではQFP latchを用いてAQFP回路の順序回路の論理合成を行い順序回路のクロック間隔を計算する手法を提案する。この手法を適用することで4bitカウンタの合成を行い、シミュレーションにより正常動作を確認した。
超伝導集積回路の一つである、断熱量子磁束パラメトロン回路(AQFP)は、省電力性に非常に優れたデバイスであり、これを使って、集積回路を作成することを目的に研究を行っている。AQFP回路同士のデータ伝搬距離は、線路として使用している超伝導ストリップ線路の寄生インダクタンスによって制限されており、長距離の伝送では、リピータとしてのバッファ回路を挟むことでそれを実現している。インダクタンスを減らすもう一つの方法として、ストリップ線路の幅を広げるというものがある。今回、異なる線幅のストリップ線路を扱うためのチャネル配線アルゴリズムであるGlitterに着目し、その実装を行い、回路面積や、レイテンシの改善が行えないか検討した。
我々は,超伝導集積論理回路の一つである断熱量子磁束パラメトロン(Adiabatic Quantum Flux Parametron : AQFP)について研究を行っている。AQFP論理回路には素子の向きや信号線の配線長の限界など配置制約が多く,遺伝的アルゴリズムでの配置最適化では,多大な時間を必要とする問題がある。そこで本研究は,AQFP集積回路の配置設計を少ない時間での最適するために,強化学習とニューラルネットワークモデルに注目した。本論文では,回路データから機械学習が適用可能な系列データを作成する方法と系列データを配置順番を考慮したデータに変換するモデルの提案とその評価を行う。
我々は断熱型量子磁束パラメトン (AQFP: Adiabatic Quantum Flux Parametron) 回路の研究を行っている。AQFP回路は静的な消費電力がなく、スイッチングの際に動的な消費電力を劇的に減少させることが可能である。したがって、CMOS回路と比較すると5~6桁程度低い消費電力で5~10 GHzの高速動作が可能である。
我々は、AQFP回路を用いてより大規模な回路の作製を目指している。そこでより正確なディジタルシミュレーションモデルを考えるにあたりAQFP回路の配線間遅延を考慮する必要性がある。そのため、AQFP回路の配線として伝送線路モデルを用いた場合の影響を考える必要がある。
今回は、AQFP回路の配線として伝送線路を用いた場合の動作シミュレーションを行い配線長と動作の関係を調べた。
量子磁束パラメトロン(QFP)回路の新たな構成法法として,両方向結合型の構成を提案した.
本構成方法では全てのQFPは相互に磁気結合され,系全体がエネルギー的に安定な状態に遷移することで出力が定まる.
この遷移プロセスは,二重井戸型ポテンシャルモデルの2状態間の確率的遷移に基づくモデルを使用して分析される.
この動作を確認するために,本構成方法を用いて論理ゲートを設計し,シミュレーションにより動作の確認とエラーレートの調査を行った.また,計算により求めた理論値と実際の回路レイアウトの設計値との対応付け方法を提案した.
休 憩(15:00 再開) 座長 鬼頭信貴(中京大)
C-8-16 |
低電圧駆動単一磁束量子回路における論理ゲートのタイミングパラメータの解析
◎国吉真波・村瀬 健・長岡一起・佐野京佑・田中雅光(名大)・山下太郎(名大/JSTさきがけ)・藤巻 朗(名大) |
C-8-17 |
パイ遷移ジョセフソン接合を用いた二線式超伝導単一磁束量子論理ゲートの設計
◎小原佑亮・山梨裕希・吉川信行(横浜国大) |
C-8-18 |
10-kA/cm2 NbプロセスにおけるJosephson-CMOSハイブリッドメモリ用Josephson latching driverの最適化
○弘中祐樹・山梨裕希・吉川信行(横浜国大) |
C-8-19 |
受動伝送線路における配線幅縮小化の検討
◎池戸駿介・山梨裕希・吉川信行(横浜国大) |
C-8-20 |
双方向線路によるAQFP FPGA用スイッチブロックの縮小化
◎高橋大地・山梨裕希・吉川信行(横浜国大) |
単一磁束量子(SFQ)回路は高速動作性と低消費電力性に優れるが、冷却コストを含めて従来技術に対する圧倒的優位性を示すためにはエネルギー効率のさらなる追求が必要である。SFQ回路の消費電力を下げる効果的なアプローチとして設計駆動電圧を下げるという手法が挙げられるが、駆動電圧を下げるとジョセフソン接合のスイッチは非線形に増加し、各論理ゲートのタイミングパラメータが複雑に変化する。本研究ではSFQ回路のDFFを例に、設計駆動電圧を下げた際のセットアップ時間とホールド時間の変化、並びにそれらのタイミングばらつきについて数値解析を行い、DFFにおいては低電圧で駆動しても動作周波数やエレーレートはそれほど悪化しないであろうという結論に至った。
単一磁束量子回路は、従来の半導体集積回路と比べ高速動作性および低消費電力性に優れているが、バイアス分配のために静的消費電力が大きいことが課題としてある。1bitの情報を2つの信号線を用いて表現する二線式システムは、バイアスの分配を抵抗を用いることなく行えるため、静的消費電力をゼロにすることができるが、回路面積の増大やバイアス電流量の増加が問題として考えられる。我々は、二線式システムを導入した単一磁束量子回路にパイ遷移ジョセフソン接合を導入することにより、インダクタンスおよびバイアス電流量を削減することで回路の高性能化を図った。
Josephson-CMOSハイブリッドメモリにおけるインターフェース回路であるJosephson latching driver (JLD)のパラメータ最適化及び動作試験を行った。我々の以前までの研究で用いられてきたAIST-STPで設計されたJLDをもとに、AIST-ADPにおける接合パラメータを考慮し、Suzuki stack及び4JL gateの双方のバイアスマージンが大きくなるように4JLゲートの臨界電流値及び負荷抵抗値を最適化した。試作した回路の動作試験においてJLDの正常動作が得られた。
近年の増加し続ける情報化社会に対処するために、消費電力が半導体集積回路に比べ2~3桁低く、高速性においても数十GHzでの高速動作が可能である単一磁束量子 (Single Flux Quantum : SFQ) 回路が注目されている。
SFQ回路の長距離配線には受動伝送線路Passive Transmission Line (PTL) が用いられる。回路面積を削減し、大規模回路設計の柔軟性を向上させるために、我々の研究では、PTLの配線幅の縮小化を目指している。そこで、PTLの前段・後段に整合回路として接続されるドライバ・レシーバのJosephson接合のβcの値を変更することによって、配線幅を縮小化したときの動作マージンの拡大を行った。
現在広く使われているCMOS回路は微細化の限界や微細化による消費電力の増大といった問題に直面している。CMOSに代わる次世代デバイスとして研究されている超伝導集積回路の一つである断熱的量子磁束パラメトロン回路は、特に低消費電力性に優れている。我々はこれまでにAQFPを用いたFPGAの設計を行った。AQFPではデータは1方向にのみ伝搬するため、縦方向には1方向のみに、横方向には、2本の配線を用いて双方向にデータが伝搬するように設計されている。本稿では、AQFPの多相クロックの順序を反転させることによって逆方向にもデータが伝搬する双方向線路を提案する。また双方向線路を用いてFPGA用のSwitch Blockを設計し、その接合数及び配線数を削減した。
C-9. 電子ディスプレイ
3月17日 13:30〜17:00 工学部 講義棟1F 106講義室 座長 山口留美子(秋田大)
C-9-1 |
(依頼講演30分)シースルー型ARグラスを用いた輝度ダイナミックレンジの拡張に関する検討
○金田和文・伊藤 陸・橋本航太・Raytchev Bisser・玉木 徹(広島大) |
C-9-2 |
準マクスウェル視を用いたフォーカスフリー拡張現実システム(Ⅱ)
○服部励治(九大) |
C-9-3 |
高輝度/高透明度PMOLEDディスプレイの作製(Ⅱ)
◎宮原奨平・沈 昌勲・服部励治(九大) |
C-9-4 |
透明PMOLEDを用いたPOVディスプレイの考察
◎此本光駿・服部励治(九大) |
ハイダイナミックレンジ画像(HDR画像)は実世界の幅広い輝度情報を有しており, 高品質な画像が記録される. HDR画像を表示するためには専用のディスプレイが必要であるが, 高価格であり一般には普及していない.このような背景の下,本研究では,近年普及してきているシースルー型ARグラスを用いて輝度ダイナ ミックレンジの拡張表示が可能であるか実験を行った.その結果,輝度拡張用画像を表示したシースルー型ARグラスを通してディスプレイを見ることにより輝度拡張が可能であることがわかった.
我々は今までにコリメート光を用い幅広い眼球回転許容角を持つフォーカスフリーの持に拡張現実(AR:Augmented Reality)を提案してきた[1,2].今回の報告では,レーザー光を用いた検証実験システムで得られたAR像の視認性について検討結果を述べる.
OLEDディスプレイにおいては定電流駆動するのが一般的である。その理由は、定電圧駆動では輝度が不均一となるためである。まず、OLEDを光らせるためには定常的に電流を流す必要があるが、配線金属は抵抗を持つため、無視できない電圧降下がそこに発生してしまう。それ故に、電圧駆動した場合、電源に近い位置のOLEDは明るく光り、電源から遠い位置のOLEDは暗くなってしまう。また、線順次駆動で複数のピクセルを同時に点灯させた場合、それぞれのOLEDが並列に接続された回路が形成されるため、一線の同時点灯数が多いほど輝度は低下していく。
しかしながら、定電流を供給するためには電流源にオーバーヘッド電圧が必要になり、消費電力が大きくなる。また、駆動のためのIC回路の規模が大きくなってしまい、コストが高くなってしまう。そこで、定電圧駆動で輝度不均一性などの問題を解決することができれば、低消費電力・低コストにパネルを実現できる。
本研究では、OLEDに流れる電流値と出力したい輝度から必要なduty比を計算するアルゴリズムを考案し、PWM制御を用いて定電圧駆動で輝度均一化を行う駆動方法を開発した。
我々は現在、パッシブマトリックス駆動有機ELダイオード(PMOLED)表示装置の開発を行っている。この表示装置は、解像度を押さえることによって輝度と透過率を向上させ、表示時のディスプレイ、非表示時の窓としての両方の特性を十分に満たそうとするものである。これにより、POPに限られていた透明ディスプレイの応用分野を通常のショウウインドウ、車窓などの広範囲に広げることが期待される。
我々は、このディスプレイを、POV(Persistence of Vision)として用いる新たな応用を考案した。このディスプレイはバーサライタ(Versa-Writer)とも呼ばれる。近年、空中に映像が浮かんで見えることから空中ディスプレイを実現する技術として注目されているものである。今回は、透明PMOLEDをPOVディスプレイに応用するための考察として、二次元のLEDアレイを用いてPOVディスプレイを作成し、輝度の向上を目指した。
休 憩(15:00 再開) 座長 木村 睦(龍谷大)
C-9-5 |
(依頼講演30分)低電圧駆動液晶(RTN液晶)の安定化
○高頭孝毅・渡邊一平・伊藤雅浩・合田和矢(山口東理大) |
C-9-6 |
弱アンカリングハイブリッド配向による疑似TNモードの超低電圧駆動
○山口留美子・川田竣也(秋田大) |
C-9-7 |
分光エリプソメトリー法を用いた異方性光学薄膜評価に関する研究
◎猿田亮介・飯村靖文(東京農工大) |
液晶素子の駆動電圧の低減は液晶材料の誘電率異方性を大きくすることによってのみ図られてきた。講演者らは液晶の分子配列に歪を導入することによる駆動電圧の低減を試み、RTN液晶を提案した。RTN液晶では分子配列に歪が導入され低電圧駆動が達成された。しかし、この分子配列は不安定で電圧無印加状態ではスプレイツイスト構造に転移する。これまで複数の安定化法を試みたがそれぞれ欠点があった。この度高分子安定化法でモノマー濃度を低濃度にすることで低駆動電圧を保ったまま安定化できる条件を見出した。この方法では表面近傍のみの捩じれ構造を固定することでバルクの捩じれ構造を安定化できていると考えられる。
本報告では,90度ねじれハイブリッド配向において,弱極角アンカリング界面を適用させた疑似(Quasi)TN (Q-TN)を提案する。Q-TNモードは,通常のTN素子の1/7程度の超低電圧駆動が可能となることを,数値解析により示した。
液晶ディスプレイなどの設計には、用いられる異方性光学薄膜の光学特性を知る必要がある。設計には膜厚や屈折率差(⊿n)、絶対屈折率(ne,no)、吸収などが重要な要素であり、分光エリプソメトリー法では、それらの波長依存性を非接触・非破壊で評価することができる。そこで、分光エリプソメトリー法で未知材料を用いたサンプルの評価を行うことで、素子作製手順を確立し、各波長に対して最適な素子設計が行える。材料の光学特性を評価することでディスプレイとしての性能向上が見込める。
本研究では、試料評価のためのエリプソメトリー測定システムをハード・ソフト面から設計し、それによって未知試料の評価を行った。今回は光学補償膜の作製プロセスの評価を行ったので報告する。
休 憩(16:15 再開)
C-9-8 |
(依頼講演30分)機能性ナノ粒子による高分子安定化コレステリック液晶回折素子の電気光学特性の改善
○穐本光弘・福田枝里子・猪 朱里・末松泰英(山口東理大) |
C-9-9 |
液晶光配向のための表面高分子安定化法を用いた配向規制力制御技術
◎谷本 巽・飯村靖文(東京農工大) |
コレステリック液晶への電圧印加によって生じた液晶ダイレクタ変調パターンを高分子安定化した素子(高分子安定化コレステリック液晶回折素子)は,調光窓やビームステアリング素子としての応用が期待されている。高分子安定化コレステリック液晶回折素子の電気光学特性は,安定化に使用されるプレポリマーの特性に強く依存する。本研究では,UV硬化型の機能性ナノ粒子を用いることにより,液晶性または非液晶性プレポリマーのみが使用される従来の場合と比較して,光回折の電気的スイッチング性能が大幅に向上することを示す。電気光学特性の結果と,重合誘起相分離プロセス後に形成されたポリマーモルフォロジーとの関係を議論する。
配向膜には均一な液晶配向性と強い配向規制力が要求されるが、強い配向規制力を併せ持つ光配向膜を開発するのは難しく、大きなコストがかかるため非常に数が限られている。そこで、配向膜上にポリマーネットワークを形成し配向膜の見かけ上の配向規制力を改善する方法である表面高分子安定化法を、光配向法と組み合わせることで、配向膜に強アンカリング特性は必要がなくなり多くの光配向膜が実用可能になる。本研究では、このポリマーネットワークの形成過程を実験とシミュレーションにより考察することで、適用プロセスを最適化することを目指す。
今回は、偏光UVを用いてより効率的に表面高分子安定化を適用できることを確認したため報告する。
C-10. 電子デバイス
3月18日 9:30〜11:45 工学部 講義棟1F 103講義室 座長 小谷淳二(富士通研)
C-10-1 |
各種EV制御用超高出力ダイスタートランジスタの開発
○岡本研正(香川大)・中野逸夫(岡山大)・松下文夫(香川大)・細川正美(光半導体デバイス応用技研) |
C-10-2 |
粘菌型自律歩行ロボットの身体感覚による路面状態センシング
◎大沼 柊・斉藤健太・末藤直樹・葛西誠也(北大)・青野真士(慶大) |
C-10-3 |
GaN HEMTの自己発熱の低周波Sパラメータへの影響に関する解析
○大塚友絢・山口裕太郎・新庄真太郎(三菱電機)・大石敏之(佐賀大) |
C-10-4 |
低電力マイクロ波発電用の高感度p-GaAsSb/n-InAs ナノワイヤバックワードダイオード
○高橋 剛・河口研一・佐藤 優(富士通研)・須原理彦(首都大東京)・岡本直哉(富士通研) |
高光力発光ダイオードとSi太陽電池を用いて自動車や船、飛行機が制御できる超高出力ダイスタートランジスタを開発した。
未知環境や想定外の事態に対応できる高度な自律性を備えたロボットが期待されている.我々は粘菌アメーバに着想を得た最適化問題解探索システムを応用し,自律的に歩行する粘菌型自律歩行ロボットを開発した.このロボットは試行錯誤によって未知の障害物を突破する能力を創発する.現状,障害物の有無によらず試行錯誤するため,路面状況認識にもとづく歩行効率の改善が課題である.一般的には視覚情報をもとに路面状況を認識するが,画像解析の計算コストが大きい.そこで本研究では,画像解析に頼らず,ロボットの身体感覚を利用した路面状態認識を試みた.
GaN HEMTの自己発熱の低周波Sパラメータへの影響について等価回路モデル及びTCADを用いて解析した結果について報告する。等価回路モデルによる解析の結果、自己発熱によりIm(Y22)の低周波領域の周波数特性にピークが生じ、ピークの周波数は自己発熱の等価回路パラメータである熱抵抗と熱容量により表されることを確認した。SiC基板によるGaN HEMTの構造を用いたTCADによる解析の結果、Im(Y22)の低周波領域の周波数特性に自己発熱によるピークが生じ、自己発熱によるピークの大きさと周波数はSiC基板の熱伝導率と熱容量に依存することを明らかにした。
IoTセンサを駆動するため、環境発電による電力供給が注目される。1μW以下の微弱な環境電波を電源に用いるため、我々は高効率なダイオードを開発してきた。従来のショットキーバリアダイオードよりも高効率が期待されるナノワイヤ型のバックワードダイオードを検討した。結晶成長条件を改善することで効率に影響を与える検波感度の向上を進めたところ、従来のダイオードを超えるマイクロ波検波感度を達成することができた。
休 憩(10:45 再開) 座長 須原理彦(首都大東京)
C-10-5 |
ダブルドープ構造InAs/InGaAs複合チャネルHEMTによる高出力化検討
○堤 卓也・杉山弘樹・濱田裕史・松崎秀昭(NTT) |
C-10-6 |
2つのコルピッツ発振器に含まれる2つのプリンテッド・スパイラル・インダクタ間の交角の変化による同期状態の挙動
○走浦晴也・萬谷海月・山内将行(広島工大) |
C-10-7 |
超広帯域F/V変換器を用いたVCOの線形補正方式の一検討
○濱口浩規・野口健吾(ファイ・マイクロテック)・松村大輝(福井高専)・結城直彦(ファイ・マイクロテック) |
C-10-8 |
可視光ワイヤレス給電通信システムにおける通信と給電効率の最適化
◎中村陽平・李 贇・楳田洋太郎(東京理科大)・小澤佑介(茨城大) |
近年Beyond 5Gに向けた研究開発が活発化しており,その中で我々は300 GHz帯を用いた120 Gbps無線伝送などを実証してきた.伝送技術高度化には,要素素子であるInP系高電子移動度トランジスタ(InP-HEMT)の更なる高速・高出力化が求められる.高速化にはゲート短縮に加え,InAsなどの高移動度チャネルの採用が有効であるが,バンドギャップの小ささに起因したインパクトイオン化が顕著となり,Vds < 1Vの比較的低バイアス領域においてもドレインコンダクタンス(gd)が顕著(≧0.5 S/mm)に劣化,高速・高出力化を制限していた.今回我々はダブルドープ(DD)構造InAs/InGaAs複合チャネルHEMTを試作した結果を報告する.
基板上に作成するスパイラルインダクタである、
2枚のプリンテッド・スパイラル・インダクタをそれぞれ用いたコルピッツ発振器を構築し、
交角の変動による発振器間の同期状態の変動を観測し、
交角の検出に利用が可能であるか調査を行う。
VCOの発振周波数を三角波等で制御しFMCW信号を生成する場合,VCOゲインの非線形性が課題となる.
VCOゲインの非線形性を補正する方法として,F/V変換器によりVCOの発振周波数を電圧信号に変換しVCOの制御信号にフィードバックする方法が知られているが,広帯域な線形性を有するF/V変換器の実現が困難であったため,広い掃引周波数幅を有するFMCW信号発生器を実現する事が難しかった.
今回,1GHzから5GHzの周波数帯域で動作する超広帯域F/V変換ICを開発し,これを用いたVCOの線形補正方法を検討し,実験にてその効果を確認したので報告する.
可視光ワイヤレス給電通信システムに用いる最適なフィルタの設計のため、給電部と通信部の電力が最大になるような、受信機回路に相当する負荷抵抗を計測する。また回路の分割により電力効率の解析を行う。
通信部と給電部の負荷抵抗を交互に変更し、電力最大となるよう順に求め収束させることで、最大電力を得ることができる負荷抵抗を決定する。更にその負荷抵抗を用い電力効率の解析を行う。
結果として、電力が最大となる負荷抵抗は、直流交流共に放射照度が大きいほど小さくなることが分かった。更に各測定点での直流電力効率は放射照度が小さいほうが高くなるが、暗くなるとほぼ変わらないことがわかった。交流電力では、20W/m^2を最大とし電力が山なりになることがわかった。
C-12. 集積回路
3月17日 9:30〜12:00 工学部 講義棟1F 115講義室 座長 石川 亮(電通大)
C-12-1 |
高調波注入同期LC-VCOのスプリアス解析及び評価
◎長沢拓弥・原 拓也・天野雄麻・高ヶ内洸太・前多 正(芝浦工大) |
C-12-2 |
有限のDC-Feedインダクタを用いた315MHz帯E級増幅器の評価
◎田村航輝・前多 正(芝浦工大) |
C-12-3 |
サイクリックアシスト型1-0 MASH ADCにおける性能低下要因の解析
◎松岡 英(東大)・根塚智裕(デンソー)・飯塚哲也(東大) |
C-12-4 |
オフセット電圧の順序統計量を利用したフラッシュ型ADCの理論検討
◎北村健浩・Mahfuzul Islam・久門尚史・和田修己(京大) |
C-12-5 |
VCOベースA/D変換器の可変デシメーションによる直接RFサンプリング受信機の低消費電力化
◎仲松佑花・磯部佑真・譜久山篤也・木原崇雄(阪工大) |
IoE向け無線機の低消費電力化のためには,高速動作する制御回路が不要な高調波注入同期VCO(SILO)が適している.しかし,SILOは注入信号として,低周波信号の高調波により注入同期するので,スプリアスの発生が課題となる.既報告の解析はスプリアス低減のための知見が得られない問題があった.今回新たに見通しの良い解析式を導出し,試作したSILOの測定結果との比較を行ったので報告する.
E級増幅器(PA)は電圧と電流の位相をずらすことで,理論的には電力変換効率100%が実現できる.しかし,E級PAで用いるチョークインダクタの周波数特性や,FET及び受動素子の寄生抵抗が効率を低下させるという課題がある.今回,周波数特性の良い有限のDC-Feedインダクタを用いた315MHz帯E級増幅器を設計し,評価を行った結果について報告する.
センサインタフェース等の用途にむけて、小面積かつ高いSNRを得られるという特徴を持つサイクリックアシスト型MASH(Multi-stAge noise SHaping) ADCに着目し、容量ミスマッチやアンプのDC有限ゲインといった非理想性による量子化雑音への影響を解析する事で、性能低下の主要因を明らかにし、回路設計の指針を示す。回路内の容量ミスマッチ誤差、アンプのDC有限ゲインを設計パラメータとして変化させ、Simulinkを用いたシミュレーションを行った。その結果、MASHの構成によってサイクリックADCの非線形性による入力の高調波成分が減衰する事が確認された。非理想性が理想値から最大で約10dBほどSNDRの低下に寄与することが分かった。各設計パラメータとSNDRの関係をシミュレーションおよび解析により求め、設計最適化の指針を示した。
近年,プロセスの微細化によってフラッシュ型ADCの高速化が期待されている.しかし,プロセスの微細化に伴いコンパレータのオフセット電圧のばらつきが大きくなるためADCの性能が制限される.この問題を解決するために,本報告ではコンパレータのオフセット電圧の順序統計量を利用したフラッシュ型ADCを提案する.順序統計学による性能評価により,出力が5bit,オフセット電圧の標準偏差をσosとして入力電圧幅が2σos,コンパレータの数が1000個の提案するADCの場合,95%の確率で DNLは-0.45 LSB/+0.53LSB,INLは-1.5 LSB/+1.5LSBに収まる.また,提案する方式は一般的なフラッシュ型ADCと比較してコンパレータ群の実装面積は約150分の1で実装できることを示す.
直接RFサンプリング受信機の消費電力を低減し、無線端末用のトランシーバーICに適用することで、ICの価格を下げることを目指している。本研究では、A/D変換器を電圧制御発振器(VCO)で構成し(VCOベースA/D変換器 )、さらにデシメーション機能(データの間引き)を付与することで、受信機を低消費電力で動作させる。デシメーション数を変化させた場合の信号のS/N比と受信機全体の消費電力をシミュレーションで求めた。
休 憩(11:00 再開) 座長 丹沢 徹(静岡大)
C-12-6 |
A 28-GHz Bi-Directional Phased-Array Beamformer for 5G New Radio
○Jian Pang・Zheng Li・Atsushi Shirane・Kenichi Okada(Tokyo Tech) |
C-12-7 |
Analysis of Phased-Array Radiation Pattern Error Effect for 5G Transceiver Design
◎Yun Wang・You Dongwon・Fu Xi・Atsushi Shirane・Kenichi Okada(Tokyo Tech) |
C-12-8 |
A 39-GHz CMOS Bi-Directional Amplifier for 5G Phased-Array Transceiver
◎Zheng Li・Jian Pang・Zhongliang Huang・Atsushi Shirane・Kenichi Okada(Tokyo Tech) |
C-12-9 |
RGC-TIAにおける多層インダクタによる面積効率向上効果の評価
◎田中大夢・土谷 亮・谷村信哉・井上敏之・岸根桂路(滋賀県立大) |
With the millimeter-wave spectrum, over 10-Gb/s mobile data rate will be provided by the future 5G. Dualpolarized MIMO (DP-MIMO) will be introduced for improving the spectrum efficiency. H and V polarizations in DP-MIMO operation requires separated beamformer arrays, which increase the manufacturing cost. To maintain high-speed data communication with reduced cost for DP-MIMO, this paper introduces an area-efficient CMOS bi-directional phased-array beamformer.
At millimeter-wave frequency, phased-array architecture is usually employed to enhance transmitted signal strength. Thanks to the advancement of modern semiconductor technology, millimeter-wave communication systems are developed and integrated monolithically in CMOS with high reliability. This paper presents the analysis of radiation pattern error effect for 5G millimeter-wave phased-array transceiver design.
A 39GHz differential bi-directional amplifier in a standard 65nm CMOS process is presented. This work is realized based on the neutralized bi-directional core together with the fully shared inter-stage matching networks. The core chip area is only 0.11mm2. At 39GHz, a 16.2-dBm saturation output power and a 5.1-dB noise figure are realized for PA mode and LNA mode, respectively. The PA-mode also achieves a 13dB small-signal gain and a 26.5% maximum PAE.
光通信システムにおいて,トランスインピーダンスアンプ(TIA)には,高利得・高速動作が求められる.この要求を実現させるため,帯域延伸技術としてインダクティブピーキングが広く用いられる.その際,インダクタの面積が大きいことや寄生成分の存在等が課題である.これにより,回路面積の増大や帯域延伸効果の減少等の問題がある.そこで,多層インダクタを用いることにより面積の削減が行える.しかし,その寄生成分は不明確である.また,寄生成分による影響も回路構成によって異なるため,インダクタ構造の選択が不明確である.そこでRGC-TIAにおける多層インダクタを用いた面積効率の評価を行ったので報告する.
3月17日 13:30〜17:30 工学部 講義棟1F 115講義室 座長 古田 潤(京都工繊大)・内木場文男(日大)
C-12-10 |
2次元アレイ状データ転送回路における放射線影響の評価
◎大島佑太・安藤 幹・吉田僚一郎・鍋屋信介・平川顕二・岩瀬正幸・小笠原宗博・依田 孝・石原 昇・伊藤浩之(東工大) |
C-12-11 |
ELTの耐放射線性評価と特性換算モデルの検討
◎吉田僚一郎・安藤 幹・大島佑太・鍋屋信介・平川顕二・岩瀬正幸・小笠原宗博・依田 孝・石原 昇・伊藤浩之(東工大) |
C-12-12 |
An Optimum Pre-Emphasis Pulse Design for Random Access Memory
◎Yoshihiro Sugiura・Toru Tanzawa(Shizuoka Univ.) |
C-12-13 |
Design and Implementation of High Speed Arithmetic Unit based on Self-Synchronous Circuit
○Di Cui・Makoto Ikeda(The Univ. of Tokyo) |
C-12-14 |
35 MHz帯域容量結合型単電源アイソレーションアンプIC
○高谷 聡・石原寛明・鬼塚浩平(東芝) |
C-12-15 |
電力合成器を用いたミリ波無線電力伝送向けRF-DC変換器
◎井出倫滉・You Dongwon・白根篤史・岡田健一(東工大) |
C-12-16 |
複数アクチュエータのワイヤレス駆動ICの設計
○福留 環・邱 浩・新山龍馬・高宮 真(東大) |
C-12-17 |
RF非接触バッテリー給電レシーバー向け65nm CMOSプロセスカスコードSIDOブーストコンバータ
◎一色保明・鈴木 大・石田 涼・宮地幸祐(信州大) |
宇宙,原子力等の放射線照射環境では放射線による半導体の特性劣化や故障が問題となる.我々は多量の放射線が長期間照射される環境で集積回路の特性を劣化させるTID効果の対策技術を検討している.本報告では,TID効果による特性劣化がデジタル回路に与える影響を明らかにするために,2次元アレイ状データ転送回路を対象として放射線の影響を評価した.シフトレジスタ型とメモリアクセス型の2種類の転送方式について,0.18μm CMOSプロセスで試作し放射線照射実験を実施することで,メモリアクセス型の方が放射線耐性に優れていることを明らかにした.
宇宙,原子力等の放射線照射環境では放射線による半導体の特性劣化や故障が問題となる.我々は多量の放射線が長期間照射される環境でMOSFETの特性を劣化させるTID効果の対策技術を検討している.TID効果は,電離作用を持つ放射線がゲート酸化膜や素子分離酸化膜(STI)といった酸化物中に電荷を生成・蓄積することでMOSFETの諸特性を劣化させる現象である.
本報告では,TID効果の対策の1つとして知られているELTを設計・試作し放射線の影響評価を行った.評価結果よりELTが耐放射線性に優れていることを確認するとともに,ELTを用いる回路設計を可能にするために等価特性モデルを明らかにした.
メモリアレイのワード線遅延を削減するため、パルス印加初期にターゲット電圧より高くしたプリエンファシス・パルスを用いる技術が知られている。3D NANDのようにページ単位でアクセスするメモリでは、ワード線遅延は全てのノードがターゲット電圧になる時間で決まっている。先行研究ではこの場合の最適パルスについて報告されている。本研究では対象をランダム・アクセス・メモリとして、アクセスされるセルのゲートがターゲット電圧に収束する時間を最短にするパルスについて解析した。本研究の方法による最適化で、ワード線の1/3点においては先行研究に比べて遅延時間を60%削減できることが分かった。
The performance of adder and multiplier is crucial for multimedia application and microprocessor, which depend on the execution of large numbers of elementary arithmetic. Throughput and frequency are two significant indicators of microprocessor performance. In the self-synchronous system, we pay attention to improve the system performance by implementing the gate-level fine-grain narrow pipeline stages and parallel structure.In this research, we focus on using the self-synchronous circuits to design the high-throughput and minimum latency arithmetic unit. In order to improve the throughput, the circuit optimization of gate-level pipeline operation is proposed. Meanwhile, in order to minimize the pipeline
stages to reduce the latency, we design the self-synchronous adder in parallel prefix structure and self-synchronous multiplier in Booth-Wallace architecture.
パワーエレクトロニクス機器向けの、従来の100倍以上となるDCから35.2 MHzの帯域を実現する、フルCMOSインテグレーションされた絶縁電流・電圧計測用アイソレーションアンプを提案する。パッシブミキサで入力信号を変調し、5 kVrms耐圧のオンチップ絶縁キャパシタによる容量結合を介して伝送することで、高圧側の回路を電源レスで動作可能な構成とする。信号変調のためのクロック信号も同じく容量結合を介して低圧側から供給される。低圧側には信号復調を行うミキサやクロック回路、信号復調のタイミングキャリブレーション機能を搭載する。
近年, IoTに向けて小型かつバッテリーレスなセンサー端末が求められている. 無線電力伝送はメンテナンスフリーなため, 維持費を抑えつつ, 上記のセンサー端末を実現することができる. この無線電力伝送では, 受信信号をDC電力に変換するRF-DC変換器に高い変換効率が求められる. また, アンテナを小型化するという観点から, ミリ波での無線電力伝送が望ましい. しかし, ミリ波帯では空間中の伝搬損失が大きくなるため, アレーアンテナを用いて利得を高める必要がある.
ここで, 各アンテナからの受信信号を各整流回路へそれぞれ入力する方式では, 各回路で損失が発生するため, 高い変換効率を実現するのは難しい. 本稿では各アンテナの受信信号を電力合成した後, 整流回路へ入力することで, 変換効率を高めたRF-DC変換器を提案する.
バッテリーレスで複数のアクチュエータのワイヤレス駆動を行うアプリケーションに向けて、1つの受信コイルで無線給電と無線通信による複数アクチュエータの選択的駆動を実現するワイヤレス駆動ICを設計した。給電・通信は、無線給電波形をASK変調することで同時に実現する。回路シミュレーションにより、ワイヤレスでアクチュエータの選択的駆動ができることを確認した。今後はICの試作と測定を行う予定である。
Internet of Thingsの発展に向け、産業機器用センサの導入数の増加が見込まれる。このようなセンサへの給電では電源配線が排除できて送電距離が長いRF非接触給電が注目されている。送電部から受電部まで約1~10mの距離があるため、電力伝送には5.7GHzマイクロ波の使用が検討されており、また受電部では-10~15dBmの入力電力が想定されている。これらの仕様を満たす整流回路を集積化する観点では、65nm CMOSプロセスのようなディープサブミクロンプロセスが適している。一方、出力にはリチウムイオン電池の使用が想定されるため、ブーストコンバータの出力段では4.2Vの耐圧が必要となる。本研究は65nmプロセスでも4.2V耐圧を有するカスコードSIDO方式のブーストコンバータを提案し、その実証結果を報告する。
休 憩(15:45 再開) 座長 徐 照男(NTT)・田中智之(ルネサスエレクトロニクス)
C-12-18 |
A Double Resonant Enhanced Swing Colpitts Oscillator for Extremely Low-Voltage DC/DC Boost Conversion
◎Tatsuya Nomura・Toru Tanzawa(Shizuoka Univ.) |
C-12-19 |
An Optimum Circuit Design of clocked AC-DC charge pumps
◎JINMING YE・Toru Tanzawa(Shizuoka Univ.) |
C-12-20 |
A Power Converter System for Energy Harvesting Toward Zero Net Battery Power
◎Yosuke Sakamoto・Toru Tanzawa(Shizuoka Univ.)・Hideki Uchida(Zeon) |
C-12-21 |
キャパシタ直並列変換方式による電気エネルギー放電時損失低減回路
○中田俊司・名越彩乃・西脇雅貴・品川朋輝(近畿大) |
C-12-22 |
A Design of Time-of-Flight Pixel for Optical Ranging
○△Yuqing Liu・Makoto Ikeda(The Univ. of Tokyo) |
C-12-23 |
電流モードでの背景光除去機能を有するToF CMOSイメージセンサ
◎武田直嗣・池田 誠(東大) |
C-12-24 |
2次元アレイ状データ転送回路のアーキテクチャの検討
◎安藤 幹・大島佑太・吉田僚一郎・鍋屋信介・平川顕二・岩瀬正幸・小笠原宗博・依田 孝・石原 昇・伊藤浩之(東工大) |
エネルギーハーベスティングにおいて小型の太陽光発電素子や熱電発電素子などから得られるDC電圧は直接ICを駆動するには十分高くないため、DC/DC昇圧回路によって電力変換する必要がある。先行研究で報告されているDC/DC昇圧回路では1mW以上の電力を出力するにはコストが非常に高くなってしまうという課題がある。本研究では、60mV程度の低電圧動作が可能な発振回路に整流器とボンディングワイヤを活かした共振器を接続することで、低コストで1mW以上の出力が可能なDC/DC昇圧回路を検討した。SPICEシミュレーションで発電素子の0.3V出力を0.8Vに昇圧する場合、出力電圧は共振器がない場合に比べて4.6倍に増加でき、1.3mWを出力できることが分かった。
逆磁歪効果を利用したエネルギーハーベスター(MET)は振幅が数百ミリボルト、周波数が10~100Hzという特徴がある。METの発生電力で集積回路を動作させるために昇圧回路が必要となる。先行研究では完全集積化可能なclocked AC-DC昇圧回路が提案されている。本論文では、最適回路設計について報告する。まずclocked AC-DC charge pumpの出力電流が最大となる最適な段数及び容量の近似式を導出し、それを目標の出力電流に応じてスケールして最小面積を求める手法を提案した。f=1MHz,I_S=10nA,V_DD=0.5V,V_OUT=2V,S=1000pFの条件において出力電流はSPICE simulationと2.5%の誤差で一致した。
身の回りの環境から電力変換素子(ET)によって電力を得るエネルギーハーベスティングが注目されている。ETとバッテリーを直列で接続し、バッテリー電圧を昇圧させた電圧を降圧型コンバータで降圧して負荷を駆動するシステムを提案する。負荷電流が十分低ければコンバータの入力電流より増加した出力電流の大半を入力電流に戻す事が出来るのでバッテリー消費を正味ゼロにできる。これを実現するための回路条件を定式化し、SPICEシミュレーションで検証した。例えば3V電池、オープン電圧1.2Vで出力抵抗2.4kΩのET、84%効率のコンバータのシステムは負荷電流10μAまでバッテリー消費ゼロとなることを示した。(273字)
近年電気エネルギーを、リチウムイオン電池に蓄電する方法が注目されている。またリチウムイオンキャパシタなどの大容量キャパシタに蓄電する方法も注目されている。リチウムイオンキャパシタはJMエナジー社よりラミネート形のもので2100 Fのものが24 Wh/kgで市販されている。この値は、コバルト酸リチウムイオン電池に比べ安全であるリン酸鉄リチウムイオン電池の100 Wh/kgと比較し、近い値となっている。また動作温度も−20~70℃であり、リチウムイオン電池の最高動作温度60℃より高い温度で動作可能であり、冷却フリーによるコンパクト化・屋外における柔軟な使用が可能である。今回、こうした特徴を有するリチウムイオンキャパシタから電気エネルギーを取り出す放電回路について、低損失となる回路を検討したので報告する。
CMOS image sensor for detection of modulated lighting with suppression of a background illumination allow high performance with sensitivity and selectivity. It has advantages of high signal-to-background ratio (SBR) and can be applied with 3D sensing scheme. In this work, a circuit of pixel for indirect ToF CMOS image sensor is designed, which suppress the background light in current mode, with the working modulated frequency at 1~10MHz. And the output signals can realize distance calculation with small deviations.
本研究では電流モードでの背景光除去を行うToF CMOSイメージセンサの設計を行った. シミュレーションにより, 1MHzの変調周波数において, 太陽光のような非常に強い背景光の存在する状況でも背景光成分を除去して変調光成分を取り出して積分することができることがわかった.
液晶ディスプレイやイメージセンサのように2次元アレイ状のデータを扱う技術は現在多くのアプリケーションで使われている.我々は,小面積・低消費電力に2次元アレイ状の画素にデータを転送する回路アーキテクチャを検討している.本報告では, Flip Flopで構成するシフトレジスタ型及びSRAMで構成するメモリアクセス型の比較するために64×16画素の2次元アレイ状のデータ転送回路の設計評価を行った.その結果,メモリアクセス型はシフトレジスタ型と比較し,トランジスタ数を10 %削減でき,データレート1 Gbpsにおいて消費電力が28 %削減できることを確認し,小面積化・低消費電力化に有効であることを明らかにした.
3月18日 9:30〜12:15 工学部 講義棟1F 115講義室 座長 小菅敦丈(日立)
C-12-25 |
折り畳み相互作用を搭載した全結合イジングモデル回路
◎北村知士・飯村凌馬・河原尊之(東京理科大) |
C-12-26 |
全結合型イジングモデル回路の相互作用分離型実装手法
◎山本 薫・飯村凌馬・北村知士・河原尊之(東京理科大) |
C-12-27 |
8スピンスレッド全結合イジングモデルのLSI実装
◎飯村凌馬・北村知士・河原尊之(東京理科大) |
C-12-28 |
IoT向け小規模CNN演算回路アーキテクチャ
○柳澤 潔・田村比呂・白根篤史・岡田健一(東工大) |
C-12-29 |
IQ信号軌跡の画像解析による無線端末識別性能の検証
◎△田村比呂・柳澤 潔・白根篤史・岡田健一(東工大) |
近年のIoT社会の躍進より様々な“モノ”がインターネットにつながり、データ量が増加している。それにつれてクラウド側への負担が膨大になっているので、“モノ”側に認識・識別の情報処理能力を持たせることが必要不可欠になると考えられる。そこで、“モノ”側で認識・識別を効率よく行う処理のための手法の一つとして,イジングモデルに着目し、全スピン間の相互作用を考慮した全結合イジングモデルを回路化してLSIに実装した。その際、折り畳み相互作用という手法を適用することで、回路の相互作用部分の面積を削減した。今回LSIに実装した回路では、この手法の適用により回路全体の面積を38%削減することに成功した。
エッジ側で組合せ最適化問題を解くための全結合型イジングモデル回路では,イジングモデルの各スピン間の相互作用はスピンの数が増えると莫大な量になり回路規模が非常に大きくなってしまうため全結合型イジングモデル回路の実装は困難であった.これを解決するための方法として以前に最近接スピンのみの相互作用を考慮した単位スピンセルを用いた方法を提案した.一方で,単位スピンセルを用いた方法ではスピンの数を増やしにくいという問題が生じた.この問題を解決するため,スピンセルを並列に並べ相互作用の層を分離してスピンに接続することで,回路規模を更に削減し全結合イジングモデルを実装する手法を今回提案した.
イジングモデルでは解く問題の規模が大きくになるにつれて、最適解ではなく近似解で収束する確率が大きくなる。そのため、何度も計算を行わなければいけなくなり、結果的に計算速度の低下につながる。そこで、一度の計算での精度を上げるために定期同期型シミュレーテッドアニーリングの原理を応用しLSIへの実装を行った。定期同期型シミュレーテッドアニーリングについてMATLABでのシミュレーションを用いて,実用性を確認した。また、28nmCMOSプロセスを用い8スピンスレッド全結合イジングモデルをLSIへ実装した。さらに測定を行った結果、8スレッドがそれぞれスピンを更新しながら収束していくことが確認できた。
研究ではIoT向けの小規模な畳み込みニューラルネットワークCNN(Convolutional Neural Network)の演算回路の回路アーキテクチャについて述べる。
本研究では小規模ニューラルネットワークCNN(Convolutional Neural Network)を用いたIQ信号軌跡の画像解析によってZigBee無線信号の無線端末識別を行う。
休 憩(11:00 再開) 座長 満仲 健(シャープ福山セミコンダクター社)
C-12-30 |
Near-Pixel Binary Convolution Engine for Energy-Efficient Image Recognition
◎Cheng-Hsuan Wu・Makoto Takamiya(The Univ. of Tokyo) |
C-12-31 |
シリコン基板表面の導電層を考慮したオンチップ・スパイラルインダクタの電磁界解析
◎川原啓輔・楳田洋太郎・高野恭弥・萩原豊之(東京理科大) |
C-12-32 |
135 GHz CMOSマーチャントバランの設計
◎酒井 元・高野恭弥・楳田洋太郎(東京理科大) |
C-12-33 |
0.18 µm CMOSプロセスを用いたミリ波帯対応nMOSFETモデルによる20 GHz発振器の設計
◎関根光輝・山木 夏・高野恭弥・楳田洋太郎(東京理科大) |
C-12-34 |
容量中和技術を用いた60 GHz帯CMOSシングルバランスドアップコンバージョンミキサ
◎佐原健太・山木 夏・高野恭弥・楳田洋太郎(東京理科大) |
This work presents a CMOS Image Sensor embedded with Binary Convolutional Neural Network circuits inside every image pixel. Using short-distance mixed-signal computing, this work can save 3500x prediction energy compared to conventional GPU on handwritten digit image recognition.
準ミリ波帯を超える集積回路の設計性を向上するためには電磁界解析の精度を高める必要がある.先行研究ではオンチップ・アンテナやコプレーナ線路において,シリコン基板表面の導電層を考慮した電磁界解析が良好な結果を示している.本研究ではグランド壁付きオンチップ・スパイラルインダクタを用いて,シリコン基板表面の導電層を考慮した電磁界解析結果と測定結果の比較を行った.導電層の考慮により反射係数の相対誤差が最大34%改善した.一方Q値は導電層の有無に関わらず電磁界解析結果が測定結果よりも大きい値となった.
300GHz帯CMOS無線通信機の中間周波数帯(IF帯)としてD帯(110 – 170 GHz)の利用が検討されているが,単相IF信号と差動IF信号を変換するために小型でかつ広帯域なバランが必要となっている.そこで我々は,高周波数では小型化が可能でかつ広帯域な特性を有するマーチャントバランに着目し,電磁界解析を用いて構造の検討を行った.40 nm CMOSプロセスを用いて設計し,動作帯域の中心周波数は135 GHz,目標帯域は40 GHzとした.また,差動信号の振幅差は1 dB以内,位相差は180±5度以内として結合方法及び線路幅を変化せて構造を検討した結果,線路幅が2μmかつ縦方向結合型のものが最も広帯域かつ差動バランス特性が良いという結果が得られた.
RF送受信機においては搬送波信号を得るために発振器が必要不可欠である.しかし,0.18 µm CMOSプロセスにおいてはRFモデルが20 GHzまでしか対応していないため,20 GHzで動作する発振器の設計には適していなかった.そこで,50GHzまで対応したnMOSFETのコンパクトモデルを作製し,このモデルの精度を検証し,これを用いて20 GHzの発振器を回路シミュレータを用いて設計した.その結果,20 GHz対応モデルよりも50 GHz対応モデルの方がSパラメータが測定値のものにより一致していることが確認でき,発振周波数が20.1 GHzで,出力電力が–1.12 dBmの発振器を作成することができた.以上より,提供モデルでは設計に適さなかった20 GHzの周波数で発振器を設計することができた.
60 GHz帯無線通信機においてアップコンバージョンミキサは搬送波を変調する重要な回路であり,性能向上が求められている.しかし、高周波であるほどMOSFETのゲート・ドレイン間の寄生容量の影響を無視ができなくなり、回路性能の悪化を招く.そこで、本研究ではシングルバランスドミキサの局部発振信号入力用差動MOSFETにクロスカップルキャパシタを挿入することにより、この影響をキャンセルし、ミキサの性能指標である変換利得、動作帯域、1dB圧縮点が改善することをシミュレーションを用いて示す.
C-13. 有機エレクトロニクス
3月17日 9:30〜11:30 総合科学部 K棟3F K308講義室 座長 田口 大(東工大)
C-13-1 |
光第2次高調波発生(SHG)法による摩擦発電層(PMDA-ODA)の双極子と電荷の面内角度依存性の測定
○田口 大・間中孝彰・岩本光正(東工大) |
C-13-2 |
印加電圧の違いによる電気泳動堆積法を用いた導電性高分子製膜の考察
◎難波克好・多田和也(兵庫県立大) |
C-13-3 |
導電性高分子:C60複合体電気泳動堆積膜の組成比の推定
◎藤本乃哉・多田和也(兵庫県立大) |
環境にやさしいトライボ発電の研究開発が加速している。関連するIEC標準も本年7月に公開された[1]。しかし、摩擦電気の発生と高分子のミクロ起源(電荷移動と双極子)の関係は十分に明確化されているとはいえない。我々は、電界誘起光第2次高調波発生(SHG)測定の波長選択性により、トライボ発電層のミクロ起源を特定できると考えて研究を進めてきた[2,3]。これまでに、PMDA-ODAポリイミドの摩擦電気の電荷変位と双極子配向を、プローブ光波長を変えることでSHG法で選択的に可視化することに成功した。さらに電荷変位と双極子配向の面内角度依存性を測定したので結果を報告する。
導電性高分子(ポリマー)は有機ELや有機薄膜太陽電池など様々な用途で用いられている。電気泳動堆積法は、導電性高分子と分散媒で調製した懸濁液に電圧を印加することで膜を得る方法で、ナノ構造化や材料の利用効率の改善を図ることが出来る。本研究では、ポリマー(POT-co-DOT)と分散媒(トルエン:アセトニトリル=1:1)で懸濁液を調製し、電圧1-200 Vで変化させて製膜した結果の考察を行った。80 V以上で製膜すると均一な膜が得られるが、15 Vより低い電圧では凝集・沈降が製膜中に起き始めることが確認出来た。電圧によって生じる膜の違いは、懸濁液内で起こるドリフト移動と電気二重層の薄化という二つの現象の競合に起因していると考えられる。
製膜法の一つである電気泳動堆積法は、材料の利用効率が良く、希薄な溶液から製膜できるという利点を有する。導電性高分子(ポリマー):C60複合体膜における電気泳動堆積法の適用は既に報告されているが、本研究ではこれまで議論されてこなかった、複合体堆積膜中のポリマーおよびC60の組成比の推定を試みた。
製膜は再沈法により調製した懸濁液を用い、電気泳動堆積法により行った。製膜後の残渣液はポリマー、C60の溶液であると考え、組成比の推定には残渣液の光吸収スペクトルおよびポリマー、C60をすべて溶解すると考えられる低濃度溶液の光吸収スペクトルを用いた。懸濁液濃度100に対して複合体堆積膜の組成比は、ポリマー:C60=84:67と推定できた。
休 憩(10:30 再開)
C-13-4 |
限定液滴法を用いたプラズモニックチップの作製と表面プラズモン複合励起特性の評価
○馬場 暁(新潟大)・ジャイケンディー ウィサンサヤ・ノートチャナット スペーラ(チュラロンコン大)・ラートバチラパイボーン チュティパーン・新保一成・加藤景三(新潟大)・エクガシット サノン(チュラロンコン大) |
C-13-5 |
塗布法により作製した誘電体ミラーを内包した絶縁型交流駆動有機EL素子の過渡応答特性
○梶井博武・唐木達矢・森藤正人・近藤正彦(阪大) |
C-13-6 |
ナノバッファー層と多層構造を有する高分子系逆型有機発光ダイオードの作製とその電気特性
○伊東栄次(信州大) |
C-13-7 |
有機EL素子に利用されるカルバゾール系誘導体薄膜の電気伝導特性
○森 竜雄・青山 悟・佐藤 涼・市川良晴・清家善之(愛知工業大) |
本発表では、NOA61を用いてグレーティング形状を有する小型プリズムの作製を行い、全反射領域でのエバネッセント波による、プリズムカップリング表面プラズモン励起に加えて、グレーティングカップリング表面プラズモン励起の効果についても検討を行った。
本研究では,絶縁型真性ELの発展形として,電気的なキャリア蓄積制御による誘電体としての機能と光学的な屈折率制御による光共振器構造を兼ね備えたと塗布により作製した無機・有機ハイブリッド誘電体ミラーを内包した絶縁型交流駆動有機ELの過渡応答特性に関して検討を行った.素子からの発光は,交流電圧の周波数の増加に伴い発光強度も増加し、ディスプレイ応用として十分な輝度を示した.
塗布プロセスをベースに作製したナノバッファー層および高分子薄膜の多層構造を有する逆型有機発光ダイオードの作製とその電気特性について発表する。逆型構造は耐久性向上に優位性があるがITOから発光材料への電子注入障壁が大きく電子注入層の挿入が不可欠となる。特に青色発光材料はLUMO準位が高くさらなる工夫が必要となることからナノバッファー層の製膜とその特性について検討を行った。また、効率改善に有効な有機層の積層化のため溶媒を変えたり転写法による正孔輸送層の積層化と正孔注入層の検討を行い、低電圧動作に向けた検討や電気特性を調べた。
近年活発な研究が行われているTADF有機EL素子では、カルバゾール誘導体をキャリア輸送層やホスト材料に広く用いられている。本研究では、正孔阻止層としてmCPやホスト材料としてmCBPの積層膜などの特性を評価した。
C-14. マイクロ波・ミリ波フォトニクス
3月17日 9:30〜12:00 工学部 講義棟1F 103講義室 座長 相葉孝充(矢崎総業)
C-14-1 |
フォトミキサ並列化によるテラヘルツ波強度増大
◎松尾祐輝・車 明・金谷晴一・加藤和利(九大) |
C-14-2 |
300 GHz帯ホモダイン検波におけるアンド動作の検証
◎綾野史也・十市敬太・易 利(阪大)・伊藤 弘(北里大)・加藤和利(九大)・永妻忠夫(阪大) |
C-14-3 |
共鳴トンネルダイオード受信器を用いた直交振幅変調による60 Gbit/s無線通信
◎山本拓実・西上直毅(阪大)・西田陽亮(ローム)・冨士田誠之・永妻忠夫(阪大) |
C-14-4 |
PAM-4変調による300GHz帯テラヘルツ無線通信
◎大城敦司・西上直毅・山本拓実・Julian Webber・冨士田誠之・永妻忠夫(阪大) |
C-14-5 |
テラヘルツ帯域用薄レンズの設計
◎宮澤啓汰・王 赫毅(早大)・菅野敦史・齋藤伸吾・稲垣惠三(NICT)・川西哲也(早大) |
ミリ波、マイクロ波よりも高周波のテラヘルツ波(100 GHz ~ 10 THz)は、従来よりも大容量の無線伝送が行える搬送波として期待されている。我々は、光周波数差がテラヘルツ領域となるよう設定した二光波を、超高速光電変換器である単一走行キャリアフォトダイオード(UTC-PD)に入射しテラヘルツ波を生成する、フォトミキシング技術に取り組んでいる。フォトミキシング技術に限らず一般に生成される電磁波は周波数の2~4乗に反比例して強度が低下する。そのため高周波であるテラヘルツ波を無線通信用の搬送波として用いるには出力強度の増大が必要不可欠である。これを受けて、1つのアンテナに接続するUTC-PD の数を増やすことでアンテナ1つ当たりの300 GHzにおけるテラヘルツ波強度の増大を行ったので報告する。
近年, 無線の高速化に対するニーズを背景に, 100 GHz以上の電波(ミリ波・テラヘルツ波)を用いた研究開発が活発化している. 一般に, 電波の指向性は周波数とともに高くなることから, 高速化に加えて, よりセキュアな通信としても期待されている. そこで今回我々は, 300 GHz帯受信器を用いて, ホモダイン検波方式における二つの信号のアンド動作の検証実験を行った.
近年,テラヘルツ無線通信が注目を集めている.我々は,送受信デバイスの小型集積化に向けて,共鳴トンネルダイオード(RTD: Resonant Tunneling Diode)に着目している.これまでにRTDを用い,振幅変調方式にて30 Gbit/sのエラーフリー通信を達成してきた.しかし,アンテナを含むRTD素子・実装回路の周波数帯域の制限により,振幅変調方式での高速化には限界がある.そのため,さらなる高速化に向けて周波数利用効率の高い直交振幅変調(QAM: Quadrature Amplitude Modulation)の導入を検討しており,これまでに24 Gbit/sにて前方誤り訂正 (FEC: Forward Error Correction)の閾値を下回るビット誤り率の通信結果を報告してきた.今回,高感度なRTD受信器を用いて16 QAMでの60 Gbit/sの通信を行ったので報告する.
2値のオンオフ変調方式が広く用いられている光ファイバ通信において,さらなる高速通信に向けて,4値の振幅情報を有するPulse Amplitude Modulation (PAM)-4に関する規格が制定され,その研究開発が本格化している.一方,光電変換デバイスによって光信号をテラヘルツ波に変換し,シームレスに無線伝送を行う試みがなされているが,PAM-4に関する報告は我々の知る限り無い状況であった.今回,PAM-4方式による 300 GHz帯無線通信実験を行ったので報告する.
近年、テラヘルツイメージングをはじめとするテラヘルツ波を用いたシステムが通信や医療などの分野への応用に向けて研究されている。それらのシステムの多くはテラヘルツ波を集光するための光学系が用いられており、その性能の向上は常に課題視されている。本稿ではポリエチレンやゲルマニウム等を用いたテラヘルツ帯域用レンズをさまざまな中心厚の条件で設計し、小型化・高透過性・高集光能力の観点から考察することで、現在一般に利用されていない低透過率の材質を用いたテラヘルツ帯域用レンズに利用可能性があることを確認した。
休 憩(11:00 再開) 座長 易 利(阪大)
C-14-6 |
5G無線のための直交二偏波同時受信アンテナ電極電気光学変調器
○横橋裕斗(三重大)・松川沙弥果(AIST)・佐藤正博・鳥羽良和(精工技研)・黒川 悟(AIST)・村田博司(三重大) |
C-14-7 |
有機EOポリマー導波路とパッチアンテナアレイを用いたWバンド帯光変調器の試作
○梶 貴博・諸橋 功・富成征弘・小川 洋・関根徳彦・山田俊樹・大友 明(NICT) |
C-14-8 |
マルチ波長CBCによる光フェーズドアレイを用いた光空間通信
◎竹本裕太・原口英介・安藤俊行(三菱電機) |
C-14-9 |
SiN導波路光フェーズドアレー高効率化に関する検討
◎西村政輝(早大)・梅沢俊匡(NICT)・Wittawat Yamwong・Nipapan Klunngien(NECTEC)・山本直克(NICT)・川西哲也(早大) |
近年,ミリ波を用いた第5世代(5G)無線通信システムが注目されている.ミリ波は自由空間伝搬やケーブル伝搬において伝搬損失が大きいため,無線信号を光信号に変換して伝搬するRadio Over Fiber(RoF)技術が有用である.これまで我々は無線信号を直接光信号に変換するアンテナ電極電気光学変調器を用いた無線データリンクの開発を進めてきた.アンテナ電極光変調器はパッシブ無線-光信号変換素子であり,また,低擾乱な光電界センサ・プローブとしても有用である.それゆえ,5G無線向けのアンテナ精密測定への応用も期待できる.
今回,新たに直交二偏波を同時に受信可能なアンテナ電極電気光学変調器を提案し,その試作実験を行ったので報告する.
Beyond 5G・6G無線通信システムにおいては、テラヘルツ波(0.1-10 THz)の信号波形を、光ファイバーを用いて伝送するテラヘルツ光ファイバー無線の技術が重要になると予想される。本研究では、Wバンド帯(75-110 GHz)の電磁波照射による光の直接変調を実現するデバイスの開発を目指し、パッチアンテナアレイを有する有機電気光学(EO)ポリマー導波路光変調器を試作した。
衛星における空間光通信は,観測衛星の大容量データ伝送やハイスループット衛星(HTS)による需要増加に伴い近年注目されている.HTSにおいては,大容量化に対応するためにRFだけでなく光通信を用いたフィーダリンクの検討も進められており,大気による影響が懸念されている。大気ゆらぎによる光通信へ影響については,高次モードのビームによる伝搬を行うことで軽減することができることがわかっている.高次ビームの生成にあたっては複数の素子光を空間配置し,各素子の相対位相を制御する光フェーズドアレイ技術がある.本報告では,複数波長を用いたアクティブ位相制御型の光フェーズドアレイ構成を用いて5Gbpsの光空間通信の実証結果を報告する.
現在、光通信の分野ではSiフォトニクスが注目されており、デバイスの小型化・低コスト化・量産性に優れている。Siフォトニクスデバイスは主にCMOSプロセスをベースに設計・作製が行われており、SiN膜は主にCMOSデバイス保護のためのパッシベーション膜として用いられるため、ポーラスなSiO2膜に比べ緻密な膜質が要求される。そこで、熱CVD法が用いられるが大きな膜応力のため厚膜化が困難である。今回我々は、熱CVD法に代わりスパッタ法を用いて厚膜化における応力緩和とその導波路損失についての検討を行う。また、厚膜化かつ狭ピッチ化光フェーズドアレーにおける最大偏向角についての検討も行ったので併せて報告する。
3月17日 13:30〜16:15 工学部 講義棟1F 103講義室 座長 榎原 晃(兵庫県立大)
C-14-10 |
分散マネージメントファイバによる光パルス圧縮を用いた300 GHzビート出力の増大 − FOMによる特性評価 −
◎久富浩平・小田圭佑・片桐亮吾・鈴木将之・戸田裕之(同志社大) |
C-14-11 |
マッハツェンダ型光スイッチを用いた2波長光ビート信号合成と位相制御
◎吹金原俊平・辻 健一郎・上原知幸・伊藤翔太(防衛大) |
C-14-12 |
位相変調高次サイドバンドビートモニタによるミリ波帯光オフセットロッキング法
◎西岡隼也・秋山智浩・竹本裕太・鈴木巨生・安藤俊行(三菱電機) |
C-14-13 |
ランダムウォーク変調による線幅可変光源に関する基礎検討
○望月 純(早大)・稲垣惠三・菅野敦史(NICT)・川西哲也(早大) |
C-14-14 |
ショートスタブを用いたミリ波帯低損失CMOSパッド
◎スミス 力紀・李 尚曄・吉田 毅・藤島 実(広島大) |
近年我々は,光ビート法による高周波(RF)発生において,光2トーンなどの繰り返し光パルスを,正常分散ファイバと異常分散ファイバを平均分散が 0 となるように接続した分散マネージメント光ファイバ(DMF)に伝搬させてパルス圧縮を行い,RF出力の増大を図る手法について検討を行っている.今回,300 GHzビート出力増大効果の評価に性能指数(FOM)を導入し,数値シミュレーションによって高非線形ファイバ(HNLF)で構成された単一ファイバ,2,4セクションDMFの3種の圧縮用光ファイバの特性を評価したので報告する.結果,3種の中では単一ファイバが最もFOMが大きくなる.また,4セクションDMFとすることで,2セクションと比べてFOMが改善した.
ミリ波帯無線通信は伝送損失が大きく高速変調が困難という課題があり、光通信技術を併用した効率的なミリ波帯信号の伝送・制御(光ファイバ無線技術)が期待されている。本報告では、マッハツェンダ型光スイッチを用いた2波長ビート信号の合成と伝送路の波長分散を利用したビート信号の連続的な位相制御手法を提案し、その動作を検証した。提案手法を用いた実験により、生成された合成ビート信号の位相は、マッハツェンダ型光スイッチに入射した2光波それぞれから生成されるビート信号位相の間で連続的に変化し、2光波のパワー比による位相制御が可能なことを確認した。
通信衛星やTHz波通信などのアプリケーションにおいて,広帯域な周波数変換回路が望まれている.光回路によりミリ波~THz波を中間周波数にダウンコンバート,あるいはミリ波~THz波を生成する光周波数変換回路は,広帯域性に優れた小型な周波数変換回路が期待できる.光周波数変換回路の実現のために,2トーン光の差周波信号を安定化する光オフセットロッキング技術が必要となる.本報告では,被制御光源を位相変調し高次のサイドバンドを発生させ,当該高次サイドバンドと基準光源のビート信号を検波することで,ミリ波帯以上で広帯域なオフセットロッキングを実現する構成を提案する.
デジタルコヒーレント通信やコヒーレントLiDAR(Light Detection and Ranging)などのアプリケーションには狭線幅のレーザが必要である。しかしながら一般的に狭線幅のレーザは高価である。したがって過剰品質を避けるためには要求されるレーザ線幅を考慮する必要がある。その際、レーザをその都度変えて試験や評価をするとレーザの設置コストや試験時間の増加につながるため、線幅可変光源を提案した。狭線幅レーザにランダムウォークに従う位相雑音を印加することで、40kHzから5MHzまで連続的に線幅を変えることができた。
CMOS集積回路において外部回路に接続するためのパッドの低損失化についての検討を行った。パッドは寄生容量により周波数が高くなると損失が増え、特にミリ波帯ではその損失が顕著に表れるため寄生容量を抑えることが重要となる。そこで今回はスタブを取り付け、寄生容量を誘導性回路でキャンセルすることにより損失を抑制することを検討した。検討するパッドの種類としては、1本の信号線用GSG型パッドと1対の差動信号用GSGSG型パッドの2種類である。
休 憩(15:00 再開) 座長 山田崇史(NTT)
C-14-15 |
FM-CWリニアセルレーダにおける送信時間制御によるノイズ軽減
◎金谷智彦・川西哲也(早大) |
C-14-16 |
RoFネットワーク制御によるリニアセルレーダにおける干渉抑圧
◎三浦哲哉・奥田和徳(早大)・菅野敦史・Tien Dat Pham(NICT)・柴垣信彦・加島謙一(日立国際電気)・川西哲也(早大) |
C-14-17 |
結合伝送路を用いた28GHz帯A-RoMMF向けRF光送信回路の検討
○田中 聡・相葉孝充・安田裕紀・鈴木敏訓・若林知敬(矢崎総業) |
C-14-18 |
高温時におけるA-RoF用高利得アンプモジュールの伝送特性評価
○鈴木敏訓・相葉孝充・安田裕紀・田中 聡・若林知敬(矢崎総業) |
C-14-19 |
FRPM管壁マイクロ波誘電体導波路を用いたデータ伝送実験
◎松川沙弥果(産総研)・吉田光佑(三重大)・奥田忠弘・硲 昌也(クリモト)・黒川 悟(産総研)・村田博司(三重大) |
滑走路上の異物を電子的に検知するシステムの需要の高まりにより、FM-CWリニアセルレーダシステムの開発が行われている。リニアセルレーダは従来のミリ波帯レーダシステムより構成が簡単であり、複数のレーダ送受信機を用いることで高分解能と低コスト化が期待できる。この方式で用いる三角波を使用したFM-CWレーダでは送受信信号の周波数差が0になるタイミングがあり、IF帯においてビート周波数以下の帯域に不要な信号が発生する。そのため飛行機の手前に異物があった場合、異物を示す信号が飛行機による信号に埋もれる可能性がある。本論文では送信信号に送信を停止する区間を設けることで低周波域の不要な信号を削減する方法について論じる。
滑走路上の異物を探知するシステムとしてFMCWリニアセルレーダが開発され、成田空港にて実証実験が行われている。リニアセルレーダはRoF技術によってFM信号を複数のレーダヘッドに伝送する方式である。各レーダヘッドは協調制御により、送信波が直接他のレーダヘッドに干渉することはないが、送信波が飛行機等によって反射された場合、所望波よりも強い干渉波として他のレーダヘッドに受信される場合がある。本稿ではクアラルンプール国際空港にて大型航空機を用いて干渉回避実験を行った結果を報告する。RoF信号を伝える光ネットワーク上の伝送遅延を変化させ取得した複数のレーダ像に対して簡単な信号処理を施すことで、偽像抑圧が実現する。
近年、IoT(Internet of Things)の普及により、無線アクセスシステムの伝送容量の増大が予想される.また伝送容量の増大に伴い搬送波周波数にSHF帯の使用が検討されており、マルチモード光ファイバ及びVCSELを用いたアナログRoMMF(Analog-Radio over Multi Mode Fiber)が有効な手段の一つとして期待されている.我々はVCSEL直接変調による28GHz帯RF光送信器用の駆動回路について、結合伝送路を用いることによる簡素化を進めているが、今回、結合伝送路部の小型化の検討に関し報告する.
高SHF帯を用いた無線システムの不感地帯に対し,比較的短い伝送距離ではマルチモード光ファイバを用いたアナログ光ファイバ無線(A-RoF)による中継伝送が考えられる.一方,A-RoFではE/O,O/Eの変換効率に起因する信号電力の減衰を伴うことから,A-RoFのリンク利得向上に向け,複数のアンプ素子を1枚の基板上に多段接続したアンプの利得および放熱を考慮したモジュールの高温化での伝送特性評価を行った.
近年,有線通信用の新たな伝送媒体として地中埋設パイプラインを活用したデータ伝送技術が研究されている.地中に埋設されたFiberglass Reinforced Plastics Mortar (FRPM) パイプラインにおいては, FRPM(非磁性)のマイクロ波(~10 GHz)に対する誘電率が周囲の埋設土の誘電率よりも高い.それゆえ,パイプが中空の場合には,円筒状のマイクロ波誘電体導波路と見なせる.これまでに,このマイクロ波誘電体導波路を用いて2-9 GHzにおけるTE導波モードの伝搬を実証している.今回,このマイクロ波導波モードを用いたデータ伝送実験を行い,10 µW 程度の送信電力で明瞭なコンスタレーションを得た.分散特性やこれまでの評価実験結果を勘案すると10 Mbps程度のデータ伝送が十分可能と考えられる.
C-15. エレクトロニクスシミュレーション
3月18日 9:30〜12:15 総合科学部 K棟3F K306講義室 座長 須賀良介(青学大)
C-15-1 |
高速逆ラプラス変換法による電磁界分布の参照解― FDTD法の精度検証 ―
◎増田宗一郎・岸本誠也・大貫進一郎(日大) |
C-15-2 |
熱伝導解析における時分割並列計算の基礎検討
◎西野将平・岸本誠也・大貫進一郎(日大) |
C-15-3 |
磁性剛体球の回転軸制御に向けた基礎検討
◎東 貴範・岸本誠也・大貫進一郎(日大) |
C-15-4 |
FDFD法によるプラズモニック導波路の解析 ~グレーティング構造部の金薄膜変化による結合損失~
◎浜島 功・呉 迪・岸本誠也・井上修一郎・大貫進一郎(日大) |
C-15-5 |
表面プラズモンを用いた磁気センサ開発に向けた光学応答
◎田丸幸寛・呉 迪・岸本誠也・芦澤好人・中川活二・大貫進一郎(日大) |
近年,マイクロ波・テラヘルツ・光などの様々なデバイス設計及び開発を行うために電磁界時間領域解析法が広く用いられる.これらの信頼性検証はMie理論との比較が未だに主流である.著者らは計算精度を制御でき,ある任意の時刻での界分布のみを選択し簡易的に求めることが出来る参照解の導出手法を提案する.本報告では提案手法の有用性を示し,現在主流の時間領域有限差分(FDTD: Finite-Difference Time-Domain)法により求めた界分布と参照解を比較し,FDTD法の精度を検証する.
近年,電子機器の小型化に伴い温度上昇による寿命低下や故障など様々な問題が生じている.これらの問題を防ぐために熱設計が盛んに行われ,時間領域有限差分法(Time Domain Finite-Difference Method: TD-FDM) は,熱の過渡応答を得るのに有用な解析手法である.しかし,陽的なTD-FDMの時間刻み幅は,解析領域の空間刻み幅により決定される数値安定条件を満たす必要があり,計算の高速化が必要である.
本報告では,熱解析の高速化に向けてFILT(Fast Inverse Laplace Transform)法とTD-FDMを併用した時分割並列計算手法の提案を行う.
モータの回転子や磁気車輪では,効率の良い回転を実現するために回転軸の制御が重要である.本報告では,磁性を有する剛体球の回転軸制御に向けた基礎検討を行う.
近年,集積回路の高速化及び省電力化を目指して光導波路の新たなデバイス設計が必要とされる[1].そのデバイスとして長距離に光を伝搬するプラズモニック導波路が注目されている.また著者らはプラズモンを励起するために単純な構造で作成が容易であるグレーティング構造に着目した.
本報告では,周波数領域有限差分法(Finite-Difference Frequency-Domain)[2]を用いて,グレーティング構造を最適化し,長距離伝搬プラズモンの損失低減を検討する.
近年,表面プラズモンを用いた磁気センサが注目を集めている. 磁性材料は外部磁場の影響により誘電率の変化が生じる.本文では,磁性材料であるコバルトに磁場印加を仮定し,その誘電率を変化させる.材料構造に対する反射率の変化量を比較し,磁気センサ開発に向けた特性評価を行う.
休 憩(11:00 再開) 座長 安井 崇(北見工大)
C-15-6 |
LOD-FDTD 法によるTM透過THz導波路型偏光子の解析
柴山 純・◎五味頌子・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-15-7 |
テラヘルツ帯におけるInSbコート誘電体球配列のFDTD解析
柴山 純・◎黒田匠真・高橋澄玲・中野 純・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-15-8 |
複数の参照界を用いたFDTD法によるプラズモニックグレーティングの広帯域解析
◎鈴木崇浩・柴山 純・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-15-9 |
誘電体層を付加したTHz帯におけるKretschmann型SPRセンサ
◎光武功太・柴山 純・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-15-10 |
InSbを用いたクロスダイポール型THzセンサの性能指数の改善
◎中野 純・柴山 純・山内潤治・中野久松(法政大) |
計算時間の短縮を目的に,LOD-FDTD 法を用いてTHz 帯におけるTM 透過導波路型偏光子を解析する.CFLN = 10 を選べば,精度を維持しつつ計算時間を陽的FDTD 法の約38 %に短縮できることを明示する.
筆者らは,テラヘルツ(THz)帯においてInSbでコートされた誘電体柱配列を解析し,透過特性を評価した.しかしながら,これまでは2次元構造のみの検討で,3次元構造における具体的な検討には至っていなかった.本稿では,InSbでコートされた誘電体球配列を解析し,透過特性の評価を行う.ディップ周波数における界分布の評価を行い,入射界が基板内の界に結合する様子を明らかにする.
本稿では,参照界に複数の固有モード界を用いたFDTD法により,誘電体-金属-誘電体(IMI)導波路グレーティングを解析する.計算精度の基準となる連続波解析と近い結果が,広帯域に渡って得られることを示す.
筆者らはKretschmann配置を応用したTHz帯におけるSPR導波路センサを検討してきた. 注意すべきは, 検討したセンサの動作周波数が2.0 THz以上にあり, 発振ピークが1.0 THz付近にある光伝導アンテナを使った場合は動作周波数に差異が生じる点である. 本稿ではTHz帯におけるKretschmann型SPRセンサに誘電体層を付加し, 動作周波数の低下を試みる.
InSbを用いたクロスダイポール型THzセンサを周期境界条件を適用したFDTD法を用いて解析する.評価法として性能指数(FoM)を用い,クロスダイポールの厚さを変化させた場合のセンシング特性を議論する.厚さを薄くするにつれ,透過スペクトルが狭帯域になることを明らかにする.アルミニウムを用いたセンサと比較し,InSbを用いれば高いFoMの得られることを示す.
3月18日 13:30〜17:30 総合科学部 K棟3F K306講義室 座長 辻 寧英(室工大)
C-15-11 |
埋め込みSi細線導波路とスポットサイズ変換器の結合部のFDTD解析
山内潤治・◎浴 一輝・小島功義・中野久松(法政大) |
C-15-12 |
基板付きL字Si細線導波路型偏波変換器の広帯域化
中川雄斗・◎小竹翔太・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-15-13 |
コアの両側に半導体層を付加したTE透過/TM除去THz導波路型偏光子の解析
◎髙橋澄玲・柴山 純・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-15-14 |
テラヘルツ帯におけるSPR導波路型センサの特性改善
柴山 純・◎田中宏季・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-15-15 |
中赤外光集積回路用カルコゲナイドガラス光導波路の導波特性
○安井 崇・杉坂純一郎・平山浩一(北見工大) |
筆者らは基板上に構成されたスポットサイズ変換器を利用し, 光波を垂直結合によりSiコアを空気界面からわずかに埋め込んだ導波路に導く構造を考案した. しかしながら, TEモードに議論を限定し, フルベクトルBPMでの解析によるものであった. 本稿では, TMモードの議論を含め, 反射波を考慮できるFDTD法を用いて, BPMによる解析結果の妥当性と限界を明らかにする.
クラッド内に埋め込んだSi細線導波路の一部を欠損させたL字型偏波変換器が検討されている.本稿では,基板上にコアを配置した構造で低損失かつ,消光比特性が双峰性となり得ることを明らかにする.解析にはYee格子に基づく虚軸ビーム伝搬法とFDTD法を使用する.
コアの両側に半導体層としてInSb及びInAsを付加したTHz導波路型偏光子を検討し, 周波数特性及び温度特性を議論する. 加えて, 片側にInAs層を付加した従来の偏光子の結果と比較する. 半導体層にInAsを選択した場合には温度が変化しても安定して動作し, 従来の偏光子と比べて短い偏光子長で同等の性能が得られることを示す.
筆者らはテラヘルツ帯における導波路型表面プラズモン共鳴センサを提案してきた.さらに入出力部のコア幅をセンシング部より狭くすることで,出力パワーの周波数特性が改善されることを示した.しかしながら,試料の温度変化によって周波数特性の悪化する問題があった.本稿では,入出力部のコア幅をセンシング部のコア幅より狭くしたセンサの再設計を行う.入出力部のコア幅とセンシング長を検討し,温度280~320 Kの範囲において周波数特性が改善されることを明らかにする.
天文学の分野では次世代地上超大型望遠鏡 (ELT: Extremely Large Telescope)の建設が進められている.ELTのような望遠鏡では,集めた光に対して大気の影響を補償するより高度な補償光学の使用が検討されている.また,その実現に向けて中赤外域で動作する光集積回路の使用に関心が寄せられており,中赤外光用カルコゲナイドガラス導波路が作製されている.そこでは単一モード動作が求められているが,単一モード動作条件の理論的評価については筆者らの知る限りなされていない.本報告では,カルゴゲナイドガラス導波路に対して中赤外域での導波モード解析を行い,その単一モード動作条件について理論的検討を行った結果について報告する.
休 憩(15:00 再開) 座長 鈴木敬久(首都大東京)
C-15-16 |
ミリ波導波管スロットアレーアンテナ用誘電体カバーのトポロジー最適化
◎滝田和真・田中将樹・伊藤桂一(秋田高専) |
C-15-17 |
THz液晶デバイスのトポロジー最適化に関する基礎的検討
◎佐藤裕汰・田中将樹・伊藤桂一(秋田高専)・佐々木友之(長岡技科大) |
C-15-18 |
関数展開法を用いた光デバイスの多目的最適設計に関する検討
◎富安柾斗・辻 寧英(室工大) |
C-15-19 |
散乱演算子に基づく双方向BPMを活用した周期構造を有する光導波路素子の構造最適設計
◎井口亜希人・辻 寧英(室工大) |
導波管スロットアレーアンテナは高周波でも減衰が少なく,堅牢性が高いことが知られており,自動車などの障害物検知に用いられる。同アンテナを雨などから保護するために誘電体カバーが必要であるが,従来型の板状カバーを装荷すると利得の低下が避けられない。これに対して,著者らはこれまで板状カバーに半球を追加した誘電体カバーを提案し,アンテナを保護しながら利得改善が可能であることを試作と測定により示した。本研究ではアンテナを保護しつつ,半球付き誘電体カバーよりも利得改善が可能な誘電体カバーの開発を目的とする。76GHz帯8スロット導波管スロットアレーアンテナを対象にトポロジー最適化による形状設計を試みた。
テラヘルツ波を制御するための能動デバイスの開発はテラヘルツ波の応用を広げるために急務になっている。特にサブ波長の単位構造を無限に集結させて,負屈折率等の多くの特性を示すメタマテリアルと,自己組織的な分子配向によって光学異方性を示す液晶(LC)を組み合わせたメタマテリアルの有用性が報告されている。本研究ではLCを組み込んだメタマテリアルの基礎的検討としてFDTD法を用いてLC/金属メッシュ構造の単位構造(クロススロット型)の特性について明らかにすることを目的とする。次に,さらなる高性能化を目指してトポロジー最適化を用いた単位構造の形状設計を行い,設計性能とその有用性について検討した。
高性能な光デバイスの開発のため,自動最適設計法への関心が高まり,従来考えられなかったような全く新しい光デバイスを創出できるトポロジー自動最適設計に関する研究が近年盛んに行われている.トポロジー最適設計では自由度の高い設計が可能である一方,最適化によって得られる光デバイスの構造が複雑になる場合もあり,作成が困難となる可能性がある.そのため構造の単純化が必要となるが,一般に出力と構造の単純化はトレードオフである場合も多く,2 つの条件がバランスした構造を得ることが求められる.そのため本検討では,多目的最適化を用いた光デバイスのパレート最適設計について検討を行っている.
大きな導波路不連続を含む構造を解析する手法として,双方向ビーム伝搬法(Bi-BPM)が提案されており,近年,精度・計算効率ともに改良された手法の開発が進んでいる.Bi-BPMは様々な定式化が提案されており,特に散乱演算子に基づく方法(SO-Bi-BPM)は安定性の面で有利であり,周期構造を含む場合は効率良く計算可能である.筆者らはこれまでの報告にて,SO-Bi-BPMを光導波路素子の構造最適化に活用することを考え,特に,感度計算の計算効率化について検討を行ってきた.本稿では周期構造を有する光導波路素子の構造最適設計問題において,提案感度計算方法が有効であるか確認している.
休 憩(16:15 再開) 座長 伊藤桂一(秋田高専)
C-15-20 |
モード結合理論と機械学習を用いた方向性結合型3次元光デバイスの最適設計
◎△工藤滉司・辻 寧英(室工大) |
C-15-21 |
ニューラルネットワークを用いたアクティブゲートドライバの最適スイッチングパターン推定のための予備的検討
◎安田理夢・鈴木敬久・和田圭二(首都大東京) |
C-15-22 |
集束型誘電体レンズアンテナの帯状ゾーニングによる位相改善効果の実験的評価
◎橋本真輝・黒田哲史・須賀良介(青学大)・毛塚 敦(電子航法研)・橋本 修(青学大) |
C-15-23 |
寄生素子を用いた円偏波ホーンアンテナにおける素子からの再放射電界に関する検討
◎中澤右京・須賀良介(青学大)・上野伴希(オフィスウワノ技術コンサルティング)・橋本 修(青学大) |
C-15-24 |
TDRによるアスファルト舗装下の誘電率と導電率の定点測定
○園田 潤(仙台高専)・國岡達也・高橋 信・細川寿樹(ミライト) |
近年,シミュレーション技術の発展により,計算機を用いた光通信用光デバイスの自動最適設計の効率化に関する研究が盛んに行われている.しかしながら,従来の最適設計では,数値シミュレーションを繰り返す必要があり,特に3次元光デバイスではそのコストが膨大になってしまう.
そこで本研究では,方向性結合型3次元光デバイスの効率的な最適設計のため,ニューラルネットワークとモード結合理論を組み合わせることで数値解析のコストを大幅に低減した自動最適設計法について検討を行っている.伝搬方向に構造が連続的に変化するような方向性結合型3次元光デバイスの設計を考え,いくつかの最適設計例を通して本手法の妥当性を示す.
アクティブゲートドライバを用いた電力変換回路における,パワー半導体のスイッチング性能の向上が報告されている.この制御方法では,最大63レベルの電流値を数十ns間隔で時間的に適切に制御することでオーバーシュート電圧やスイッチング損失,電磁干渉の抑制が期待される.しかし,この制御方法では膨大な組み合わせのスイッチングパターンが存在し,最適なパターンを高速に決定することは困難である.本研究では予備的な検討として,アクティブゲートドライバによる入出力の関係を,ニューラルネットワークを用いて推論する手法を提案する.その結果,入出力の関係を1%以内程度のばらつきで推測することが可能であることを確認した.
集束型誘電体レンズは特定の範囲に高い電界強度の平面波を生成させることができるため,エネルギーの照射や材料定数測定において広く使われている.一般的にレンズと共に用いられるTE11 モード円錐ホーンアンテナの開口面電磁界分布は電界面と磁界面で異なるため,両面で放射波の位相が平坦となる位置は一致しない.これまでに,帯状ゾーニングを施すことで位相差が改善することを電磁界解析により確認している.本稿では,この帯状ゾーニングを施したレンズを試作し,位相改善効果を実験的に評価した.
円偏波アンテナはGPSやレーダなど広い分野に渡って利用されており、数多くのアンテナが提案されている。我々は寄生素子を用いることによるホーンアンテナの円偏波化について検討しており、本研究では本アンテナの設計効率向上に向け、寄生素子の放射電界について検討した。
地中レーダは地中に入射した数百MHz帯の電波の反射波から非破壊に地中を推定する技術であり,近年問題になっている道路空洞やコンクリート劣化など社会インフラ点検に有効である.地中レーダでは反射時間が得られるため,距離や深さを求めるには誘電率が必要になる.一方,建設工事現場で埋設管を破損する事故が古くから問題になっており,アスファルト舗装下の誘電率を把握しておく必要があるが,地中内部を直接測定した例はこれまでなかった.本研究では,実際の埋設現場を忠実に模擬した実験フィールドにおいて,アスファルト舗装下の深さ1 mと2 mの比誘電率と導電率を半年間10分毎に定点測定した結果を示す.
3月20日 10:00〜11:15 総合科学部 K棟3F K306講義室 座長 園田 潤(仙台高専)
C-15-25 |
選択的神経刺激による末梢神経応答のモデル化に関する一検討
◎田中翔大・ゴメスタメス ホセ・和坂俊昭・平田晃正(名工大) |
C-15-26 |
短期暑熱順化を考慮した熱中症搬送人員の予測
◎西村 卓・小寺紗千子(名工大)・江川隆輔(東北大)・平田晃正(名工大) |
C-15-27 |
リードフィールド行列に基づいた体性感覚誘発電位による脳波源推定に関する実験評価
◎森寺峻義・伊藤孝弘・和坂俊昭(名工大)・木田哲夫(愛知県医療療育総合センター)・平田晃正(名工大) |
C-15-28 |
中間周波数帯接触電流による体温度上昇解析
◎村川太希・ディアオ インリィアン(名工大)・上村佳嗣(宇都宮大)・田中由浩・平田晃正(名工大) |
C-15-29 |
時間に依存したシュレーディンガー方程式の近似解析解の精度
○深見昂平・山田徳史(福井大) |
近年, 神経科学の研究分野において末梢神経系を選択的に刺激することに関心が高まっている.刺激方法の一つとして,表皮内電気刺激(IES)がある.IESとは,皮膚に刺した針電極から微弱な電流を流すことで,表皮内の神経を刺激する方法である.そこで本研究では,電磁界解析から得られたIESにおける電位分布に既存の有髄神経モデルを適用することにより,Aδ線維の活動電位を算出する.またIESによる刺激実験から痛覚閾値の計測を行い,既存の神経モデルと実験結果を比較することで妥当性の検討を行う.さらに,Aδ線維のモデル化を行うために,既存の神経モデルの電気的パラメータを調整し,実験結果と比較することでその有効性を検討した.
近年,熱中症による搬送人員数は増加傾向にあり,高齢者の搬送者人員数は全体の約半数を占める.熱中症は,体内における熱バランスの崩れや脱水症状が要因となり発症する.また,当日のみならず過去数日間の暑熱気象条件が影響することや,短期暑熱順化の程度が熱中症のリスク増大の因子となることが報告されている.本研究グループでは,暑熱環境下における体温上昇や発汗量を推定可能な混成熱解析手法を開発し,その解析結果を用いて熱中症搬送人員数予測式を提案してきた.本稿では,さらに汎用性を高めるために,過去数日間の暑熱気象条件と短期暑熱順化を考慮し,高齢者の熱中症搬による搬送人員数を事前に予測することを目的とする.
近年,医療分野において,脳波の利活用に対する関心が高まっている.脳が活動した際,灰白質において微弱電流が生じる.この電気信号に伴い発生した電位を,頭部に貼付した電極により観測する方法をEEGと呼ぶ.EEGは測定装置が簡便であり,広く利用されている.一方で,外部環境によるノイズの影響を受けやすいという問題点がある.本研究グループでは,EEGによる脳波源の推定に関する基礎検討を行ってきた.そこで本稿では,実験から得られた脳波である,体性感覚誘発電位を用いた脳波源推定を行い,有効性を検討する.
電磁界ばく露により異なる電位ポテンシャルを持つ金属に人体が接触するとき,接触電流が体内に流れ,生体影響を引き起こす.接触電流からの防護を目的とし,ICNIRPガイドラインやIEEE規格では,電流の大きさを指標とした参考レベルが設けられている.一方,接触電流により生じる痛覚と人体の神経作用に関する科学的データは少ない.筆者らのグループでは,接触電流評価の安全性評価に先立ち,FDTD法を用いて手部インピーダンスの数値解析を行い,従来用いられてきた人体組織の導電率を用いた解析値では実測値と大きな差があることを確認した.本稿では,導電率の詳細な検討の一つとして,皮膚と脂肪の導電率を変更した際の体温度上昇への影響を解析した.
時間に依存したシュレーディンガー方程式が厳密に解析的に解けるのは、特殊な状況に限られる。近似的であっても解析的に解く方法があれば非常に有用である。筆者らが所属する研究室では、幅の広いガウス型の入射波束が有限レンジのポテンシャルによって散乱される場合について、時間に依存した波動関数の近似解析式(近似波動関数)が見い出されている。この近似波動関数には、形が若干異なる第一表現と第二表現がある。この二つの近似波動関数について、それらが有効であるパラメータ領域を矩形障壁の場合について調べた。その結果、非トンネル領域では全ての空間領域において第二表現を用いるほうがよく、トンネル領域では反射、障壁内領域において第一表現を用いるほうが良いことがわかった。近似波動関数を用いることで、波束のシミュレーションを手軽に行うことができる。
シンポジウムセッション
- この目次は,インターネット講演申込登録のデータを元に作成されています。
- また,講演者を○,◎印で示し, ◎印は本会「学術奨励賞受賞候補者」の資格対象であることを示します。
- ○,◎の後ろに△がある場合はキャリアエクスプローラーの掲載を希望しています。
CS-1. 高速通信ネットワーク時代を共創する磁性技術、ストレージ技術
(磁気記録・情報ストレージ研専)
3月18日 13:30〜16:40 総合科学部 K棟2F K211講義室 座長 吉田周平(近畿大)
CS-1-1 |
(依頼講演50分)単一分子で強誘電的性質を示す単分子誘電体の開発と応用
○西原禎文(広島大) |
CS-1-2 |
(依頼講演)磁性細線メモリにおける記録素子の一体化形成と低電流化の検討
○宮本泰敬・堀 洋祐・遠藤充泰(NHK)・Nam Hai Pham(東工大)・石井紀彦(NHK) |
CS-1-3 |
(依頼講演)磁気テープを利用したオブジェクトストレージシステム
○松村浩司・宇野優子・近藤理貴・渡邊輝江・大石 豊・大木晴信・宮本隆司(富士フイルム) |
ビッグデータ活用やIoT産業の活性化が進む中,大容量ストレージへの需要は日々高まっている。一方で不揮発性メモリの記録密度は,熱揺らぎによる情報記録消失の問題から(超常誘電・超常磁性問題),既に頭打ちの状況にあり,解決の糸口さえ掴めない難題として立ちはだかっている。この様な背景の中,我々は単一分子で強誘電的な振舞いを示す「単分子誘電体(Single-Molecule Electret,SME)」の開発に成功した。この「単分子誘電体」をメモリ素子として応用できれば,既存の情報記録密度を1000倍以上も上回る次世代記録媒体に繋がるものと期待される。
将来の立体映像保存用の超高速ストレージの実現のため、磁壁の高速電流駆動現象を利用した磁性細線メモリの開発を進めている。今回、記録素子を磁性細線に一体化形成した磁性細線メモリ素子を試作した。この試作デバイスにおいて、磁区形成と磁区駆動の一連動作に成功し、本磁性細線メモリの動作について原理検証できたため、その内容について報告する。併せて磁区形成の低電流化を目指して、記録素子構造に関するマイクロマグネティックシミュレーション、および、トポロジカル絶縁体Bi-Sbによるスピンホール効果の適用についても検討を進めたので、その結果についても報告する予定である。
近年, AIやIoTの利用拡大が進んでおりデータ量が指数的に増加している. それらを始めとする大容量データのアーカイブやバックアップに適したストレージシステムを実現するため, オブジェクトを記録再生できるテープフォーマット仕様を定義した. 高容量化が指数的に進んでいる将来の磁気テープにも本フォーマットは適用可能であり, 磁気テープを交換する限りデータを蓄積し続けることができる. また, パックドオブジェクトを利用することで小さなデータを多数記録する時のスループット向上が実現できると考えている.
休 憩(15:25 再開) 座長 松沼 悟(マクセル)
CS-1-4 |
(依頼講演)ワイヤレスデバイスの進化を支えるフェライトシートの開発
○吉田明広・岡野洋司・土井孝紀(戸田工業) |
CS-1-5 |
(依頼講演)トランス結合型透磁率測定装置による超高感度・超広帯域の透磁率測定
○田丸慎吾(産総研) |
CS-1-6 |
超高速移動通信システム5Gを想定した全天周視覚車椅子ロボットの遠隔操作
○Nhat Quang Ma・李 仕剛・小作敏晴・小嵜貴弘(広島市立大) |
スマートフォンやウェアラブル機器のような小型端末には、利便性を高めるためHF帯(13.56MHz)無線通信のRFIDやケーブルレスによる充電を実現するワイヤレス電力伝送のデバイスが積極的に採用されている。磁界を用いた通信や電力伝送では、近接する金属部品の影響によって生じる通信不良や効率悪化を改善するために磁気シールド材料が使用されている。我々はNi-Zn-Cuフェライトの組成・粉末製造・焼結体製造・シート化のコントロール技術により、薄型で高透磁率と低損失特性をもつ軟磁性フェライトシートを開発した。本講演ではその特徴や優位性について述べる。
磁性粉末材料で作られた各種高周波部品は、電子回路において欠かす事が出来ない重要な部品であり、それらがシステム全体の性能を決めている例も多々あるため、その研究開発は極めて重要である。その際磁性粉末材料の、望ましくはその中の粒子単体の透磁率を、高感度、広帯域で測定出来れば、開発にとって極めて有用であることは明白である。我々はこの目的のため、トランス結合型透磁率測定装置(TC-Perm)を開発し、従来を大幅に超える高感度、広帯域を実現した。本講演では、TC-Permの測定原理、校正アルゴリズムおよび達成感度などを、粒子単体の実測データなどを用いて示す。
本研究では、今実用化されている超高速移動通信システム5Gの大容量、低遅延などロボットの遠隔操作に適した特徴を生かした全天周視覚車椅子ロボットの遠隔操作について述べる。具体的には2つの操作方式の初期実験を行った。1つは、離れた場所から、車椅子ロボットに搭載された全天周カメラの映像を確認しながら車椅子ロボットを操作する。もう1つは、車椅子ロボットがまず与えられた目的地と経路に沿って走行し、行き止まりなど問題発生したときに、遠隔地から介入し車椅子ロボットを操作がする。