プログラム
format_list_bulletedエレクトロニクスソサイエティ
一般セッション
- この目次は,インターネット講演申込登録のデータを元に作成されています。
- また,講演者を○,◎印で示し, ◎印は本会「学術奨励賞受賞候補者」の資格対象であることを示します。
- ○,◎の後ろに△がある場合はキャリアエクスプローラーの掲載を希望しています。
C-1. 電磁界理論
3月7日 9:00〜11:45 2号館 2307教室 座長 山本伸一(三菱電機)
C-1-1 |
ビームチルトのための半だ円傾斜導体装荷カットホーンアンテナ
○前出梨花・出口博之・辻 幹男(同志社大) |
C-1-2 |
単位セル両端に短絡スタブをもつ-λ/6CRLH-TLで構成された7/6λラット―レース回路の小型, 広帯域化
◎重村朋也・辻 幹男・出口博之(同志社大) |
C-1-3 |
ミリ波レーダによる人体の複数反射点計測に必要なアレー素子数
◎越坂武仁・阪本卓也(京大) |
C-1-4 |
SAR画像シミュレーションに用いるRCS解析の高速化に関する一検討
○末延 博・瀧川道生・稲沢良夫(三菱電機) |
C-1-5 |
平面アレーアンテナを用いたマイクロ波電力伝送システムに関するビーム収集効率および比吸収率の理論的評価
○藤井雅之・鈴木敬久(東京都立大) |
C-1-6 |
散乱場表示の定式化に基づくPhysics-Informed Neural Networksと一様電荷密度分布のビームインピーダンス解析への応用
○藤田和広(埼玉工大) |
C-1-7 |
15GHz帯マルチビーム / 30GHz帯偏波共用単層リフレクトアレー
◎△谷澤壮太・井上康成・出口博之・辻 幹男(同志社大) |
C-1-8 |
THz帯におけるディラック半金属を用いたスラブ導波路の固有モード解析
◎田中 僚・大塚 諒・柴山 純・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-1-9 |
表面プラズモン共鳴解析における RC 法と TRC 法の比較
◎杉本 陸・鈴木敬久・八木日向太(東京都立大)・柴山 純(法政大)・Jerdvisanop Chakarothai(NICT) |
C-1-10 |
円形コアを結合した単一偏波光ファイバの特性解析
◎信田一輝・持田悠太朗・荒川大樹・古川慎一(日大) |
C-1-11 |
円形領域で構成した偏波スプリッタの特性解析
◎山口和洋・荒川大樹(日大)・亀田和則(佐野日本短大)・古川慎一(日大) |
ビームチルトを可能とするために,円形導体と誘電体レンズを用いたホーンアンテナを提案してきた.本稿では,ビームチルト角を 35°としたブロードな小 型アンテナを設計し,その放射特性の検討を行ったので報告する. 外側のホーン側壁を斜めにカットし、ホーン内部に 半楕円導体と誘電体を装荷した. 設計周波数は24GHzであり,外壁をカットす ることで,10°チルト角が大きくなることが明らかに なった. 利得のピーク方 向はE面の-35°方向で,ピークの利得は 8.2dBiであ る.3dBiのビーム幅はE面が71°, H面が86°,10dBi のビーム幅は,E面が120°, H面が151°となった.
ラットレース回路はラットレースハイブリッドカプラもしくはハイブリッドリングとも呼ばれる円形の4端子受動回路でマイクロ波信号の分離や結合に用いられる結合器の一種である. ラットレース回路は円周導体部分の線路長が1.5λで構成されるため回路サイズが大きいという問題点が以前から挙げられており, 特に低い設計周波数では波長が大きいのでこの問題は顕著化する. 本研究では, 従来よりも小さな回路サイズで設計可能な7/6λラットレース回路に右手/左手系複合導線線路(CRLH-TL)の位相進みの特性を利用して-λ/6の分岐線路3つで構成することにより小型, 広帯域化できたので報告する.
ミリ波レーダを用いて人体を計測するとき,波長が人体表面形状の曲率半径よりも十分に小さいため,人体表面の電流密度のうち,レーダで受信される散乱波に寄与する成分は局在する.我々は,これまで,精密な人体モデルを用いたミリ波帯の散乱電力分布の可視化および計算量削減手法の提案を行ってきた.本稿では,人体表面に生じる複数の反射部位を分離するのに必要な角度分解能について評価を行い,アレーレーダなどによる人体計測で必要なシステムの性能を数値的に算出する.
電磁界解析によるレーダ断面積(RCS:Radar Cross Section)解析データを用いて、合成開口レーダ(SAR:Synthetic Aperture Radar)画像をシミュレーションにより生成するSAR画像シミュレータが検討されている。本シミュレーションにおいては、観測対象によって多重散乱波成分が強く生じる場合があるが、多重散乱の解析は計算量が大きくその解析に長時間を要する。そこで本稿では、物理光学近似法によるRCS解析において、観測対象に応じて多重散乱波成分が生じる領域を抽出し計算領域を限定することで、精度を保持しつつ計算量を削減し高速化する手法を報告する。
現在,マイクロ波帯電波を用いて給電するマイクロ波無線電力伝送技術に注目が集まっている.その中でもフェーズドアレーアンテナと分散型アンテナを用いた送電方法の実現可能性が検討されている.しかし過去に,給電場所として想定される屋内において,これらの送電方法による効率などの差異を定量的に比較した研究例は少ない.そこで本研究の目的は,理論シミュレーションによって上記二つの給電方法を電力の収集効率及び人体防護の観点から調査・比較し,送電に適した方法を検討することである.分散型アンテナは,フェーズドアレーアンテナに比べ,空間的に広い受電範囲でBCEについてロバストであることがわかった.また,SARの値も分散型アンテナがフェーズドアレーアンテナより小さいことが理論的に確認できた.
本講演では,散乱場の定式化に基づくPhysics-Informed Neural Networksを概説し,一様な円形の電荷密度分布のビームインピーダンス解析への応用例を示し,厳密解との比較を行う.
マルチビームならびに複数の周波数帯域の共用が行えるリフレクトアレーアンテナを得るため,低域側の周波数帯 (15GHz)ではマルチビームのための偏波独立制御を行い,高域側の周波数帯 (30GHz) では直交偏波共用を行う方法について検討し,単位セルの領域を周波数帯ならびに偏波を考慮して領域区分などを考えリフレクトアレー素子を設計したので報告する.
テラヘルツ帯におけるディラック半金属を基板として用いたスラブ導波路の固有モード解析を行った。固有モード界分布を評価し,フェルミ準位が小さくなるにつれ,ディラック半金属上に界が局在することを示した。
先行研究にてRC法,TRC法における金属表面での反射係数の精度調査を行い,RC法はTRC法と比較して理論値との相対誤差が10²オーダーで大きな値を示し,精度が悪いことを明らかにした一方で,Kretschmann配置を採用したSPRセンサーの反射特性おける数値計算精度の差に関する検討は行われていない.本発表ではKretschmann配置を採用したSPRセンサーを模したモデルに平面波を入射させ,反射特性を取得する.これをRC,TRC法を用いたFDTD法の両者で求めることでその結果と理論値から両手法の精度を比較する.
シミュレーションの結果Kretschmann配置のSPRセンサーにおいて反射特性をシミュレーションする際にはTRC法との差は小さく,反射特性を把握するには十分な精度を持つことを明らかにした.
本研究では,結合した3つの円形コアと8つの円形中空ピット(3c8p)で構成した単一偏波(SPSM:Single-Polarization Single-Mode)光ファイバファイバについて,動作波長を1550nmとして設計したときの単一偏波波長領域とコア内の電力およびPoyntingベクトルを解析した.その結果,我々が以前提案した3c14pに比べて,単一偏波波長領域を1.03倍大きくできることを明らかにした.
本研究では一つの円形コアを持つ光ファイバ(fiber1)と1つの円形コアと二つの中空円形ピットを持つ光ファイバ(fiber2)を結合した偏波スプリッタについて,fiber1のコアをグレーデッド形,fiber2のコアをステップ形の屈折率分布とした場合について,モード結合方程式の電力移行特性(Method1)から求めた素子長と帯域幅の結果と基本モードの電磁界を結合系に励振して得られた電力移行特性(Method2)から求めた素子長と帯域幅の結果とを比較検討した.その結果,Method1とMethod2の結果はほぼ同じとなることから,コアが不均質なグレーデッド形の場合でもMethod2が適用可能であることを明らかにした
3月7日 13:00〜14:45 2号館 2307教室 座長 石田健一(九産大)
C-1-12 |
後方過渡散乱磁界の応答波形を用いた散乱体情報の推定精度
○後藤啓次・岩切宗利・郡山英之・加藤大博(防衛大) |
C-1-13 |
交互にストリップ導体を有する分散性媒質によるパルス応答解析-電界と磁界成分による応答波形の影響-
○尾崎亮介・王 淳・山﨑恒樹(日大) |
C-1-14 |
2次元SI法による電磁界解析の精度検証
◎宮本浩志郎・岸本誠也・佐甲徳栄・大貫進一郎(日大) |
C-1-15 |
3次元半陰的FDTD法を用いたTE透過型THz導波路偏光子の解析
◎宮尾浩斗・柴山 純・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-1-16 |
反復クランク・ニコルソン法に基づくFDTD法の数値分散解析
◎河原章良・柴山 純・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-1-17 |
Diffraction by a Semi-Infinite Parallel-Plate Waveguide with Material Loading: Scattered Field and Numerical Results
◎Tong Zhang・Kazuya Kobayashi(Chuo Univ.) |
C-1-18 |
Comparison Between the Fields Modeled by a Dielectric Circular Cylinder and an Absorbing Screen
◎△Xin Du・Jun-ichi Takada(Tokyo Tech) |
物体にパルス波を照射すると物体からパルス波が散乱される.散乱波の応答波形には,散乱体の構造・寸法・材質といった様々な散乱体情報が含まれている.本研究では,反射波(reflected geometric optical ray:RGO)成分の数値データ(ピーク値と到達時間)の有効数字の桁数を変化させた場合の散乱体情報の推定精度を検討する.シミュレーション実験より,推定精度は有効数字の桁数に依存して変化することを明らかにする.
著者らは先に,異なる深さにストリップ導体を配置した分散性媒質の過渡散乱問題にFILT法と点整合法(PMM)の行列化を併用する解析法を開発し,この手法を利用して最下部の導体幅を変化した場合の電界波形から導体の影響を検討してきた.
本文では,磁界成分によるパルス応答を解析し,電界と磁界による波形情報から最下部の導体幅に関する影響を検討する.
シンプレクティック数値積分(SI: Symplectic Integrator)法は,直交変換を繰り返しながら時間発展が進行するため,多ステップに及ぶ時間積分においても全エネルギーの誤差が一定範囲内にとどまるという特徴がある.本報告では Maxwell方程式をSI法で解き,2次元領域における電磁界解析を行う.FDTD(Finite Difference Time Domain)法との比較,及び空間刻み幅を変えたときの波形の変化を評価し,SI法の計算精度を検討する.
3半陰的FDTD法を用いてTE透過型THz導波路偏光子を解析する.はじめに,分散性媒質解析への応用のため,台形則に基づくRecursive Convolution 法を導入した3次元半陰的FDTD法の定式化を行う.次にTE透過型THz導波路偏光子を解析する.界分布,導波モードパワー,算出した消光比を陽的FDTD法と比較し,よく一致することを明示する.また,最大のCFLN = 14に選ぶと計算時間を陽的FDTD法の約25%に短縮できることを明示する.
反復クランク・ニコルソン(ICN)法に基づくFDTD法の数値分散解析を行う.はじめに,1次元ICN-FDTD法の定式化を行う.次に1次元ICN-FDTD法の数値分散関係式を導出する.数値分散関係式の実部は,陽的FDTD法と一致することを示す.
In the area of target identification through radar, the analysis of electromagnetic diffraction and scattering by cavities formed by open-ended waveguides has always been a very important topic. In this paper, we shall consider a semi-infinite parallel-plate waveguide with material loading as a geometry that can form a cavity and solve the E-polarized plane wave diffraction rigorously by using the Wiener-Hopf method. Based on the results obtained by the Wiener-Hopf technique, we have carried out numerical computation of the RCS for various physical parameters and investigated the far field backscattering characteristics in detail. The RCS results will be given during the presentation at the conference.
In this paper, as the difference between the diffraction and reflection modeled by a dielectric circular cylinder and an absorber screen, respectively, an additional term is derived by a uniform theory of diffraction in the lit side of the transition region. The proposed model is validated by numerical simulations at a high frequency. Through the proposal, we clarify the contribution of the Fresnel zone number and boundary conditions. In addition, in the lit side of the transition region, the validity of using a hassle-free absorber screen to model the cylinder-shaped object is proven by the proposal.
C-2. マイクロ波A(マイクロ波・ミリ波能動デバイス)
3月7日 9:00〜11:30 5号館 5351教室 座長 高木裕貴(ソフトバンク)
C-2-1 |
0.13μm SiGe BiCMOSを使用したD帯カスコード増幅器
○伊東正治・和田 靖(NEC) |
C-2-2 |
3入力電力レベル最適化設計による3.7 GHz GaN HEMT ドハティ増幅器
◎山本薫臣・本城和彦・石川 亮(電通大) |
C-2-3 |
高効率なGaNスイッチング型エンベロープ増幅器を実現するシリコンドライバ回路
○竹添慎司・森野芳昭・山本 航・坂田修一・齋木研人・堤 恒次(三菱電機) |
C-2-4 |
2入力GaN増幅器のドハティ・アウトフェージング増幅器モードの超高速測定
◎鈴木貴登(湘南工科大)・坂田修一・小松崎優治・山中宏冶(三菱電機)・加保貴奈(湘南工科大) |
C-2-5 |
GaNドハティ増幅器の5G NR TDD信号のEVM測定評価
○難波八尋(湘南工科大)・坂田修一・小松崎優治・山中宏冶(三菱電機)・加保貴奈(湘南工科大) |
近年の半導体プロセスの微細化により、サブテラヘルツ帯に適用可能なSi系半導体が増えてきている。その中でも、SiGe HBTは次世代の無線通信周波数として期待されるD帯でも十分な性能を有し得る。今回、0.13μm SiGe BiCMOS(最大発振周波数450GHz)を使用してD帯カスコード増幅器を試作した。ベース接地段の接地度改善により良好な周波数特性を確認した。また、基本ブロックの並列化により十分な高出力電力化が見込めることを確認した。
ドハティ増器(DA)は2 増幅器により広ダイナミックレンジ高効率動作を実現している.従来のDA はλ/4インピーダンス変換線路によって入力信号レベルに応じて負荷変調を実現するが,λ/4 線路を用いずに負荷変調を実現する設計手法が提案されている.本稿では,DA の広ダイナミックレンジ化を目標とし,提案されている設計手法を3 入力電力レベルへ拡張した3入力電力レベル最適化設計手法を提案し,それに基づいて設計したDAの実測結果を報告する.
次世代基地局向け高周波増幅器のバックオフ動作時の効率を改善するエンベロープトラッキング増幅器用のエンベロープ増幅器には,高速・高効率・高電圧動作が可能なGaNを使用したスイッチング型の回路構成が用いられる.そのGaN回路を駆動するためのドライバ回路は,制御性,コストの観点からシリコン回路とすることが望ましいが,高速動作と高電圧出力の両立が課題である.本報告では,エンベロープ増幅器の高効率化を目的に,GaN回路を駆動するシリコンドライバ回路をSOI-CMOSプロセスで試作した結果を報告する.
2入力GaN増幅器を用いて周波数ごとにドハティおよびアウトフェージング増幅器モードを切り替えて4G/5Gの広帯域な周波数をカバーする基地局増幅器を開発している.2入力増幅器をドハティ/アウトフェージング増幅器として動作させるには事前に入力信号の分配比と位相差を網羅的に測定する必要があるが,測定時間が膨大になる課題があった.本稿では,NI社製PXIに搭載したVST(Vector Transceiver)2台とSMU(Source Measure Unit)1台を同期し,IQ信号の分配比や相対位相を広範囲に変えることで大幅に測定時間を短縮できたので,報告する.
4G/5Gの周波数をカバーする基地局用GaN増幅器を研究している.本稿では,PXIシステムのVST(Vector Transceiver)を用いた測定系を構築し,GaNドハティ増幅器に100MHz幅の5G NRのTM3.1aのTDD信号を入力し,デジタルプリディストーション(DPD)を行い隣接チャネル電力比(ACPR)およびError Vector Magnitude(EVM)のモデルパラメタ依存性および時間波形を測定した結果について報告する.
休 憩(10:30 再開) 座長 石川 亮(電通大)
C-2-6 |
整合回路レス設計を用いた5.8GHz 2段パワーアンプの設計評価
○丹波憲之・原 信二(名大) |
C-2-7 |
ft超でのミリ波帯GaNカスコードパワーアンプの設計手法の検討
○末松英治・原 信二・作野圭一(名大) |
C-2-8 |
5G NR ユーザーデータがない場合のダウンリンク信号におけるRF電力増幅器の消費電力推定法
◎髙木裕貴・太田喜元(ソフトバンク) |
C-2-9 |
広帯域増幅器に向けたデジタル信号制御による2波の変調波信号の相互変調歪み抑圧の検討
◎田口巴里絵・小松崎優治・中谷圭吾(三菱電機) |
パワーアンプ(PA)の高効率化設計手法として、整合回路レスPA設計手法を提案、実証を行ってきた。またドライバーアンプも同様の設計手法用いることで、より高効率なアンプを設計できることを提案してきた。本設計手法を適用して設計、試作されたGaN ICで良好な特性が得られた。
ft<fopの領域でのカスコードPAの設計について提案をおこなった。
CGFのゲート幅を幾分大きくすることで、より効果的にMAG安定領域を拡大できるだけでなく、ゲート幅増大による出力増強の効果が期待できる。
第5世代移動通信システム(5G)のダウンリンク(基地局から端末) 通信におけるRF 電力増幅器の消費電力の推定手法を提案する. 5G NR では4G LTE と比較して, ユーザーデータ信号がない場合のダウンリンク信号では, 参照信号のような固定的に送信する信号が大幅に少ないため, 電力増幅器の稼働時間が短くなり消費電力も抑えられると予想される. 本研究では, 実際に試作したRF電力増幅器におけるフルバッファ信号入出力の測定結果からユーザーデータ信号がない場合の消費電力の推定方法を考察する.
次世代基地局向け増幅器には、通信の超⼤容量・⾼速化を実現する、⾼効率に複数の帯域を1台でカバー可能な超広帯域性を備えた増幅器が求められている.一方で、スプリアスの抑圧が大きな課題となる.特に離調周波数が 大きい 2 波の変調波を増幅する場合、その相互変調歪み(IMD:Intermodulation distortion)が生じる範囲は高次成分を含めると数 GHz に及ぶ可能性がある.その場合、送受信機の帯域の観点からDPD(Digital Pre Distortion)等のデジタル的な歪み補償が難しい.加えてフィ ルター回路等のアナログ的な信号抑圧では、周波数を自由に切り替えることが難しい.そこで、信号源の位相をデジタル信号処理で任意に設定できることを利用し、2 波の変調波の位相を制御する事で、IMD を相殺する手法を検討したので報告する.
3月7日 13:00〜17:00 5号館 5351教室 座長 坂井尚貴(金沢工大)
C-2-10 |
GaN-HEMTのTCADベース大信号コンパクトモデル
○山口裕太郎・大塚友絢・新庄真太郎・山中宏治(三菱電機) |
C-2-11 |
表皮効果を考慮したゲート電極を用いたFETモデリングの検討
作野圭一・丹波憲之・○原 信二(名大)・近藤 崇・藤原康平(都産技研) |
C-2-12 |
GaN HEMTのNFとリカバリ特性のバイアス依存性
◎久樂 顕・山口裕太郎・加茂宣卓・新庄真太郎(三菱電機) |
C-2-13 |
ダイオード電流の飽和特性のモデル化
◎高屋凌平・廣瀬裕也・坂井尚樹・伊東健治(金沢工大) |
GaN増幅器の高効率化や低歪化等の要求にタイムリーに応えるためには回路開発からトランジスタ開発への開発手戻りを抑制して効率的に増幅器開発を行う必要がある.そのためにはトランジスタと回路の統合設計が有効であり,トランジスタ構造の影響を考慮できる大信号コンパクトモデルが必要である.これまで物理ベースコンパクトモデルとしてASM-HEMTが報告されているが,トランジスタのゲート形状やエピ等の影響を詳細に考慮して回路設計するためにはTCADシミュレーションをとり入れたコンパクトモデルが有効である.本報告ではTCADベース大信号コンパクトモデルの作成結果を報告する.
一般的な集中定数素子を用いた等価回路モデルを用いた場合、フィンガー長が長いFETにおいて、波長が短いミリ波帯においてはモデルと実測値の乖離が大きくなるという課題がった。我々は、上記課題解決の為の一検討として、FETのゲート部の等価抵抗に表皮効果等の周波数依存要因を考慮したモデルを導入することでモデル精度の改善を図り、65GHzまでの良い一致を確認した。
従来のGaAs LNAを高耐電力なGaN LNAに置き換えることが検討されている.置き換えによりフロントエンドモジュールのLNA前段のリミッタを削除することが可能になり,モジュールを低NF化することが期待されている.しかしながら,GaNはトラップの影響によってリカバリ特性を持つため,高い電力が入力されるシステムではGaN LNAを適用することが難しいという課題がある.
本報告では、ユニットセルトランジスタにてNF特性とリカバリ特性のバイアス依存性を評価した. 結果として、GaN LNAにおけるNF特性とリカバリ特性の両立ためには、NFminが最小となるバイアス点よりもIdqが高いバイアス条件を使用することが望ましいことが分かった.
マイクロ波での無線電力伝送の実用化が進められている.これに用いられるダイオード整流器の動作電力は,ダイオードの耐圧および電流の飽和特性で制限される.本報告ではダイオード電流の飽和特性のモデルについて述べる.SPICEモデルの直列抵抗に電流依存性の式を与え,モデル化をする.5.8GHz帯10W倍電圧整流器MMICで整流効率の評価をし,本提案のモデルでの計算値が,最高効率となる入力電力の低下を表現した.
休 憩(14:15 再開) 座長 阿部晋士(豊橋技科大)
C-2-14 |
5.8GHz帯10W級倍電圧整流器MMIC
◎廣瀬裕也・坂井尚貴・伊東健治(金沢工大) |
C-2-15 |
GaAs E-pHEMT gated anode diodeを用いる5.8 GHz帯5Wレクテナ
◎古谷尚季・内山海渡・小松郁弥・桔川洸一・坂井尚貴・伊東健治(金沢工大) |
C-2-16 |
GaAs E-pHEMT GADを用いる準ミリ波帯1W整流器MMIC
◎角谷直哉・坂井尚貴・伊東健治(金沢工大) |
C-2-17 |
ダイオードの閾値と降伏電圧を考慮した倍電流整流回路の解析
○坂井尚貴・伊東健治(金沢工大) |
マイクロ波での無線電力伝送(MPT)が法制化され,その実用化が進められている.筆者らは,MPT用レクテナの大電力化のため,GaAs E-pHEMTによるGated anode diode (GAD)を用いる大電力レクテナの検討を行っている.本報告では5.8GHz帯10W級倍電圧整流器MMICの評価結果を示す.
大電力化に適するGaAs E-pHEMTによるgated anode diode(GAD)を用いる5.8GHz帯5Wレクテナの試作結果を示す.入力電力Pin=37dBm(5W)のときに整流効率=85.2%,出力電圧Vout=35.8Vである.
GaAs E-pHEMT Gated anode diode を用いて26GHz帯1W倍電圧整流器MMICを設計した。
測定結果は、26GHzにおいて入力電力29.5dBmのとき整流効率62.2%、出力電圧31.1Vである。
GADにより準ミリ波帯において大電力・高効率整流が可能であることを示した。
無線電力伝送システムにおいて,整流回路は受電した高周波電力を直流に変換し負荷へ給電するために欠かせない回路である.倍電流整流回路はモーターや電池などの低電圧・大電流で動作する負荷へ直流電力を供給するのに向いている.過去の発表ではダイオードを理想的なスイッチと仮定し,倍電流整流回路の動作および理論効率をまとめている.本稿では閾値電圧ならびにブレイクダウン(降伏)電圧を含んだダイオードモデルを用い,倍電流整流回路の動作について報告する.
休 憩(15:30 再開) 座長 高野恭弥(東京理科大)
C-2-18 |
300GHz帯送信機用I/Q相間位相誤差自動補正機構
◎田島尚弥・高野恭弥(東京理科大) |
C-2-19 |
Magic-Tを用いた反射型移相器の反射・透過特性に関する実験評価
◎田村 成・新井宏之(横浜国大) |
C-2-20 |
イメージ抑圧ミキサと2給電円偏波アンテナを一体化したダウンコンバージョン型アクティブアンテナの試作評価
◎川﨑龍青・田中高行・豊田一彦(佐賀大) |
C-2-21 |
Design of Ku-Band Push-Push Oscillator Employing Spiral Microstrip Resonator Array
○Elton Lima・Takayuki Tanaka・Ichihiko Toyoda(Saga Univ.) |
C-2-22 |
2倍波で半波長の線路共振器を用いた4次高調波Push-Push発振器の位相雑音特性改善
○竹口雄章・田中高行・豊田一彦(佐賀大) |
C-2-23 |
準分布定数線路共振器を用いたPush-Push VCOの試作評価
○若木田康輝・Maodudul Hasan・田中高行・豊田一彦(佐賀大) |
300GHz帯送受信機でディジタル変調を用いる場合、50GHz以上での周波数でI/Q局部発振信号を生成する必要がある。しかし、この周波数でI/Q信号の位相差を正確に90°に合わせることと、300GHz帯において信号帯雑音比を大きくすることは共に困難であることから、その位相誤差が通信性能に大きく影響する。本研究では、I/Q相間の位相差を90°に自動補正する機構を提案し、シミュレーションを行う。提案構成は、位相同期回路を基にした構成の利点を維持しつつ欠点を克服している。シミュレーションの結果から、I/Q相間の位相差が90°に収束していく様子が確認できた。加えて、制御する信号(Q信号)の位相雑音が大きい場合でも、基準信号(I信号)に位相雑音の小さな信号を用いることにより、位相雑音が改善されることも確認できた。
移相器はアレーアンテナの電子ビーム走査を実現する基本部品である.反射型移相器は低損失に連続位相変化を可能にする反面,周波数特性が狭帯域であることが課題である.筆者らはMagic-Tを用いた反射型移相器の改善案を報告した.本稿は提案移相器の実験結果を報告する.
近年,通信技術の発達に伴い,円偏波アンテナに注目が集まっている.本稿では2 給電円偏波(CP)アンテナの特徴を活用した簡易な構成のイメージ抑圧ミキサ(IRM)一体型アクティブアンテナを提案,及び試作アンテナによりその評価を行った.提案する一体型アンテナは2給電CPアンテナを用いることで,従来のアンテナとIRMの一体化アンテナで必要だったRF帯90°カプラを用いなくてよいという特徴がある.本稿では局発(LO)電力に対するIF出力とLO周波数に対するIF出力の2項目で評価を行った.測定結果より,5.8GHz帯で変換損失11.1dB,イメージ抑圧11.0dBと提案コンセプトの実現性を確認した.
In this paper, a novel k-band Push-Push oscillator employing spiral microstrip resonator array is presented. The Push-Push oscillator is widely applied when low-cost high-frequency oscillators are required. Harmonic oscillators like Push-Push oscillators are gaining popularity because fundamental frequency oscillators exhibit performance degradation at higher frequencies. To achieve low phase noise, a spiral microstrip resonator array with high Q resonator is used. The proposed configuration's novelty lies in designing a compact resonator and combining circuit, while achieving low phase noise.
近年、大容量・高速通信のために高周波発振器の需要が高まっているが、高周波発振器は製造コストが高く、また位相雑音が高いといった課題がある.そこで本研究では線路共振器を結合した4次高調波Push-Push発振器を提案した.高周波発振器であるPush-Push発振器に線路共振器を装荷することでリング共振器と線路共振器が磁界、電界結合し波動場を安定化させ出力の向上と位相雑音の改善が期待される.シミュレーションの結果より、2倍波で半波長の線路共振器を装荷することで出力電力が約2.1 dB向上することを確認した.
本研究では,バラクタダイオードを装荷した準分布定数線路共振器を用いた,Push-Push VCOの試作評価を行った.本発振器は,線路共振器にバラクタを装荷した非常に簡易な構成でありながらPush-Push発振により2次高調波を出力とし,バラクタへの制御電圧を変化させることで,発振周波数を変化させることができる高周波発振器である.
制御電圧2 ~ 9Vに対して,基本波の電力が2次高調波よりも大きかったが,2次高調波の周波数が15.11 ~15.76GHzと変化するVCOの動作を確認した.
C-2. マイクロ波B(マイクロ波・ミリ波受動デバイス)
3月8日 9:15〜11:30 5号館 5351教室 座長 花澤理宏(UL Japan)
C-2-24 |
中空構造を利用した小型4合成器のコネクタ接続部の特性を除去した測定と評価
○杉山勇太・大島 毅・石橋秀則・加賀野未来・湯川秀憲・深沢 徹・稲沢良夫(三菱電機) |
C-2-25 |
管軸分岐端子をオフセット配置した小型OMTの評価結果
○湯川秀憲・関 竜哉・深沢 徹・稲沢良夫(三菱電機) |
C-2-26 |
WR-3全帯域で動作する4種の楕円形チョークの検討
○武元佑紗・待鳥誠範(アンリツ) |
C-2-27 |
容量性窓挿入による導波管E面スタブの小型化に関する実験検証
◎村山京平・赤石優太・井ノ口海斗・草間裕介(東洋大) |
高周波回路において高電力化が進んでいる.例えば,高い電力密度を可能にするGaNを採用したHPAが5Gや衛星通信に向けに多く使われ始めている.1つのHPAのみで大きな電力を出力するのは電力密度の観点から限界がある.
そこで,複数のHPAの出力電力を低損失で合成し,所望の電力を出力できる合成器が望まれている.今回,Ka帯向けに導波管を用いた小型で高効率な4合成器を試作した.本4合成器はコネクタ端と導波管端からなり,TRL校正法などを適用しての測定はできない.今回,コネクタ特性等を除去する手段を用いて,4合成器の測定と評価を実施したので報告する.
異なる周波数帯の直交する直線偏波を分離するOMT(Ortho-Mode-Transducer)は導波管偏波分離回路におけるキーコンポーネントのひとつである。OMTを小型化するため、各直線偏波を分離して出力する分岐端子の変成部を近接配置した場合、相互の影響により良好な特性が得られにくい。そこで、筆者らはそれらの影響を補償するように管軸分岐端子をオフセット配置することにより、小型化と良好な特性の両立を図ったOMTを提案している。ここでは、本OMTについて金属3Dプリンタによる試作評価を行ったので報告する。
標準導波管WR-3の全帯域(220-330 GHz)で動作する4種(楕円型,分割型,非分割型,扁平型)の楕円形チョーク(導波管の間隙0.05 mm(1/20波長程度))を提案し各種検討及び相対比較を行ったところ,楕円型及び分割型と比較して非分割型(挿入損失 < 0.05 dB、反射損失 < 20 dB,漏洩 < 45 dB)と扁平型(挿入損失 < 0.1 dB,反射損失 < 15 dB,漏洩 < 60 dB)ではより良好な特性が得られ,電磁波の漏出防止及び全帯域動作が期待されることをシミュレーションによって確認した。
λ/4スタブは,スタブ幅を広くすることで広帯域化できることが知られている.スタブにはE面とH面の2種類があり,H面スタブの場合はMSLを使った平面回路で簡単に実験検証できる.しかし,E面スタブでは立体回路となり,意図しない放射が起きることからMSLを使った実験検証ができない.本研究ではE面スタブの小型化を確認するため導波管を用いて実験検証を行う.
休 憩(10:30 再開) 座長 草間裕介(東洋大)
C-2-28 |
導波管接続を小型にする75GHz帯テーパー導波管リングの開発
◎清水彩加・浜戸喜之(多摩川電子)・川西哲也(早大) |
C-2-29 |
導波管積層E面十字交差方向性結合器の設計
◎三本喜貴・戸村 崇・広川二郎(東工大)・山中大輔・木寺信隆・加賀谷 修(AGC) |
C-2-30 |
簡明6ポートコリレータの校正不確かさに関する一検討
○花澤理宏(UL Japan)・矢加部利幸(マルチポート研究所) |
C-2-31 |
Simplified Multi-Port Correlator - Two types of Correlator Circuits and their calibration center points of circles on the Gaussian plane -
○Toshiyuki Yakabe(Multi-Port Laboratory LLP) |
ミリ波・テラヘルツの通信において,伝送路は損失の少ない導波管がよく用いられている.サイズの異なる導波管の接続にはテーパー導波管などの変換アダプタを必要とするが,既存のテーパー導波管の長さは数cm以上で,装置の小型化を妨げている.ミリ波帯・テラヘルツ帯では導波管はフランジ断面積に対して開口が小さく,また,フランジ厚さが波長を基準に見ると大きい.この点に着目し,本件では,フランジ状の構造をもつテーパー導波管リングの開発を行った.周波数75GHz帯で使用可能な,方形導波管規格WR-10とWR-12の変換および,WR-12とWR-15の変換について,モード変換特性を維持しながら,変換部を短くすることにより,従来品に比べ導波管接続構造の小型化を達成した.
十字交差方向性結合器はノレンマトリックスの構成要素として用いられる.E面十字交差方向性結合器は切削金属と金属ポストで構成され,金属ポストが基板と水平方向であり多層プリント基板への適用が難しい.本稿では多層プリント基板で製作可能なE面十字交差方向性結合器の実現を目的とし,クロス結合器を設計する.
これまで簡明6 ポートコリレータ(Simplied Six-PortCorrelator : S-SPC) の校正方法, 透過係数計測手法および測定不確について検討してきた. 本報告では,S-SPC の校正に用いるラインの長さの不確かさが透過係数計測に与える影響について理論的に検討したので報告する.
Two types of Simplified Multi-Port Correlator (S-MPC) circuits are proposed. “Simplified” implies to decide the amplitude ratio of two-port device under test (DUT) first, and next to decide its phase deference using the amplitude ratio. The alternative S parameter measurement system that separated the amplitude ratio circuit and a phase deference circuit was proposed.
Improved two S-MPCs based Network Analyzer (NA), namely, Eight/Six-port Correlators, and their calibration center points of circles on the Gaussian plane are shown.
3月8日 13:00〜16:00 5号館 5351教室 座長 吉川博道(京セラ)
C-2-32 |
導波管型ミリ波帯可変帯域通過フィルタの開発
○中島 拓・堀 裕一・小林和宏・立原研悟(名大) |
C-2-33 |
導波管無極フィルタの寸法誤差依存性のモンテカルロ解析
○待鳥誠範(アンリツ) |
C-2-34 |
誘電体層付き金属フォトニック結晶構造を用いたBPFの設計
○王 明・陳 春平・平岡隆晴・穴田哲夫・武田重喜(神奈川大) |
C-2-35 |
300GHz帯DTMライン帯域フィルタの設計
◎大谷元続・木下拓真・黒木太司(呉高専) |
C-2-36 |
伝送零点を非対称に配置可能な4段ボックス型対称結合マイクロストリップ BPF
◎廣田昂也・大平昌敬・馬 哲旺(埼玉大) |
C-2-37 |
複数の仕様に対応したマイクロストリップBPF 自動設計のための深層強化学習について
◎浅井悠登・大平昌敬・馬 哲旺(埼玉大) |
宇宙電波望遠鏡などに搭載されているミリ波・サブミリ波帯の受信機では、超伝導ミクサを用いたヘテロダイン受信が利用されており、低雑音な局部発振器(LO)を使用することが重要である。LO系に使用される信号発生器や能動逓倍器のサイドバンド雑音を除去するには帯域通過フィルタ(BPF)が有効なため、本研究では導波管の遮断特性を利用した周波数と帯域幅がいずれも可変となるBPFを考案し、その動作実証を行った。ミリ波帯ベクトルネットワークアナライザを用いて試作フィルタを実測した結果、中心周波数は75--105 GHzの範囲で連続的に変化できた。また実用帯域幅は、例えば中心周波数90 GHzの場合には、2.3-25.4 GHzの範囲で任意に設定できることも確認された。
300 GHz(波長1 mm)程度のミリ波帯では機械加工精度が導波管フィルタの特性に大きな影響を与える。そこで,共振器直結型導波管無極フィルタを対象としてフィルタ特性が寸法誤差の影響を受けにくい構造を探るため,いくつかの実装モデルに対して疑似的な寸法誤差を与えたモンテカルロ解析を行った。モデルとしてWR-3帯11次バタワースフィルタを例に取り,フィルタを構成する誘導性窓あるいは容量性窓の種別と窓(アイリス)の厚さによる伝達特性の差異を比較し,1/4管内波長程度の厚さの容量性窓を持つフィルタが寸法誤差の影響を受けにくい結果を得た。
5Gサービスに向け、ミリ波帯の超小型・低損失のデバイスの設計と開発が要求されている.金属フォトニック結晶構造(MPhC)はミリ波・テラヘルツ波帯で利用可能な新しい実装技術として提案され、高性能なバンドパスフィルタの開発が大きな注目を集めている.本研究では、低コスト・高作製精度のPCB回路の加工技術としたエッチング技術で作製可能な誘電体層付きMPhC構造の5段直結型バンドパスフィルタ(BPF)をStep-Tune Method 法を用いて設計する.
次世代通信規格として高速性と広帯域性を同時に実現できるBeyond 5Gの研究が検討されており,その周波数帯として広い周波数帯域が利用可能かつ,大気中の水分子の吸収が周辺の周波数帯と比較して少ない300GHz帯の利用が検討されている.そこでこの周波数帯で伝送損失が従来のプリント線路の約 1/7 倍と低く,直流から利用可能な広帯域性を有するDTMライン(Dielectric-tube Supported Metal Rod Transmission Line)を用い,スプリアス信号を除去する帯域フィルタ(BPF)を300GHz帯で設計したので報告する.
一般化チェビシェフ関数に基づく帯域通過フィルタ(BPF: Bandpass Filter)の従来の設計法として,折り返し型結合BPFがある.しかし,伝送零点を非対称に配置するには非対称の結合が必要となり,設計が煩雑化するという問題点があった.そこで本報告では,伝送零点を非対称に配置可能な4段ボックス型対称結合マイクロストリップBPFの構造を提案し,設計および測定でその有効性を示す.
深層Qネットワーク(DQN)を用いたマイクロ波帯域通過フィルタ(BPF)の自動設計手法が検討されている.しかし,従来の手法では強化学習時に定める単独の設計目標に対応した設計しかできないという問題がある.本報告では,複数の設計目標に対してBPFを自動設計できるDQNを構築するための強化学習手法を提案する.提案手法ではDQNの入力として,設計途中段階の規格化結合行列のみならず,設計仕様から算出した理論特性の規格化結合行列を新たに追加する.提案手法を用いて共振器3段のマイクロストリップBPFを例にして中心周波数2.90 GHz~3.09 GHz,比帯域幅4%~6%の範囲で帯域内反射損失16 dB以上のBPFの自動設計を行うDQNを構築し,設計例よりその有効性を示す。
休 憩(14:45 再開) 座長 大平昌敬(埼玉大)
C-2-38 |
セラミック多層構造4重モード共振器フィルタの検討
◎△溝井唯人・石崎俊雄(龍谷大) |
C-2-39 |
4重モード共振器フィルタにおける入出力結合構造の改善検討
○中村寅生・石崎俊雄(龍谷大) |
C-2-40 |
交差結合したマイクロ波フィルタの固有値解析に基づく設計法
◎船戸勇一・石崎俊雄(龍谷大) |
C-2-41 |
SiGe BiCMOS集積回路を用いた700GHzテラヘルツ物性センサ用誘電体共振器の設計
◎中村友哉・高野恭弥・楳田洋太郎(東京理科大) |
C-2-42 |
シリコン誘電体導波路を用いた300 GHz帯フィルタ集積型ダイプレクサ
◎川本勇真・吉岡登暉・柴田紀彦・Daniel Headland・冨士田誠之(阪大)・胡間 遼・五十嵐 稜・可児淳一・原 一貴(NTT)・永妻忠夫(阪大) |
近年、スマートフォンの普及による通信量増大の対策として小セル化が進められている。その際に基地局フィルタ、特に小型基地局においては、フィルタが基地局の面積の半分を占めるため、フィルタの小型、低コスト化は重要な課題である。先行研究では、1つの共振器で4つのモードを兼ねそろえた4重モードフィルタで小型化の検討を行った。そこで本研究では、先行研究のさらなる小型化を目指し、先行研究の4重モードフィルタの構造にSIWとLTCC技術を組み合わせたセラミック多層構造での実現を目指す。
近年、スマートフォンの普及による通信量増大の対策として小セル化が進められている。その際に基地局フィルタの小型、低コスト化は重要である。著者らは、これまで、4重モード共振器フィルタの単体評価や8段フィルタの実現を目指して2つの4重モード共振器間結合の検討を行ってきた。しかし、通過帯域幅を広くしようとすると、従来の入出力結合では、所望以外の共振モードへの結合が無視できない程度発生していた。そこで、本研究では所望のTEモード共振にのみ強く結合させるためにL字型電界プローブについて検討した。結果としては、所望のTEモードのみに強く結合し、単一励振していることが確認できた。また、広帯域で良好な伝送特性が実測で得られたことから、本励振方法が有効であることが確認できた。
従来の小型基地局ではフィルタが多くの体積を占め,フィルタの小型化は必須である,しかしフィルタを小型化しつつ損失増加を避けるには,共振器を囲む仕切り板を出来るだけ取り払う必要がある.また,実装自由度を上げるには共振器の配置レイアウトや入出力端子の位置に対する制約を緩和する必要があり,複数の共振器が様々に結合する交差結合が避けられない.本研究では半同軸共振器の6段フィルタを例に固有値固有ベクトル解析の観点から,複雑な交差結合を有する多段フィルタの設計法を提案する.電磁界Modal解析で共振周波数の固有値と固有ベクトルを求め,固有ベクトルの並び順を決定した上で,固有値が等間隔配置になる仕切り板の大きさを求めた.その結果,チェビシェフ特性に極めて近い良好な帯域特性が得られ、本設計法の有効性が示された.
テラヘルツ帯には物質固有の周波数スペクトルが存在し、それを用いて物質を特定することが可能である。テラヘルツ物性センサの実用化には集積回路を用いた小型化が必要であるが、低損失でかつ高感度なテラヘルツセンサ回路の実現が困難である。本研究では、集積回路半導体チップを実装する低誘電体基板上に誘電体共振器を形成したテラヘルツセンサ回路を提案する。シミュレーションの結果、測定試料の比誘電率を1から15 にすると700 GHzで透過利得が-4.8dB、位相は 75°変化し、測定試料の誘電正接を変化させると透過利得と位相には線形性がみられ、透過利得の傾きは-0.828dB となり、位相の傾きは4.29°となった。共振器の段数を 2から3にすると共振周波数の変化の傾きは-7.6 GHzから-9.0 GHzとなり、感度が増加することが分かる。
シリコン誘電体導波路はテラヘルツ帯において, 低損失,広帯域,低コストであることから, 将来の集積化に有望な伝送線路として注目されている.これまで我々は同技術を用い,周波数多重無線通信用のダイプレクサを検討したが,方向性結合器に起因するクロストークによって通信速度が制限されていた.この問題を解決するため,低周波チャネルにローパスフィルタ、高周波チャネルにハイパスフィルタを集積したダイプレクサを開発し,それを用いて300 GHz帯周波数多重無線通信を行ったので報告する.
3月9日 13:00〜16:15 5号館 5351教室 座長 河合 正(兵庫県立大)
C-2-43 |
誘電体基板を装荷したエンドランチ型導波管-マイクロストリップ線路変換器の基礎検討
○廣田明道・稲垣隆二・深沢 徹・稲沢良夫(三菱電機) |
C-2-44 |
導波管内実装リッジ導波管による導波管-マイクロストリップ線路変換の設計
◎木下拓真・山形晃平(呉高専)・佐藤 優(富士通)・黒木太司(呉高専) |
C-2-45 |
140GHz帯DTMライン-方形導波管変換器の設計
○出本芳也・木下拓真・黒木太司(呉高専) |
C-2-46 |
多層基板内バックショート導波管差動線路変換器の設計
◎岩本彩月・山崎 誠・杉本義喜・榊原久二男・菊間信良(名工大) |
C-2-47 |
300GHz帯多層基板内バックショート導波管SIW変換器の設計
◎岸 峻平・杉本義喜・榊原久二男・菊間信良(名工大) |
C-2-48 |
導体スタブを使用した300GHz帯SIW-MSL変換器の低損失化
◎阿部智希(パナソニックインダストリー)・高橋 健(パナソニックシステムネットワークス開発研)・森下陽平・枷場亮祐・村田智洋・滝波浩二(パナソニックインダストリー) |
導波管(WG)の管軸方向とマイクロストリップ線路(MSL)の進行方向が平行となる、エンドランチ型WG-MSL変換器では、一般的にMSLの信号線とその信号線と対抗する導波管壁面を接触させて接続する必要があるが、導波管の加工誤差等の製造ばらつきにより信号線と壁面が接触せず、所望の特性が得られない場合がある。本稿では信号線と壁面の接触が不要なエンドランチ型WG-MSL変換器について提案し、基礎検討を実施したので報告する。
マイクロストリップ線路(MS)などの平面回路は集積度が高く、MMICなどの能動回路との適合性が高い。対して導波管(WG)は耐電力が高く、低損失が要求される場合に用いられる。そこで両伝送線路の長所を同時に得るために低損失な変換が検討され、リッジWGを用いた変換構造が提案されている。本論では導波管内にMMICを実装することを目的として、リッジWGを用いたシンプルなWG-MS変換構造を提案する。
載レーダに用いられる77GHz帯では検知距離が100mを超えるとレーダビームが対向車線側へも照射され,対向車からの反射波が偽像としてレーダ信号処理されるという課題があり,これを解決するために欧州では140GHz帯ミリ波の利用によってレーダビームを超鋭角にすることが検討されている.本論では誘電体チューブ挿入金属ロッド伝送線路DTMライン(Dielectric-tube-supported Metal Rod Transmission Line)を用い,140GHz帯DTMラインの特性を評価する際に必要となるDTMライン-TE10方形導波管(WG)変換器を電磁界シミュレーションソフトウェアHFSSを用いて設計したので報告する.
差動線路は高周波回路によく使われており,ミリ波ではバランの損失を避けるために,差動線路から直接,導波管に変換する伝送線路変換回路が必要となる.金属のバックショートからなる導波管変換器は広帯域特性を有するが,構造が複雑である.本研究では,多層基板の積層構造を利用した,バックショート導波管差動線路変換器を設計した.多層基板を構成する特定の層にスロットパターンを設けパラメータを変化させることで,共振帯域を追加し制御でき,これらを最適化することで広帯域特性が得られることを示した.
基板内導波管(SIW : Substrate Integrated Waveguide)は狭壁幅が狭いため,導波管から給電する伝送線路変換器は狭帯域になりやすい.本研究では,300 GHz帯で用いられる多層基板の積層構造を利用して基板内にバックショート構造を構成し,導波管SIW変換器を設計した.SIWの広壁幅を500 μmとし,整合ビアと整合パッチを配置した.電磁界解析で最適化した結果,設計周波数274 GHzでは,反射量が-12.2 dB,透過量が-1.3 dB であり,S11≦-10 dB となる周波数帯域幅54 GHzが得られることを明らかにした.
300 GHz帯においてポスト壁導波路(SIW)とマイクロストリップ線路(MSL)とを接続する変換器を検討している。変換部周辺に導体層と導体ビアから成るスタブを形成することによって、厚さの異なるSIWとMSLとを低損失をもって接続している。
休 憩(14:45 再開) 座長 石川 亮(電通大)
C-2-49 |
ナノダイヤモンドに磁界を印加するための平行平板線路-同軸線路変換器の設計
◎神内崇志・佐薙 稔(岡山大) |
C-2-50 |
CRLH伝送線路における非相反性の電子制御
○△安田秀史・上田哲也(京都工繊大) |
C-2-51 |
双方向通信用の非相反メタマテリアル擬似進行波共振アンテナ
◎井手口拓夢・上田哲也(京都工繊大) |
C-2-52 |
多層構造を用いた透過型メタサーフェス屈折板のユニットセル設計方法
○吉川博道・米原正道・平松信樹(京セラ)・中野久松(法政大) |
C-2-53 |
CRLH伝送線路を用いた小型化ブランチラインハイブリッドと共振リアクタンス回路によって構成されるアナログ移相器
◎本吉佑冴・中津川征士(函館高専) |
C-2-54 |
LC はしご形非等電力分配器を用いた 5 分岐回路の一構成法
◎△福永祥利・河合 正・榎原 晃(兵庫県立大) |
ナノダイアモンドに2.87GHz帯のマイクロ波磁界を平行平板線路を用いて印加する際に必要となる平行平板線路-同軸線路変換器の設計を行った。
近年,非相反右手/左手系複合(CRLH)メタマテリアル線路の漏れ波アンテナ応用に関する研究が行われている.フェライトを含む非相反CRLH線路では,外部印加直流磁界の変化による非相反性制御が検討されているが,動作周波数の変動が問題となっている.そこで.非相反性制御の別の手法として,構造の非対称性を変化させることが既に提案されている
本稿では,バラクタダイオードを用いて垂直磁化フェライトを含むCRLH線路構造の非対称性を動的に変化させ,非相反性を電子制御することを実験的に確認した.
ビーム走査漏れ波アンテナとして,垂直磁化フェライト基板右手/左手系複合(CRLH)線路で構成した非相反メタアンテナの提案および送信アンテナとしての検討が行われているが,送受信を同時に行うことはできない.そこで本稿では,2本の非相反CRLH線路を近接配置した双方向通信用の擬似進行波共振アンテナを提案し,数値シミュレーションにより送受信特性を調べたので,これを報告する.
近年、透過型メタサーフェスを用いたアプリケーションが盛んに研究されており、その応用例として屈折板、レンズが挙げられる。さらにアンテナの指向性制御においても透過型メタサーフェス技術が使用されている。これらの設計においては、メタサーフェスを構成する各ユニットに対して所望の透過位相を与えることで実現させている。我々は、ミリ波帯において水平および垂直偏波対応の屈折板を提案している。屈折板を設計する上でメタサーフェスの各ユニットセルの透過位相は、波動光学的な計算により簡易に求めることが出来る。ユニットセル設計における位相実現に対しては、電磁界解析によって透過、反射、透過位相の3種類を所望の特性にするように調整される。
本報告では、ユニットセル設計に対してフィルタ理論を用いることを提案する。原型ローパスフィルタから周波数変換することでユニットセル設計が可能であることを示し、低反射損失となるときの透過位相の変化量と共振器の関係を明らかにする。
Massive-MIMOのデジタル信号処理の一部をアナログ移相器によって担うことは,システムの低消費電力化と信号処理の簡易化に貢献できると考えられる.本研究では先行研究を参考に,CRLH線路を用いて構成されたブランチラインハイブリッドと共振リアクタンス回路から成るアナログ反射型移相器を設計し,特性評価を行った.設計においてサセプタンスの相殺を利用し,回路の小型化,設計性の改善,精度向上を図った.また,共振リアクタンス回路を利用し,移相器の位相変化量の増大を図った.設計された移相器は,1.3GHzから1.5GHzでの挿入損失の偏差が1.33dBであり,1.4GHzにおいて180°を超える位相変化量を得た.
電力分配器はアンテナ給電回路などマイクロ波デバイスにおいて重要な役割を担っており,特にウィルキンソン電力分配器は回路構成の簡単さと優れた特性から 3 ポートの電力分配器としてよく利用されている.しかし,この回路は分布定数理論に基づいて設計されるため,UHF 帯等の比較的低い周波数帯では回路占有面積が大きくなるという問題がある.この問題の解決法として筆者らは,これまでに LC はしご形回路を用いた集中定数素子型非等電力分配器を提案してきた.本報告では,この回路の電力分配比を任意に設計し,これらを縦続接続することで 920MHz 帯において 5 分岐で同相,等分配する電力分配器を構成し,数値解析および電磁界シミュレーションを行っている.
3月10日 9:15〜11:30 5号館 5351教室 座長 池内裕章(東芝)
C-2-55 |
基板実装面積の拡大を可能とする3D配線技術
○篠島貴裕・古賀洋平・坂本宏文・本田祐司・甲斐 学(FCNT) |
C-2-56 |
極低温下での67-116 GHz帯 導波管回路の損失測定
◎増井 翔・小嶋崇文・坂井 了・金子慶子・Gonzalez Alvaro(国立天文台)・小川英夫・大西利和(阪公立大) |
C-2-57 |
超伝導量子コンピュータ向け高断熱多層フレキシブル配線の検討
○河口民雄(東芝) |
C-2-58 |
グラウンドシールド付き150GHz帯CMOSマーチャントバランにおける位相差の改善
◎松崎 豊・楳田洋太郎・高野恭弥(東京理科大) |
近年のスマホは筐体の小型化が進む一方で搭載部品や回路部品数が増大傾向にある.アンテナやRFの回路,配線は一般的に基板表裏面の外周部に配置されることが多い.今回,基板の側面部にRF伝送線路を配置し,適切なGND配線を形成することで3D状に配線を形成し,アンテナやRFの実装面積の拡大を可能とする構造を提案する.
冷却下での導波管回路の特性測定によって、冷却下での挿入損失や導電率などの天文観測用受信機の動作時の回路パラメータを得ることが出来るため、より高性能な受信機を設計する際に非常に重要である。我々は、エクステンダの測定精度が高く、測定系を構築しやすい67-116 GHz帯に焦点を当て、冷却導波管測定系の構築を進めている。非常に高性能に回路の損失を測定するために、真空・冷却ごとの透過特性の再現性を高くすること、断熱導波管などの誤差項を冷却下で校正することに取り組んだ。実際に直交偏波分離器を測定した結果、80 GHz以上では非常に標準偏差の小さい結果が得られた。本稿にて、高精度化の方法及び測定結果、今後の課題について発表する。
近年、量子コンピュータの開発が急激に進んでいる。特に超伝導体による量子ビットは集積化が容易で制御性に優れるため、急ピッチで多ビット化が進んでいる。一方、実用化には10^6~10^8といった数の量子ビットが必要とされており、極低温にて莫大な数の量子ビットを動作させるためには様々な課題がある。本報告では、超伝導量子コンピュータにおける課題の1つである冷凍機内部のRF配線について、高密度化、高断熱化を実現する断熱伝送路について検討した結果を報告する。
第6世代移動通信システム(6G)が注目されており、広帯域の周波数帯がチャネル割り当てされている300 GHz帯の利用が検討されている。300 GHz帯CMOS無線通信機の実現のために、単相IF信号と差動IF信号を変換するための小型であり広帯域なバランが必要である。本研究では、中心周波数150 GHz、帯域40 GHz、位相差は180±1以内のグラウンドシールド付きマーチャンドバランを提案する。小型化のために、縦結合の構造とし、位相差は、シミュレーションを行ったところ、単相信号と差動信号の線路長を入力信号側とオープンスタブ側で異なる長さにすることで、位相差180±1°以内にするこができた。
休 憩(10:30 再開) 座長 河口民雄(東芝)
C-2-59 |
WRG(Waffle-Iron Ridge Guide)技術による140GHz 対応伝送線路の実現
○青木由隆・田中 仁・加茂宏幸(太陽誘電) |
C-2-60 |
レーザ誘起法でポリイミドに作製した炭素系導電膜を用いたスクエアパッチアレー電波吸収体
◎松本壮太・桑野匠邦(青学大)・仁科勇太(岡山大)・須賀良介・黄 晋二(青学大) |
C-2-61 |
円形パッチ配列電波吸収体の等価回路における変成器の巻数比推定に関する研究
○高橋友朗・松本壮太(青学大)・荒木純道(東工大)・橋本 修・須賀良介(青学大) |
C-2-62 |
小型キャビティにおける散逸効果の弱形式理論による摂動論
○加藤初弘・千葉柊哉(山梨大) |
次世代の超高周波伝送線路として期待されているWRG(Waffle-Iron Ride Guide)[1]を用いて140GHz 対応の低損失高性能伝送線路を試作,シミュレーションおよび実測にて特性を評価した.結果は極めて良好で140GHz で単位mm あたりの損失は0.022dB 程度であった
抵抗膜と金属板を 1/4 波長隔てて配置した 1/4 波長型電波吸収体が広く知られており,この抵抗膜をパッチに分割してパターン配列した薄型電波吸収体が提案されている.この薄型電波吸収体の実現には比較的低い面抵抗値を持つパッチを狭い間隔で配列する必要がある.我々はこのパッチを高い精度でパターン生成可能な Laser Induced graphene を用いたスクエアパッチアレー薄型電波吸収体について検討した.
近年提案されている電波吸収体の一つに円形パッチ配列電波吸収体があり,並列共振器と変成器を用いた等価回路モデルによる設計法が提案されている.この変成器の巻数比は比例係数を用いて表せることが電磁界解析を用いた近似により示されているが,この比例係数を理論的に決定することはできていない.そこで本研究では,円形パッチ配列電波吸収体の二つの設計手法の比較による変成器の巻数比推定について検討した.
マイクロ波の共鳴現象を利用した材料特性の測定は小型化によりセンサ応用などが期待されている分野である.共鳴装置の小型化は蓄積されるネルギーが減少することから,表皮効果などによるエネルギー散逸による影響が相対的に増す傾向がある.本研究の目的は,共鳴周波数の変化を弱形式理論の枠組みで散逸を考慮しつつ定式化する方法論の開発を,装置を試作しつつ実証的に進めることである.試作した装置は,直径50mmで厚さ3mmの薄い平板キャビティである.複数のサイズで試料室を作り開発した摂動論の有効性を実証的に確かめる.
C-2. マイクロ波C(マイクロ波・ミリ波応用装置)
3月8日 9:00〜11:45 5号館 5374教室 座長 平野拓一(東京都市大)
C-2-63 |
誘電体小片を付加した誘電体導波路を用いた階跨ぎエリア化実験
○福田敦史・山本大斗・岡崎浩司・鈴木恭宜(NTTドコモ) |
C-2-64 |
DTMライン給電140GHz帯1次放射器の検討
◎宮本大哉・黒木太司(呉高専) |
C-2-65 |
920MHz帯無線通信におけるLCXアンテナ近傍の金属物体によるシャドウイングに関する検討
◎長張永哉・古市朋之・芝 隆司・末松憲治(東北大) |
C-2-66 |
5GHz帯2×2反射型レトロディレクティブアレーの二次元再放射パターンの測定
◎本間優作・ジャン テンガ・古市朋之・芝 隆司・末松憲治(東北大) |
C-2-67 |
MIMO対応300GHz帯CMOSフェーズドアレー送受信機のアンテナ必要性能検討
◎長谷川 司・高野恭弥(東京理科大) |
C-2-68 |
サブテラヘルツ帯向けキャビティ付きパッチアンテナの測定結果
◎西村拓真・早馬道也・長峯巧弥(三菱電機)・坂巻 亮(産総研)・湯川秀憲・深沢 徹(三菱電機) |
今後の移動帯通信において予測される急激なトラヒックの増大に対応するためミリ波帯およびサブテラヘルツ波帯の利用が期待されている。著者らはこれまで誘電体導波路(以下、DWG)を屈曲させることにより電磁波が漏洩する現象を応用したミリ波帯通信エリア形成手法 や、DWGに誘電体小片を付加し、電磁波を漏洩させる漏洩DWG(Leaky DWG:LDWG)による手法を提案してきた。両手法により電波遮蔽物を回避した高周波エリア形成が可能であるが、その有効性に対する定量的な評価は少ない。そこで、LDWGを用いたエリア化ユースケースの一つとして、建物内で階が異なる箇所を同時にエリア化する実験を行った。本報告では、本適用例におけるミリ波エリア化手法の有効性について示す。
77 GHz帯より狭いビーム幅が得られることから140 GHz帯車載レーダが欧州等で研究されている.また準光学的手法によるアンテナは平面アンテナに比べて開口面を大きくしても誘電体損失を抑えられるため有利と考えられる.本論では低損失性を特徴とするDTMライン (Dielectric-tube-supported Metal Rod Transmission Line) を給電線とする140 GHz帯準光学的アンテナの1次放射器に関して数値的検討を電磁界シミュレータHFSSにより行った.
工場内においては生産ラインに沿って,直線状に長い無線通信エリアが求められている.ライン上での組み立て作業においては,アンテナ近傍に金属物体を置くことも想定され,点波源とみなせる従来のアンテナを用いた場合,安定した通信が行えないことがある.そこで,我々はLCX(Leaky Coaxial Cable)アンテナに着目した.本報告では,生産ラインを想定した直線状に敷設されたLCXアンテナとパッチアンテナの 2 種類のケースについて,アンテナ近傍に金属物体を置いた際の電界分布を電磁界シミュレーションで計算し,そのシャドウイングの特性を比較したので報告する.
我々はこれまで一次元レトロディレクティブアレー(RDA)を試作すると共に,一次元RDA用再放射パターン測定系を構築し,その測定結果を報告してきた.本発表では5GHz帯の2×2[2]反射型RDAを試作し,二次元の再放射パターンを初めて測定したので報告する.
RDAへ電波を照射するアンテナと,再放射波を受信するアンテナとのアイソレーションを確保する測定系を構築して測定を行った.結果より試作RDAがx, y方向それぞれに 30◦ の範囲でレトロディレクティブ特性を示すことを確認した.
現在研究開発が進められている第6世代移動通信システム(6G)ではテラヘルツ帯、特に300 GHz帯の利用が考えられている。300 GHz帯無線通信機をCMOS技術を用いて実現する場合、300 GHz帯増幅器を実現することができないため、通信速度を上げられないという課題がある。本研究ではビームフォーミングによってアンテナ利得を上げることで信号帯雑音比を改善し、高速通信を実現するフェーズドアレーMIMOにおいて、距離に応じたアンテナの必要性能をMATLABによるシミュレーションを用いて検討する。シミュレーションを行ったところ通信距離0.1m, 1mでは1ストリームあたり必要アンテナ数が5×5以下で抑えることが出来るが、通信距離5mにおいては6×6としてもBER10-3以下を達成できず、アンテナ1素子あたりの性能向上が求められることが確認できた。
近年、無線通信やセンシングにおいて,テラヘルツ帯やサブテラヘルツ帯で適用可能なアンテナが検討されている.これまでに筆者らは高精度な製造が可能で広帯域なアンテナとして,再配線プロセスと厚銅基板の製造プロセスを活用した中空キャビティ付きの二重パッチアンテナを検討した.本報告では,上記アンテナの測定結果を示す.上記アンテナを試作し測定した結果,物性値の変動や組立公差による特性劣化が見られるものの,本アンテナがアンテナとして動作することを確認した.
休 憩(10:45 再開) 座長 中津川征士(函館高専)
C-2-69 |
複周波数動作J字型モノポールアンテナを用いた簡易地中インパルスレーダの一実験
◎岩本孝太・黒木太司(呉高専)・宮本和哉(宮本機器開発) |
C-2-70 |
AMラジオ放送波利用土壌含水率推定に用いるダイカスト製造平面型コイルとその等価回路
◎高松 陸・岩城昴琉・新浜優貴・新浜貴翔・黒木太司(呉高専) |
C-2-71 |
AMラジオ放送波利用土壌含水率推定における土中コイルの一設計
◎新浜貴翔・岩城昴琉・黒木太司(呉高専) |
C-2-72 |
AMラジオ放送波利用土壌含水率推定における IoTネットワーク構築
◎岩城昴琉・宮本大哉・新浜優貴(呉高専)・宮本和哉(宮本機器開発)・黒木太司(呉高専) |
調査報告の通り、国内における地中レーダ(GPR)の用途はインフラ設備の点検がほとんどであり、他分野での検討を増やしていく必要がある。その1つとして、筆者達は農業分野への応用を検討している。参考文献のように、UHF帯地中レーダを使用して地中に張る木の根を3Dイメージング化する検討がなされており、地中の誘電体、とりわけ自然物を探知できる可能性は示されている。本論ではより深い地中が探査可能なVHF帯において、小形でありながらインパルス動作が可能な、複数周波動作J字型モノポールアンテナを利用して簡易地中インパルスレーダを作成し、地中金属板の検知実験を通してその可能性を検討した。
AMラジオ放送波を用いた土壌含水率推定方法として土中コイルと同軸状アンテナを組み合わせたセンサが提案され、その有用性が確認された。本論では土中コイルの量産性を考慮し、EASシステムで用いられるダイカスト製造平面型コイルを平面型コイルとして中波帯で設計し、その等価回路を検討することにより土壌含水率推定に適した寸法について数値的に検討した。
土砂災害の原因となる土壌含水量を,土壌へ埋設したコイルと接続された同軸状アンテナが,AMラジオ放送波を受信する強度を測定することで推定する手法を検討している.本検討ではこのシステムに利用するコイルの設計手法について検討したので報告する.
広島県は花崗岩が風化して生じる真砂土が広く分布していることから,日本国内において土砂災害が発生しやすい地域となっている.土砂災害による人的被害を抑えるためにはその発生に関係する土壌含水率の推定が重要である.これまで土壌含水率の推定手法としてAMラジオ放送波およびコイルを用いる手法が提案された.本検討では,上記測定系についてポータブルスペクトラムアナライザのtinySAやその他マイコン等を用いて自動測定を行い,IoTネットワークを構築することで遠隔モニタリングを行ったのでここに報告する.
3月8日 13:00〜17:00 5号館 5374教室 座長 關根惟敏(静岡大)
C-2-73 |
電力信号同時伝送のための被変調チャープ信号の無変調波を用いた復調特性評価
◎藤井敏矢・中津川征士(函館高専)・上原秀幸・大平 孝(豊橋技科大) |
C-2-74 |
深層学習による大ゾーン無線システムでの受信電力を用いた無線端末位置推定
◎エンフボルド バトエルデネ・中津川征士・藤原 亮(函館高専) |
C-2-75 |
RTK-GNSS方式による自己位置推定誤差の検討
◎新浜優貴・岩本孝太・黒木太司(呉高専)・宮本和哉(宮本機器開発) |
C-2-76 |
トポロジー法と経験的モード分解を用いたミリ波レーダによる呼吸成分抑圧と心拍非接触計測
◎岩田慈樹・阪本卓也(京大) |
C-2-77 |
ミリ波アレーレーダの円弧状走査を用いた人体イメージング
◎加藤雅也・阪本卓也(京大) |
C-2-78 |
人体等価溶液を用いた義歯管理RFIDシステム通信距離の口腔内義歯位置依存性の測定
◎高寺裕二・本良瑞樹・末松憲治(東北大) |
C-2-79 |
マイクロ波・ミリ波帯人体内脂肪層電波伝搬特性の一検討
◎中村公紀・古市朋之・末松憲治(東北大) |
Socity5.0ではサイバーフィジカルシステム用いた新たな付加価値提供が期待されている.このためには空間に多量のセンサを配置して情報収集し,その結果をフィードバックする必要があるが,センサには電源が必要であり,電源の供給方法として無線電力通信が注目されている.また,電力の無線伝送と同時に情報の送受信が可能になれば,今まで以上に多様なサービスが提供可能となる.一方,無線電力伝送では,送信電力の増大や高効率化が求められ,検討が推進されている. このような研究背景のもと,我々は無線電力伝送の高効率化技術と共存可能な信号重畳技術を検討している. 本報告では 被変調チャープ信号をCWを用いて復調した場合においても,従来のBPSK信号の復調と遜色ないBER特性が得られることが分かった.
5GやIoTの進展で無線を使ったサービスの活用が増々注目されている.これらのサービスでは受信端末の場所に則したプッシュ型/プル型等のサービスの提供が可能であればより利便性を向上させることができる.今回は,LoRA等の大エリアのシステムを想定して,そのサービスエリア内における位置推定を,深層学習を用いて検討した.
広島県竹原市ではたけのこ産業が盛んであるが、生産者の高齢化・人手不足や後継者問題は深刻化している。これらの問題解決と生産効率上昇を目標にたけのこ収穫の自動化を目的とし、たけのこの自動探知、収穫、管理などの作業を全て代行する農業支援ロボットの研究がされている。ロボットは自己位置を確認する必要があるが、竹林内におけるマルチパスの影響によりGNSSの精度が低くなる。本論ではマルチパス環境下におけるRTK-GNSS方式の誤差検討をしたので報告する。
生体信号に伴う皮膚表面の微小変位をレーダにより計測することで呼吸間隔や心拍間隔(inter-beat interval: IBI)を非接触計測することができる.しかし,心拍に比べて呼吸による皮膚変位は極めて大きいため,変位波形に含まれる呼吸成分を抑圧して,IBIを計測することは容易ではない.呼吸と心拍による変位波形がともに含まれる時系列に対して,経験的モード分解を適用し,筆者らが開発してきたIBI推定アルゴリズムであるトポロジー法を特定の固有モード関数(IMF)に適用することで,呼吸を伴う条件下においても高精度なIBIを推定する手法を提案する.
医療やヘルスケアの分野で,レーダによる非接触人体計測への期待が高まっている.特に,呼吸や心拍などの生体計測では,レーダを用いて測定される人体部位によって異なった特徴がみられるため,特定部位のみを選択的に計測することが重要である.これを実現するためには,人体の形状および電波の反射部位を特定する人体イメージングが不可欠であるが,レーダイメージングの生体計測応用は著者らの知る限り報告例がない.そこで,本稿では,生体計測で注目されるミリ波MIMOアレーレーダを円弧状に機械走査させるレーダシステムを試作し,人体イメージングを試みる.
我々は義歯を誤飲した場合や紛失した場合に体内外の判定とともに,その所在を明らかにするための人体内外両用の義歯管理用RFIDシステムの研究を行ってきた.これまでの測定では人体環境を再現するために水を用いていた.本稿では人体の電気的特性を再現した人体等価溶液(NTT-AT SAR評価液剤)を人体頭部形状のモデルに満たし,RFIDタグ付きの部分義歯を前歯,左奥歯,右奥歯の3か所に配置した際の通信距離を測定したので報告する.測定の結果としていずれの配置においてもRFIDタグから人体等価溶液の境界面に近い方向で通信が成立することを確認した.
近年,医療分野等において体内に埋め込むセンサデバイスの開発が行われており,将来,複数のセンサデバイス間で体内組織を介して無線通信を行うユースケースが考えられる.体内組織を構成する層のうち脂肪層は他の層と比べて誘電率,誘電正接が小さく低損失な媒質であることから,脂肪層を介した無線通信が近年注目されている.体内に埋め込むセンサデバイスは小型である必要があることからミリ波帯などより高周波帯での利用が期待される.そこで,本研究では人体組織の脂肪層を介したマイクロ波帯・ミリ波帯の電波伝搬特性について電磁界シミュレーションを行い評価したので報告する.
休 憩(15:00 再開) 座長 片山光亮(徳山高専)
C-2-80 |
センサノード検出用Wi-Fiバックスキャッタ受信機における遅延時間のSNRへの影響
◎藤谷雄紀・古市朋之・芝 隆司・末松憲治(東北大) |
C-2-81 |
k近傍法を用いたMassive MIMO用電力増幅器のベクトル調整器の調整法
◎宮本和哉・楢橋祥一(摂南大)・鈴木恭宜・岡崎浩司(NTTドコモ) |
C-2-82 |
サブテラヘルツ帯シングルキャリア送信機における振幅・位相偏差の補正効果に関する一検討
○山本大斗・福田敦史・青木すみれ・濱田裕史・岡崎浩司・鈴木恭宜(NTTドコモ) |
C-2-83 |
反射波抑制技術を用いた150 GHz帯チャネルボンディング送受信機による128QAM, 20 Gb/s伝送
○濱田裕史・山本大斗・青木すみれ・福田敦史・岡崎浩司・鈴木恭宜(NTTドコモ) |
C-2-84 |
振幅の周波数特性を容易に制御可能な小形キャンセラ回路を用いた自己干渉抑圧量の実測評価
○山浦真悟・西本研悟・稲沢良夫(三菱電機) |
これまで我々は,5 GHz帯Wi-Fiバックスキャッタ,及びセルフミキシングを用いてセンサノード(SN:Sensor Node)を検出するWi-Fiアクセスポイント(AP:Access Point)用の受信機アーキテクチャを提案してきた[1].AP受信機では,受信したWi-Fiバックスキャッタ信号をWi-Fi送信信号によってセルフミキシングすることにより,SNにてOn-Off-Keying(OOK)変調の際に使用されるクロック信号を再生できる.本報告では,遅延時間に対する信号電力,雑音電力密度を定式化し,信号対雑音電力比(SNR:Signal-to-Noise Ratio)を計算したので報告する.
Massive MIMO技術を実装する基地局装置に向けて提案されている利得偏差および位相偏差に優れた3.5 GHz帯電力増幅器構成において,ベクトル調整器に対する高速調整法を提案し,周波数3.245GHzで実験検証している.本稿では,3.245 GHz以外の周波数において提案手法の妥当性を実験検証している.実験結果より,周波数3.27GHz,3.295GHz,3.31GHzにおいて,調整時間はいずれも15秒程度であった.
第6世代移動通信システムの要求条件として,100 Gbpsを超える超高速・大容量化がある.この条件を満たすための手法として,サブテラヘルツ帯を用いた超広帯域シングルキャリア(以下SC)伝送が検討されている .超広帯域SC伝送では,回路素子であるミキサ,フィルタ,アンプなどの帯域内振幅・位相偏差が大きくなり,その結果生ずる符号間干渉が課題となる.著者らは送信機で発生する振幅・位相偏差を補正する構成を提案し,符号間干渉が低減できることを実験により確認した.本稿では,サブテラヘルツ帯を用いた超広帯域SC伝送において,同期外れよるスループットの低下に対し,振幅・位相偏差を補正し符号間干渉を低減できる提案構成は高いスループットを維持できることを示した.
広帯域な100 GHz以上の周波数帯(Sub-THz帯)の活用は,6Gにおける100 Gb/s級の高速無線実現に有効である.既報告のSub-THz帯トランシーバ(TRX)では,Sub-THz帯フロントエンド部に研究開発の主眼が置かれており,ベースバンド(BB)信号,中間周波数(IF)信号の送受信は,任意波形発生器,オシロスコープのような大型で高価な計測器に担わせていた.TRX実用化に向けては,BB/IF部は計測器ではなく,小型で安価なシステム・オン・チップ(SoC)で構成することが望ましいが,SoCのデータレートは最大でも10 Gb/s程度にとどまる.今回,SoCを用いた高速TRXを実現するために,150 GHz帯において,複数のBB/IF信号を周波数多重して高速化を図るチャネルボンディング(CB)を用いたTRX(CB-TRX)を検討した.CBにおいて,合成器(MUX)の内部で発生する反射波が信号対雑音比を低下させるという課題を明らかにし,本課題を解決するための反射波抑制技術を提案,128QAM, 20.44 Gb/sの伝送を達成したので報告する.
キャンセラ回路は,無線通信やレーダの同時送受信を実現するために使用されている.筆者らはこれまでに,2つの可変抵抗器で振幅の周波数特性を容易に制御可能な小形キャンセラ回路を提案し,従来回路よりも広帯域に自己干渉波をキャンセルできることを解析結果より明らかにしている.本稿では,自己干渉波の抑圧量を実測で評価した結果を示す.
休 憩(16:30 再開) 座長 中村昌人(NTT)
C-2-85 |
帯域合成を用いた広帯域デルタシグマDACの検討
○早馬道也・斧原聖史・野田雅樹(三菱電機) |
C-2-86 |
トレリスデルタシグマの周波数特性および振幅安定性の評価
◎山口修平・早馬道也・斧原聖史・野田雅樹(三菱電機) |
デルタシグマDACを用いたダイレクトRF技術は,FPGAなどのデジタル回路から直接アナログRF信号出力を可能にする.一方,デルタシグマDACで利用可能な信号帯域幅は原理的にサンプリングレートの5~10%程度が上限であり,数GHzを超える広帯域信号を実現する場合,数10GHzを超える広帯域信号処理が課題となる.本稿では,複数のデルタシグマDAC出力を同期させ帯域合成することで信号帯域幅を広帯域化する手法を検討,実験により実現性評価を行った結果を報告する.
デルタシグマDAC(Digital Analog Converter) は信号帯域近傍の量子化雑音を抑制できる優れた手法である。近年、FPGA(Field Programmable Gate Array) の大容量化と、デバイスから数10Gbps クラスの高速シリアル信号を直接出力することが可能になり、デルタシグマDAC を用いてデジタル回路から直接RF(RadioFrequency) 信号を出力するダイレクトデジタルRF 方式に注目が集まっている。デルタシグマDAC は内部にループフィルタを含み、発散する恐れがあるため安定性が1 つの課題になっている。本稿ではトレリスデルタシグマ[1] の周波数特性や安定性を計算機シミュレーションで評価した結果について報告する。トレリスデルタシグマでは通常のデルタシグマと比べて周波数特性が改善され、安定性が向上することを示す。
C-3/4. 光エレクトロニクス/レーザ・量子エレクトロニクス
3月7日 9:00〜11:45 2号館 2205教室 座長 西山伸彦(東工大)
[LiDAR]
C-3/4-1 |
除錆レーザ安全装置用FMCW LiDARの光照射位置の検討
○上野雅浩・川村宗範・坂本 尊・津田昌幸(NTT) |
C-3/4-2 |
SiフォトニクススローライトFMCW LiDARのリアルタイム高速測距システムの構築
○玉貫岳正・山崎竣平・安藤雅隆・馬場俊彦(横浜国大) |
C-3/4-3 |
SS-OCT方式ディジタル光センサにおけるIQインバランスの一検討
○山内隆典・園 直樹・後藤広樹・小竹論季・今城勝治(三菱電機) |
C-3/4-4 |
適応ノイズキャンセラを用いた光ファイバーベースレーザードップラー振動計の外乱緩和手法の検討
○木村広太・藤井亮浩(OKI) |
C-3/4-5 |
回転体の振動計測のためのスペックルの影響の低減方法の検討
◎山﨑 佑・藤井亮浩(OKI) |
インフラ設備の除錆ではレーザ工法が注目されているが、除錆用レーザ光照射時の周囲の損傷回避のため、微弱な錆反射光に対応可能なFMCW LiDARベースの除錆対象検知装置の開発を進めている。除錆用/LiDARレーザ光の同軸化は、除錆箇所の時間的状態変動に起因したLiDAR測距の安定化を阻害するが、安全性確保のためには両レーザ光の近接が望ましい。測距の安定性を確保できる距離を実測したので報告する。
自動運転や空のモビリティへの適用を目的とした,小型,軽量,低消費電力なSiフォトニクス非機械式FMCW LiDARが開発されている.我々は,フォトニック結晶スローライト導波路回折格子SLGアレイによる非機械式光ビームスキャナを実証し,さらにFMCW用コヒーレント検波器までを搭載したLiDAR素子の動作も報告してきた.今回は,同素子を電気的に高速駆動し,リアルタイム測距画像を高速表示するシステムまでを構築したので報告する.
我々は距離測定の一手法として波長掃引型光干渉断層計(SS-OCT)をベースとした光センサを提案している.周波数変調方式ライダと同様に波長掃引光源を用いて,対象物までの距離に比例するビート周波数を持つ光を受光したのちフーリエ変換して得られるスペクトルを用いて測距する.本方式は,ビート周波数スペクトルの得られる距離範囲が瞬時周波数の逆数であるコヒーレンス長によって制限される.さらに,光路長差が等しい点である零点を中心として絶対値の等しい周波数をもつ折り返しスペクトルピークが生じるため,測定可能な距離範囲はコヒーレンス長の半分に制限される.この課題に対して,コヒーレント受信機であるICRを用いた直交検波によって信号の折り返しピーク強度を抑制する技術が報告されている.このとき,I信号とQ信号の位相差は90°からの差分であるIQインバランスの補正により,折り返しピーク強度を抑制できる.本研究においては,IQインバランスの波長依存性の評価と補正によってさらに抑制した.
著者らは, レーザードップラー振動計の開発に取り組んでいる. 振動計本体とセンサーヘッドの間を光ファイバー接続した光ファイバーベースレーザードップラー振動計では, 光ファイバーを長延化することで遠方の対象物の振動測定が可能となる. しかし, 光ファイバーに加わる外生的振動により光ファイバーの屈折率が変化し, その振動が測定結果に重畳することで結果が不正確になる問題がある. これを回避する手法として著者らは二つの光源を用いる手法を提案している. 具体的には, 対象物の振動検出用の光源とは別に, 光ファイバーに加わった外乱振動のみを検出する光源を用いることで, 外乱振動を相殺する手法である. しかし二つの光源の間に光路差が生じると外乱振動の緩和精度が劣化する課題がある. 本稿では適応ノイズキャンセラ (ANC: Adaptive Noise Canceller) によってこの課題を解消する手法を実証したので報告する.
レーザードップラー振動計は非接触で対象の振動や変位などを計測できる利点があり、回転体の計測などで需要がある。しかし、照射表面が絶えず変動している場合、スペックルの影響がスパイク状のノイズとして現れる。本研究では、スペックルの影響が大きくなる回転体の振動計測を行うために、波長を用いたシグナルダイバーシティとスパイク部分の補完を組み合わせることでその影響の低減を試みた。その結果、回転体においても小さな誤差で計測可能であったので報告する。
休 憩(10:30 再開) 座長 加藤和利(九大)
[光部品・センシング(1)]
C-3/4-6 |
(依頼講演30分)光通信・計測向けの高深度光変調器型超広帯域コム光源
石島 樹・原田 駿・○坂本高秀(東京都立大) |
C-3/4-7 |
(依頼講演30分)超小型外部共振量子カスケードレーザの高性能化
○杉山厚志・落合隆英(浜松ホトニクス)・古川祐光(産総研)・枝村忠孝・秋草直大(浜松ホトニクス) |
C-3/4-8 |
光集積型キャビティリングダウンへの1680nm帯光増幅器基礎検討
◎野口峻平・吉田理矩・河崎泰成・姜 海松・浜本貴一(九大) |
光コムとは等間隔な周波数スペクトル成分を複数持つ 光源のことである。光通信・計測などに応用するために は広帯域で各スペクトルが平坦でありあることが重要で ある。本論文では、光変調器を用いた超広帯域平坦光コ ム発生に関する近年の技術を紹介する。特に、我々が最 近実証した直列多段による高効率超広帯域平坦光コムの 発生について紹介する。
MEMS技術を用いて指先サイズの外部共振型量子カスケードレーザ(QCL)を開発した。超小型でありながら、中心発振波長に対して25%以上の広帯域波長可変と最大ピーク光出力1W以上の高出力を達成した。分光機能を有する中赤外レーザ光源であり、透過計測や反射計測の赤外分光データを遠隔かつ高速で取得することを可能とする。さらに、データ収集系を最適化することで100ミリ秒以下の計測時間で分光データを取得できることを実証した。中赤外分光技術のフィールド応用を強力に後押しすることで、新しい分析市場の開拓が期待できる。発表ではレーザ構造とその特性の詳細を報告し、いくつかの分光実験例を紹介する。
光路長を等価的長尺化できるキャビティリングウン分光法(CRDS)を光集積回路で実現することを検討している。ガスセルに相当するセンシング光導波路の損失を補償する目的で、光増幅器を導入する手法が有効である。糖尿病マーカであるアセトンは、吸収波長が1680 nmであり、この波長帯の光増幅器に関する知見はあまり蓄積されていない。今回、この波長で入手可能な光増幅器として、市販の1680 nm帯半導体光増幅器を用いて基礎検討を行った。
3月8日 9:00〜11:45 2号館 2205教室 座長 西村公佐(KDDI総合研究所)
[光・THz無線(1)]
C-3/4-9 |
高速波長可変レーザとアレー導波路回折格子を用いたテラヘルツパルス波発生
◎桝冨直人・白水孝始・清木直哉・松本 凌・三上裕也(九大)・上田悠太(NTT)・加藤和利(九大) |
C-3/4-10 |
光ファイバの波長分散を用いた4アレーフォトミキサによるテラヘルツ波ビームステアリング
◎浅野 葵・近藤和哉・土居 諒・三上裕也・加藤和利(九大) |
C-3/4-11 |
光無線給電におけるシリンドリカルレンズ系によるビーム形状制御
○森山健太・浅葉 薫・宮本智之(東工大) |
C-3/4-12 |
光無線給電の移動体給電における太陽電池とモーター動作点の検討
○須田祐輔・宮本智之(東工大) |
C-3/4-13 |
太陽電池搭載小型ドローンの光無線給電による垂直飛行動作
◎菊地悠登・渡村友哉・宮本智之(東工大) |
C-3/4-14 |
Investigation of Safety Distance for the Safety System for Optical Wireless Power Transmission System using Depth Camera
◎Chen Zuo・Tomoyuki Miyamoto(Tokyo Tech) |
将来の大容量な無線通信のためにテラヘルツ波がそのキャリアとして注目されている。我々はテラヘルツ波をフォトミキシングにより生成する研究に取り組んでおり、加えてパルス化による無線通信の大容量化を目指している。
従来の二つのレーザを用いるフォトミキシングはシステム規模や消費電力を削減する余地が十分にある。先行研究では単一の波長可変レーザからテラヘルツ波が生成可能であり、パルス波の生成も確認している。しかし波長可変レーザから目的外の周波数の光が出力され、所望のパルスに混じり雑音パルスが生じていた。
今回アレー導波路回折格子を用いて雑音パルスを抑制したテラヘルツパルス波の生成を確認したので報告する。
近年のデータトラフィック量の爆発的な増加に対応するためテラヘルツ波を用いた高速・大容量無線通信が注目されている。テラヘルツ波は、大気中での減衰量が大きいため出力強度の増大、受信方向への強度集中が課題である。そこで我々は、フォトダイオードとアンテナをアレー化し、アンテナ間のテラヘルツ波の位相差を光ファイバの波長分散によって変えることで電波の方向を制御するビームステアリングを行っている。より実用的な強度と指向性をもつビームステアリングのためにはアレー数の増加が望まれる。今回、2種類の光ファイバを組み合わせ4通りの波長分散特性をもつ光路を構成し、4アレーのビームステアリングに成功したので報告する。
光無線給電(OWPT)はビーム回折(拡がり角)が小さいことから遠距離向けシステムとして有望である.一方で,機器上に搭載した太陽電池の状況に応じて,位置・姿勢に最適なビーム形状照射する必要がある.位置の変化する太陽電池へのOWPT効率は,ビーム位置ずれ,ビーム形状の太陽電池形状との整合性などが影響する.光源が円形や正方形などの場合,光源に正対した太陽電池への有効なビーム照射は容易だが,正対していない場合の照射ビーム形状は水平距離に依存した歪みのため給電効率低下要因となる.本研究ではX,Y軸方向に独立にビーム径制御可能なシリンドリカルレンズ光学系を提案している.今回,太陽電池の位置に応じた最適なビーム形状でビーム送出のため光学系の設計と,実験的特性評価したので報告する.
電気自動車やロボットなどの地上走行型モビリティでは,長い充電時間や搭載バッテリ―重量などが課題である.その解決に走行中給電が期待される.走行中の無線給電により連続走行や長距離移動が可能で,充電時間などの無稼働時間の削減も可能,さらにバッテリー搭載が不要になり,CO2排出やコストなどの削減も期待できる.
我々は光ビームと太陽電池で構成される光無線給電による移動体への走行中無線給電の実現を検討している.光無線給電は小型で100 m以上の長距離給電,電磁ノイズなしなど優れた特徴を持つ.これまでに基礎検討としてミニ四駆(玩具)を利用し,インフラを含む光無線給電システムの構成を検討してきた.今回,光利用効率改善と太陽電池負荷条件を検討したので報告する.
本研究は小型で長距離対応可能,電磁ノイズなしの利点をもつ光無線給電(OWPT)によるドローンの飛行中無線給電を目指している.これまでに地上に固定設置した太陽電池からの小型ドローンへの配線により垂直浮遊最大64 cm(光出力24.4 W)などを報告した.今回,実際に太陽電池を搭載した小型ドローンの垂直飛行動作を確認したので報告する.
The safety for the optical wireless power transmission (OWPT) are important for practical use. The safety system that uses computer vision method with depth camera to attain safety for the normal operation of the OWPT have been investigated, and a new feature called Safety-Distance have been considered. Safety-Distance between a light beam and an entering object assures the safety for the operation of OWPT. In this report, experiments with conditions of different depth range characterized the performance of the safety system.
休 憩(10:45 再開) 座長 岩井克全(仙台高専)
[ファイバデバイス]
C-3/4-15 |
空孔偏心リングコアファイバにおける群遅延広がり制御
○西島 遼・佐藤孝憲・藤澤 剛(北大)・森 崇嘉・坂本泰志・山下陽子・今田諒太・中島和秀(NTT)・齊藤晋聖(北大) |
C-3/4-16 |
低雑音性プラスチック光ファイバによる高速マルチモード光ファイバ通信リンクの安定化
◎村元謙太・小池康博(慶大) |
C-3/4-17 |
1×2ラッチングマルチコアファイバ光スイッチ
○島川 修・田中正人・田澤英久(住友電工) |
C-3/4-18 |
DWDM channelized all-fiber OAM mode generator based on the helical long-period fiber gratings
○Zhang Meng・Naruya Mochzuki・Shiryu Oiwa・Hongpu Li(Shizuoka Univ.) |
MDM伝送では,各モードの群速度が異なることに起因する群遅延広がり(Group Delay Spread: GDS)の増大によるMIMO(Multiple-input Multiple-output)信号処理の複雑化や消費電力の増加が課題である.その解決策として,ファイバに曲げやねじれを加え強結合状態を形成させることにより,GDSが伝搬距離の平方根に比例するようになり,GDSの増加を抑制できることが知られている.これまで,FMFにおける強結合状態の形成を促進するための偏心リングコアファイバ(Ring-core Fiber: RCF)を検討してきた.FMFでは,強い曲げやねじれを加えることで強結合状態へ移行しやすくなるが,損失が増加してしまう懸念点がある.そこで本報告では,曲げによる損失を考慮した,3モードを導波する空孔偏心RCFのGDS低減について報告する.
本研究室ではこれまでに低雑音性屈折率分布型プラスチック光ファイバ(GI型POF)を提案し、短距離光リンクにおいて安定な高速データ通信が可能となることを実証してきた。本稿では、石英系光ファイバに基づくマルチモード光ファイバ(MMF)リンクにおいて、石英系MMFの手前側に低雑音性GI型POFを接続することによっても同様にデータ伝送を安定化できることを明らかにした。本手法により、通常の石英系MMFリンクに低雑音性GI型POFを追加するだけという簡易な構成にて、データ伝送を安定化することが可能となる。
マルチコアファイバを用いた伝送システムを実現するには、周辺部品、例えば光線路を冗長化する光スイッチが必要である。MEMS型は既に報告済みであるが、状態保持のためには連続通電が必要である。当稿では、自己保持機能(ラッチング)を持つ非結合4コアMCFの1×2光スイッチを試作して評価した結果を報告する。
So far, the orbital angular momentum mode-division-multiplex (OAM-MDM) in combination with dense-wavelength-division-multiplex (DWDM) is considered to be one of the prospect solutions that can considerably enhance the capacity of the current DWDM fiber communication system. To realize such system, the OAM converters enabling to convert the low-order mode into specific high-order OAM mode are essentially demanded. In this study, a multi-channel OAM mode generator with both the full C-band coverage and the ideal DWDM channelization is proposed and experimentally demonstrated for the first time, which is realized by using two specially made helical long-period fiber gratings (HLPGs) and a phase-only sampled multi-channel fiber Bragg grating (MFBG).
3月8日 9:00〜11:30 2号館 2206教室 座長 田中信介(富士通)
[次世代光通信・情報処理]
C-3/4-19 |
光OFDM信号アド/ドロップマルチプレクサ用多入出力集積型光フィルタ
◎古河大和・瀧口浩一(立命館大) |
C-3/4-20 |
MMI型光復号化回路における解析的動作実証
○相川洋平・植之原裕行(東工大) |
C-3/4-21 |
次世代エッジ/クラウドコンピューティング基盤におけるシリコンフォトニクス光スイッチング技術の遅延特性改善に関する研究
◎金 泰来・植之原裕行(東工大) |
光直交周波数分割多重(Orthogonal frequency division multiplexing: OFDM)は、互いに直交するサブキャリアチャネルを信号のボーレート間隔で配置して多重化する。そのため、周波数利用効率が高い光通信(1 baud/Hz)を実現することができる。OFDM信号のチャネル分離には、フーリエ変換が必要である。これまで、光フーリエ変換回路構成の1入力多出力型の光フィルタを用いて、光領域直接で光OFDM信号のチャネル分離を行ってきた。
今回、光OFDM信号アド/ドロップマルチプレクサ用として、特性可変の多入力・多出力ポートの集積型光フーリエ変換フィルタを設計、作製した。その構成、動作原理、透過特性について報告する。
CMOS技術における処置遅延の問題を解決することを目的として,現在,プロセッサチップ内への光技術の導入が注目されている.本研究は,そのなかでもプロセッサにおける命令解析に着目し,復号化回路の実現を目指すものである.とくに,多モード干渉計(MMI)を用いることで,従来構造を機能集積する点が新規的である.検討の結果,4x4 MMI構造を用いて,2-bitの復号化回路を実現できることを明らかにした.さらに,有限要素法解析によって,符号のパターンに応じてそれに紐づくポートからのみ光信号を取り出すことに成功した.なお,その際の消光比は3.3 dB であった.
Beyond 5G/6Gにおける低遅延性実現を目的としたエッジ/クラウドコンピューティング基盤における低遅延データ転送を実現のため、光/電気信号変換のない光スイッチを導入したシステム技術の基本検討が進められているが、Ethernet フレーム処理の範囲でレイヤ2ラベルで宛先処理を行う手段では、その制約により遅延が影響を受ける課題がある。今回、低遅延性能改善を目的としてペイロードと時間並列・波長多重ラベルのシリコンフォトニクス光スイッチへの適用を検討して、10Gbps NRZ OOK信号を用いて、2ビット並列ラベル認識による低遅延スイッチングをSiPhotoスイッチで実現した。100nsを下回るスイッチ制御信号生成遅延、数ナノ秒でのスイッチ遷移時間が得られた。
休 憩(10:00 再開) 座長 柳生栄治(三菱電機)
[光制御(1)]
C-3/4-22 |
(依頼講演30分)シリコン光導波路の透過・反射特性及び非線形光学損失の評価
○徳島正敏(アイオーコア) |
C-3/4-23 |
シリコン光チップ結合のためのSMFから成長させたポリマーテーパピラー
◎栗澤大河・紙浦欣輝・藤川知栄美(東海大)・三上 修(マレーシア工科大) |
C-3/4-24 |
シリフォトチップとの高効率結合のためのポリマースポットサイズエキスパンダ
◎紙浦欣輝・栗澤大河・藤川知栄美(東海大)・三上 修(マレーシア工科大) |
C-3/4-25 |
(依頼講演30分)多モード干渉シリコン導波路を用いた高速Ge/Siフォトダイオード
○上村紘崇・松井直樹・泉二玲於奈・前田 暖・杉田丈也(京セラ) |
シリコン光導波路に関して、光周波数領域反射率計(OFDR)を用いた光回路内部損失分布の解析手法と、高出力連続光による非線形伝搬損失の解析結果について紹介する.
将来の光通信システムでは,シリコンフォトニクス(SiPh)チップとシングルモードファイバ(SMF)の高効率な結合が不可欠である.我々はこれまでに,フォトマスク直径3µmの開口部からUV光を出射する,あるいは,高開口数(HiNA)ファイバから出射するUV光の回折現象により,両者のスポットサイズを整合するためのテーパ形状の自己形成光導波路が作製できることを示してきた.しかしながら,SMFコア端面とのアライメントが必要であることが課題であった.本研究では,SMFのコアから出射するUV光の照射パラメータを制御することで,アライメントフリーなテーパ形状を有するピラーの作製に成功した.その結果,SiPhチップとの結合効率は最大-0.28dB得られた.
高密度,低消費電力な光インタコネクションのニーズから,シリコンフォトニクス(SiPh)技術に注目が集まっているが,SiPhチップとシングルモードファイバー(SMF)のスポットサイズの違いに起因する結合効率の低下が課題となっている.これまでSMF端面に作製するダウンコンバータによるSiPh チップとの結合を検討してきたが,1 µm以下の精度でのアライメントが必要であった.本研究では,SiPhチップの端面に直接作成するスポットサイズエキスパンダ(SSE)デバイスを提案した.SiPhチップのスポットサイズが,SSEにより,3.83 µmから7.82 µmに拡大し,アライメント精度の緩和を確認した.
偏波無依存型の小型光レシーバ実現のため、シリコン導波路上にゲルマニウムを堆積した導波路型フォトダイオードに関して、高い光電変換効率、高速動作を実現する構造を検討した。シリコン導波路として、多モード干渉型の導波路を用いた構造を設計し、商用ファウンダリで試作を行い、0.8 A/W の光電変換効率と40GHz で -0.1 dBの高速応答を実証した。
3月8日 14:30〜17:00 2号館 2205教室 座長 中川剛二(富士通)
[光部品・センシング(2)]
C-3/4-26 |
(依頼講演30分)シリコンミートロニクスの現状と展望
○高原淳一(阪大) |
C-3/4-27 |
広波長帯域シリコンビームスキャニングデバイスの開発
○渥美裕樹・吉田知也・松本怜典・鴻池遼太郎・榊原陽一・井上 崇・鈴木恵治郎(産総研) |
本講演ではシリコンメタサーフェスに関する我々の最近の研究成果の中から,ミートロニクスに関連の深い多重極子やトロイダル双極子を利用した光制御について,その原理と研究の現状と展望について紹介する.特に完全吸収体への応用について詳しく述べる.
シリコンフォトニクスをベースとしたビームスキャニングデバイスは、小型、高速応答性、低コスト、堅牢性に優れており、自由空間光通信システムへの導入が期待されている。しかし、従来のグレーティングカプラやエッジカプラを出射アンテナとして用いたデバイスは、それぞれ波長帯域、二次元集積に課題を有している。今回、我々はシリコン導波路をチップ表面方向に湾曲させた表面光結合器(エレファントカプラ)をアレイ集積した、広帯域な二次元ビームスキャニングデバイスを開発し、広波長帯域(1530~1590nm)での自由空間信号伝送に成功したのでご報告する。
休 憩(15:30 再開) 座長 島川 修(住友電工)
C-3/4-28 |
(依頼講演30分)近赤外光線免疫療法と光デバイス応用開発
◎佐藤和秀(名大) |
C-3/4-29 |
近接光波長位置の光周波数コム対を対発生する連続波長可変モード同期レーザを用いた分子センサ方式の開発
◎安井健人・小西遥介・秋田 亮・佐藤知洋・髙橋直生・上野芳康(電通大) |
C-3/4-30 |
光周波数コム成分列をプローブ光として標的分子C2H2の吸収線2本を背景分子吸収線から識別検出可能な高感度分子センサー
◎小西遥介・髙橋直生・安井健人・上野芳康(電通大) |
C-3/4-31 |
(依頼講演30分)ヘテロダイン検出多点FBGセンサー
○黒田圭司(北里大) |
近赤外光線免疫療法は、抗体と光感受物質であるIR700DXを組み合わせ、治療部位に近赤外光線を照射することで標的細胞を破壊する超選択治療である。発表者らがそのユニークな細胞死機序を光化学反応によるネクローシスであると証明し、これまでの細胞死と全く異なることから、手術・放射線治療・化学療法・がん免疫療法に次ぐ第5のがん治療法として注目されている。大変有望な治療法といえるが、光照射を必要とする治療法であり、治療に即した光照射デバイスを開発する必要性がある。生体に光を届ける技術開発について話したい。
現在我々は, 光コム対を用いて分子の吸収線複数を同時検出するセンサ方式の開発を目標としており, 全光半導体ゲート型モード同期レーザによって発生した光コム対のうち, 従属的に発生する光コム成分のみを波長掃引して吸収線と共鳴させることで, 単一波長コム使用時よりも安定的に分子センシングが可能であると考えている. 本研究では, 前述した分子吸収線複数の同時検出の前段階として, アセチレン分子吸収線1成分を対象に本方式の動作実証を行い, その吸収特性の吸収率, 近似曲線の線幅, 共鳴光波長位置から, 本方式の測定結果の妥当性を示した. 今後は, 本モード同期レーザの出力光コム対を用いたアセチレン吸収線複数の同時検出を目指す.
波長可変半導体レーザーを波長変調しながら掃引することによって、気体分子の吸収線を検出する方式が実用化されている。しかし、検出対象以外の分子の吸収線がレーザーの掃引波長内にある場合に誤検出を起こすおそれがある。そこで、光周波数コムを用いて2成分の吸収線をほぼ同時に検出することで、ガスの種類を同定することができる。アセチレンとシアン化水素を使用することで、検出対象であるアセチレン分子の吸収線と近い波長に背景ガスであるシアン化水素分子の吸収線が現れる状況をつくり検出を行った。本手法によって、アセチレンの吸収線2本の吸収特性を同一のフォトダイオードによって検出した。また、シアン化水素の吸収線と分離した。
Fiber Bragg Grating (FBG)は温度変化や歪みを検出するファイバーセンサーのヘッドとして活用されている。効率的なセンサー構築には単一ファイバー伝送路にFBGを複数個敷設する必要があるが、そのために時間分割多重(TDM: Time-Division Multiplexing)、波長分割多重(WDM: Wavelength-Division Multiplexing)などの方法が用いられる。本講演では光通信用光源であるDFB(Distributed Feedback)レーザーアレイを光源として用い、ヘテロダイン検出による高感度化を応用したTDM/WDM多点FBGセンサーについて報告する。
3月10日 9:00〜11:45 2号館 2205教室 座長 中津原克己(神奈川工科大)
[設計・シミュレーション]
C-3/4-32 |
広帯域に動作する周期クロススロット型1/4波長金属板
◎柴崎英彦・齋藤裕樹・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-3/4-33 |
スロット導波路配列を反射層上部に設けたゼロシフトミラー
◎成松怜朗・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-3/4-34 |
波長2 µm帯疑似断熱結合器型2モード3-dBパワースプリッタ
○村椿太一・藤澤 剛・佐藤孝憲・齊藤晋聖(北大) |
C-3/4-35 |
三段縦続接続波長無依存カプラ型高トレランスモード合波器
◎△中村航大・藤澤 剛・佐藤孝憲・齊藤晋聖(北大) |
C-3/4-36 |
マッハツェンダー干渉計を用いたペルチェフリーSi波長フィルタのDWDM応用に向けた検討
◎前田健悟・佐藤孝憲・藤澤 剛(北大)・御手洗拓矢・河野直哉・沖本拓也・藤原直樹・八木英樹(住友電工)・齊藤晋聖(北大) |
C-3/4-37 |
エッジカプラを用いたSiN/Siハイブリッド集積計算
○菅野 凌・西端 諒・田邉孝純(慶大) |
局在表面プラズモン(LSP)共鳴とファブリ・ペロー型の導波路(W)共鳴で得られる透過ピークの位置を調整することで,等振幅条件を3つの波長で達成する構造を提案する.広帯域にわたり等振幅で位相差90◦の条件が満たされることを見出し,双峰性の楕円率特性が実現できることを明らかにする.
CO2 レーザーを用いた加工には遠赤外光の光学ミラーが用いられており、我々は誘電体多層膜で電磁界の反射を行い、構造上部のスロット導波路で位相制御を行う偏波変換器を提案してきた。他方で、偏光面で位相差を生じないゼロシフトミラーも光路変更に不可欠な素子であり、金属に直接、電磁界を当てるAu コートミラーが知られている。我々は、位相誤差や損失といった課題を解決するため、スロット導波路を利用したゼロシフトミラーを提案した。本稿ではスロット導波路のフィルファクター f と導波路長 t を調整することで,さらなる楕円率の広帯域化や、入射角の許容度の向上に繋がることを示す。
波長2 µm帯において、疑似断熱結合器型2モード3-dBパワースプリッタを提案する。これまでに提案されたマルチモード3-dBパワースプリッタである、断熱結合器型パワースプリッタは、低損失動作が可能な一方で、断熱的な構造変化を必要とするため、デバイスの長さが問題となる。本研究では、結合部のテーパ導波路構造を最適化した疑似断熱結合器型を採用することで、結合器長の短縮が可能であることを示した。提案素子は全体の長さが236 µm (結合部長さ181 µm)であり、波長2.1 µmにおけるTE0, TE1の両モードの損失、ポート間透過率差がともに1%以内の等分岐動作を示す。
波長分割多重のみを利用する規格に対し,モード分割多重技術を併用することで,波長数とモード数の掛け算で伝送容量を拡大できる.ただし,短距離光通信規格の一つである,CWDM4規格において利用されるOバンド素子は,その動作波長の短さからCバンド素子と比較すると,製造誤差の影響を大きく受けるため,素子のトレランス強化が必須である.本稿では,安価に大容量通信が可能となる,CWDM4とモード分割多重を併用する光通信システムの実現に向け必要不可欠な,広帯域かつ高トレランスなモード合波器として,非対称方向性結合器を三段縦続接続した,三段縦続接続波長無依存カプラ型高トレランスモード合波器を提案する.
波長フィルタは,波長分割多重技術や波長可変光源における重要な素子であり,Si波長フィルタは小型化やアクティブ素子との一体集積化の点で期待されている.これを波長ロッカーとして利用するためには,ペルチェフリー動作による低消費電力動作のため,温度無依存化の設計が望まれる.従来のマッハツェンダー干渉計を用いた温度無依存化設計では,共振周波数間隔を狭くするにつれてアーム長が急激に増加し,これに伴う伝搬損失の増加が問題となる.本研究では,温度無依存化設計にTE-TMモード変換器を組み合わせたペルチェフリーSi波長フィルタの設計を行い,ピーク波長の温度依存性を数pm/K以下に抑えつつ,従来構成よりもデバイス長を30%から50%程度縮小可能であることを示す.
本研究ではシリコンナイトライドとシリコンをそれぞれ逆テーパ構造のエッジカプラにすることで屈折率整合とモードオーバーラップを検討し、構造の最適化を行った。シリコンナイトライド導波路が0.3 µmかつシリコンナイト導波路が0.21 µmのとき最大結合効率96.3%となった。これらに加えてずれとギャップに対するロバスト性についても計算した。1 µmずれたときの結合効率は23.5%と23.8%となった。ギャップに関しては間に空気が1 µmあるときは結合効率が57.9%まで低下するが、屈折率整合材料を入れることで80 %ほどまで緩和される。これらのことから屈折率整合材料で緩和できないずれに対するロバスト性に強い構造を研究する必要がある。
休 憩(10:45 再開) 座長 柴山 純(法政大)
[光制御(2)]
C-3/4-38 |
(依頼講演30分)シリコンフォトニクス光相関器を用いた光パルス波形再生
○近藤圭祐・大嶋広樹・杉原興浩(宇都宮大) |
C-3/4-39 |
オンチップ光パルス測定器に向けた集積型波長フィルタの検討
○早山凌生・大嶋広樹・杉原興浩・近藤圭祐(宇都宮大) |
C-3/4-40 |
リザバーコンピューティングを用いた光パルス波形再生の高精度化
○永井幹治・近藤圭祐・杉原興浩(宇都宮大) |
光パルス波形の測定法として,パルスのスペクトルの時間変化,すなわちスペクトログラムから波形を再生する方法がある.光短パルスの測定器として広く使われている周波数分解光ゲーティング (FROG) の原理もこれに基づく.FROGでは被測定パルスとゲートパルスの時間的な重なりを可変遅延線で走査しながら,パルスの重なり部分の非線形強度のスペクトルを分光器で測定することでスペクトログラムを得る.一方,分光器ではなく波長フィルタの走査によってパルスのスペクトルを分解し,スペクトログラムを取得する方法があり,本研究では,この方法に我々が研究してきたシリコンフォトニクス光相関器を応用した光パルス振幅・位相再生デバイスを提案する.
光短パルスの波形測定には周波数分解光ゲーティング法 (FROG) やSPIDERが用いられているが,これらは空間光学系で構成されているため, 大型で,機械的に脆弱である.我々はシリコンフォトニクスを用いて,これらの難点を克服可能なオンチップ光パルス波形測定器を研究している.これは光相関器と波長可変フィルタで構成され,光相関器については我々が研究してきた導波路型光相関器を用いることで集積化を実現している.本研究ではパルス波形測定器全体の集積化に向けて,これに適した集積型波長可変フィルタを検討,評価したので報告する.
我々はシリコンフォトニクスを用いて製作したオンチップ光相関器を研究してきた.さらに,最近ではその光相関器と,波長可変フィルタによる光パルスの周波数分解を組み合わせることで,位相を含むパルス波形を再生できることを実証している.しかし,この手法では光相関器において相互相関を取るときに用いるサンプリングパルスが被測定パルス自身であることが原因で,理論的に元の波形を完全に再生できない.この誤差を数値計算によって補正することは困難であり,本研究の問題となっている.今回,人工ニューラルネットワークの一種であるリザバーコンピューティングを用いて,再生した波形の誤差の補正を試みたので報告する.
3月10日 9:00〜11:45 2号館 2206教室 座長 丸山武男(金沢大)
[光・THz無線(2)]
C-3/4-41 |
短波長400nm帯レーザによる小型ドローンへの光無線給電の検討
菊地悠登・多井楢葉・高橋 倭・◎渡村友哉・宮本智之(東工大) |
C-3/4-42 |
高出力青色アレイレーザを用いた水中光無線給電の高出力化
宮本智之・多井楢葉・○高橋 倭(東工大) |
C-3/4-43 |
青色ビーム用多層膜反射鏡付きフライアイレンズ系の広入射角度範囲特性の実験評価
◎多井楢葉・高橋 倭・宮本智之(東工大) |
C-3/4-44 |
多数小型IoT端末への光無線給電の給電順アルゴリズムの初期検討
◎△水谷拓都・宮本智之(東工大) |
C-3/4-45 |
光無線給電における赤外差分吸収画像を用いた太陽電池検出
○浅葉 薫・森山健太・宮本智之(東工大) |
本研究は光無線給電(OWPT)によるドローンの飛行中無線給電を目標としている.OWPTは小型で長距離対応やEMIなしの利点を有するが,光源と太陽電池の効率による低い給電効率が課題となる.現状は近赤外帯が有効であるが,報告最高レベルのデバイスでも給電効率50%程度が上限と考えられる.一方,原理的には短波長用の太陽電池の実現でさらなる効率向上が期待され,短波長用高出力光源と太陽電池の高効率化検討も進められている.将来的な高効率デバイス実現に先行して,今回は短波長(青色)レーザとGaAs太陽電池による小型ドローンの飛行中光無線給電動作の実現性を評価した.
水中では電磁波の中で光は透過しやすい.今回,水中透過性の高い青色アレイレーザ(波長455nm)を用い,太陽電池の高出力化を検討した.水中伝搬は,これまで同様に多様な実験条件の適用が容易な水槽を用い,水道水において0.9mの水中伝搬長で実験を行った.受光系は8 cm角の5セル直列接続GaAs太陽電池を適用した.また,太陽電池を適切に動作するためにフライアイレンズ系を用いた.光源光出力30 Wにおいて,太陽電池出力3.6 Wを達成した.なお,出力は水の損失と水槽反射の影響で,水槽無の80%ほどであった.
水中・海中などの環境は『最後のデジタルデバイド領域』と呼ばれる.これはバッテリーや配線の利用に課題が多く,電波の水中損失の大きさから既存無線給電も利用困難なためである.このため水中光無線給電の実現により,新応用の創出も進むと期待している.垂直に近い入射では狭い許容入射角となるが,高入射角では照射面が太陽電池の隣接位置に同形状となるため,反射鏡により照射光を折り返す鏡付きフライアイレンズ系を提案している.これまでに反射鏡にAl反射鏡(反射率0.8程度)を利用し,鏡無しの許容入射角14°に対し35°までの入射角特性を評価した.今回,青色向け多層膜反射鏡を利用し,入射角80°まで評価したので報告する.
IoTでは膨大な端末を利用するが,その応用拡大において電力供給が課題となっている.現状の端末への給電方法はバッテリーか有線だが,バッテリーは持続的給電ができず充電や交換が必要となる.有線は持続的で大電力給電も可能だが,設置の負荷や設置位置の制約などが課題である.そこで本研究は,光無線給電の遠隔充電による給電課題の緩和を目指している.多数の固定設置端末に対して,少数の固定設置の方向可動光源を適用する.本手法では,端末検出と適切な位置への光照射に加え,適切な給電順アルゴリズムの確立が必要である. 今回は,本手法の構成における適切な給電順アルゴリズムの確立に向けて数値シミュレーションを行った.
光無線給電(OWPT)では太陽電池 (PV)の位置、大きさと方位 を光源位置から検出する必要がある。背景光が変化する環境下でも PV を光源側からロバストに検出できることが必要である。本研究で提案する方式では PV で強く吸収される波長と、吸収されない波長の両方で PV とその周囲の画像を取得し、両者の差分画像を作り PV を検出する。本発表では 2 波長の赤外線を使 って実際の GaAs 太陽電池を検出した結果を報告する。
休 憩(10:30 再開) 座長 藤田和上(浜松ホトニクス)
[光集積]
C-3/4-46 |
(依頼講演30分)超広帯域ドライバ集積InP変調器
○尾崎常祐・小木曽義弘・橋詰泰彰・布谷伸浩(NTT) |
C-3/4-47 |
シリコンフォトニクスを用いた小型波長ロッカ素子とレーザ素子の温度同期動作
○鈴木純一・長谷川清智・増山 圭・大畠伸夫・有賀 博(三菱電機) |
C-3/4-48 |
異種材料集積波長可変レーザのための対向ループミラーを用いた共振特性をモニタリング可能なSi波長フィルタの作製
◎佐藤孝憲・藤澤 剛(北大)・御手洗拓矢・平谷拓生・沖本拓也・石川 務・河野直哉・藤原直樹・八木英樹(PETRA)・岡野 誠(産総研)・齊藤晋聖(北大) |
C-3/4-49 |
局発コム光源を用いた多波長コヒーレント受信回路の実験的検証
◎前田隼太郎・福井太一郎・相馬 豪・種村拓夫・中野義昭(東大) |
小型・高速・低駆動電圧を全て同時に実現可能であるn-i-p-n構造のInP IQ変調器を用いた超高速なCDM(Coherent Driver Modulator)について報告する.本CDMではこれまで用いられていた表面実装型から,新たにフレキシブル基板を用いたRFインターフェースに変更することで,約20GHzのロールオフ周波数の改善した.本パッケージに,67GHz超のEO 3dB帯域を有するInP変調器と,90GHz以上のEE 3dB帯域を有するドライバを近接して実装することで,80GHz以上のEO 3dB帯域を実現した.これはこれまで報告されているCDMの中で最も広帯域なCDMである.また,本CDMを用いてIQ変調動作実験を行い,128Gbaud DP-16QAMの良好な変調コンスタレーションまでを確認した.
データセンタにおけるトラフィック量は急増しており、その需要を満たす方法の 1 つとしてデジタルコヒーレント通信の短距離適用が進んでいる。適用される光源には波長安定化機能が必須であり、我々はシリコンフォトニクス技術を用いた小型集積波長ロッカおよびその動作方法を提案している。今回実動作の模擬検証として、波長ロッカ素子とレーザ素子の温度同期動作時における特性を評価したので報告する。
III-V族半導体素子をSOIウェハ上に集積するハイブリッドプラットフォーム技術は近年盛んに研究が進められている.波長可変レーザ分野においては,従来のInPモノリシック集積素子では得られない高性能化や高機能が可能である.以前我々は,個別にアクセス可能な2つの独立した共振モードを有するSi波長フィルタ(以下,モニタラブルSi波長フィルタ)を検討し,これをレーザの外部共振器として用いることで,原理的にはレーザの発振に影響を与えることなく別ポートから共振特性をモニタリング可能であることを提案した.本報告では,産総研300mm試作ラインで作製されたモニタラブルSi波長フィルタの実験測定を行ったので,その結果を示す.
情報トラフィックの急激な増加に伴い,データセンターインターコネクトにおいて低コストかつ大容量の光トランシーバに対する需要が高まっている.複数のレーザ光源に代わり,単一の周波数コム光源を使用することで多波長コヒーレント送受信器のコストと消費電力を削減できる.今回、LOにコム光源を用いた4波長コヒーレント光受信回路をシリコンフォトニクス素子としてコンパクトに実装し,複数の波長において20 Gbaud QPSK信号の復調実験に成功した.低コスト多波長コヒーレントシステムの実現に有用であると期待される.
3月10日 13:00〜17:00 2号館 2205教室 座長 八木英樹(住友電工)
[半導体レーザ]
C-3/4-50 |
(依頼講演30分)93 GHz帯域を有するEA-DFBレーザを用いた420 Gbps PAM8動作
浅倉秀明・西村和樹・○山内俊也・中井義博・高群哲義・岩本晃一郎・鈴木崇功・山口頼儀・谷 健太郎・中島良介・直江和彦(日本ルメンタム) |
C-3/4-51 |
直接変調型DFBレーザによる106 Gb/s×4λ PAM4信号の10 km伝送
○恩河 大・大野修平・中島崇之・中西 慧・笹田紀子・田中進一・中島良介・直江和彦(日本ルメンタム) |
C-3/4-52 |
光負帰還による混合変調レーザの広帯域周波数雑音低減
○吸坂直樹・横田信英・八坂 洋(東北大) |
C-3/4-53 |
25Gbit/s混合変調半導体レーザのファイバ分散耐力の数値解析
○浅見昇輝・横田信英・八坂 洋(東北大) |
集中定数型電極を用いた EA-DFB(electro-absorption modulator-integrated distributed feedback)レーザを用いて,420 Gbps PAM8 動作を確認した。50℃のセミクールド動作にて,3dB帯域93 GHz,動的消光比 3.7 dB,変調時光出力 9.1 dBm,及び良好なアイ開口を確認した。
データセンタの通信容量の増大に伴い400/800 Gb/s光トランシーバの需要が拡大しており,これを実現するための広帯域な光源として,低生産コストかつ大量生産可能で,低消費電力動作が可能な直接変調型レーザに注目が集まっている.我々はこれまで、高い動作帯域を持ち量産性にも優れた直接変調型DFB (Distributed Feedback) レーザを用いて,106 Gb/s PAM4 (4-level Pulse Amplitude Modulation) 信号の2 km伝送を報告してきた.
本発表では,その更なる応用に向けて,CWDM (Coarse Wavelength Division Multiplexing) に対応した4種類の発振波長を有する直接変調型DFBレーザを新規開発し, 106 Gb/s PAM4信号の10 km伝送を実現したので報告する.
近年、デジタルコヒーレント光通信システムによる通信容量の飛躍的増大に注目が集まっている。本システムでは広帯域に周波数雑音を低減した半導体レーザ光源が必要である。我々は、光負帰還法を用いることで半導体レーザの周波数雑音低減が実現でき、周波数雑音低減帯域拡大には半導体レーザの周波数変調帯域拡大が有効であることを明らかにしてきた。また、直接電流変調と共振器内部損失変調を同時に行う混合変調レーザにより変調帯域が拡大できることを明らかにしてきた。本報告では混合変調レーザに光負帰還を施した際の周波数雑音低減特性を解析および実験を通して明らかにした結果を報告する。
近年情報通信量が急激に増加し,データセンタにおける通信量も爆発的に増加している.このため,通信システムにおける通信容量の大容量化が不可欠となっており,低コストな半導体レーザの高速化によってボーレートを向上させたシンプルな大容量システムへの期待が高まっている.直接電流変調時の緩和振動周波数以上の高周波数領域における急峻な感度劣化のため,変調帯域が制限されていた.
この問題を解決するために,直接電流変調と共振器内部損失変調を同時に行う混合変調半導体レーザを提案している.数値解析を通して,25 Gbps NRZ信号での動的単一モード動作条件下で混合変調半導体レーザ出力光の光ファイバ伝送特性において周波数チャープ制御効果による分散耐力増加が確認できたので報告する.
休 憩(14:30 再開) 座長 望月敬太(三菱電機)
C-3/4-54 |
(依頼講演30分)Low-thermal-resistance GaInAsP/SOI ridge-waveguide hybrid lasers
◎Moataz Eissa(Tokyo Tech)・Takehiko Kikuchi(Tokyo Tech/PETRA)・Yoshitaka Ohiso・Tomohiro Amemiya(Tokyo Tech)・Nobuhiko Nishiyama(Tokyo Tech/PETRA) |
C-3/4-55 |
アクティブMMIレーザ適用を目指した垂直回折格子基礎検討
○高津渓一郎・肖 何・川野祐大・姜 海松・浜本貴一(九大) |
C-3/4-56 |
Photon-Photon-Resonance (PPR) control scheme by using active-MMI configuration
○He Xiao・Kiichiro Kodou・Yudai Kawano・Haisong Jiang・Kiichi Hamamoto(Kyushu Univ.) |
C-3/4-57 |
後方DBRによる光子-光子共鳴を用いたGaInAsP半導体薄膜DRレーザの高速直接変調動作の検討
◎高橋直樹・筒井慧悟・Weicheng Fang・勝見駿斗・大礒義孝・雨宮智宏(東工大)・西村公佐・高橋英憲(KDDI総合研究所)・鈴木正敏(早大)・西山伸彦(東工大) |
In recent years, hybrid integration of III-V lasers on SOI by wafer bonding gained attention as on-chip light sources for Silicon photonics. The single-mode hybrid laser is a promising candidate for coherent detection applications such as coherent optical communications and FMCW LiDAR systems. However, hybrid lasers suffer from a relatively high thermal resistance due to the SOI buried-oxide layer, which limits the achievable CW output power. In this work, GaInAsP/SOI ridge-waveguide FP hybrid lasers with low thermal resistance were demonstrated by introducing enhanced heat dissipation structure. In the presentation, design, simulation, fabrication and actual measurement results will be reviewed.
アクティブMMI (multi-mode interferometer)レーザはフォトン・フォトン共振を発現することが可能で、将来の超高速直接変調レーザとして検討を進めている。特に複数の共振ピークを発現させられれば、従来よりも高い周波数領域まで変調特性を実現できる可能性がある。しかしながらこれまで検討してきたアクティブMMIレーザでは、PPRピーク位置を定める発振波長制御が安定せず、その安定化に課題があった。そこで、垂直回折格子導入による、波長制御機構付加を検討している。本報告では、電子線描画装置でパターン描画を行った後に誘導プラズマ型反応性イオンエッチング法によりSOI基板のSi層をエッチングする事で製作した垂直回折格子型導波路を検討したので報告する。
Photon-photon resonance (PRR) in direct modulation laser diode has been widely researched [1] because of the potential of high-speed direct modulation capability apart from the constrain of the regular resonance frequency. Lots of work has been reported to explain the PPR phenomena. However, the theoretical prediction as to peak-height and peak-intensity has not been clarified.
In this work, we investigated the PPR theory in active-multimode (MMI) LD based on the conventional optical-injection locking rate equation and analysed it. As a result, we found that the key parameters to the PPR phenomena: overlap between two interacting lasers.
将来の無線通信において、フロントホール等へのRadio Over Fiber (RoF)技術の適用が期待されている。我々は、その光源として低消費電力で直接変調が可能な半導体薄膜レーザの利用を提案する。そのための要求として、高い周波数での高効率な応答が必要となるため、 光子-光子共鳴 (photon-photon resonance: PPR) を用いることが考えられる。PPRを用いた半導体レーザは、変調速度にブレークスルーをもたらすとして注目を集めているが、位相を含めた共振器長を精密に制御する必要がある。本報告では、そのための構造として後方にPPR用DBRを導入した薄膜分布反射型(Distributed Reflector: DR)レーザを提案し、実証したのでご報告する。
休 憩(16:00 再開) 座長 瀬川 徹(NTT)
C-3/4-58 |
(依頼講演30分)デジタルコヒーレント通信向けモノリシック波長可変レーザ
○石井啓之・黒部立郎(古河電工) |
C-3/4-59 |
S-帯ラマン増幅器用高出力励起光源の開発
○古川拓也・吉田順自(古河電工)・北條直也(古河ファイテルオプティカルデバイス)・伊藤宏和・坂口慶治・田中元幸(古河電工)・関 政義(古河ファイテルオプティカルデバイス)・畳田泰斗(古河電工) |
C-3/4-60 |
Modal Noise Reduction in Data Transmission through Standard Single-Mode-Fiber with 1060nm Single-mode VCSEL and Mode Filter
○Boxuan Zhang・Fumio Koyama・Xiaodong Gu・Susumu Kinoshita・Chang Ge(Tokyo Tech) |
デジタルコヒーレント通信に用いられる狭線幅波長可変半導体レーザとして、レーザアレイ型波長可変レーザやDBR/Ringレーザなどのモノリシック型の波長可変レーザをこれまで開発してきた。レーザアレイ型のものでは、AWG合波器を集積化したDRレーザチップにより、100kHz以下の線幅と19dBmのファイバ出力を達成した。また、小型化が可能なDBR/Ringレーザを新たに開発した。このチップを内蔵した制御回路付き光源モジュールNano-ITLAは、小型プラガブルトランシーバに実装可能である。
近年のデジタルコヒーレント伝送システムでは、大容量伝送を実現するために、ファイバ伝送後の光受信信号対雑音比(OSNR)を向上させる必要がある。誘導ラマン散乱を用いた分布ラマン増幅 (DRA) は、OSNR を改善するためのよく知られた手法である。約100nm 程度信号光波長よりも短波長の励起光源を用いることで、任意の信号光を増幅することが可能であることもDRA の特徴の一つである。一方、ラマン利得が小さいために、高出力・低消費電力駆動の励起光源が要求される。また、近年、信号光の高速変調時のスペクトル広がりによる信号帯域の拡大が重要な課題となっている。本発表では信号帯域の拡大を目的とするS-帯ラマン増幅器用励起光源の高出力化に関する報告を行う。
To reduce cost and power consumption, replacing 1310/1550nm DFB laser in data transmission system by 1064nm VCSEL could be a promising scheme. But the higher order mode and the mode noise will become a problem that cannot be ignored in this scheme.
We analyzed the modal noise problem in the system using standard single mode fiber and 1060 SM-VCSEL. We proposed and demonstrated that using mode filter can solve this problem effectively.
C-5. 機構デバイス
3月9日 13:15〜15:30 3号館 3304教室 座長 萓野良樹(電通大)
C-5-1 |
Al/Cu薄板の無衝突電磁圧接用多数ターンコイルの提案
○相沢友勝(都立工業高専) |
C-5-2 |
接点表面から噴出させる気流が開離時アークの継続時間と陰極輝点の移動特性に与える影響
◎服部聖也・関川純哉(静岡大) |
C-5-3 |
48VDC/300A-600A抵抗性負荷回路内で発生させた開離時アークのアーク長さごとの電圧-電流特性
◎居森圭哉・関川純哉(静岡大) |
C-5-4 |
気流噴出構造を有する電気接点対間で発生させた開離時アークの継続時間短縮効果と移動特性
◎神田直輝・服部聖也・関川純哉(静岡大) |
電磁圧接はAl薄板とCu薄板などの溶接接続に適している.両薄板は,主に高速衝突させて圧接されているが,衝突で変形が大きく生じる.衝突させずに,無衝突で圧接する方法もあるが,使用する圧接用コイルが改良されず,無衝突圧接実験はあまり行われていない.ここでは,無衝突圧接用の多数ターンコイルを提案する.
直流回路の遮断時に電気接点対間にて発生するアーク放電の消弧手法として発表者らは過去に電気接点内部から気流を噴出させる手法を提案した.過去の報告において,電源電圧は48V,電流9Aで接点開離速度vが1.0m/sの場合,気流噴出時にアーク継続時間が短くなった.しかし,陰極輝点の移動特性には気流噴出による影響がほとんど見られなかった.
本報告では気流噴出機構を伴う電気接点を用いて過去の報告よりも高い電圧値で開離時アークを発生させた場合の結果について報告する.
近年,自動車の燃費向上のために直流48V系の採用が増えており,この系の回路では数百Aオーダーの大電流が使用される.直流大電流を電気接点の開離により遮断する際,激しいアーク放電が発生する.開離時アークの重要な基礎特性の一つとして,アーク長さごとの電圧-電流特性がある.この特性が分かることで,回路条件から最大アーク長さを調べることが可能となる.そこで本報告では,48VDC/300A-600Aの抵抗性負荷回路で発生させた開離時アークにおけるアーク長さごとの電圧-電流特性について解析した結果を報告する.
電気接点対で直流回路を遮断する際に発生する開離時アークの消弧手法として,発表者らは電気接点内部から気流を噴出させる手法を提案した[1].この報告[1]では,48V/9Aの抵抗性負荷回路を遮断して開離時アークを発生させ,気流噴出構造を有する電気接点を用いて,アーク継続時間の短縮効果が得られることを確認した.
本報告では気流噴出機構を伴う電気接点の形状を変更し、噴出する空気の流量をより増やした場合の結果について報告する.
休 憩(14:30 再開)
C-5-5 |
電磁コンタクタ開離時に発生するアーク放電の力率と周囲雰囲気の影響
◎吉田 清・田陦壮稀・田村 翼・澤 孝一郎(日本工大) |
C-5-6 |
接点開離時直流アーク放電の磁気吹き消し効果への回路条件の影響
○澤 孝一郎・吉田 清・上野貴博(日本工大) |
C-5-7 |
誘導性DC20V-16A負荷回路におけるAgSnO2接点の開離アーク特性
○長谷川 誠・佐々木翔也・小杉尚汰(千歳科技大) |
C-5-8 |
円形ナノホールによるナノピクセル偏波ローテータの検討
○山内健生・嶋村雄太・キム ヨンジン・姜 海松・浜本貴一(九大) |
電磁コンタクタを大気と水素中で開離時アーク放電を発生させ、アーク継続時間ta,アークエネルギーEa,アーク消滅電流,および接触抵抗Rc等を測定した。電源電圧はAC100V、50Hzの商用電源を使用した。閉成時電流Ioは10A一定として、気体圧力を1,3気圧に設定を行い、大気(Air)と水素(H2)の封入気体がアークの諸特性に与える影響を比較・検討した。その結果、大気中では、Ioの変化によるアーク継続時間taに変化がないことが確認できた。一方、H2では気圧が高い3気圧の方がtaは短くなった。
直流回路遮断時には、アーク放電を短時間に消弧するため磁界による吹き消しが用いられる。この場合、低電流でアーク継続時間が最大になる現象が発生する。この現象を把握しておくことは、スイッチ、リレーなどの設計、使用時に重要である。本報告では、この現象への回路条件の影響を調べた。その結果、時定数2ms の回路条件では、抵抗回路に比べ、アーク継続時間のピーク値が3倍程度長くなることなどを明らかにした。
外部磁界印加時に電気接点で負荷電流を遮断すると磁気吹消し現象が生じてアーク継続時間が減少するが、負荷電流値や接点開離速度に応じて影響の度合いが異なる.今回は、この現象に関する検討の一環として、あらためて直流誘導性20V-16A回路にてAgSnO2接点の開離アーク放電特性を観察した.その結果、(1)接点開離速度の増加は主として金属相アークを短縮する、(2)外部磁界印加は接点開離速度10mm/s以上でガス相アークを顕著に短縮するが、開離速度が遅い場合には顕著な影響を及ぼさない、(3)全体的な開離アーク継続時間特性には接点開離速度の影響及び外部磁界印加の影響が複合的に現れる、などの傾向が認めらた.
ナノピクセルによる偏波ローテータとして、矩形エアホールを用いた構造が報告されている。一方で、100 nm前後のエアホールを再現性良く形成することを想定すると、円形エアホールの採用が望ましい。今回、円形エアホールであっても、偏波ローテータ機能の実現が可能であることを確認したので報告する。設計はDBS (Dual Binary Search), FDTD (finite difference time domain) 法を用いて行い、TM/TEモード比として17.0dBが得られた。
C-6. 電子部品・材料
3月9日 13:00〜14:15 3号館 3403教室 座長 中村雄一(豊橋技科大)
C-6-1 |
液滴型摩擦発電機における液滴の挙動の違いが出力変化に及ぼす影響
○永沼良太・田島大輔・青木裕介(三重大) |
C-6-2 |
有機透明導電膜の電気的特性改善
◎松久保 寧・橋本拓磨・武田和大・新田敦司(鹿児島高専) |
C-6-3 |
ペロブスカイト型太陽電池のTiO2電子輸送層における環境調和型Ti錯体水溶液の検討
◎△井宗祐梨菜・來福 至・河西秀典・浦岡行治(奈良先端大) |
C-6-4 |
薄膜軟磁性体の磁区転移を利用した透磁率制御に関する研究
○中居倫夫(宮城県産技セ) |
C-6-5 |
磁気ホログラムメモリ用Bi置換希土類鉄ガーネットの磁気光学特性に及ぼす元素置換の影響
Bin Mohd Daud Ilham Zaki・Sumiko Bharti Singh Chauhan・○中村雄一(豊橋技科大)・水戸慎一郎(東京高専)・林 攀梅(豊橋技科大)・穴井和音(東京高専) |
液滴型摩擦発電機(Droplet-based electricity generator:DEG)が注目されている。DEGでは、誘電材料上に落下させた液滴と誘電材料との摩擦により帯電した誘電材料が、静電誘導により金属電極に電荷を誘導する。液滴が金属電極に接触すると、電極に誘導されていた電荷が外部負荷に流れ発電する。鉛直方向に傾斜した誘電材料上に液滴を落下させると、液滴は形状を変えながら誘電材料上を滑落し、電極に接触する。本研究では液滴の落下位置から電極までの距離が遠いとDEG出力電圧が増加し、ある距離の範囲で出力電圧は最大、更に距離が遠くなると出力電圧が減少することを観測した。DEG出力電圧の変化は、電極接触時の水滴の誘電材料上での濡れ広がり方の違いに対応したものであると考えられる。
現行の透明導電膜はITO(酸化インジウムスズ)薄膜が用いられている.しかし,フレキシブル性に乏しい.また,インジウムは希少金属であるため資源枯渇や高コストとなる問題がある.そこで,ITOの代替材料として高い機械的柔軟性と導電性を示す有機導電性材料のPEDOT:PSS[ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン):ポリ(4‐スチレンスルホン酸)]に着目した.また,成膜にはコストが低いインクジェットプリンタを使用することで安価でフレキシブルな透明導電膜を作製している.本研究では,界面活性剤の添加条件を検討し,透過率90 %以上を満たしながら電気的特性の改善を目指す.
ペロブスカイト型太陽電池(PSCs)の電子輸送層(ETL)には溶液プロセスで作製した TiO2 が主に使用されている。TiO2形成のための前駆体は水溶液系では不溶であるため,有機溶媒の使用が作製上必要不可欠である。そこで本研究では,Ti-citric acid , Ti-glycolic acid ,Ti-lactic acidの Ti 錯体水溶液を原料とする ETL の作製を提案するとともに,作製した薄膜の物性,PSCs を従来の有機溶媒を使用した compact-TiO2(c-TiO2)と比較して評価を行った。その結果,Ti 錯体水溶液を原料としてETLを形成したデバイスは従来材料c-TiO2と比較して,同程度以上の変換効率を得ることに成功した。 また,Ti錯体を用いたTiO2 薄膜は従来のものと比べて表面が平坦であることがわかった。このことは、良好な PSCs の特性を得るために有効な結果であると考えられる。
無線通信を用いた IoT 機器の普及に伴い,電磁ノイズ対策や伝送特性制御が重要性を増している。本研究では,状況に応じてデバイスの電磁遮蔽特性や高周波伝送特性を切替えることで,ノイズ遮蔽モードと通信モード,あるいは伝搬波の反射のモードを切替えることが可能な,低消費電力で駆動するデバイスの実現を目指して,磁性体の磁区転移現象を利用した特性切替え型の素子を検討している。本報告では,この磁区転移現象に伴う磁気特性の制御原理を明らかにするために,細線磁性体を面状に配置した素子においてkHzからGHzの周波数範囲における交番磁界に対する透磁率の評価を行ったので,これを報告する。
磁気ホログラムメモリの記録媒体に適した大きいファラデー回転角と適度な消衰係数を持つ材料の開発を目的として、Bi置換イットリウム鉄ガーネットの希土類サイトへDyを鉄サイトをAlにより置換し、その特性に及ぼす影響について検討した。その結果、今回作製した試料のファラデーループの角形性は良く、飽和ファラデー回転角はDy置換量およびAl置換量が増加するほど小さくなる傾向がみられた。また保磁力は、Dy置換量が増加するほど、またAl置換量が小さいほど大きくなる傾向が見られた。
C-7. 磁気記録・情報ストレージ
3月9日 14:45〜15:00 3号館 3403教室 座長 平山義幸(日本サムスン)
C-7-1 |
SMRにおけるSP復号器の性能改善に関する一検討
○西川まどか・仲村泰明(愛媛大)・金井 靖(新潟工科大)・岡本好弘(愛媛大) |
先に我々は, LDPC(low-density parity-check)符号化・繰返し復号化方式における効果的な繰返し復号を実現するために, 重みを乗じてSP(sum-product)復号器内の列演算におけるLLR(log-likelihood ratio)や, LDPC符号の列重みを考慮して外部情報におけるLLRを調整することが有効であることを示した. 本稿では, パリティ検査情報に基づく重みを乗じて, 正しく復号されている可能性の高いSP復号器内の列演算および外部情報におけるLLRに対して復号利得を高めることで更なる性能改善を図る.
C-8. 超伝導エレクトロニクス
3月10日 9:00〜11:45 3号館 3308教室 座長 明連広昭(埼玉大)
C-8-1 |
NbNジョセフソン接合による単一磁束量子回路の希釈冷凍機下における動作
◎上田伴春・中山彪之助(名大)・宮嶋茂之・寺井弘高(NICT)・Duong Pham・田中雅光(名大)・山下太郎(東北大)・藤巻 朗(名大) |
C-8-2 |
半磁束量子回路のパラメータ設計指針
◎種村匠真・中山彪之助・竹下雄登・Feng Li・田中雅光・藤巻 朗(名大) |
C-8-3 |
超伝導乱数生成器を用いたストカスティック信号分岐回路の設計
◎△浅香海斗・山梨裕希・吉川信行(横浜国大) |
C-8-4 |
Design of A Time and Digital Conversion System for Time-Domain Analog and Digital Mixed-Signal Processing Using Single Flux Quantum Circuit
◎△Zongyuan Li・Yuki Yamanashi・Nobuyuki Yoshikawa(Yokohama National Univ.) |
C-8-5 |
Design of 4-bit Irradiation Time Control Circuits for a Superconductor Microwave Generator Using Single Flux Quantum Circuits
◎Zeyu Han・Hongxiang Shen・Yuki Yamanashi・Nobuyuki Yoshikawa(Yokohama National Univ.) |
NbNベース量子ビットと単一磁束量子(SFQ)回路とのモノリシック実装を目指し、消費電力を抑えるために臨界電流値が小さく設計されたSFQ回路は、外部磁場及び外部雑音の影響を受けやすくなる。これらの影響を抑えるため、我々は磁気シールドや低域通過フィルタなどを導入し対策を施した測定系を構築した。この評価を目的に、NbNジョセフソン接合を用いて試作した基本的なSFQ回路(DC/SFQ-JTL-SFQ/DC)の測定を行った。結果として、外部雑音や外部磁場の抑制の効果は確認したものの、回路の誤動作が確認されているため、対策が不十分である、作製時のパラメータのばらつきなど複数の要因について、現在詳細な調査を進めている。
我々は、単一磁束量子(SFQ)回路のジョセフソン接合を、π接合を1つ含むSQUIDで置き換えることにより、より低電力で動作する半磁束量子(HFQ)回路の研究を行っている。スイッチングエネルギーが小さいHFQ回路は、SFQ回路よりも回路パラメータの選択をより慎重に行う必要がある。また、SFQ回路にはいくつかのパラメータ選定の指針が存在するが、HFQ 回路はいまだ十分な回路の分析がされておらず、設計指針は確立されていない。我々はこれまでに、クリティカルマージンに着目したHFQ回路の最適化プログラムの開発を行ってきた。本報告では、HFQ回路の回路作製に向けた回路パラメータの決定のため、回路パラメータと動作マージンの関係を解析し、HFQ回路を安定に動作させるための設計指針について議論する。
近年、ストカスティックコンピューティング(SC)は確率的演算の一種として、無線信号処理や画像処理など、様々な分野での応用が検討されている。SCを大規模演算回路に応用するにあたって、同一ストカスティック数を複数回使うことによるbit列の相関による演算誤差が課題となる。この問題を解決するために、我々は超伝導乱数生成器を用いたストカスティック信号分岐回路を提案する。この回路を用いてストカスティック数を複製し、複製したストカスティック数同士の乗算結果を理論値との平均二乗誤差を用いて評価を行った。また、この回路の最大動作周波数についても調査を行った。
we believe that the use of SFQ circuit technology for TD-AMS circuit design will gain more energy and computing speed advantages, and also enable the combination of analog SFQ technology and digital SFQ circuit technology, which can be used in more fields. In this work, we designed the SFQ-TDC and analyzed all current SFQ-DTCs. We also designed and simulated some arithmetic circuits using SFQ-TD-AMS technology.
We design a 4-bit irradiation time control circuit for superconductor microwave generator using SFQ circuits. We compared the characteristics of the 4-bit SFQ irradiation time control circuit and the 4-bit AQFP irradiation time control circuit. The proposed circuit area is 84.4% smaller than the AQFP circuit. Moreover, the proposed circuit can work at a higher frequency, at 50 GHz, which means higher precision irradiation time control can be performed than the AQFP circuit. SFQ circuits can accomplish higher precision irradiation time control with a smaller area but need more energy.
休 憩(10:30 再開) 座長 田中雅光(名大)
C-8-6 |
π位相シフトジョセフソン接合を用いた直接結合型量子磁束パラメトロンロジックの設計
○小宮 航・竹内尚輝・山梨祐希・吉川信行(横浜国大) |
C-8-7 |
熱平衡型超伝導ストカスティックメモリの提案
◎羅 文輝(横浜国大)・竹内尚輝(産総研)・陳 オリビア(東京都市大)・吉川信行(横浜国大) |
C-8-8 |
断熱量子磁束パラメトロンを用いた論理ゲートのタイミング特性評価
◎星加 優・吉川信行・Christopher L. Ayala(横浜国大) |
C-8-9 |
A Study on the Neural Network Processing Units Using Adiabatic Quantum-Flux-Parametron Superconducting Technology
◎Mengmeng Wang(Yokohama National Univ.)・Olivia Chen(Tokyo City Univ.)・Nobuyuki Yoshikawa(Yokohama National Univ.) |
C-8-10 |
SFQ論理回路制御による電流パルス源を用いたトポロジカルジョセフソン接合アレイのブレイディング操作
◎船澤卓朗・清水祐希・成瀬雅人・明連広昭(埼玉大) |
断熱スイッチングにより, 超低消費電力で動作する断熱量子磁束パラメトロン(AQFP)回路は, その集積率の低さが課題である. 特にQFPの状態を読み出すトランス構造は, 回路の半分以上の面積を占めており, 集積率向上のボトルネックとなることは明白である. 従って本研究では, π位相シフトジョセフソン接合を用いてトランスを除去した直接結合型量子磁束パラメトロン(DQFP)ロジックの設計を行っている. 本発表では, 設計したDQFP bufferとinverterコンポーネントの組み合わせが, 従来のAQFPロジックより低電力動作かつ高集積化が可能であることを示す.
本研究では、磁束ストレージループとスト化スティックゲートを利用し、出力するstochastic numberの確率分布が動作周波数に依存しない熱平衡型超伝導スト化スティックメモリを提案する。
スティックゲートは、DCバイアス電流を印加することで、常に励起状態になり、ポテンシャルエネルギーの形は常にダブルウェルになる。各パラメータを調整してエネルギーバリアを非常に低くすることで、ゲートの論理状態は熱雑音により揺らぐ。その結果、論理状態の確率分布はボルツマン分布に従うため、ストカスティックゲートの状態を後段回路で読み出すことで、確率分布が動作周波数により変化してしまうという問題を解決できる。
本回路の優位性とパラメータ最適化に関する考察について報告する。
Adiabatic quantum flux parametron (AQFP) circuit is one of the superconductor circuits and can operate at
5 to 10 GHz with extremely low switching energy. We use digital simulation to design large-scale circuits using AQFP logic
gates. It is possible to make circuit design more efficient and accurate by implementing the timing check in digital
simulation. In this study, we characterized the timing parameters of AQFP logic gates. We investigated the appropriate method
to evaluate the timing parameters of the AQFP logic gates in digital simulation.
In this paper, we design and implement an AQFP-based processing unit, the key component of a systolic array, widely used in neuromorphic computing. The proposed design is implemented using the design methodology consisting of logic synthesis, placement-and-routing, simulation, and verification for AQFP circuits. The designed circuit is fabricated using the AIST 10 kA/cm^2 high-speed standard process (HSTP).
トポロジカルジョセフソン接合(JJ)には、2π周期のジョセフソン分数渦が生じる。ジョセフソン分数渦の存在は、トポロジカルJJにマヨラナ束縛状態(MBS)が発生する可能性を示唆する。トポロジカル量子計算は、MBSを任意に制御することで量子計算を行うもので、電流パルスを用いたMBSの制御は、単一磁束量子(SFQ)技術との互換性が理論的に示されている。そこで、本研究では、トポロジカルJJアレイを制御するためのSFQ論理回路を設計した。本回路では、SFQ論理回路で制御されたバイポーラ電流パルス発生器を用いることでトポロジカルJJアレイに対して任意のSFQパルス入力を実現し、トポロジカル量子計算を実行する。
C-9. 電子ディスプレイ
3月9日 15:30〜16:30 3号館 3403教室 座長 志賀智一(電通大)
C-9-1 |
伸縮基板上へのOLEDアレイ形成プロセスの開発
○峰尾圭忠・宮川幹司・武井達哉・辻 博史・藤崎好英・中田 充(NHK技研) |
C-9-2 |
High-Definition Cylindrical POV Displays using 2D-LED Arrays
○ZHONGZHENG XIAO・Ryoma Matsuno・Reiji Hattori(Kyushu Univ.) |
C-9-3 |
マイクロLEDディスプレイ駆動ICの設計
○松野龍馬・Zhongzheng Xiao・服部励治(九大) |
C-9-4 |
フルパララックス裸眼3Dディスプレイにおけるバリア開口形状によるモアレ抑制
○伊達宗和・松本鮎美・北原正樹(NTT) |
映像につつまれるドーム型ディスプレイなど立体的な形状のディスプレイの実現を目指し、自由に形状を変えられる伸縮ディスプレイの開発を進めている。これまでに、伸縮基板上にポリイミド(PI)が形成された非伸縮領域とPIがない伸縮領域を設け、非伸縮領域内にLEDを配置した伸縮LEDアレイを開発している。PIに形成した貫通孔中の立体配線を介してLEDを伸縮配線で接続することで伸縮耐性を改善し、高い伸張率(50%)を実現した。今回、LEDに対して柔軟性やコストの点で有利なOLED(Organic Light Emitting Diode)を発光部に適用することを試みた。OLEDは大気中の酸素や水分による劣化を防ぐための非伸縮の封止構造が必要であるため、伸縮基板上への形成に適した新たな構造とプロセスを開発したので報告する。
POV (Persistence-of-Vision) display is a type of aerial displays. By moving the light source at high speed and emitting light of a specified color at a specific position and angle, this type of display can achieve showing a beautiful picture.
In this study, we developed a cylindrical POV display using an 8*8 two-dimensional(2D) LED array, which is different from current commercial POV displays that use one-dimensional arrays. In this way we can release the limitation to resolution caused by the LED pitch.
マイクロLED (μ-LED)ディスプレイの開発は近年盛んに行われている.μ-LEDの特徴として,液晶ディスプレイや有機ELディスプレイと比べて,輝度の高さ,消費電力の低さ,寿命の長さなどが挙げられる.我々の研究室では, LEDテープを用いたPOV (Persistent of View)ディスプレイの開発を行っているが、その駆動方法を応用してスケーラブルで製造容易なμ-LEDディスプレイの実現を目指している.そのためには伝送速度が速く小型化可能な駆動ICが必須となる.そこで,本発表では,これらの条件を満たすICの開発について報告する.
パララックスバリア型裸眼3Dディスプレイは、バリアの開口部と画素の位置関係により異なる角度の光線を生成することで、観察方向により異なる画像を表示する方式である。開口とバリアを平行に配置する方式ではそれぞれの周期構造の干渉によるモアレが課題となる。これまでに、水平視差のみの表示方式では、ストライプ状のバリアの開口を左右方向に蛇行させることで高い空間周波数成分を無くしたバリアを提案し、モアレを効果的に抑制することを示した。今回、水平だけでなく垂直視差にも対応したフルパララックス表示に適用可能な開口形状を実現したので報告する。
C-10. 電子デバイス
3月10日 9:00〜11:30 3号館 3307教室 座長 藤代博記(東京理科大)
C-10-1 |
(依頼講演)閾値補償を備えたTIQコンパレータベースのフラッシュ型A/Dコンバータ
◎橋本悠平・範 公可(電通大) |
C-10-2 |
(依頼講演)電極/Nb-doped SrTiO3界面の光誘起電流を利用したリザバーコンピューティング
◎山崎悠太郎・甲斐洋行・木下健太郎(東京理科大) |
C-10-3 |
(依頼講演)Si基板上h-BN直接成膜技術とGraphene/h-BN構造を利用した平面型電子源の開発
◎山本将也(静岡大/産総研)・村田博雅・長尾昌善(産総研)・三村秀典・根尾陽一郎(静岡大)・村上勝久(産総研) |
C-10-4 |
(依頼講演)三重障壁共鳴トンネルダイオードのテラヘルツ帯動作モデル構築に向けたアドミタンススペクトロスコピー
◎牧野赳士・須原理彦(東京都立大)・浅川澄人(都立産技高専)・渡邊一世・赤羽浩一(NICT) |
近年,TIQコンパレータと呼ばれるインバータベースの比較器を用いたA/D変換器が研究されている.TIQコンパレータはプロセスや温度の変動に弱いという欠点があり,基準電圧の値が容易に変化してしまうため,A/D変換器の性能の劣化を引き起こしてしまう.この課題を解決するために閾値補償型のTIQコンパレータが提案されているが,その構成に抵抗器を用いているため,回路面積,消費電力が増加している.本研究では,MOSFETのみで構成することで,小回路面積,低消費電力を実現した閾値補償型TIQコンパレータを提案する.
処理速度や安全性の観点から,ユーザーやデータソースに物理的に近い場所で動作するエッジコンピューティングが注目されている.任意のエッジでデータ処理を可能にするためには,高い学習性能を維持したまま計算コストを削減する手法が求められる.その候補の一つが,物理システムのダイナミクスをAI計算に用いる物理リザバーコンピューティング(RC)である.我々は,物理ダイナミクスとして,電極/Nb-doped SrTiO3界面の光誘起電流をAI計算に利用する物理RCデバイスを提案する.本研究では,デバイスが示す光誘起電流の過渡特性を電気的に制御できることを明らかにし,この特性が物理RCに適していることを実証した.
Graphene/h-BN/n-Si積層平面型電子源は,タングステン冷陰極を凌ぐエネルギー半値幅0.18 eVの高単色性電子ビームを放出可能である.本研究では,h-BNのSi基板上直接成膜技術と転写フリーのGraphene/h-BN/n-Si積層平面型電子源の開発を行った.成膜したh-BNは,ラマンスペクトル・光透過スペクトルにより評価し,Cu触媒上BNと同等レベルの光学特性を示した.転写フリーで作製した電子源は,シワやクラックのない滑らかな電子放出面を有し,3mA/cm2の大電流密度の電子放出を達成した.
半絶縁性InP基板上に低温MBE成長で作製したInGaAs/InAs/InAlAsヘテロ構造からなる三重障壁共鳴トンネルダイオード(TBRTD)を作製し、67GHzまでのSパラメータを室温で測定した。特に、三重障壁構造に起因する微分負性コンダクタンス(NDC)を不要な自励振動を避けて測定することができた。
得られた実測データに測定用デバイス構造の電磁界解析を用いた寄生除去法を適用し、TBRTDのメサ部分のみの実測アドミタンスを対象として、スペクトロスコピーを行った。その結果、TBTRDの周波数特性予測には熱浴系と共鳴トンネル系の相互作用に起因する非平衡な電子の緩和現象およびトンネル現象を考慮することが不可欠であることが分かった。これらの定量的な表現として量子輸送パラメータを定義し、そのバイアス依存性を抽出した。
休 憩(10:15 再開) 座長 須原理彦(東京都立大)
C-10-5 |
Printed Spiral Inductorを用いた扉の遠隔からの開閉角度測定システムの改善
◎小林 駿・山内将行・田中 武(広島工大) |
C-10-6 |
ダイヤモンドMOSFETの高速(<10ns)スイッチング動作
◎△白土智基・Niloy Saha(佐賀大)・Seongwoo Kim・小山浩司(Orbray)・大石敏之・嘉数 誠(佐賀大) |
C-10-7 |
ダイヤモンドMOSFETの長時間(190h)ストレス特性
白土智基・Niloy Saha(佐賀大)・Seongwoo Kim・小山浩司(Orbray)・大石敏之・○△嘉数 誠(佐賀大) |
C-10-8 |
PLL方式アクティブロードプル測定装置の2倍波ループの検討
◎木畑慶二・石崎俊雄(龍谷大) |
C-10-9 |
フレキシブルCMOSイメージセンサの実現に向けた円筒面状湾曲回路の試作と評価
○後藤正英・為村成亨・堺 俊克・佐藤弘人(NHK) |
我々は、プリント基板上にコイルを形成した薄く、軽く、比較的安価に製造が可能であるPrinted Spiral Inductor(PSI)を用いて交角の計測を行い、SigfoxとArduinoを用いることで遠隔での交角の計測を行おうと検討してきたが、20度程度までしか計測ができていなかった。今回は、巻き数の異なるPSIを用意することで、インダクタンスの大きさの違いによる計測結果への影響の確認を行い、最も遠隔での計測に優れていると考えられるPSIを考えた。また、増幅回路の有無によって、本来では遠隔での計測ができなかった20度以降の計測が可能になることが分かった。
ダイヤモンドは, 5.47eVのバンドギャップを持つ半導体であり, 次世代パワー半導体として期待されている. 我々は最近, SiCやGaNに匹敵する有能出力電力875MW/cm2やオフ耐圧3659Vなどの優れたパワー特性を報告した. しかし, 実用パワー回路応用にはスイッチング損失が重要である. そのため, 本研究では初めてのスイッチング特性測定を行い, スイッチング損失の導出及び評価を行った. デューティー比1%, 周波数100Hz の方形波を, ソース接地した素子にゲート電圧として入力し, 入出力電圧をオシロスコープにて測定を行った結果, ターンオン時間9.97ns,ターンオフ時間9.63nsという10ns以下の高速スイッチング動作を確認することができた.
ダイヤモンドは5.47eVのバンドギャップエネルギーを持つ半導体であり, 次世代パワー半導体として期待されている. 我々は最近, SiCやGaNに匹敵する有能出力電力875MW/cm2やオフ耐圧3659Vなどの優れたパワー特性を報告した. しかし, 実用パワー回路応用において長時間動作での耐久性や特性変化が重要である. そのため, 本研究では長時間測定を初めて行った.ゲート電圧にDC -2V, ドレイン電圧にDC -10V を印加し, ID 及び, IG の時間特性を測定した. その結果 ID は190h の測定中において劣化は全く見られず, 徐々に増加した. また,ゲートリークによるIG の増加が83h 後あたりから見られた.しかし,ストレス測定終了後30 分でゲートリークは消失し, ストレス試験前とほとんど同じ特性に回復することがわかった.
トランジスタを用いたマイクロ波電力増幅器は、非線形の領域で動作させた時に最高効率が得られる。そのため、入力信号レベルにおいて基本波や高調波に対する最適な負荷インピーダンスを設計することができるロードプル測定システムを用いられることが多い。しかし、従来から行われてきたパッシブロードプル測定システムは測定可能範囲に限界があり,高反射係数の実現が困難であることなど、様々な問題を抱えている。そこで近年では、これらの問題を解決可能なシステムとしてALP(Active Load-Pull)測定システムが提案されている。
本研究では、PLLを用いたALPにおいて、二倍高調波でのALP実験を行い、二倍波ループにおけるPLLやVGAなどの有効性を確認した。
CMOSイメージセンサの高精細・高フレームレートなどの高い性能を有し、かつ自由に曲げることのできる新たなイメージセンサの実現を目指して、フレキシブルCMOSイメージセンサの研究を進めている。これまでに、Fully Depleted Silicon On Insulator(FDSOI)基板上に形成したCMOS回路と結晶セレン(c-Se)などからなる光電変換膜をプラスチック製の柔軟な基板に転写する作製技術を提案した。今回、CMOS回路を柔軟なPolyethylene Terephthalate(PET)基板に転写し、円筒面状に湾曲させた状態で初めて動作を確認したので報告する。
C-12. 集積回路
3月7日 13:00〜15:45 4号館 4104教室 座長 齊藤 健(日大)
C-12-1 |
ガンマ線照射によるフローティングゲート型とチャージトラップ 型の3D NAND フラッシュメモリの TID 特性の比較
◎小澤太希・小林和淑・古田 潤(京都工繊大) |
C-12-2 |
動的ソフトエラー測定時の瞬時電流を低減するクロック伝達回路の検討
◎杉崎春斗・古田 潤・小林和淑(京都工繊大) |
C-12-3 |
デバイスシミュレーションによる耐ソフトエラーフリップフロップの耐性評価
◎吉田圭汰・杉谷昇太郎・中島隆一・古田 潤・小林和淑(京都工繊大) |
C-12-4 |
修正節点解析法を用いたC++による過渡解析シミュレーション
中戸春馬・○中田俊司(近畿大) |
C-12-5 |
CubeSat搭載に向けた32bit CPUのSingle Event Upset評価
○青柳賢英(福井大)・島田芳永・石川ゆい・荒井 肇(セーレン)・久米 恭(若狭湾エネルギー研究センター)・松本 健(東大) |
本稿では, フローティングゲートフラッシュメモリ (FGF) とチャージトラップフラッシュメモリ (CTF) に γ 線照射によるトータルドーズ効果 (TID: Total Dose effect) 特性の測定を行った。TIDとは、放射線がデバイスに照射されることにより引き起こされる故障であり、宇宙向けのデバイスには対策が必須となる。照射前書き込みのFGF、CTFのエラー率はそれぞれ0.052%、0.027%に対して、ガンマ線照射後読み出すと、エラー率は大きく増加し、線量53 kradではFGF、CTFのエラー率はそれぞれ60%、 30%となる。起こるエラーはどちらもメモリセルのしきい値電圧が減少するエラーである。
また、CTFはFGFに比べて、室温放置でしきい値電圧がはやく回復し、エラー率が低下する。CTFはFGFより優れたTID耐性を持つという結果が得られた。
放射線に起因する一時的な故障であるソフトエラーには、組み合わせ回路内で発生し周波数に依存するSETと、記憶素子内で発生する周波数に依存しないSEUの2種類ある。クロスオーバー周波数とはSETがSEUを上回る周波数のことである。
クロスオーバー周波数を測定するために動的ソフトエラー測定をするにあたって、FFにどのようにクロックを入力するかが問題となる。クロックツリーを用いると、IRドロップが発生して回路が正常に動作しなくなる危険性がある。本稿では、バッファチェインとクロックツリーを組み合わせることによって瞬時電流を平準化しクロックをFFに入力する方法を提案し、シミュレーションによって瞬時電流が3分の1程度になるという結果を得た。
ソフトエラーとは,放射線がトランジスタに突入することによって電荷が発生し, ラッチやフリップフロップの保持値が反転するエラーのことである. ソフトエラーとは一時的な故障であるため再起動により修復可能だが, 高い信頼性を要する分野では対策が必要となる. 本稿では, 先行研究にて提案された耐ソフトエラーフリップフロップについて, デバイスシミュレータを用い, 臨界LET値によりソフトエラー耐性を評価した. ソフトエラー対策を施していない回路であるTIFFにおいて脆弱であった箇所は, 対策を施した改善回路FBTIFFにおいて耐性の向上が確認できた.
近年電気エネルギーを、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタといったスーパーキャパシタに蓄電する方法が注目されている。今回、多くのキャパシタが接続される直流電力ネットワークにおいて、キャパシタ電位の時間変化予測を目的として、C++を用いた回路シミュレータの設計を検討した。まずMOSトランジスタについて線形化を行い、直流解析にて動作点を決めたのち、その後過渡解析を行なったシミュレーションについて報告する。
近年,超小型衛星,特にCubeSatの開発が活発に行われており,その機数は全世界で加速的に増えている.このようなCubeSatには多くの民生部品が採用されているが,新規の民生電子部品の宇宙機器への適用に際しては,放射線耐性の把握を行うことが重要である.本稿では,民生品で一般的に購入可能な32bit CPUに対して,プロトンを照射・解析することにより,衛星軌道上でのSEU (Single Event Upset)の発生回数の予測を行った結果を報告する.更に,衛星2機の軌道上での評価結果も報告する.
休 憩(14:30 再開) 座長 田中智之(ルネサスエレクトロニクス)
C-12-6 |
Si フォトニック結晶光変調器のための縦積みオープンコレクタBiCMOSドライバ
○川原啓輔・馬場俊彦(横浜国大) |
C-12-7 |
入力条件が異なる場合のWilkinson Couplerの動作の検討
○田中 聡・吉田 毅・天川修平・藤島 実(広島大) |
C-12-8 |
Wilkinson Coupler Groups Using Crossover Lines for Differential Signals at 105 - 145 GHz
◎Zhen Yan・Satoshi Tanaka・Takeshi Yoshida・Minoru Fujishima(Hiroshima Univ.) |
C-12-9 |
A comparison of wideband matching between CS and CG topologies at 30~70 GHz for 40nm CMOS
◎Leshan Xu・Satoshi Tanaka・Takeshi Yoshida・Minoru Fujishima(Hiroshima Univ.) |
C-12-10 |
コプレーナ線路を用いたミリ波帯CMOSラットレースバラン
◎浅野祐太・田中 聡・吉田 毅・天川修平・藤島 実(広島大) |
データセンタ内光インターコネクションの高速・低消費電力化が求められている.Siフォトニック結晶導波路(PCW)光変調器は,スローライト効果によりVπLをリブ型デバイスの1/10以下に低減し,小型・低容量を実現できる.一方で高速変調には5 Vppを超える駆動電圧が必要なため,高出力かつ低消費電力のドライバが求められている.本研究では130-nm SiGe BiCMOSプロセスを用いて PCW光変調器に適したドライバを設計し,シミュレーションにより性能を評価した.その結果,50 Gbpsにおいて消光比3.5 dBの明瞭なアイ開口が得られた.光変調器のインピーダンスを70 Ω程度まで上昇させれば300 mW未満の低電力動作が見込まれる.
サブテラヘルツ通信を行う場合,複数のRF経路を用いるビームフォーミングの適用が必須となる.ビームフォーミングを適用する場合,各信号経路の信号振幅・位相は異なる.更にキャリブレーション実施のため,1系統ずつ独立して動作させる必要性がある.複数のRF経路を束ねるにはWilkinson Couplerが広く適用されている.しかし多くの適用例では,例えば電力増幅器の電力合成用途のように,各入力信号の振幅・位相はほぼ同じであり,入力インピータンスもほぼ同じである.入力条件が大きく変化するビームフォーミング用途にWilkinson Couplerを適用できるか,その基本動作を確認した.
This paper discusses the design of a coupler for differential signals from 105 to 145 GHz, focusing on the structural optimization of the cross-line section. Compared to conventional crossover line, the new structure avoids the differences caused by the transmission process. The coupler with the new structure performs well at the operating frequency.
In this paper, we compare the single common-source (CS) , common-gate (CG) , cascode CS and CG,considering the difficulty of a wideband match to 50Ω, at 30~70 GHz, and in 40nm CMOS process. The difficulty of a wideband matching can be confirmed by checking S11.
コプレーナ線路はグランデッドコプレーナ線路に比べ、底面グランドとの寄生容量を小さくできる。そのため、同一の特性インピーダンスでは、信号線幅を太くできるため、減衰定数を小さくすることができる。
しかし、コプレーナ線路の構造では、3本の導体を信号が伝搬するため、奇数伝搬モードが生じる可能性がある。奇数次伝搬モードは低層メタルで両グランド間にアンダーパスを設けることにより抑制することが出来る。
本研究では、低層メタルによるアンダーパスを周期的に用いたコプレーナ線路によるラットレースバランの特性をシミュレーションにより検証した。その結果、低層メタルのアンダーパスを有するコプレーナ線路を用いることで、損失の低いラットレースバランを実現した。
3月8日 9:00〜11:45 4号館 4104教室 座長 和智勇介(日立)
C-12-11 |
静電振動発電用 Switched-Capacitor AC-DC変換回路の設計
◎宮崎直人・丹沢 徹(静岡大) |
C-12-12 |
電圧振幅拡大型コルピッツオシレータのゲート接地利得モデル
◎稲葉泰誠・野村達也・丹沢 徹(静岡大) |
C-12-13 |
二電源NANDフラッシュの低電力化回路方式の設計評価
◎牧野 耀・丹沢 徹(静岡大) |
C-12-14 |
高入力感度マイクロ波無線電力伝送用CMOSオンチップ整流回路の設計
◎橋本拓磨(静岡大)・猫塚 光・戸枝佳駿・大谷昌幸・福岡泰彦(京セラ)・丹沢 徹(静岡大) |
C-12-15 |
極低電圧電源でバッテリを充電する昇圧コンバータの設計
◎齋藤 航・丹沢 徹(静岡大) |
静電振動発電素子は振動エネルギーを交流電力に変換する。得られる交流電力は、振幅10~100Vと高電圧で、出力抵抗が1MΩ~10MΩと高い。センサなどのデバイスを駆動させるために、Switched- Capacitor(SC)降圧型コンバータが提案されている。先行研究では高出力抵抗電源のためのSC-DC-DCコンバータの設計が提案されているが、AC-DCでの設計はまだ行われていない。本研究では先行研究を拡張したSC-AC-DCコンバータのモデリングを行い最適設計を検討した。回路動作を簡略化しても与えられた回路面積で出力電力をほぼ最大にできる設計方法を提案した。
環境中のエネルギーを電力に変換するエネルギーハーベスティングが注目されている。一般に、太陽光や温度勾配などのエネルギー源から得られる直流出力電圧は0.3V程度と低い。集積回路を駆動するためには、DC/DC昇圧コンバータが必要となる。mESCO(電圧振幅拡大型コルピッツオシレータ)と整流器を組み合わせたLC発振型DC/DCコンバータが研究されているが、解析が完全に行われていなかった。そこでドレイン電圧振幅の導出に必要なゲート接地利得のモデル式を導出したのでこれを報告する。SPICEとの誤差率が最大で5%であり、モデル式の妥当性を示した。
データを保存するためのストレージとしてNAND Flashが広く用いられている。中でもクラウドのデータを保存するデータセンターでは莫大なデータ量をNAND Flashが記憶媒体であるSSDに保存し、それに伴い多くの電力消費が発生している。 先行研究でI/O回路に使われる低電圧電源を用いてビット線(BL)系での消費電力を60%削減する回路システムを考案し、その実機評価を行った。試作した回路で従来と提案回路動作のエネルギーを比較し、どの条件でも50%以上のエネルギーを削減できることが確認できた。また、提案回路実装にあたり追加した回路面積は全体の0.1%以下で、読み出しの動作も従来と同様に行うことができた。
本研究では高入力感度のマイクロ波無線電力伝送用オンチップ整流器の設計を入力周波数920MHz,出力電圧1Vを入出力条件として行った.動作可能下限電力を追求するためにSPICEシミュレーションベースでの解析を行い,ULPDと呼ばれるダイオードを32段接続し,1段当たりの回路パラメータを最適化した.試作回路の測定には,反射電力を用いた補正計算を行い,整流器へ入力された電力を求める手法を採用した.出力電圧1Vを満たす入力感度は-31.7 dBmであり実装面積は0.011mm2であった.実装面積と入力感度で先行研究と比較したところ最小の実装面積で先行研究に匹敵する入力感度を達成することを確認した.
環境エネルギーを電力に変換するエネルギーハーベスティングが注目されている.環境発電素子(ET)の電力でICを駆動できるが、ETは環境に依存するため得られる電力が不安定になる.そこでバッテリと併用することで回路動作を安定化する研究が行われている.本研究では、バッテリ電力でスイッチングMOSを動作させETから回収した電力をブースト・コンバータでバッテリを充電する回路の最適設計を行った.コンバータへの入力電圧10mV、バッテリ電圧1.5Vの場合における正味の出力電力が最大となるトランジスタのチャネル幅と制御回路の動作周波数の解析式を求めSPICEと比較し、良い一致が見られた。この条件でバッテリには正味10μWオーダーを充電できる。
休 憩(10:30 再開) 座長 弘原海潤治(キオクシア)
C-12-16 |
エネルギー・ハーベスト用小型二次電池のトリクル充放電動作の有効性評価
◎角 果音・丹沢 徹(静岡大) |
C-12-17 |
環境発電素子でバッテリを充電するチャージポンプの設計
○山野智輝・丹沢 徹(静岡大) |
C-12-18 |
熱電発電用チャージポンプ電源回路の出力電力密度最大化設計
◎濃野公一・丹沢 徹(静岡大) |
C-12-19 |
LC発振器駆動チャージポンプの出力パワー最大化設計
◎植村寛太・丹沢 徹(静岡大) |
C-12-20 |
駆動電流調整回路内蔵ゲートドライバICの伝搬遅延時間低減技術
○杜塚芙美・間島秀明・池内克之・澤原裕一・小川知将・渡辺 理(東芝デバイス&ストレージ) |
先行研究では,熱電素子と二次電池を備えたハイブリッド電源回路の設計・評価が行われた.この電源回路は,周期1ms程度のスイッチング動作で,二次電池へ充電と放電を繰り返す(トリクル充放電).しかし,エネルギー・ハーベスト(EH)用小型二次電池がトリクル充放電電流パルスに十分応答できるかどうか不明であった.EH用小型二次電池に連続充電,連続放電,充放電交互の3種類の電流パルスを入力し,二次電池の端子間電圧変動を測定した.前二者が30mV変動する時間で後者は0.1mV変動と十分小さいことを確認した.結果として,EH用小型二次電池がハイブリッド電源回路で使用可能であることが分かった.
環境から得られるエネルギーを電力に変換するエネルギーハーベスティングEHという技術が注目されている。EHは環境依存性が高く供給電力が不安定という問題がある。この問題を解決するために、環境発電素子ETにバッテリを直列に繋ぎ、コンバータで降圧を行う電力変換システムが提案されているが、完全集積化が難しいという問題点がある。本研究では、バッテリ駆動のオシレータを使ってETの電力をバッテリに充電する回路を設計した。0.3V/600ΩのETからオシレータで使う電力以上を回収して、1.5Vバッテリを充電できることをSPICEで確認した。65nmCMOSで設計した回路は0.07mm^2で完全集積化できる。
熱電発電素子(TEG)は環境温度の変化によって発生電力が変動する。TEG出力電圧を昇圧し、ICへ電力供給するチャージポンプ(CP)において、著者らはこれまでにCLK周波数fをCP出力電力最大(MPPT)になる値に固定し、段数Nと容量CをNC積一定で調整することで温度変化に応じて出力電力密度を最大化する回路システムを提案した。第一先行研究ではC, N, fを調整してTEG-CP間MPPTを行うがCP-MPPTとは限らない。第二のそれはN, f を調整してCP-MPPTを行うため、不必要に大きいCを用意しなければならない。結果として、提案回路の出力電力密度は先行研究のそれの最大95倍に増加した。
環境発電素子(EH)を用いてIC等を駆動する手段としてエネルギーハーベスティングが注目されている. 発電素子の低出力電圧V_inをまずLC発振器(LC-OSC)で2倍振幅の相補ACクロック電圧に変換し,このクロックでチャージポンプを駆動して高DC電圧V_outを発生する回路が報告されている. 本研究では,LC発振器とCMOS latch型チャージポンプ(CL-CP)を用いた回路の出力パワーを最大にするチャージポンプ並列数を決定する解析式を提案する. この方法を用いて求めたチャージポンプ並列数とSPICEシミュレーションから得た出力パワーが最大となるチャージポンプ並列数を比較すると誤差率は5%以下となった.
ゲート駆動回路における伝搬遅延時間とEMIノイズとのトレードオフを解決するため、本稿では外付け抵抗1つで駆動電流を制御し、電荷ベースで伝搬遅延時間を低減する回路構成を提案し、GaNハーフブリッジを用いて効果を確認した結果について報告する。提案する回路は複雑な構成を不要とし、容量を用いた電荷ベースの調整を行うことで、GaNのスイッチング速度に対応したナノ秒単位での制御が必要となるデジタルゲートドライバや高速フィードバック制御を用いることなく、安定して伝搬遅延時間低減効果を得られる。
3月9日 13:00〜15:30 4号館 4104教室 座長 古田善一(ミライズテクノロジーズ)
C-12-21 |
多点刺激に向けた人工視覚チップ並列駆動の検証
○中西優輝・Siwadamrongpong Ronnakorn(奈良先端大)・鐘堂健三・寺澤靖雄(ニデック)・春田牧人・竹原浩成(奈良先端大)・田代洋行(九大)・笹川清隆・太田 淳(奈良先端大) |
C-12-22 |
22-nm FDSOI CMOSを用いたD帯3段差動増幅器
○大島直樹・桑原俊秀・丹治康紀・八山慎史・國弘和明(NEC) |
C-12-23 |
周波数同期回路を用いた環境変化にロバストな低消費電力発振回路
◎原 航太・小松 聡(東京電機大) |
C-12-24 |
確率的フラッシュ ADCのためのオフセット電圧可変なコンパレータ
◎坂口 平・小松 聡(東京電機大) |
C-12-25 |
Measurement Investigation of Si Substrate Impact on On-Chip Resonance Circuits
◎Haochen Yuan・Anne-Claire Eiler・Shun Yasunaga・Motohiko Ezawa・Yoshio Mita・Tetsuya Iizuka(The Univ. of Tokyo) |
本研究では,人工視覚用CMOSチップの並列駆動を実証した.CMOSチップは8ビットのチップID回路を搭載しており,レーザー加工により0から255までのIDをチップに付与できる.これをフレキシブル基板上に分散配置することで眼球に沿う柔軟性が実現される.また,各チップには共通の配線から同時に信号を送ることで,4配線での多電極制御が可能となる.
IDの異なる2つのチップを搭載したデバイスを用いて,個別のチップへの刺激条件設定,複数チップからの同時に電流刺激,刺激条件のリセットを確認した.この構成を拡張することで,配線数を増やすことなく更なるチップ数の増加が可能となる.
Beyond 5G/6Gでは、広帯域を確保できるサブテラヘルツ帯を用いて100Gbps級の高速大容量通信を実現することが期待されている。100GHz超帯の増幅器として、特性的には化合物半導体が優れている一方、フェイズドアレーなど高密度実装が必要な無線通信機では、Si系半導体による集積化が有効である。本稿では、22nm FDSOI CMOSを用いて、D帯向けに構築した高精度モデルと、それを用いた3段差動増幅器の設計・評価に関して報告する。
生体埋め込み機器やIoTデバイスなど,面積制約のある用途に向けたオンチップの発振回路が注目されているが,発振周波数が電源電圧や温度に大きく依存することが問題となっている.そこで,周波数同期回路(FLL)を構成して周波数安定性を高める方法が提案されている.本研究では,無補償でも周波数変動が小さい発振回路に対するFLLを検討する.周波数変動が小さいため,補償の分解能を高めても小面積かつ低消費電力が期待できる.
一般的なフラッシュ ADCでは、オフセット電圧のばらつきを小さくするためにトランジスタのゲート長やゲート幅を大きく設計する必要がある。一方で、コンパレータの入力オフセット電圧のばらつきをトリップポイントとして使用する確率的フラッシュ ADCが提案されている。しかし、確率的フラッシュ ADCの入力電圧範囲はコンパレータのオフセット電圧の分布が線形に近い範囲であるため、入力電圧範囲が狭いといった欠点がある。本研究では確率的フラッシュADCの入力電圧範囲を所望の範囲に制御することを実現するため、オフセット電圧の分布が可変なコンパレータを提案、評価する。
Integrated on-chip inductors are critical passive components in implementing radio frequency integrated circuits (RFICs). The substrate removal process is reported as one possible solution to suppress the substrate loss. We implemented the on-chip LC resonance circuit with CMOS 0.18μm process to verify the impact of the Si substrate removal with the simulation and measurement.
休 憩(14:30 再開) 座長 徐 照男(NTT)
C-12-26 |
SiGe BiCMOS 130nmプロセスを用いた300GHz帯電力増幅回路の設計
◎堀川貴道・加納創太・飯塚哲也(東大) |
C-12-27 |
300 GHz 帯無線通信機のためのクロスカップルキャパシタを用いた小面積 125GHz CMOS移相器
◎菅野素裕・楳田洋太郎・高野恭弥(東京理科大) |
C-12-28 |
30 GHz 帯域幅を有する 125 GHz CMOS 電力増幅器
◎別府 隼・高野恭弥・楳田洋太郎(東京理科大) |
C-12-29 |
イメージ負荷最適化による300GHz帯CMOSアップコンバージョンミキサの高出力化
◎八木隼人・楳田洋太郎・高野恭弥(東京理科大) |
近年5G通信の実用化が始まり、その先のBeyond 5G/6G等の大容量通信や、車載レーダ等の応用に向けてミリ波帯(30∼300GHz)の通信の応用範囲が広がっている。300GHz帯電力増幅回路の実現に向けて、SiGe BiCMOS 130nmプロセス用いて、エミッタ接地増幅回路と、カスコード接続によるエミッタ接地増幅回路をそれぞれ設計した。それらの性能をシミュレーションにより検証した結果について示す。
300 GHz帯フェーズドアレー無線通信器において、移相器は信号の位相を制御するために必要な回路である。従来の移相器は、位相を正の向きに変化させるインダクタと負の向きに変化させるキャパシタを用いたLC共振器を利用している。しかし、インダクタは面積が大きく回路の小型化が困難である。そこで本研究ではインダクタの代わりにクロスカップルキャパシタを用いて負の容量を実現し、位相の変化量を確保しつつ回路の小型化が実現可能な移相器を提案する。シミュレーションで動作を確認したところ、125 GHzにおいてバラクタの制御電圧を変化させることで、透過位相を-146.6°から-205.6°まで変化させることができた。105 – 145 GHzにおいて、入出力の反射係数は-10dB以下、挿入損失は10 dB以下であった。
252 GHz から 296 GHz の周波数帯域は 300 GHz 帯と呼ば れており、2019 年に世界無線会議にて無線通信での利用を 可能とすることが合意された。このことにより、広帯域か つ超高速である無線通信器の実現が期待されている。300 GHz 帯 CMOS 無線通信器の実現のためには、中間周波数帯であるD帯(110~170 GHz)での広帯域かつ高利得の電力増幅器が重要である。本研究では、一段あたりを広帯域とし、多段化することで広帯域かつ高利得を可能とする設計手法を提案する。シミュレーションを行ったところ、最大利得は29.4 dBで、3 dB帯域は108.9~138.5 GHzであった。また、125 GHzにおける飽和電力は8.0 dBm、出力側の1 dB圧縮点は5.2 dBmであった。以上より、D帯での広帯域かつ高利得の電力増幅器の設計が実現できた。
300 GHz帯と呼ばれる周波数帯は、第6世代移動通信システム(6G)の実現に向けて注目が集まっている。300 GHz帯でのCMOSプロセスを用いた無線通信機の研究開発において、MOSFETの最大発振周波数が300 GHz帯よりも低く、増幅器が実現できないという問題がある。そのため、送信機においてはミキサラストの構成となるため、アップコンバージョンミキサの高出力化が必要である。そこで、ミキサで発生する局部発振器(LO)の周波数と中間周波数(IF)の差周波数成分(イメージ信号)と、LOの2次高調波について、それぞれ最適負荷を接続することで出力を増加させ、ミキシングすることで、所望の周波数信号の出力電力を増加させる手法を提案する。シミュレーションを行ったところ、2つの負荷を最適化することで出力電力は0.47dB改善した。
C-13. 有機エレクトロニクス
3月8日 9:15〜11:45 2号館 2302教室 座長 嘉治寿彦(東京農工大)
C-13-1 |
電気光学ポリマーの積層膜を用いた超広帯域テラヘルツ波検出
○山田俊樹・梶 貴博・山田千由美・大友 明(NICT)・中西智哉・常守秀幸・藤丸滋樹(帝人) |
C-13-2 |
近赤外自己形成導波路の作製とマルチチャネル光導波路への応用
○△寺澤英孝(宇都宮大)・行川 毅(Orbray)・近藤圭祐・杉原興浩(宇都宮大) |
C-13-3 |
4CzIPN-TADF素子の発光特性への励起子阻止層の影響
○森 竜雄・佐藤 涼・一野祐亮・清家善之(愛知工業大) |
C-13-4 |
絶縁型交流駆動有機EL素子の狭帯域発光に向けた無機銅系CuSCNを用いた無機・有機ハイブリッド誘電体及び半導体ミラーの作製の検討
○梶井博武・高山祐人・近藤正彦(阪大) |
我々は1.56µm帯の小型フェムト秒ファイバーレーザーを用いて、DAST結晶からのTHz波発生を行い、1.56µm帯のプローブ光を使用し、EOサンプリング検出系にEOポリマー積層膜を用いて、THz-TDS測定系により、THz電場の検出を行った。通常のTHz波検出における0.1~20THzの周波数領域に加えて40~44THz付近にピークを持つ電磁波(赤外光)を観測してきた。また、異なる膜厚55µm 、75µm、128µmのポリカーボネート系EOポリマー積層膜を作製し、THz波の検出効率は膜厚に比例することを報告してきた。今回は、検出したテラヘルツ電場の実時間波形をフーリエ変換した超広帯域スペクトルにおいて、検出に用いたEOポリマー積層膜自体の吸収の影響を調べるための実験を行った。EOポリマーの厚膜試料を作製し、0.1~75THz におけるEOポリマーの吸収係数(α[cm-1])スペクトルを測定し、EOポリマーの赤外振動モードによる吸収の影響を受けていることが分かった。この結果からも、超広帯域電場検出ができていることが分かった。
本研究では、シリコンフォトニクスやマルチコアファイバなど光通信波長帯用デバイスの簡易実装技術の実現に向けて自己形成光導波路の検討を行った。光通信波長帯で硬化可能な光硬化性樹脂を開発し、それを用いたシングルモードファイバとマルチコアファイバからの自己形成光導波路コアの作製を行った。自己形成光導波路コアの作製には、波長1310nmおよび1550nmの連続波レーザを用い、マイクロワットレベルのレーザ出力で自己形成光導波路コアの作製に成功した。
熱活性化遅延蛍光材料(TADF)である4CzIPNをドープした有機EL素子を作製し、励起子阻止層mCPの挿入効果を調べた。正孔電流側を取り出した試料では、mCPの導入により大きな電流の低下は見られなかった。有機EL素子として作製した試料では
mCPの挿入により電流特性には大きな差は見られなかったが、発光効率に差が見られた。正孔輸送材料と発光材料とで電荷移動錯対の形成による可能性がある。
発光デバイス技術は,直流(DC)と交流(AC)の2つの異なる駆動モードを使用して発展してきている.近年,誘電体としてHfO2等の高誘電率材料を用いることで,数十 Vで駆動可能な真性型の有機ELが報告されている.片側電極と有機層の間に誘電体を挿入した交流電圧駆動型の有機ELは,その特徴的な動作原理からインタラクティブディスプレイ等への応用が期待される.本研究では,電極以外すべて印刷プロセスで作製した誘電体ミラーを内包した絶縁型交流駆動有機EL素子の狭帯域発光に向けた無機銅系CuSCNを用いた無機・有機ハイブリッド誘電体及び半導体ミラーの作製の検討を行った.
休 憩(10:30 再開)
C-13-5 |
ポリスチレンとS-DNTT-10ブレンド溶液を用いた低電圧駆動塗布型有機FETの作製と高性能化の検討
○伊東栄次・Bojun Chen・川村拓生(信州大) |
C-13-6 |
照射光の時間変調による色素増感型太陽電池の直列抵抗の低減
○多田和也(兵庫県立大) |
C-13-7 |
PMDA-ODAポリアミック酸スピンコート膜のI-V測定による摩擦発電の評価
◎前田真晴人・田口 大・間中孝彰(東工大) |
C-13-8 |
ヒ素イオンを高感度に電気化学測定可能な電極作製手法
○竹村謙信・岩崎 渉・森田伸友・大曲新矢(産総研) |
C-13-9 |
クロムフリー表面修飾による樹脂めっき技術
山﨑舜介(東京農工大)・古橋貴洋・山田喜康(山田)・市原祥次・○臼井博明(東京農工大) |
本研究では,中間的なHOMO準位を有して低電圧動作と大気安定性を合わせ持つ高移動度有機半導体の3,10-Didecylnaphtho[2,1-b]naphtho[1',2':4,5]thieno[2,3-d]thiophene (S-DNTT-10) に着目した。この材料は室温では溶解性が殆どなくデバイス作製法と高性能化の両面での開発が必要である。本研究では表面処理を施したポリマー/有機半導体ブレンドの垂直相分離化,高移動度化,および濡れ性制御を用いたパターン化を試み従来の1/10以下の短時間でOFETを作製する手法や高性能化を検討した。
有機太陽電池の用途として室内機器の電源が注目され,色素増感型太陽電池は室内光発電向けとして市販されている。現在主流のLED照明では,調光にパルス幅変調(PWM)方式が使われる。一般的には,PWM変調によってピーク時の光電流が増加するため,直列抵抗に起因するパワー損失が増加し,無変調の場合に比べてパワー変換効率は低下する。一方,PWM変調光下での色素増感型太陽電池に特有な現象として,変調周波数を高くするとパワー変換効率が無変調の場合と変わらなくなることを見出した。本報告では,この現象について色素増感型太陽電池特有の電気化学的インピーダンスを考慮して考察した結果について述べる。
かつて誘電体は分極エネルギーを蓄えるためのコンデンサ材料として用いられてきた.しかし近年,摩擦電気を外部に取り出し電源として利用する摩擦発電の研究が活発化している.新材料・新プロセスの研究開発により出力向上が進められている.我々は,誘電物性の観点から,発電の電流源となる分子的起源に「電荷の変位」と「双極子の回転」の二つがあり得ることに着目し,分極エネルギーを発電源とするモデルを提案した.本発表では,永久双極子をもつPMDA-ODAポリアミック酸(PMDA:pyromellitic dianhydride,ODA:4,4’-oxydianiline)の双極子回転による発電に着目し,スピンコート膜による成膜と,摩擦発電のI-V測定により発電特性を評価した結果を報告する.
重金属測定については土壌中・河川中などいずれも環境基準値であるppb (µg/L)レベルの感度を保つ必要がある。公定法ではサンプルの運搬から検査まで時間とコストを要する。そのため、現場で簡便に使用可能で公定法による検査が必要なサンプルをスクリーニングできる重金属センサが求められている。
本研究では、環境汚染の原因物質であるヒ素を対象とし、簡便かつ高感度な電気化学的重金属イオン測定技術開発を目標とした。化学耐性が高く、安定した信号を高感度に取得可能な高活性金ナノ粒子修飾ホウ素ドープダイヤモンド電極(AuNP-BDD)を作製することで、0.473 ppbを検出限界とする高感度なヒ素検出に成功している。
新たな樹脂めっき技術として、従来のクロム酸エッチングによる表面処理に替え、プラズマと自己組織化膜(SAM)による表面処理を行うことで、クロムの使用を廃し、平坦性の高い界面を持つニッケル被膜を形成した。特に酸素プラズマ処理とアミノ基を持つSAMを組み合わせることにより、付着強度と硬度に優れた被膜が形成された。
C-14. マイクロ波テラヘルツ光電子技術
3月9日 13:00〜16:00 2号館 2207教室 座長 菅野敦史(名工大)
C-14-1 |
自己注入によるRTD発振器の周波数変化
○猪瀬裕太・水野遼子・Li Yi・冨士田誠之・永妻忠夫(阪大) |
C-14-2 |
オフセット給電スロットアンテナ集積共鳴トンネルダイオードテラヘルツ発振器の2素子アレイ
Ta Van Mai・難波経之・○鈴木左文(東工大) |
C-14-3 |
Design of T-Shaped LiTaO3 and Al2O3 Rectangular Waveguide for Sub-THz Signal Generation Device based on Optical Difference Frequency Generation
○Ken Paramayudha・Yui Otagaki・Hiroshi Murata(Mie Univ.) |
C-14-4 |
光ビート法による高周波発生におけるUTC-PDの飽和の影響
○酒井悠真・小川恵太・鈴木将之・戸田裕之(同志社大) |
典型的なテラヘルツイメージングでは,送信と受信に個別のデバイスが必要である.RTD発振器では,単一デバイスを用いた自己注入によるイメージング応用の可能性が報告されている.一方で,バイアス電圧や反射体までの距離に対して周波数が不連続に変化する振る舞いが確認された.我々は今回,その挙動の物理的起源を探索するため,等価回路シミュレーションを行った.その結果,同じ条件で行った実験結果を定量的に再現することに成功した.また,実験で観測された周波数ジャンプは,RTDと反射体が共振器として振る舞い,それによって形成された縦モード周波数への引き込みが生じたものであることを明らかにした.
共鳴トンネルダイオード (RTD) は、小型かつ室温動作可能なテラヘルツ(THz)光源として期待されている。しかしながら、従来の単体RTD発振器の発振出力は10 μW 程度であり、高出力化が課題となっている。高出力発振を目指すにはRTD発振器のアレイ化が有効であり、既にコヒーレントな高出力発振が報告されている。我々は直流回路とTHz回路の分離のためのキャパシタを有しない簡易発振器構造において、抵抗を介した強結合を用いた発振器アレイ構造を提案し、動作実証を行った。この構造では、広い同期周波数範囲が得られるため、アレイ素子の周波数ばらつきが大きくても結合動作が得られる利点を有している。今回、高出力化のためにオフセット給電スロットアンテナを集積し、また、安定な動作位相のモードを有効に利用するための180度曲げ結合構造を有する発振器を提案し、530 GHzでおよそ0.77 mWの高出力発振を達成したので報告する。
In this study, we propose a new device structure of T-shaped LiTaO3 and Al2O3 rectangular waveguide to enhance the coupling efficiency between signal generation device based on optical difference frequency generation and external sub-THz circuits.
これまで我々は,光ビート法による高周波(RF)発生において,光パルス圧縮を用いたRF出力増大について検証してきた.しかしながら,高いRF出力パワーが要求される用途では,光検出器(PD)の飽和の影響を考慮する必要がある.本報告では, UTC-PDの空間電荷効果による飽和現象が出力電力に与える影響について検討を行った.UTC-PDの光電流波形をガウス波形とし,飽和レベルに達すると光電流が一定となるように飽和現象をシミュレートした.同じ平均電力の光2トーンを入力した場合の出力電力に対する増加量ΔPを求め,飽和レベルや光電流の半値全幅に対するΔPを求めた.飽和レベルや光電流の半値全幅が減少すると出力電力が低下することを確認した.
休 憩(14:15 再開) 座長 相葉孝充(矢崎総業)
C-14-5 |
離散化波長-時間-波長マッピングによる高周波計測技術の検討
◎辻 知樹・牧野将之・小西 毅(阪大) |
C-14-6 |
FPGAを用いた220~300GHzテラヘルツ通信回路の開発
○内藤竜治・門内靖明(東大) |
C-14-7 |
ミリ波・光ネットワーク統合に向けたミリ波固定無線の風に対する影響考察
○菅野敦史(名工大)・翁 祖楷(NICT)・川西哲也(早大) |
信号波形の直接計測は,高周波化が進むにつれて分解能,コスト,帯域の点で非常に困難を伴う.一方,計測対象の信号を波長-時間マッピングされたサンプリング光に重畳すると,信号波形をスペクトルとして計測できるが,計測対象がBeyond5Gに用いられるような高周波信号になると,振幅変化だけでなく顕著なスペクトル変化を生じるため,単純なスペクトルでの信号波形の計測は困難になる.本報告では,離散化を特徴とする波長-時間マッピングされたサンプリング光のスペクトル変化を用いて,Beyond5Gで用いられるような高周波を計測する方法について原理確認を行った.また,用いるサンプリング光の最適な条件などを検討する.
RFSoCとAMC、SHMを用いてコンパクトなテラヘルツ通信回路を開発したので報告する。RFSoCはXILINX社のFPGAであり、4GHzの高速ADCと6GHzのDACを内蔵しているほか、ディジタル化されたI/Qミキサも内蔵しており、2GHzのIF信号の直接生成・復調することができる。また、周波数シンセサイザとAMC(Active Multiplier Chain)とSHM (Subharmonic Mixer)を用いて220~300GHzのテラヘルツ波の生成と変調・復調を行った。
光・無線統合ネットワーク運用におけるミリ波固定無線システムについて、風による設置柱たわみで誘因される信号劣化の数値検証を行った。
休 憩(15:15 再開) 座長 鈴木左文(東工大)
C-14-8 |
光フェーズドアレーと8アレーフォトミキサを用いたテラヘルツ波の強度増大
◎土居 諒・近藤和哉・Ming Che・三上裕也・加藤和利(九大) |
C-14-9 |
光位相制御による2次元ビームフォーミングの検討
◎伊藤穂乃花・平賀 健・工藤理一(NTT) |
C-14-10 |
高感度偏光イメージングシステムを用いたミリ波電界イメージング
◎△岡田竜馬・笹川清隆(奈良先端大)・水野麻弥(NICT)・春田牧人・竹原浩成(奈良先端大)・田代洋行(奈良先端大/九大)・太田 淳(奈良先端大) |
近年、スマートフォンやVRなどの普及により通信需要が拡大し続けており、超高速で大容量の無線通信が必要とされている。これを実現する手段として周波数が0.1~3 THzであるテラヘルツ波の無線通信への利用が期待されている。しかし、伝搬損失が大きいためテラヘルツ波通信では送信出力の強度増大が必要不可欠である。そこで我々はこれまで、アレー状のフォトミキサから出力されるテラヘルツ波の位相を機械的に調整し、空間合波を行うことで強度増大を実証してきた。今回は、新たに開発した光フェーズドアレーを用いて光位相を電子制御することでテラヘルツ波の位相調整をし、8アレーフォトミキサにより18 dBの強度増大に成功したので報告する。
IOWN/6G時代の無線通信システムではTHz帯を含む高周波数帯の活用が検討されており、高周波数帯での伝搬損失と信号広帯域化に伴うシステムマージン確保、多重化による大容量化を目的として、数千~数万素子の超大規模アレーアンテナを用いて多数の狭ビームを2次元走査する、いわゆるUltra Massive MIMO用の装置が必要になると想定される。
本稿では、無線周波数(RF)信号で変調された光信号の搬送波成分と側帯波成分のそれぞれに1次元走査相当の位相制御を行うことで、回路規模を大幅に削減し、数千、数万素子といった超大規模アレーアンテナを制御する移相回路を劇的に小規模化する方法を提案、提案方式による位相制御が可能であることを実験により示す。
本研究では,ミリ波電界を高感度にイメージングすることを目的に,高感度に偏光変化を撮像するシステムを開発した.提案手法では,偏光イメージセンサの画素上偏光子に加えて一様な偏光子を入射偏光の非透過方向に重畳することで,画素への入射光量を低減して画素飽和を回避しつつ,偏光変調度を増大させる.さらに,光変調器と光増幅器を組み合わせた局部発振変調システムによって十分高い周波数と光強度を実現し,信号対雑音比が飛躍的に改善される.この高感度偏光イメージセンサと電気光学結晶を組み合わせた電界撮像システムを構築し,28 GHzにおける近傍電界の強度分布と位相分布のイメージングに0.25 FPSで成功した.
3月10日 10:00〜11:45 2号館 2207教室 座長 池田研介(電中研)
C-14-11 |
LiNbO3導波路による非対称方向性結合器を用いたモード変換素子
宮元蒼平・森川誠也(兵庫県立大)・佐藤孝憲(北大)・河合 正・○榎原 晃(兵庫県立大)・中島慎也・赤羽浩一(NICT) |
C-14-12 |
LiNbO3による1×3 MMI光カップラと3並列干渉光変調器の検討
◎△安森昌太朗・真野紗耶加・森本佳太・河合 正・榎原 晃(兵庫県立大)・中島慎也・赤羽浩一(NICT) |
C-14-13 |
Application of MMI Coupler on Electro-Optic Modulator for SDM Mobile Wireless Signals to WDM Optical Signal Conversion
◎Mefina Yulias Rofianingrum・Yui Otagaki・Hiroshi Murata(Mie Univ.) |
モード変換素子はモード多重光伝送等でモードの合波・分波に用いられる.非対称方向性結合器(ADC)による導波路型モード変換素子は光導波路のみで構成できるが,速度整合条件を満たすためには高い寸法精度や動作環境の安定化が必要となる.そこで,本報告では,電気光学結晶であるTi拡散LiNbO3(Ti:LN)光導波路で設計,作製して,電圧制御により速度整合条件の微調整が可能なADCを検討したので報告する.
多モード干渉(Multimode interference: MMI)導波路構造を利用すれば,導波路Y分岐では困難な任意の分岐数の光カップラを,比較的簡単な構造で実現できる.また,我々の先行研究よりMMI光カップラをLiNbO3光導波路で構成すれば,光分配比の電圧制御の可能性がある.本研究では,分配比調整可能な1×3MMI光カップラを設計・評価し,それを用いて3並列干渉光変調器を構成して,光強度変調度を可変できる光SSB変調器を検討した.
The radio-over-fiber (RoF) technology has been introduced to combine the MMW wireless and optical network and a wireless MMW signal to optical signal converter. The Electro-Optic Modulators (EOMs) using LiNbO3 crystal, Array Antenna-Coupled Electrode (AACE), and polarization reversal structure have been proposed and developed with promising results. In this paper, we report the combination of MMI coupler, array ACE, and polarization reversal structure to convert the SDM wireless signal to WDM optical signal. The designed MMI coupler successfully divides the input optical signals to two ports according to their wavelengths with the input light wavelength 1.31μm and 1.58μm; and >10dB splitting ratio.
休 憩(11:00 再開) 座長 榎原 晃(兵庫県立大)
C-14-14 |
RoFリンクを用いた位置推定の基礎実験
○大田垣祐衣・寺井裕人・村田博司(三重大) |
C-14-15 |
A-RoMMF中継による28GHz帯5G-NRのスループット改善の実証
○田中 聡・鈴木敏訓・安田裕紀・相葉孝充・若林知敬(矢崎総業) |
C-14-16 |
SCM/WDM/SDMを用いた10 Tbit/s超無線信号のアナログIFoF伝送
◎二村真司・田中和樹・石村昇太・西村公佐・猪原 涼・釣谷剛宏・鈴木正敏(KDDI総合研究所) |
通信技術はこの数十年の間に目覚ましく進化しており,Beyond-5Gでは,1000万台/km2の同時接続が目標となっている.多数端末同時接続の実現のためには,ユーザー端末位置を正確に同定し,通信セルを極力小さくすることが有効であると思われる.そこで,複数の受信局を制御局と接続して,各局で受信した信号の到達時刻差から航空機等の位置推定を行うTime difference of Arrival方式を応用し,Beyond-5Gの端末からの信号到達時間差から正確な位置推定を行う研究を進めている.さらに,光ファイバ無線リンクを取り入れることで,アンテナ同士の結合やマルチパス信号干渉の影響を抑制した低擾乱計測が期待できる.今回は,VNAと光スイッチを用いて,位置推定を行う基礎実験を行った.
電波不感領域としてオフィス奥部屋を模擬した空間に対し、マルチモードファイバを用いたアナログRoFによる試作中継器(分離型レピータ)を用いた中継を行うことで、仮想基地局とモバイル端末間で28GHz帯の5GNR信号の通信状態の改善に向けた実証実験を実施した。実証実験ではレピータを用いることによって電波不感領域に設置したモバイル端末の初期通信確立が良好になり、下り信号のスループットは3倍以上に改善することを確認した。この結果により、分離型レピータが28GHz帯5G信号の通信エリア改善に有効であることを実証した。
無線信号を中間周波数(IF)で多重する副搬送波多重(SCM),波長分割多重(WDM),マルチコアファイバ(MCF)による空間分割多重(SDM)を組み合わせることで,5G規格に準拠した380.16MHz幅の64-QAM OFDM信号を4608チャネル(=IF 24チャネル×WDM 16波長×MCF 12コア)同時伝送し,総伝送容量10.51Tbit/sを達成したため報告する.
C-15. エレクトロニクスシミュレーション
3月7日 10:00〜11:30 3号館 3304教室 座長 岸本誠也(日大)
C-15-1 |
呼吸特徴を利用したミリ波レーダによる複数人体の歩行追跡技術
小林悠人・○阪本卓也(京大) |
C-15-2 |
TMS刺激による一次運動野の活性化閾値の評価
◎飯島啓太・平田晃正(名工大) |
C-15-3 |
K帯における屋内用建築材料の複素比誘電率測定
○増子佑基(青学大)・遠藤哲夫(大成建設)・橋本 修・須賀良介(青学大) |
C-15-4 |
接触電流による熱知覚しきい値検索のための温度上昇評価
○木村翔也・小寺紗千子(名工大)・上原信太郎・湯浅明子・牛澤一樹(藤田医大)・上村佳嗣(宇都宮大)・大高洋平(藤田医大)・平田晃正(名工大) |
C-15-5 |
アンテナの放射特性を含めた後方散乱応答による距離推定
○中村航希・柴田随道(東京都市大) |
C-15-6 |
吸収電力密度におけるアンテナ—モデル間相互結合に関する一検討
◎新井紀香・小寺紗千子(名工大)・Yinliang Diao(華南農業大)・Kun Li(香川大)・平田晃正(名工大) |
レーダによる複数人体の計測を日常環境で行うには,複数人の位置を継続的に把握する追跡法の確立が求められる.著者らは,レーダによる非接触人体計測技術を開発しており,たとえば静止した複数人の呼吸計測に取り組んできたが,運動中の人体に対する計測技術は確立されていない.
人体の運動は複雑であり,四肢の運動も含めて大きな加速度を有するため,従来の追跡手法では,複数人体どうしが近接する場合に対象者の取り違えが発生することが課題となる.本稿では,複数人体の呼吸に個人差が存在することを利用し,粒子フィルタを用いた追跡において生じる取り違えを検出し,追跡精度を向上させる手法を提案する.
近年,脳を非侵襲かつ局所的に刺激をすることに関心が高まっている.その方法の一つとしてTMS(経頭蓋磁気刺激法)が挙げられる.TMSとは,頭部近傍にコイルを配置し,コイルに中間周波帯のパルス電流を流した際に発生する磁界の変化により脳内に電流を誘導し,脳組織を刺激する手法である.TMSは,脳機能の診断,脳障害のリハビリテーション方策などでの有効性が示されている[1].TMSコイルの形状より,誘導電界分布が変化するが[2],脳の皮質表層と皮質深層に由来する測定可能な生理的反応に基づき,表層と深層で異なるコイルを比較したものは少ない.本研究では,複数のTMSコイルを用いて手と脚の筋肉を刺激,安静時運動閾値(RMT)を測定した.さらに,測定実験と同条件での電磁界解析を実施,個々人の脳内誘導電界を算出した後,グループレベルでの誘導電界閾値を検討する.
本研究では,屋内外における24GHz帯WPTシステムのレイトレースシミュレーションに向けて,建築材料の複素比誘電率を測定した.
まず建築材料に適した測定法について検討し,誘電体レンズアンテナを用いた自由空間法が適していることを示した.
そして,同手法により石膏ボード,岩綿吸音板,フロートガラスの複素比誘電率を測定し,建材のばらつきを拡張不確かさにより評価した.
電磁界ばく露により異なる電位ポテンシャルを持つ金属に人体が接触するとき,接触電流が体内に流れ,生体影響を引き起こす.接触電流から人体を防護するため,ICNIRPではガイダンス,IEEEでは参考レベルにおいて電流値の指標が設けられている.一方,中間周波数帯の接触電流に伴う神経作用により生じる,知覚・痛覚閾値に関する科学的根拠は少ない.本稿では,接触電流刺激実験実測値から,熱知覚に関するデータに着目し,実験を再現した電磁界・熱複合物理解析により,指先における温度上昇を推定,熱知覚温度の推定を行う.
筆者らは, 平面波を地面に垂直入射した時の後方散乱応答から地下構造を推定する手法の提案を行ってきた. 本稿では, 具体的な波源を想定してその影響を調べるために, 理想的な平面波ではなく, 八木宇田アンテナを用いた送受信機モデルによる推定の可能性を検討した.アンテナ近傍場での電波伝搬特性を伝送線路でモデル化し, 空気中に完全導体が設置されている状況を想定して完全導体までの距離を非常に精度よく推定できることを確認した.
近年,普及が拡大している第5世代移動通信システム(5G)をはじめとする無線通信システムでは,6 GHz以上の周波数帯が利用されている.これらの周波数帯では,IEEE規格[1],ICNIRPガイドライン[2]では,吸収電力密度(APD:Absorbed Power Density [W/m2])が基本制限値として,入射電力密度(IPD : Incident Power Density [W/m2])が参考レベルとして定義されている.しかし,6 GHz以上の周波数でのIPDとAPDの周波数依存や角度依存は調査されている[3][4]ものの,アンテナからの距離依存については議論がなされていない.
本稿では,吸収電力密度におけるアンテナ—モデル間相互結合に関する一検討を行った.
3月7日 13:00〜16:15 3号館 3304教室 座長 安藤芳晃(電通大)
C-15-7 |
非対称スプリットリング共振器のTHzセンサへの応用
◎小林祐輝・柴山 純・山内潤治・中野久松・竹谷和真(法政大) |
C-15-8 |
圧縮センシングを適用したモーメント法による2次元散乱解析
◎斎藤功太・岸本誠也・大貫進一郎(日大) |
C-15-9 |
CNNによる媒質予測における媒質パラメータの相互作用の研究
○佐貫颯治・西田大輝・津野晃大・音代 柊・木村秀明(中部大) |
C-15-10 |
半導体層を用いたテラヘルツTE除去/TM透過導波路型偏光子の消光比特性
◎大塚 諒・柴山 純・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-15-11 |
波数空間における反射光パルスの伝搬方向抽出
◎三枝美波・岸本誠也・井上修一郎・大貫進一郎(日大) |
C-15-12 |
周期長を考慮したプラズモニックグレーティングカップラの結合特性
◎中坂日南・竹谷和真・柴山 純・山内潤治・中野久松(法政大) |
THz帯における非対称角型スプリットリング共振器を周期構造を扱うための3次元FDTD法を用いて解析する。共振器外部の屈折率を増加させていった際、ファノ共鳴のピーク周波数が低周波側へシフトすることを明示する。
電磁界数値解析法の一つとして,モーメント法はアンテナやプラズモニックデバイス設計に利用されている.モーメント法は対象物表面における電界の境界条件を満たす積分方程式を連立方程式に変換し解く手法である.この手法では,行列計算をするときに計算量が多くなってしまうことが問題となっている.圧縮センシングは行列を圧縮し,計算量を抑えることが可能な手法である.本報告では,モーメント法と圧縮センシングを用いて,観測点における散乱電界を周波数領域と時間領域にて厳密解と比較を行う.
現在,日本においては少子高齢化による技術者不足が社会問題となっており,技術者依存しない自動点検・整備システムの必要性が増している.これまで,我々はリバースエンジニアリング技術による点検・整備システムを提案してきた.本システムでは想定される構造, 材料を変数として数値シミュレーションを実施,結果をデータセットとして機械学習を利用することで,構造,材質を特定する技術である.検証を続けていく中で,構造物を構成する複数媒質を機械学習により分類する際,予測精度が収束しない課題があった.今回,反射特性を用いた媒質分類数値実験において各種媒質パラメータが予測精度に与える影響について検証したので報告する.
半導体層を用いたTHz帯における3次元 TE除去/TM透過導波路型偏光子を解析する.偏光子部のバッファ層厚、InAs層厚を変更した場合の消光比を算出し、最適な厚みを検討する。結果として、偏光子部のバッファ層厚12.5 μm、InAs層厚5.0 μmにおいて消光比の最大値47.5 dBが得られることを明示する.
著書らは光パルス時間分解測定において,高S/N比の実現に向けた従来法を超えた背景雑音抑圧法の開発を行っている.屈折率の異なる層試料に光を照射すると,層から直接反射する光と層間で多重散乱する光が同時に観測され,散乱光は背景雑音となる.本報告では,2次元フーリエ変換を適用し波数空間に変換する.そしてフィルタリングを適用し光パルスの伝搬方向を抽出することで,散乱光を抑圧する手法を検討する.
本稿では,プラズモニックグレーティングカップラの周期長を変化させ結合波長を調節する.傾斜入射時での長方形誘電体装荷グレーティングと,垂直入射時での台形誘電体装荷グレーティングを解析し,実用的である波長1.55 μmにおいて界が金属表面と結合し一方向伝搬することを示す.
休 憩(14:45 再開) 座長 阪本卓也(京大)
C-15-13 |
ドリフト拡散法とFDTD法を連成したテラヘルツ光伝導アンテナの解析
◎小林隼斗・柴山 純・山内潤治・中野久松(法政大) |
C-15-14 |
サブ波長グレーティングNRDガイド回路素子の設計に関する研究
○風間啓佑・井口亜希人・辻 寧英(室工大) |
C-15-15 |
一様なプラズマ中における電磁波伝搬の1次元FDTD解析
◎西野一輝(法政大)・西村征也(量研機構)・柴山 純(法政大) |
C-15-16 |
時間反転FDTD法を用いた2次元電磁界解析の基礎検討
◎末吉勇斗・岸本誠也・大貫進一郎(日大) |
C-15-17 |
1次元磁性メタサーフェスの入射角度特性の改善について
○谷口美緒・井口亜希人・辻 寧英(室工大) |
C-15-18 |
FILT法に基づく音場解析法の精度検証
○石川直也・岸本誠也・大貫進一郎(日大) |
テラヘルツ波を発生,検出するための光伝導アンテナが研究されている.光伝導アンテナの解析では,電磁界解析だけでなく,レーザーパルスによるキャリアの増加や,それに伴う電流の励起も考慮する必要がある.本稿では,キャリア密度及び電流を扱うドリフト拡散法とFDTD法とを連成することで,これらを考慮した計算手法を構築する.はじめに,ドリフト拡散法とFDTD法の定式化を行う.次に,この計算手法により光伝導アンテナの解析を行い,放射されたテラヘルツ波の時間応答を確認する.パルス幅0.2 ps程度の電磁波が放射されることを示す.
ミリ波やテラヘルツ波を伝送する導波路が種々提案されているが,回路として応用するうえで小型化が重要であり,非方射性を有するNRDガイドは有望なプラットフォームであると考えられる.通常のNRDガイドではLSE01モードがLSM01モードよりカットオフ周波数が低く,LSM01モードの伝送帯域では2つのモードが出力される.それに対し,サブ波長グレーティング構造を採用することで2つのモード関係が逆転しLSM01モードの単一モード伝送帯域が実現できる.本検討では,サブ波長グレーティング構造を採用したNRDガイドの解析設計を行い,LSM01モードの単一モード伝送可能な回路素子設計の検討を行う.
本稿では,電子の運動方程式に基づき,プラズマ中の電磁界解析に適した1次元FDTDアルゴリズムを構築する.電子は冷たいプラズマの運動論的モデル表現され,外部磁場のない一様なプラズマとして考える.カットオフ角周波数以下の電磁波は伝搬できないのに対して,カットオフ角周波数以上の電磁波は伝搬できることを確認する.また,エネルギー保存則が満たされていることを確認し,本手法の妥当性を明示する.
近年,FDTD(Finite-Difference Time-Domain)法の時分割並列計算が開発され,電磁界解析に要する時間の短縮が可能となった.本報告では,並列化効率の更なる向上を目的として,時間を反転させ電磁界解析する時間反転(TR: Time Reversal) FDTD法を用いた2次元電磁界解析の基礎検討を行う.FDTD法を参照解としTR-FDTD法の解析結果の検証を行う.
波長に対して小さい誘電体や金属からなる構造体を周期的に配列したメタサーフェスは,通常の材料では実現できない特異な特性を実現できることから注目されている.メタサーフェスは,メタホログラム,メタレンズ,IRS 等の実用化を視野に入れた研究報告が盛んになされている.こうした様々な機能の中で電磁波の一方向伝搬を実現するアイソレータも重要な機能の一つであり,磁性/非磁性のメタサーフェスを利用したアイソレータの報告がなされている.著者らはこれまでに,数値解析に有限要素法 (FEM),最適化手法に遺伝的アルゴリズム (GA) を用いて 1 次元磁性メタサーフェスの最適設計を行い,従来よりも単純な構造で一方向伝搬を達成するアイソレータが実現できることを示した .本検討では 1 次元磁性メタサーフェスの入射波角特性の改善を目的として最適設計を行った結果について報告する.
建築音響の分野において最も興味をもたれるホール設計には,気体を伝播する音場シミュレーションが有用である.その代表的なシミュレーション方法としてFDTD(Finite-difference Time-domain)法がある.本報告では,音場時間解析にて分解能の制限がない解析手法を使い,時間領域の音圧を求める.本提案法による解析の正当性を確認するため,FDTD法と提案法を比較し解析結果を検証する.