世界の宇宙開発において民間主導による商用ロケット・衛星の開発が活発化しており，その活動全般をNewSpaceと呼ぶ．民間宇宙開発が可能になった主な理由の一つとして，飛行制御用計算機（アビオニクス）に求められる性能・機能の達成や品質確保にかかるコストが大きく下がり，事業としての採算性を確保できるようになってきたことが挙げられる．近年，車載機器や医療機器など高信頼性が求められる分野で計算機システムが幅広く使われるようになっているが，そこで採用されているプロセッサ等の部品（民生品）や開発手法の宇宙分野への転用（スピンオン）が，上記コストの劇的な低下に結びついている．本稿では民間宇宙ロケット用アビオニクスに対する要求事項と，その実現の基本手法を紹介する．

江戸っ子１号プロジェクトに関わった筆者等が、海洋に存在する350μm以下の微粒子の分析を、その場計測で可能にする観測方法及びガラス球を用いた観測機の実現についての取り組みについて報告する。最初にガラス球を用いて深海7800mで市販の3Dハンディカムで撮影した経緯について記載している。その後、ガラス球を用いた海洋観測機により、350μm以下のスーパーマクロプラスチック（SMPs）のその場計測を可能とする観測機への取り組みについて報告する。

近年，原子力発電所に設置される計測器は放射線耐性の強化が求められている．炭化ケイ素は優れた放射線耐性を示すことから，特に集積回路を実現できる材料として注目されている．一方，これを過酷な放射線環境で使用するためには，デバイスの特性劣化を無視することはできず，これを十分考慮した回路設計が重要となる．本稿では，まず，放射線がシリコン製半導体デバイスへ与える影響について概説した後，炭化ケイ素の持つ優位性について整理する．また，開発を進める炭化ケイ素製集積回路の放射線耐性とそれを用いた回路について，その開発事例を一部紹介する．

人工知能倫理は，人工知能が第3次ブームを迎えて以降，積極的に国内外で議論されてきている。演繹的なモデル化ではなく帰納的なモデル化が行われることで従来とは異なったガバナンスが求められるようになり，また応用範囲も広いことから，そのあるべき姿をめぐって活発な検討が重ねられている。本講演では，これまで見えてきた大きな方向性や課題について扱う。国内外の動向や企業のAI倫理指針などについて解説し，個人的責任／組織的責任／集合的責任の重層化についても触れる。

AI-2 - AI倫理とシステム数理

AI技術は，その発展が目覚ましく，様々な産業への応用が期待されている．特に，組み込みシステムにおいては，自動運転を代表に，安心・安全が求められる機能への適用が進んでいる．一方で，近年の研究から，AIの誤動作を誘発する攻撃や，知的財産となるAIモデル情報・学習に用いたプライバシー情報を解析する攻撃など，AI特有のセキュリティ課題が指摘されている．本発表では，物理的な攻撃にもさらされうる組み込みシステムに焦点を当て，AIセキュリティの研究動向を紹介する．また，我々の取り組みとして，AI処理時間の特徴を利用した誤動作を誘発する入力の生成・対策，シミュレータによる誤動作検証などについても紹介する．

AI 技術をより一層身近なものとして我々が安心して使えるようになるためには，データの信頼性やサーバー 管理者への秘匿性確保，システムの乗っ取りに対する耐性やリアルタイム検知など，サイバー攻撃を前提としたセキュアな機能を実現しなければならない．これらの課題に対して，完全準同型暗号(秘密計算)やコンフィデ ンシャルコンピューティングなどを扱う研究が世界的に注目を集めている．本講演では，自動車やロボットなどの物理システムをリアルタイム(ミリ秒単位)で AI 制御するサイバーフィジカルレイヤーに着目し，自動制御装置の心臓部である制御処理を新しい動的鍵準同型暗号方式で秘匿化する暗号化制御の基礎理論と応用事例を紹介する.